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第4章 鬼神の怒りと魔改造戦士の涙

城下町は平城の白石城を背景に、武家屋敷と町民街が広がっていた。桜龍達は門の前で、町民達に陽気な口調で招かれた。
「旅の方っすね〜。今なら氏郷様も城に来ていまして、使節団から貰った『ちーず』やぶどう酒を頂けますよ〜」
桜龍は美味しそうな食べ物が頂けると嬉しそうな顔をした。
「やったぜ!!ちょうど良い時に来たぜ♪本丸に行けば頂けるんだな?」
「おお!!旅の方ノリが良いねぇ。氏郷様も大喜びですぞ。では、案内しますよー♪」
湘は桜龍の耳を引っ張り、小声で怒った。
「桜龍!!ホイホイと・・罠かもしれぬのだぞ」
「痛てて・・分かっていますよ。だけど、氏郷殿に真意を問いたださないと」
モトスと千里は桜龍の考えに賛同していた。
「見たところ平和そうだが、あまりにも緊張感が無さすぎるな・・・」
「どのみち、この町は何か変です。きっと魔改造戦士が潜んでいるに違いありません」
(確かに、隠れている可能性はあるな。まさか、液体と同化できる奴か?)
湘は潜んでいる敵の予想が出来た。

白石城の手前に武家屋敷が並んでいたが、人の気配は無かった。球磨は静けさに怪しいなと思い、町民に何気ない振りをして聞いてみた。
「白石の武士達はどうしたんだ?」
「氏郷様がお侍さん達に日頃の感謝を込めて、慰安旅行を勧めたそうです。おそらく、お伊勢参りに行ったとか。次は私達町民に伊勢や松坂を案内すると仰っていました」
「そうなのか・・・この時期にお伊勢参りか?」
球磨は不審に思いながらも笑顔を取り繕った。
「この間は、伊勢のお茶やあんころ餅で我々町民を招いてお茶会を開いてくださりました。やみつきになるほどの美味しいお茶でした♪」

桜龍は町民に本丸御殿の謁見の間に案内された。町民は案内を終了して町に帰った。するとそこには侍女や兵士が氏郷の側に仕えていた。モトスはその光景に違和感を持った。
(この部屋にしか侍女や兵士は居ないのか・・・随分と不用心だな)
「良く来たねぇ、ボクは蒲生氏郷。この城は本来、家臣が治めているが、今は不在でね。それは気にせず使節団からの南蛮土産を楽しんでくれたまえ」
美しい金髪をなびかせながら氏郷は快くもてなした。球磨は彼のような者が少し苦手なのか苦笑いし、桜龍は『湘おじに似ている』と笑いを隠していたが、湘に睨まれた。そして湘は氏郷に忠告した。
「ただの旅人をおもてなししてくださるのは光栄ですが、今は魔改造戦士が東北を侵略しようとしています。もう少し警戒をするべきかと」
「ああ、魔改造戦士とやらはこの間、白石に来たけど、特に邪魔さえしなければ領民に手を出さぬと言っていたから、ボクは干渉しないと言っておいたよ」
「では、何故町に兵士が居なかったのですか?本丸に着く前に、武家屋敷を通りましたが、兵士の気配はありませんでしたよ」
「・・・君はなかなか鋭いねぇ。蒲生家の軍師にでもしたいよ。いいや、ここで死んでもらおうか!!」
氏郷は突然、羽織の袖から液体を放ち、勇士達を水の刃で斬ろうとした。しかし皆は正体を知っていたのか、素早く避け、球磨の炎で水を蒸発させ、モトスのカマイタチで氏郷の着物を切り裂いた。すると、侍女や兵士達も液体化し、勇士達に襲いかかってきた。
「やはり魔改造戦士、氷雨か!!本物の氏郷殿をどうした!!」
千里は鎖鎌を振るい、液体魔改造戦士を斬り裂いていき、氷雨を追い詰めた。
「ふふ、本物の氏郷ちゃんと家臣や兵士は蔵王の雪山でアタシの展示物になっているわ。あんた達をここに誘き出して、十分な時間稼ぎが出来たわ。それに、傀儡の液で町民達を洗脳出来たし」
「時間稼ぎだと!!何を企んでいやがる!!それに、町民を茶会に招いてそいつを飲ませたのか!!」
「流石に、町民を蔵王で展示物にさせるのは可哀想だと思ったからよ。それより豹剛君は、酒田の街を乗っ取って、大芹さんは八幡平で面白い事をするそうよ♪あんた達、アタシに構っていて良いのかしら?」
「そんな事は絶対にさせないぜ!!」
桜龍は液体姿の氷雨の攻撃をかいくぐり、稲妻を帯びた太刀を振るい、核となる心臓部分を切り裂いた。氷雨は感電と破邪の力で苦しみ、跡形もなく溶けて無くなった。モトスは氷雨の気が消えた事を確信していた。
「やけに呆気なさ過ぎだな・・・これは分身に違いないな」
「氏郷殿や兵士達は蔵王に囚われている。そこに氷雨本体が居るに違いないな」
湘の推測に球磨は急ごうぜと促した。
「そんじゃあ、早く蔵王に行って助けないとな」
「皆は先に、酒田と八幡平に行ってくれ。氷雨との決着は私がつける」
湘が言うと、千里は戸惑いながら湘を止めた。
「待ってください、湘さん。1人では危険です。僕も行きます」
しかし湘は心配する千里に自信あふれる笑顔と優しい口調で説得した。
「ありがとう、千里。君が1番魔改造戦士の恐ろしさを知っている。だが、私も覚醒して強くなった。それに何故、奴が魔改造戦士になったのかも知りたくてな」
「千里、湘さんを信じよう。なんて言ったって、海洋族と海龍の血を引いた最強の水神なんだから」
「ふん桜龍、珍しくお世辞か。これから先の敵の方が強い。皆んな、心してかかるのだぞ」
湘は白石城から見える、雪のかかった蔵王連峰を見て覚悟を決めていた。
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