第4章 鬼神の怒りと魔改造戦士の涙
「これが、精霊の池か。心も身体も洗練される美しさだ」
「長い間、闇に閉ざされていたけど、綺麗になって良かったずら」
「モトス、小助、わたくしと樹海を闇から救ってくれて感謝いたします」
「その声は始祖様でいらっしゃいますか?」
湖から美麗な女神のような女性が姿を現した。ハネは黄金色と金の長い髪がそよ風になびいていた。
「わたくしは、あなた方、森精霊の母、ミドリです。わたくしはこの精霊の湖で森精霊達を見守っていました。ですが・・・」
ミドリは魔の樹海が出来た過去を話した。
大昔、森精霊の始祖ミドリは富士の爆発で出来た精霊の湖で生まれた。彼女は自然を愛する森精霊の母となった。しかし、精霊の湖は突如、闇に覆われ周辺の木々は黒く染まり魔の樹海と変わり果ててしまった。
「湖には精霊の花が咲いていましたが、皆闇の力に耐えられず枯れてしまったのです。唯一残っていた一輪の花は黒く染まり、闇の者に盗られてしまったの・・・」
「そんな悲劇があったのですか・・・」
「わたくしは、富士五湖に闇が広がらないようにするのが限界でした。私は子供達を助けられなかった・・・」
「オラ・・僕は始祖様と湖が元に戻って良かったずらです。あのまま始祖様が闇に閉ざされていたら可哀想ずら」
小助が涙を流しながら、ミドリに抱きついた。モトスは小助の頭を撫でながら、言葉を続けた。
「小助の言う通りです、ミドリ様。貴方はこれ以上犠牲が出ぬよう、自ら闇を封じ込めました。長い間、助けられず申し訳ございませんでした」
「謝らないで下さい、モトス。わたくしは自らの意志で、闇に侵食された樹海に誰も近づかぬよう、悪夢を見せたり、闇の植物に襲わせてしまったのです」
ミドリも小助の頭を撫で、2人に頭を下げ謝った。
「頭をお上げください、ミドリ様。貴方の苦しみ、悔しいほど伝わりました。生まれず亡くなった小精霊と樹海を穢した闇の一族を成敗して参りますぞ」
「頼もしいですね、モトス、小助。わたくしはこの湖の守護者なので、ここを離れる事は出来ませんが、あなた方の無事を祈っております」
「ミドリ様に、森精霊のみんなを紹介したいずら」
「ふふ、それは楽しみです」
「私の友人も、他種族で個性豊かで面白い者が多いから、ぜひミドリ様に紹介したいと思っております」
「皆さんで、精霊の湖に遊びに来てください。喜んで歓迎いたします」
ミドリが朗らかな笑顔でモトスと小助に言うと、梅雪も照れくさそうな顔をしながら言った。
「俺もお前らがくたばらぬよう願ってやる」
「梅雪、まだいたのか」
「まだ居たとは失礼だな。憎悪の精霊として生まれた俺を浄化してくれたから、俺の魂はミドリ様の元に居られるのだ」
「梅雪も憎しみと悲しみの中で生まれてしまった精霊です。ですが、今は黄泉に還り、新たな命として生まれ変わりましたね」
「それがオラずら?」
梅雪は驚いている小助の頭を撫で、優しく答えた。
「お前には俺が成し得なかった事に挑戦して欲しい。心から好いている女と結ばれたり、強い侍になったりとな」
「梅雪さん、オラは今、白州兄ちゃんと鍛練して真田家の勇士になるのを目指しているずら!!」
「昌幸の所か。昔から奴は戦略を考えるのが上手いから、仕えるのも面白いかもな」
「梅雪と昌幸は勝頼様を取り合ってケンカしていたからなぁ」
「モトスだって、しょっちゅう俺とケンカしたではないか」
モトスと梅雪は互いの顔を見て笑い合った。ミドリと小助は和やかな顔で2人を見ていた。
「では、モトス、小助、しっかりと己の務めを果たすのだぞ」
「ああ。梅雪も達者でな」
「モトス、貴方はわたくしの力を超える、神精霊です。貴方の他にも神精霊に相応しい子が生まれてくるはずでしたが、それはもう諦めています」
「それは、先程おっしゃっていました、闇の手に捕われた小精霊ですか?」
「ええ。おそらく闇に殺されたか、配下になってしまったか・・・」
「それなら、なおさら仇を取らなければなりませぬな。それと、配下になっていたら、闇を浄化させ、ミドリ様の元へ帰します」
「モトス、貴方に始祖のわたくしの力を譲ります。これで仲間達を支えてください」
ミドリは7色に輝く1匹の蝶をモトスの翡翠のハネに入れた。すると、ハネは虹のような光を照らし、ミドリの温かい優しさに包まれた。
