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第4章 鬼神の怒りと魔改造戦士の涙

聖龍が地上に舞い降りると、氷雨と豹剛が真っ先に大芹に抱きついた。
「お前達・・・あんな酷いことを言ったのに、まだ俺を慕ってくれるのか?」
「あれは、オラ達に嫌われる為についた嘘だってわかっていたよ」
「大芹さんは、私達の恩人よ。あなたに救われたわ」
大芹は2人の純朴な瞳を見て、苦笑いしながら言った。
「お前達を救った時点で、私は闇に染まりきれていなかったのだな」
桜龍とモトスは大芹を励ます言葉を掛けた。
「貴族や役人、兵士までも拉致して魔改造奴隷にした事は悪い事だが、それ以上の苦しみや悲劇を受けたから、闇に染まっても弱い立場の者には優しかったんだろう。本当のあんたは聖者だと思うよ」
「都で盲目の少女を治したそうだな。役人の目を奪いそれを入れるのは非人道的だが、少女と父親はお前に感謝していたぞ」
大芹が黙り込んでいると、千里に冷たい目線で見られた。
「・・・弁慶と君の仲間と、君を造った安曇を殺めたのは事実だ。君に討たれる覚悟は出来ている」
「・・・あなたを殺めたところで、仲間達は還って来ません。それに僕が許せないのは、あなたを利用した黒羽と卑弩羅達です」
「私を許すのか?」
「あなた達には罪を償って生きるべきだと思います」
千里は言うべき事を言った後、後ろを向いた。場の空気を変えるように湘と球磨も大芹に話しかけた。
「そうだな。君達なら闇の一族の事を知っているだろうし、もう君達は見放された存在だから、私達に協力してくれないか?」
「それと、八幡平の地底の修復もしてもらうぜ。まぁ、亘や土竜族も一緒に治すと思うけどな」
「・・・素直に君達に協力する程、私は優しい人間ではないが、助けてくれた恩は返してやる」
「おう!!頼りにしているぜ、大寿さん🎵」
「・・・桜龍。昔の名は捨てた。そのまま大芹で頼む」
モトスは大芹のボロボロになった義手を見て、優しい口調で伝えた。
「義手は森精霊の技術で、木の腕になるが着けることが出来るぞ。それと、身体中の火傷痕も無くすことも出来る」
「・・・義手は欲しいが、体は結構だ。私はこの傷を背負い生きてゆく」
「そうか。だが、支えてくれる者も居るから、お前1人で罪を背負うなよ」
「まさか私達が勇士共に情けをかけられるとはな」
桜龍達に励まされ、大芹は先程までの悲壮な顔から、微かに頬が緩んだ。その時、遥か北の空から黒い雲と渦が現れた。大芹は力の源を即察した。
「あの力は、厳美か!?まさか黒羽の命で動き出していたのか!!」
「おそらく最初からそのつもりだったのだろう。君達は私達に負けるだろうと。それと地球を爆発させるのもね」
「厄神四天王の朝霧の予言か。奴はこの戦いの結果を知っていたのか・・・」
湘とモトスは悔しそうな顔をしながら北の空を見た。
「アタシ達は最初から捨て駒だったのね・・・厳美はアタシ達以上に強いもの。だってあの人は・・」
「氷雨、私から話す。今は陸奥へ向かい、厳美を止めよう。この責任は私にある」
球磨と千里は気合いを入れて厳美を止めに行くと決めていた。
「もう責任なんて言わないでさ、皆んなで厳美を止めに行こうぜ!!」
「厳美こそ、僕の因縁の相手です。あなたが造った魔改造戦士であろうと、僕が討ち取ります」
「この戦いが終わったら、皆んなで美味いもん食べに行きたいよ」
「そうだな、その為にも厳美を止めるぜ!!」
豹剛の前向きな言葉と桜龍の決断に、皆は強く頷いた。勇士達は大芹達と共に北へ向かった。

                    
                      第10話 完
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