第4章 鬼神の怒りと魔改造戦士の涙
湘はオガサーラと五十鈴に海龍の間を案内された。壁は大理石で出来ており、海に沈んでから千年以上は経っているが朽ちること無く綺麗なまま残されていた。部屋の奥にある祭壇には青い宝石で造られた龍の像が置かれていた。
「これが、海龍を祀る祭壇か・・・この空間は時間が止まっているかのようだ」
「ここは綺麗に残っていて良かったよ。湘、この祭壇で歯車に力を注いでみて」
湘は祭壇に上がり、海龍の像に祈りを込めた。
(父さん・・・私はこれから歯車を動かし、過去のマナマールを見て記憶に刻みます。どうか、私の力を信じてください)
湘は気を溜め、歯車に青色の光をまとわせた。しかしそう簡単に歯車は反応を示さなかった。
「やはり、これだけでは動かぬか。では、海洋族の能力も加えてみるか」
湘は大きく息を吸い、美しく透き通った歌声を披露した。海や水の流れを表現した歌であった。五十鈴とオガサーラはしっとりと聞き込んでいたが、それでも歯車は反応しなかった。湘はため息を吐き落胆した。
「く・・・私が作詞した自信作なのに、魔力が足りぬのか、歌が気に入らぬのか・・・」
「確かに海洋族の血が流れるお主の歌声は美しいが、それだけではまだ力を出し切ってないのじゃろう」
「私にはまだ何かが足りぬという事だな」
湘は思いを巡らせながら自分に不足している物を考えた。
何日も湘は歯車に魔力を注ぎ、歌も歌ったが反応を示さなかった。
「流石に、そろそろ覚醒せねば皆を待たしてしまうな。闇の奴らが何をしでかすか分からぬし・・・」
湘の精神は少し焦り始めていた。するとオガサーラが声をかけた。
「焦る気持ちは分かるが、己の欲望だけでは歯車は動かぬよ」
「だが・・私は力を得なければ、魔改造戦士に勝てない。桜龍を守り逃げられなかった・・・いすみ様や五十鈴達が助けてくれなかったら今頃は・・・」
死んでいたかもしれないと言葉を続けようとしたが、分かっていたのかオガサーラに遮られた。
「湘よ、何もお主一人が責任を背負う必要は無い。仲間がいてこそ助け合うものじゃよ。五十鈴もわしも完璧な存在では無かった。だからマナマールの民達に沢山助けられたのじゃぞ」
オガサーラの深く重みのある言葉に、湘は諭され冷静になった。
「私としたことが・・・焦りで自分を卑下してはいけないな。ありがとう、オガサーラ殿。少し精神を落ち着かせるよ」
湘は静かにまぶたを閉じ、仲間の姿を思い浮かべた。
(最初は寄せ集めの義勇士かと思ったが、もう付き合いは長いのだな)
モトスは武田と北条の関係で接点はあったが、共に闇と戦う仲間になるとは思っても見なかった。球磨は、最初は暑苦しい暴れ牛と思っていたが、頼れるケンカ仲間。千里は、最初は戦うために造られた戦士かと思っていたが、修羅場や悲しみを乗り越えた人間味のある仲間。そして、桜龍は普段おちゃらけているが、心に秘めている強い責任感を顔には出さない芯の強い男だ。私は彼を守り切れなかったのが悔しかった。
「私は皆よりも力は劣るが、真の力を得て強くなりたい。皆を守り、桜龍を支えられるように」
湘は仲間への想いを込めた歌を歌い始め、過去を思い出していった。闇に操られた父を救う為に一度は仲間と敵対してしまった事、仲間と出会い協力してツクモや梅雪などの強敵と戦った事。海へ帰った母と再会できずにヤケになっていた時、北条家に拾われ、氏政様の下で働けた事。そして、父と母が大切に自分を育ててくれた事。湘は朗らかな顔になり、過去をさかのぼる歌を歌った。すると歯車は動き出し、青い光が現れ始めた。
「歯車が湘の過去に共感したのじゃな」
(海龍の息子の過去を見た。色々な出会いを経て、人間と海洋族の混血を受け入れたのだな。そなたにマナマールの繁栄を見せよう)
歯車は急旋回しながら上昇し、天井から淡い青い光を照らした。すると何も無い壁からは龍や魚の壁画や、周りには水晶で出来た灯籠が現れ、青い光玉が神殿内を照らした。すると、白い着流しや浴衣に色鮮やかなビロードの布を羽織った和洋が混ざった民族衣装を着た人々が現れた。
「こ・・これは?私達は確か、九頭竜を沈める儀式を行なっている途中に海に飲み込まれ・・・」
民達は驚き戸惑いながら辺りを見回していると、湘の姿を見て一斉に彼の元に集まってきた。
「貴方様は海龍様でいらっしゃいますか!!」
「いえ、私は海龍様の息子、湘です。話せば長くなりますが・・・」
「アッミーゴ達!!久しぶりー!!湘が君達を目覚めさせたんだよ」
「五十鈴か!?本当に姿が変わっていないな。その青年が私達を蘇らせてくれたのか」
「皆久しぶりじゃのう。湘が時の歯車を使い、過去のマナマールを目覚めさせた。海龍様の息子に都を見せたくてな」