「美しいハネです。ミドリ様から譲り受けた力を無駄にせぬよう、使命をまっとうします!!」
「オラも協力するずら」
「相変わらず、生真面目で熱いところはガキの頃から変わらんな」
「大切な仲間と出会い、多くの喜びや悲しみを知り強くなったのですわ。あなたも憎しみが無い精霊に生まれたら、こうなったと思います」
「そうだな、俺の出生は残念だが、それを継ぐ小僧は居る」
梅雪は張り切っている小助の姿に笑顔を向けた。そして魂は薄紅色のハネと共に消えた。
「梅雪おじちゃん、さようならずら!!」
小助は涙を流しながら梅雪が完全に消えるまで手を振った。
「さぁ、貴方達を待っている者はたくさんいますわ」
「そうですね。ではミドリ様、樹海の闇が消えた事を皆に伝えます」
「皆んなで遊びに来るずら🎵」
モトスと小助はミドリにお辞儀し、精霊の湖を後にした。ミドリは彼らの後ろ姿を見ながら祈りを込めていた。
「モトス、仲間達にご武運を。願わくばあの子の闇を救ってあげて・・・」
ミドリは闇に染まる精霊の花の叫びを思い出していた。
『こんな暗黒の未来、怖いじゅらー!!』
その頃、陰のニホン、闇王卑弩羅の居城で闇精霊の朝霧は寝室で頭を抑えながら過呼吸に苦しんでいた。
「また暗黒の未来か・・・森は枯れ、海は汚れ、この星は死の星となる・・・」
「あら?朝霧、また悪夢を見たのですか?」
寝室に土竜族の女性、黒羽が入ってきた。朝霧は頭を押さえながら黒羽に忠告した。
「黒羽か・・・こんな夢を見るという事は、奴らが大きく成長し、魔改造共が敗れる可能性が高いぞ。危機感はあるのか!!」
「落ち着きなさいって。坊や達がいくら強くなったからといって、私達の脅威ではないですわ」
「・・・だと良いのだがな。まぁ、遥か未来絶望の世界になるなら、卑弩羅様とマガツイノカミ様が闇の力で滅ぼし、虚無の世界にした方が良い」
「ふふ、私の可愛い魔改造戦士達は強化してありますわ。だからあまり鬱にならないでください」
黒羽は小さな手を朝霧の頭に乗せ、子守歌で彼の精神を癒やした。朝霧の発作は止まり、静かに眠りに付いた。
「長い間、闇に閉ざされていたけど、綺麗になって良かったずら」
「モトス、小助、わたくしと樹海を闇から救ってくれて感謝いたします」
「その声は始祖様でいらっしゃいますか?」
湖から美麗な女神のような女性が姿を現した。ハネは黄金色と金の長い髪がそよ風になびいていた。
「わたくしは、あなた方、森精霊の母、ミドリです。わたくしはこの精霊の湖で森精霊達を見守っていました。ですが・・・」
ミドリは魔の樹海が出来た過去を話した。
大昔、森精霊の始祖ミドリは富士の爆発で出来た精霊の湖で生まれた。彼女は自然を愛する森精霊の母となった。しかし、精霊の湖は突如、闇に覆われ周辺の木々は黒く染まり魔の樹海と変わり果ててしまった。
「湖には精霊の花が咲いていましたが、皆闇の力に耐えられず枯れてしまったのです。唯一残っていた一輪の花は黒く染まり、闇の者に盗られてしまったの・・・」
「そんな悲劇があったのですか・・・」
「わたくしは、富士五湖に闇が広がらないようにするのが限界でした。私は子供達を助けられなかった・・・」
「オラ・・僕は始祖様と湖が元に戻って良かったずらです。あのまま始祖様が闇に閉ざされていたら可哀想ずら」
小助が涙を流しながら、ミドリに抱きついた。モトスは小助の頭を撫でながら、言葉を続けた。
「小助の言う通りです、ミドリ様。貴方はこれ以上犠牲が出ぬよう、自ら闇を封じ込めました。長い間、助けられず申し訳ございませんでした」
「謝らないで下さい、モトス。わたくしは自らの意志で、闇に侵食された樹海に誰も近づかぬよう、悪夢を見せたり、闇の植物に襲わせてしまったのです」
ミドリも小助の頭を撫で、2人に頭を下げ謝った。
「頭をお上げください、ミドリ様。貴方の苦しみ、悔しいほど伝わりました。生まれず亡くなった小精霊と樹海を穢した闇の一族を成敗して参りますぞ」
「頼もしいですね、モトス、小助。わたくしはこの湖の守護者なので、ここを離れる事は出来ませんが、あなた方の無事を祈っております」
「ミドリ様に、森精霊のみんなを紹介したいずら」
