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第4章 鬼神の怒りと魔改造戦士の涙

仲間達が五行の祠で試練を受けている時、桜龍は海洋族の宮殿で深い眠りについていた。やがて悪夢にうなされ始めた。

炎に包まれた村。家屋や畑は焼きつくされ、桜龍の周りには骸が無惨に散らばっていた。
「これは・・・まさか魔改造戦士の仕業か?」
桜龍は辺りを見回すと、大切な女性の高い叫び声が聞こえた。
「きゃあー!!!!!桜龍助けて!!!!!」
「仁摩の声だ!!何かに襲われているのか!?」
桜龍が叫び声のする方へ向かうと、火傷や皮膚病で異形の姿となった魔改造戦士『大芹(おおぜり)』が、闇龍の義手で仁摩の首を絞めていた。
「君のような平穏に育った娘に私の気持ちなど分からぬ。その綺麗な顔と体を私の娘に差し出せ」
「嫌・・・た・・助けて・・桜龍・・・」
「野郎!!仁摩を離しやがれ!!」
桜龍は怒りを爆発させ、聖なる光を大芹に放った。しかし、憎しみで解放させた力は、仁摩おも消してしまった。
「に・・仁摩!!」
そして、大芹の断末魔が聞こえた。
「私は・・まだ死ぬわけにはいかぬ!!娘と妻と村の皆の為に・・・・」
「大芹・・・お前の過去は何なんだ?こいつは倒すべき敵だろうが・・・それに、俺は仁摩まで消してしまった・・・」
桜龍は真っ白な空間で膝を折って顔を伏せた。
(憎しみの力で俺は自分を・・・大切な者も失ってしまう)
桜龍が頭を抱え苦悩していると、温かい大きな手が差し伸べられた。
「力に飲み込まれてはならぬ、桜龍」
「貴方は・・・俺に瞳を託してくれた、聖龍王様?」
「憎しみだけで敵を見てはならぬ。敵の闇の中に残る、微かな光を見つけよ。聖龍は己が救いたいという心に応えてくれる」
「己が救いたい?・・・大芹は倒すべき相手なのに・・・」
桜龍は大芹の顔を思い出すたびに嫌悪感を抱いていた。しかし、過去に彼の頭を握り潰そうとした時に現れた悲惨な光景を思い出し、戸惑った。
「己の考えで道を開け。さすれば答えを導き出せる」
聖龍王は意味深な言葉を告げた後、光に包まれ消え去った。桜龍は『待って!!』と手を掴もうとするが、白い世界は消え、目の前にナンヨウハギを始めとする熱帯魚が映った。
「え!?ここは、海洋族の宮殿か?」
天蓋のある寝台で桜龍が目を覚ますと、アナンが氷枕を変えてくれていた。
「目を覚ましたか、桜龍。・・・随分とうなされていたけど大丈夫か?」
「アナン・・・すまない、心配をかけちまって。ずっと看病してくれて、ありがとうな」
桜龍は情けない顔をしながらアナンに礼を言うと、彼は照れた様子で返答した。
「・・・まぁ、俺だけじゃなく交代で看病してるから、元気になったら皆にも礼を言えよな」
「ところで、仁摩殿は!!まさか大芹の奴に・・・」
「仁摩はいすみ様や皆と鍛錬に励んでいる。お前や皆を守る為に強くなりたいんだってさ」
アナンは桜龍が眠っている間の事を話した。桜龍はホッとした顔をして、気合いを入れ直した。
「良かった・・・仁摩殿も皆も無事だったんだな。俺もこれ以上寝ている訳にはいかないな」
「体の方が大丈夫なら、いすみ様に会ってこい。仁摩も居るし、試練の場に連れてって貰えるぞ」
「ああ、案内を頼む」
アナンは桜龍に小さく笑いかけながら励ました。
「仁摩は、お前が思ってる程弱くねーよ」
「・・・そうだな」
桜龍は静かに笑い返した。


桜龍はアナンと宮殿内の道場へ向かうと、仁摩の棍棒といすみの三叉槍がぶつかり合っていた。
「腰が甘いぞ、仁摩!!これでは敵の攻撃に耐えられぬぞ!!もっと足腰に力を入れろ!!」
「はい!いすみ様!!」
(仁摩、無事で良かった。俺が眠っている間に修行していたんだな)
いすみと仁摩は桜龍の気配を感じ、武器を収めた。
「桜龍!!良かった・・目を覚まして」
桜龍は涙を堪えている仁摩に抱きしめられた。いすみを始め、共に鍛錬している海洋戦士は呆然と見ていた。桜龍は照れて慌てながら仁摩に言った。
「仁摩殿!!皆んなが見てるぞ!!」
「もう!!目を覚まさないかと心配したんだから!!」
「・・・アナンから聞いた。ずっと付き添ってくれて、ありがとう。それと、辛い思いをさせて、すまなかった」
桜龍も仁摩を強く抱き、顔を見合わせた。するといすみがコホンと咳をし、桜龍に話しかけた。
「桜龍。こたびは魔改造戦士との戦い、命がけだったな。皆も無事で、今はそれぞれの力を覚醒させようとしている」
いすみは桜龍が眠っている間の事を話した。
「アナンから聞きました。皆は地底世界にある五行の祠で試練を受けているそうですね」
「ああ、八郎が地底の祠で待っておる。準備が出来たらそこまで転送してやろう」
「よろしくお願いします。いすみ様」
「桜龍・・・」
「仁摩殿も無理をせず鍛錬に励んでくれ」
「桜龍、私も強くなるから、あなたもみっちり強くなって帰って来るのよ」
桜龍は仁摩に凜とした顔を向けられたので、笑顔で彼女の手の甲に口付けした。仁摩は照れながらも笑顔を返した。
「仁摩殿の豊かな表情を見ていると、辛さが吹き飛ぶぜ」
「もう!!失礼ね!!」
「はは、それでは行って来る。仁摩殿」
桜龍はいつもの陽気な笑顔を仁摩に向けた。同時に何も恐れぬ凛々しさも感じとった。
「では、八郎の元へ転送する」
いすみの三叉槍から黄金の光を放つ魔方陣が出現し、桜龍を八郎王の元へ転送させた。
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