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第4章 鬼神の怒りと魔改造戦士の涙

義経は千里に真実を話した。
「義経様は僕との再会の為に、黄泉には行かず、人造戦士となったのですね」
「ああ。お前の行末を見届けたいとな。だが、蝦夷は自分の意志で行ってみたいと思っていたよ」
「蝦夷地で鍛錬を積まれていたのが分かります」
義経の剣技と吹雪の中でもひるむ事なく、まるで自然と同化しているかのように動きがしなやかであった。千里も義経の動きを見極めていた。
「そろそろ、見せてもらおうか。千里の大地の守護者の力を」
義経の目の前に、白銀の翼を持つ美しい天馬が現れた。前頭部に付いた水晶の角に千里が映っていた。
「おとぎ話に出てくる聖獣ですね」
「ああ。蝦夷の大地を駆ける伝説の天馬だ。千里、私と天馬を倒してみせよ」
義経は天馬にまたがり、千里に向かって駆け向かった。千里は天馬の突進を避けたが、義経の2つの刃はかまいたちの如く、千里の甲冑や着物を引き裂いた。梓は不安になり、声を上げてしまった。
「千里!!」
弁慶は動揺した梓を落ち着かせた。
「大丈夫だ。千里は柔な男ではない」
千里の上半身は鋼鉄の肉体がさらされていたが、吹雪に当たっても闘志は燃えていた。義経は千里の胸板や腹筋に残る傷跡を見て、静かに言った。
「その傷で辛い経験をした事が分かる。強靭な肉体と精神を持っていても心の傷は残っている。千里、私を倒して何者にも負けぬ力を得てみろ」
「義経様の想い、深く伝わりました。僕は過去の自分を恨んでいました。義経様と弁慶殿、安曇様と若桜。魔改造戦士から救えなかった者が沢山居ました・・・。そして、今でも大切な仲間を傷つけてしまった・・・」
千里はまぶたを閉じ、モトス、球磨、湘、そして桜龍の笑顔を脳裏に思い浮かべた。
「だから、もう誰も失わないように、僕は大切な仲間の為に強くなりたい。だから、義経様、貴方を倒します!!」
千里は手を胸に当て、気を高めると雪原は激しく揺れた。千里の体からは紅い光が放たれると同時に、大地は轟き鳴り響いていた。そして千里は鋼の胸当てと、民族衣装のような布を身にまとい、まるで大地の守護神のような姿に変わった。
「真の力に目覚めたか、千里。その力で大地を砕け!!」
義経は天馬と共に突進してきた。千里は静かに拳に気をため、義経に誓った。
「義経様!!僕は軍神となったあなたを超えます。そして、あなたと弁慶殿、安曇様や犠牲になった同志達の弔いを果たします!!」
千里は紅い光を拳にまとい、義経と天馬目掛け紅い光弾を放った。その時、心の奥から生みの親、安曇の優しい声が聞こえた。
(千里、大地の光玉と共に覚醒して。お前なら出来る。お前は大地の守護神に選ばれた者なのだから)
「大地の轟音!!」
光弾は熱を帯び、大地を揺るがす大爆発を起こした。義経と天馬に直撃した。天馬は消え義経は満足そうに笑みを浮かべた。
「これが大地の守護神の力か。これなら厳美にもこれから現れる強敵にも勝てるぞ」
「この力は、邪悪な者を撃ち倒す技ですが、義経様には邪気が一切ありません」
「そうだな。とてつもない強い力だが、痛くはない。千里、やはりお前と戦えて嬉しいぞ」
義経は元の姿に戻り、雪床に倒れそうになった所を千里に支えられた。
「千里!!義経殿!!」
梓と弁慶も2人の元に駆け寄り、弁慶は千里に羽織を着させ、義経に肩を貸してあげた。梓は涙を流し、千里に飛びついて頭を撫でた。
「千里!!よく母様が入れてくれた大地の光玉の力を目覚めさせてくれたべさ!!」
「光玉を通じて、安曇様の声が聞こえました」
「きっと、安曇殿も千里の覚醒を待ち望んでいたのだろうな。義経も俺もこの日を待っていた甲斐があったということだな」
弁慶は千里と義経の肩に手を置き喜んだ。
「そうだ千里、服を派手に破いてしまってすまない。今元に戻すぞ」
義経は淡い暖かな光を千里に向けた。すると、着物や胴当てが再生された。
「ありがとうございます、義経様」
千里と義経は笑顔を向け、握手した。


戦いは終わり、4人は大雪山旭岳の山頂に居た。吹雪は止み、雪雲も消え晴天の空が広がっていた。千里達は初めて見る北の大地の景色に感動していた。
「ここが蝦夷地・・・どこまでも続く大地ですね」
「義経はここで修行していたのか。俺も生きていたらこの大地を巡ってみたかったな」
「そうだな。弁慶なら蝦夷(えみし)と直ぐ仲良くなれるし、熊も恐れて逃げる」
「おいおい・・熊が恐れるのは大袈裟だぞ・・・」
久しぶりに義経と弁慶の談笑に千里と梓は和んでいた。しかし、梓は今後の事が気掛かりで、2人に聞いた。
「義経殿と弁慶殿はこれからどうするべさ?今、千里や仲間達は厳美達率いる魔改造戦士と戦ってるべさ」
「私も千里達と共に戦いたいと思っている。だが、すまない。私と弁慶はこの日の為に、八郎王から人造戦士として蘇らせてもらったのだ。私達はもう還らなければならない」
「俺だってまたひと暴れしたいと思っていたが、『これはおめーらが引き受けることじゃあねぇ』と八郎王に止められた。だから、お前達の武運を祈るしかないのだ」
「義経様と弁慶殿は僕の覚醒の為に蘇ってくれました。2人にも八郎王に感謝しています。付いてきて見守ってくれた梓殿もありがとうございます」
「わ・・私は礼をされる事はしてねーべさ。礼なら母様に頼むだ」
梓は赤面しながら首を横に振った。義経と弁慶は2人のやり取りを見て微笑んでいた。
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