「海龍様のご子息であれば大歓迎ですぞ。五十鈴とオガサーラ様にも会えたのですから。都を案内しますよ」
「これが、海龍を祀る祭壇か・・・この空間は時間が止まっているかのようだ」
「ここは綺麗に残っていて良かったよ。湘、この祭壇で歯車に力を注いでみて」
湘は祭壇に上がり、海龍の像に祈りを込めた。
(父さん・・・私はこれから歯車を動かし、過去のマナマールを見て記憶に刻みます。どうか、私の力を信じてください)
湘は気を溜め、歯車に青色の光をまとわせた。しかしそう簡単に歯車は反応を示さなかった。
「やはり、これだけでは動かぬか。では、海洋族の能力も加えてみるか」
湘は大きく息を吸い、美しく透き通った歌声を披露した。海や水の流れを表現した歌であった。五十鈴とオガサーラはしっとりと聞き込んでいたが、それでも歯車は反応しなかった。湘はため息を吐き落胆した。
「く・・・私が作詞した自信作なのに、魔力が足りぬのか、歌が気に入らぬのか・・・」
「確かに海洋族の血が流れるお主の歌声は美しいが、それだけではまだ力を出し切ってないのじゃろう」
「私にはまだ何かが足りぬという事だな」
湘は思いを巡らせながら自分に不足している物を考えた。
何日も湘は歯車に魔力を注ぎ、歌も歌ったが反応を示さなかった。
「流石に、そろそろ覚醒せねば皆を待たしてしまうな。闇の奴らが何をしでかすか分からぬし・・・」
湘の精神は少し焦り始めていた。するとオガサーラが声をかけた。
「焦る気持ちは分かるが、己の欲望だけでは歯車は動かぬよ」
「だが・・私は力を得なければ、魔改造戦士に勝てない。桜龍を守り逃げられなかった・・・いすみ様や五十鈴達が助けてくれなかったら今頃は・・・」
死んでいたかもしれないと言葉を続けようとしたが、分かっていたのかオガサーラに遮られた。
「湘よ、何もお主一人が責任を背負う必要は無い。仲間がいてこそ助け合うものじゃよ。五十鈴もわしも完璧な存在では無かった。だからマナマールの民達に沢山助けられたのじゃぞ」
オガサーラの深く重みのある言葉に、湘は諭され冷静になった。
「私としたことが・・・焦りで自分を卑下してはいけないな。ありがとう、オガサーラ殿。少し精神を落ち着かせるよ」
湘は静かにまぶたを閉じ、仲間の姿を思い浮かべた。
(最初は寄せ集めの義勇士かと思ったが、もう付き合いは長いのだな)
モトスは武田と北条の関係で接点はあったが、共に闇と戦う仲間になるとは思っても見なかった。球磨は、最初は暑苦しい暴れ牛と思っていたが、頼れるケンカ仲間。千里は、最初は戦うために造られた戦士かと思っていたが、修羅場や悲しみを乗り越えた人間味のある仲間。そして、桜龍は普段おちゃらけているが、心に秘めている強い責任感を顔には出さない芯の強い男だ。私は彼を守り切れなかったのが悔しかった。
「私は皆よりも力は劣るが、真の力を得て強くなりたい。皆を守り、桜龍を支えられるように」
湘は仲間への想いを込めた歌を歌い始め、過去を思い出していった。闇に操られた父を救う為に一度は仲間と敵対してしまった事、仲間と出会い協力してツクモや梅雪などの強敵と戦った事。海へ帰った母と再会できずにヤケになっていた時、北条家に拾われ、氏政様の下で働けた事。そして、父と母が大切に自分を育ててくれた事。湘は朗らかな顔になり、過去をさかのぼる歌を歌った。すると歯車は動き出し、青い光が現れ始めた。
「歯車が湘の過去に共感したのじゃな」
(海龍の息子の過去を見た。色々な出会いを経て、人間と海洋族の混血を受け入れたのだな。そなたにマナマールの繁栄を見せよう)
歯車は急旋回しながら上昇し、天井から淡い青い光を照らした。すると何も無い壁からは龍や魚の壁画や、周りには水晶で出来た灯籠が現れ、青い光玉が神殿内を照らした。すると、白い着流しや浴衣に色鮮やかなビロードの布を羽織った和洋が混ざった民族衣装を着た人々が現れた。
「こ・・これは?私達は確か、九頭竜を沈める儀式を行なっている途中に海に飲み込まれ・・・」
民達は驚き戸惑いながら辺りを見回していると、湘の姿を見て一斉に彼の元に集まってきた。
「貴方様は海龍様でいらっしゃいますか!!」
「いえ、私は海龍様の息子、湘です。話せば長くなりますが・・・」
「アッミーゴ達!!久しぶりー!!湘が君達を目覚めさせたんだよ」
「五十鈴か!?本当に姿が変わっていないな。その青年が私達を蘇らせてくれたのか」
「皆久しぶりじゃのう。湘が時の歯車を使い、過去のマナマールを目覚めさせた。海龍様の息子に都を見せたくてな」
「海龍様のご子息であれば大歓迎ですぞ。五十鈴とオガサーラ様にも会えたのですから。都を案内しますよ」