第4章 鬼神の怒りと魔改造戦士の涙
そして、1日が過ぎ別れの時が来た。
「そろそろ時間ですな。湘殿、五十鈴。我々を1日蘇らせてくれてありがとう。オガサーラ殿も、黄泉に行かず、この日をずっと待っていて、ご苦労様でした」
「ふう、これでやっと黄泉に行かれるのう。生まれ変わった時に、復活したマナマール国の住民となっていれば良いのう」
「そうですね、オガサーラ様。それでは、湘殿、五十鈴、これからの未来にご武運を」
「五十鈴、女の子にちょっかい出すのは程程にな」
「おいおい・・・最後は余計だよー。だけど、アミーゴ達に会えて嬉しいよ」
五十鈴は嬉し涙を流しながらオガサーラと民達に手を振った。湘も静かにお辞儀をし、光の中消える民達を見続けた。
「父さんが護ったマナマールは、争いも悲しみも無い、美しい国だったよ」
湘は優しく微笑みながら、海龍の像に触れた。そして、元の海底遺跡に戻った。
「皆んなに会えて嬉しかったよ、ありがとう、湘。さて、地上へ帰ろうか」
すると、五十鈴といすみが育てているリュウグウノツカイ『真鶴』が現れ、湘の周りを泳いでいた。
「ああ、そうだな。真鶴も迎えに来てくれたことだし、藤乃も心配している」
湘は真鶴の頭と背を撫で、五十鈴と共に城ヶ島へ戻った。
城ヶ島の岬に戻ると、藤乃が帰りを待っていた。
「2人共おかえり。湘、前よりも男前になったじゃないかい」
「ああ。父、海龍様に認められ、真の覚醒を得た。藤乃はずっと待っていてくれたのか?」
「ああ。氏直様にはもう少し相模を偵察すると文を渡したから心配ないよ。そうそう、いすみ様もここに来ているよ」
藤乃は岬の先端に目をやると、いすみは彼らに気づき近づいてきた。
「試練を終えたか、湘」
相変わらず威厳のある声に、湘は少し笑いかけながら返答した。
「いすみ様。父やマナマールの民に助けられましたが、無事に試練を終えました」
湘の満足な笑みを見て、いすみの表情も柔らかくなった。
「そうか。海龍の故郷を見られたか」
「私が試練を迎えている間に、桜龍は目を覚ましましたか?それと、皆の試練は」
「桜龍はまだ眠っているが息はあるから安心せよ。皆の事は地底の八郎に任せておる。皆なら無事試練を終えるだろう」
「それなら良かった。それと仁摩殿はどうしていますか?」
「ワレに武術を仕込んで欲しいと頼まれたから、稽古をつけておる。今は亘(わたり)や海洋戦士と鍛錬しておるが、なかなか筋が良く向上心もある」
「仁摩殿も強くなる為に修行しているのですね」
「ああ。その影響か、彼女に感化されて宮殿の女子(おなご)も海洋戦士を目指す者が増え、槍の稽古をし始めておる。可憐な巫女ではなく、強くて逞しい娘だな」
「ははは、桜龍が仁摩殿を女傑巫女と言いますからなぁ・・・」
いすみは微かに微笑みながら、湘達の顔を見て言った。
「ワレはお前達と協力するうちに、他種族との交流と助け合いが大切だと改めて分かった。これからは種族の壁を越えて大切な仲間だと認め合いたいと思っておる」
湘はいすみの考え方を聞いて、自分が叶えたいと思っている意志を教えた。
「いすみ様、私はマナマール国を見て、人間と海洋族の架け橋になりたいと思いました。だから、両種族の血を引き継ぐ事が私の誇りでもあります。あと、父から受け継いだ海龍の力も」
「そうだな、ワレはお前の行く末を見守るぞ」
湘といすみは岬から見える遥か水平線の先を見ながら穏やかに微笑んだ。
その後、湘は藤乃と別れ、いすみと五十鈴と青い鳥居をくぐり、地底世界の祠に戻ってきた。すると八郎王と江津が迎えていた。
「試練ご苦労だべ。いすみも一緒に行っていたべさ?」
「ふん、ワレは城ヶ島で帰りを待っていただけだ。八郎こそ迎えてくれたのは意外だな」
「誤解するな。祠が無事に機能しているか確認しているだけだべさ」
相変わらず、いずみと八郎王は素直ではないなと、江津と五十鈴と湘は呆れていた。
「八郎王、試練の場を父の故郷にしてもらい、ありがとうございました。おかげで自分と向き合う事ができ、美しい都を見て体験することが出来ました」
「それはオラが決めたもんでは無いダズ。水の守護者に縁がある場所がそこだっただけだべさ。海龍に認められたのは、人間と海洋族の2つの想いが伝わったってことだべ」
「ほう、貴様が他種族を褒めるのは初めて聞くな。少しは石頭が柔らかくなったのか」
「おんめぇには言われたくねーべさ」
江津は2人のやりとりを面白いと思いながら言葉を加えた。
「まぁ、皆が勇士達と出会い、変ったという事で良いでは無いですか。八郎王は東北を旅していた人間の私を受け入れ、地底で修行させてくれるお優しい方ですよ」
「江津!!余計なことを!!」
続いて五十鈴もいたずらっ子の様な顔をして言った。
「まぁ、いすみ様も人間が作る蕎麦やうどんが美味しいとお忍びで地上に上がっているからねぇ」
「五十鈴・・・後でしばくぞ・・・・」
(何だかもう、私が思っているよりも種族同士、絆が深まっているな)
湘はいすみと八郎の言い合いを和やかに見て、笑っていた。