「ふふ、それは楽しみです」
「私の友人も、他種族で個性豊かで面白い者が多いから、ぜひミドリ様に紹介したいと思っております」
「皆さんで、精霊の湖に遊びに来てください。喜んで歓迎いたします」
ミドリが朗らかな笑顔でモトスと小助に言うと、梅雪も照れくさそうな顔をしながら言った。
「俺もお前らがくたばらぬよう願ってやる」
「梅雪、まだいたのか」
「まだ居たとは失礼だな。憎悪の精霊として生まれた俺を浄化してくれたから、俺の魂はミドリ様の元に居られるのだ」
「梅雪も憎しみと悲しみの中で生まれてしまった精霊です。ですが、今は黄泉に還り、新たな命として生まれ変わりましたね」
「それがオラずら?」
梅雪は驚いている小助の頭を撫で、優しく答えた。
「お前には俺が成し得なかった事に挑戦して欲しい。心から好いている女と結ばれたり、強い侍になったりとな」
「梅雪さん、オラは今、白州兄ちゃんと鍛練して真田家の勇士になるのを目指しているずら!!」
「昌幸の所か。昔から奴は戦略を考えるのが上手いから、仕えるのも面白いかもな」
「梅雪と昌幸は勝頼様を取り合ってケンカしていたからなぁ」
「モトスだって、しょっちゅう俺とケンカしたではないか」
モトスと梅雪は互いの顔を見て笑い合った。ミドリと小助は和やかな顔で2人を見ていた。
「では、モトス、小助、しっかりと己の務めを果たすのだぞ」
「ああ。梅雪も達者でな」
「モトス、貴方はわたくしの力を超える、神精霊です。貴方の他にも神精霊に相応しい子が生まれてくるはずでしたが、それはもう諦めています」
「それは、先程おっしゃっていました、闇の手に捕われた小精霊ですか?」
「ええ。おそらく闇に殺されたか、配下になってしまったか・・・」
「それなら、なおさら仇を取らなければなりませぬな。それと、配下になっていたら、闇を浄化させ、ミドリ様の元へ帰します」
「モトス、貴方に始祖のわたくしの力を譲ります。これで仲間達を支えてください」
ミドリは7色に輝く1匹の蝶をモトスの翡翠のハネに入れた。すると、ハネは虹のような光を照らし、ミドリの温かい優しさに包まれた。
「美しいハネです。ミドリ様から譲り受けた力を無駄にせぬよう、使命をまっとうします!!」
「オラも協力するずら」
「相変わらず、生真面目で熱いところはガキの頃から変わらんな」
「大切な仲間と出会い、多くの喜びや悲しみを知り強くなったのですわ。あなたも憎しみが無い精霊に生まれたら、こうなったと思います」
「そうだな、俺の出生は残念だが、それを継ぐ小僧は居る」
梅雪は張り切っている小助の姿に笑顔を向けた。そして魂は薄紅色のハネと共に消えた。
「梅雪おじちゃん、さようならずら!!」
小助は涙を流しながら梅雪が完全に消えるまで手を振った。
「さぁ、貴方達を待っている者はたくさんいますわ」
「そうですね。ではミドリ様、樹海の闇が消えた事を皆に伝えます」
「皆んなで遊びに来るずら🎵」
モトスと小助はミドリにお辞儀し、精霊の湖を後にした。ミドリは彼らの後ろ姿を見ながら祈りを込めていた。
「モトス、仲間達にご武運を。願わくばあの子の闇を救ってあげて・・・」
ミドリは闇に染まる精霊の花の叫びを思い出していた。
『こんな暗黒の未来、怖いじゅらー!!』
その頃、陰のニホン、闇王卑弩羅の居城で闇精霊の朝霧は寝室で頭を抑えながら過呼吸に苦しんでいた。
「また暗黒の未来か・・・森は枯れ、海は汚れ、この星は死の星となる・・・」
「あら?朝霧、また悪夢を見たのですか?」
寝室に土竜族の女性、黒羽が入ってきた。朝霧は頭を押さえながら黒羽に忠告した。
「黒羽か・・・こんな夢を見るという事は、奴らが大きく成長し、魔改造共が敗れる可能性が高いぞ。危機感はあるのか!!」
「落ち着きなさいって。坊や達がいくら強くなったからといって、私達の脅威ではないですわ」
「・・・だと良いのだがな。まぁ、遥か未来絶望の世界になるなら、卑弩羅様とマガツイノカミ様が闇の力で滅ぼし、虚無の世界にした方が良い」
「ふふ、私の可愛い魔改造戦士達は強化してありますわ。だからあまり鬱にならないでください」
黒羽は小さな手を朝霧の頭に乗せ、子守歌で彼の精神を癒やした。朝霧の発作は止まり、静かに眠りに付いた。