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第4章 鬼神の怒りと魔改造戦士の涙

陰のニホン、闇の天守閣の庭園で魔改造戦士の氷雨(ひさめ)は池に映る月をぼんやりと見ていた。透き通った水色の長い髪と潤んだ瞳は月明かりに照らされていた。
「今のあたしって、男なの?女なのかしら?」
後ろから、薄紫色の長い髪の美しい魔改造戦士の女性に声を掛けられた。
「何か悩んでいるの?氷雨さん」
「あら、若桜ちゃん。少し昔を思い出していたの」
氷雨は笑顔を取り繕っていると、若桜は不思議な顔をしていた。
「あなたには昔の記憶や思い出があるの?」
「・・そうね、思い出と言っても胸糞悪い物よ。アタシの苦しみは大芹さんに解放されたのよ」
「そうだったのね。私には記憶も思い出も無いから、ただひたすら大芹様や卑弩羅様の為に戦うだけだわ」
(若桜ちゃん、本当に千里と仲間だった記憶を消されているのね)
「アナタはそれで良いのよ、若桜ちゃん。魔改造戦士になる前の記憶なんて本当は消したいの。だけど、その憎悪がアタシの力を増幅させられるのよ」
氷雨は明るく振る舞いながら話題を変えた。
「それより、戦いが終わったら、甘味処で女同士お話しましょう🎵可愛い着物や髪飾りのお店に行ったりも良いわね」
「そうね、私そういうの詳しくないから、氷雨さんに教えて貰いたいわ」
氷雨は明るく笑いかけ、若桜も少し口元を緩めた。しかし、それが叶う事は無かった。


羽前国、伊達家が治める米沢城の本丸で桜龍達は、政宗と腹心、片倉小十郎と今後の魔改造戦士討伐について軍議を開いていた。政宗と小十郎はこれからの計画を桜龍達に話していた。
「今、仙台と多賀城が警備を固め、東北に居る大名や武将も戦の準備をしておる。関東や北陸からも援軍が来て、奴らに味方する領民を制圧させるつもりだ」
「それでも阻止出来なかった場合は、豊臣家や西国の武将にも援軍に来てもらい、全面戦争となる覚悟でしょう」
湘と球磨はその計画に対して異論を出した。
「だが、そうなると秀吉殿が居る大阪は無防備になり、天下人が狙われますな・・・」
「せめて、援軍は東国武士までだな。敵もどう出てくるか分かんねーし、むやみに軍を動かせないよな」
モトスは東北の忍びから連絡が来ないことを不安に思っていた。
「東北中の忍びが魔改造戦士が現れたかを偵察しているが、まだ何も知らせが来ない。何かあったのだろうか」
「現れないにしろ、そろそろ誰か報告しに来ても良いのにな。そうだ!千里。俺の手を握ってくれ。もしかしたら人造戦士の気を探る事が出来る」
「魔改造戦士と造られ方は違いますが、やってみましょう」
桜龍は千里に左手を握られると、千里の気を聖龍の気と共鳴させ、瞑想した。すると、米沢から蔵王連峰を越えた、陸前国白石(しろいし)城城下町が見えた(現宮城県白石市)。城下の民達は宴を開いているかのように陽気に盛り上がっていた。桜龍は呆気にとられ驚いていた。
「何だ何だ?祭りでもやってんのか?小十郎殿、白石城は今、蒲生(がもう)家が統治しているんでしたっけ?」
「はい。現在会津と白石蔵王付近は蒲生氏郷(うじさと)殿が統治しております。前は伊勢の松坂城の城主でしたが、秀吉様から南東北の統治を任されたそうです」
「あやつは、キリシタン大名のうえに茶文化に精通したキザ男だ。一時期、領地争いとどちらが男前か言い争ったもんだ」
政宗と氏郷は仲が良くないと皆は理解した。政宗は白石と氏郷について説明した。
「だが、白石の民が浮かれているのは、氏郷が使節団から南蛮土産を受け取り、民に配ったからか?過去に『ちょこれいと』という謎の菓子を民に配っていたのを目撃したと密偵が言っていたし・・・」
モトスは先程の桜龍と千里のやりとりで、気になった事を話した。
「だが、変だな。桜龍が千里の気をたどって見えた光景だ。魔改造戦士が白石に潜んでいる可能性は十分にある」
湘と球磨も現状況に違和感を覚え、話を続けた。
「それに、使節団は何ヶ月か前に船を出したばかりだ。当分戻ってこないはずだ」
「まぁ、魔改造戦士が襲って来るかって時に、呑気に浮かれていたら兵士に怒られると自粛するはずだけどな」
「そういえば、あの光景に兵士や侍らしき者がいなかったな・・・」
「まさか、民達はすでに魔改造戦士に操られている可能性が!?急ぎ、白石城へ向かいましょう」
5人は急ぎ、米沢から白石へ向かった。
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