② 湘 引き継がれる海龍の力 完
「そろそろ時間ですな。湘殿、五十鈴。我々を1日蘇らせてくれてありがとう。オガサーラ殿も、黄泉に行かず、この日をずっと待っていて、ご苦労様でした」
「ふう、これでやっと黄泉に行かれるのう。生まれ変わった時に、復活したマナマール国の住民となっていれば良いのう」
「そうですね、オガサーラ様。それでは、湘殿、五十鈴、これからの未来にご武運を」
「五十鈴、女の子にちょっかい出すのは程程にな」
「おいおい・・・最後は余計だよー。だけど、アミーゴ達に会えて嬉しいよ」
五十鈴は嬉し涙を流しながらオガサーラと民達に手を振った。湘も静かにお辞儀をし、光の中消える民達を見続けた。
「父さんが護ったマナマールは、争いも悲しみも無い、美しい国だったよ」
湘は優しく微笑みながら、海龍の像に触れた。そして、元の海底遺跡に戻った。
「皆んなに会えて嬉しかったよ、ありがとう、湘。さて、地上へ帰ろうか」
すると、五十鈴といすみが育てているリュウグウノツカイ『真鶴』が現れ、湘の周りを泳いでいた。
「ああ、そうだな。真鶴も迎えに来てくれたことだし、藤乃も心配している」
湘は真鶴の頭と背を撫で、五十鈴と共に城ヶ島へ戻った。
城ヶ島の岬に戻ると、藤乃が帰りを待っていた。
「2人共おかえり。湘、前よりも男前になったじゃないかい」
「ああ。父、海龍様に認められ、真の覚醒を得た。藤乃はずっと待っていてくれたのか?」
「ああ。氏直様にはもう少し相模を偵察すると文を渡したから心配ないよ。そうそう、いすみ様もここに来ているよ」
藤乃は岬の先端に目をやると、いすみは彼らに気づき近づいてきた。
「試練を終えたか、湘」
相変わらず威厳のある声に、湘は少し笑いかけながら返答した。
「いすみ様。父やマナマールの民に助けられましたが、無事に試練を終えました」
湘の満足な笑みを見て、いすみの表情も柔らかくなった。
「そうか。海龍の故郷を見られたか」
「私が試練を迎えている間に、桜龍は目を覚ましましたか?それと、皆の試練は」
「桜龍はまだ眠っているが息はあるから安心せよ。皆の事は地底の八郎に任せておる。皆なら無事試練を終えるだろう」
「それなら良かった。それと仁摩殿はどうしていますか?」
「ワレに武術を仕込んで欲しいと頼まれたから、稽古をつけておる。今は亘(わたり)や海洋戦士と鍛錬しておるが、なかなか筋が良く向上心もある」
「仁摩殿も強くなる為に修行しているのですね」
「ああ。その影響か、彼女に感化されて宮殿の女子(おなご)も海洋戦士を目指す者が増え、槍の稽古をし始めておる。可憐な巫女ではなく、強くて逞しい娘だな」
「ははは、桜龍が仁摩殿を女傑巫女と言いますからなぁ・・・」
いすみは微かに微笑みながら、湘達の顔を見て言った。
「ワレはお前達と協力するうちに、他種族との交流と助け合いが大切だと改めて分かった。これからは種族の壁を越えて大切な仲間だと認め合いたいと思っておる」
湘はいすみの考え方を聞いて、自分が叶えたいと思っている意志を教えた。
「いすみ様、私はマナマール国を見て、人間と海洋族の架け橋になりたいと思いました。だから、両種族の血を引き継ぐ事が私の誇りでもあります。あと、父から受け継いだ海龍の力も」
「そうだな、ワレはお前の行く末を見守るぞ」
湘といすみは岬から見える遥か水平線の先を見ながら穏やかに微笑んだ。
その後、湘は藤乃と別れ、いすみと五十鈴と青い鳥居をくぐり、地底世界の祠に戻ってきた。すると八郎王と江津が迎えていた。
「試練ご苦労だべ。いすみも一緒に行っていたべさ?」
「ふん、ワレは城ヶ島で帰りを待っていただけだ。八郎こそ迎えてくれたのは意外だな」
「誤解するな。祠が無事に機能しているか確認しているだけだべさ」
相変わらず、いずみと八郎王は素直ではないなと、江津と五十鈴と湘は呆れていた。
「八郎王、試練の場を父の故郷にしてもらい、ありがとうございました。おかげで自分と向き合う事ができ、美しい都を見て体験することが出来ました」
「それはオラが決めたもんでは無いダズ。水の守護者に縁がある場所がそこだっただけだべさ。海龍に認められたのは、人間と海洋族の2つの想いが伝わったってことだべ」
「ほう、貴様が他種族を褒めるのは初めて聞くな。少しは石頭が柔らかくなったのか」
「おんめぇには言われたくねーべさ」
江津は2人のやりとりを面白いと思いながら言葉を加えた。
「まぁ、皆が勇士達と出会い、変ったという事で良いでは無いですか。八郎王は東北を旅していた人間の私を受け入れ、地底で修行させてくれるお優しい方ですよ」
「江津!!余計なことを!!」
続いて五十鈴もいたずらっ子の様な顔をして言った。
「まぁ、いすみ様も人間が作る蕎麦やうどんが美味しいとお忍びで地上に上がっているからねぇ」
「五十鈴・・・後でしばくぞ・・・・」
(何だかもう、私が思っているよりも種族同士、絆が深まっているな)
湘はいすみと八郎の言い合いを和やかに見て、笑っていた。
② 湘 引き継がれる海龍の力 完