第4章 鬼神の怒りと魔改造戦士の涙
地底世界『八幡平』にある五行の祠の間で、湘は水の祠の扉を開けると、そこは穏やかな潮風と波音が岩場に響く、懐かしい岬だった。そこは相模国南東部にある城ヶ島の岬だった。
「ここは・・・城ヶ島か?何故、故郷の三崎に出たのか?」
湘が手にあごを乗せ考えていると、男勝りな女性に呼び止められた。旅人の着物と三度笠をかぶった女性はよく知る人物だった。
「湘じゃあないかい!!何でここに?」
「藤乃(ふじの)こそ、何故城ヶ島に?」
藤乃と呼ばれた女性は、風魔忍者の棟梁小太郎の娘でクノイチであったが、北条の滅亡と共に一族はバラバラになり、現在は近畿河内国に隠居している五代目北条氏直の下で情報収集などをしている。
「関東を統治した徳川の様子を見ながら、ちょいと城ヶ島を見たくなってさ。あんたこそ、東北から帰っていたんだね」
「ああ。こうして君に会えて良かったよ」
藤乃は普段、湘が言わなそうな言葉を言ったので、少し戸惑いながら返答した。
「らしくない台詞だな・・・東北で何かあったのかい?」
湘は藤乃にこれまでの出来事を話した。すると藤乃は魔改造戦士の強さと闇王卑弩羅(ひどら)が現れた事に、脅威を感じていた。
「東北はそんなに危険だったのか・・・そんな状況だったのに私はあんた達の元へ行かれなかったよ」
「いいや、君は来なくて良かったよ。今の私では君を護れる保証は無かったからな」
「湘・・本当に無事で良かったよ」
藤乃は胸に湘の顔を当て、強く抱きしめた。
「う・・・苦しい・・私は子供ではないのだぞ・・・」
「良いじゃないか。あたしの元に帰ってきた証でさ」
湘と藤乃が子供のようなやりとりをしていると、海洋族の魔術師『五十鈴(いすず)』が祠の扉から現れた。
「やはり、水の祠はここに出たか、って!?何をやっているんだ!!君達は!!」
五十鈴はあたふたしている一方、湘は淡々とした態度で彼に問うた。
「五十鈴か?君は何しにここに来たのだ?」
「いやー、君を聖地に連れて行きたくて。その前に、藤乃ちゃーん、その大きい胸に、ボクの顔ももみもみしてー」
ボコ!!
藤乃は五十鈴を殴り飛ばした。
「湘、色ボケスケベ海洋族は放っておいて、聖地探し手伝うよ」
「ああ・・・そうだな」
「シャラーップ!!ボクが居ないと案内出来ないのだよ!!」
五十鈴は鼻を抑えながら、2人を説得した。
「まずは城ヶ島の馬の背洞門に案内するよ」
五十鈴は2人を馬の背洞門がある磯まで連れて行った。
磯の波は穏やかで、人気は無く静かだった。湘は何の変哲もない磯だと首を傾げたが、五十鈴は杖を持ち、湘に問うた。
「では湘、改めて聞く。君は父、真鶴の故郷へ行く覚悟はあるかな?」
「父の故郷ということは、海底の都が聖地という訳だな」
「そう。今は無き島国『マナマール』はボクが神官を勤めていた、美しい水の都だったよ」
「父の故郷に行ってみたいものだな」
「私も行こうか、湘」
「いいや、藤乃は氏直様からの任務を遂行していてくれ。長い間、廃墟となった深海の都だ。危険があるかもしれない」
「確かに、あたしは任務の途中だったな。湘、あんたも強くなって帰って来なよ。それと、その都が良かったなら、今度あたしも案内しとくれよ」
「ああ、もちろん。その為にも無事に帰ってくるよ」
湘は藤乃に約束の言葉を交わし、五十鈴に行くぞと言った。五十鈴は湘に優しく笑いかけ、馬の背洞門に向けて、杖を振った。すると、穴から天の川のように輝いた道が現れ、海に続いていた。
「これが、マナマールへの道だよ。洞門を抜けた先は深海へと続いている」
「これは・・修羅の道ではなく楽園へ行くみたいだな」
湘は試練の緊張よりもまだ見ぬ深海の都へ行かれる事に心を躍らせていた。
「では、行ってくる、藤乃。五十鈴、案内を頼む」
「ああ。ボクも千年以上行ってないからどうなっているか、緊張するよ」
「五十鈴、湘を頼んだよ。2人共無事に帰って来るんだよ!!」
湘と五十鈴は洞門をくぐり、輝く軌道に沿って泳いだ。最初は浅瀬を通っていたが、直ぐに深海へと進んでいった。
「今は日ノ本の南へ進んでいるのか?」
「ああ。マナマールは結構南にあった島国だったけど、赤道までは行かないよ」
「ということは、季節は日ノ本変らないな。いすみ様が言っていたな、赤道を越えると季節が逆になると」
「そう、赤道を越えた南半球にも、まだ未開の大陸があるのだよ。もしかしたら遠い未来、他国が見つけて、開拓しそうだけど。そうしたら、外国の女性を口説きに行きたいものだな」
「その為には、日ノ本だけでなく、この世界が闇に染まらぬように努めなければな」
湘と五十鈴は他愛の無い雑談をしながら海底の都を目指し泳いだ。
「ここは・・・城ヶ島か?何故、故郷の三崎に出たのか?」
湘が手にあごを乗せ考えていると、男勝りな女性に呼び止められた。旅人の着物と三度笠をかぶった女性はよく知る人物だった。
「湘じゃあないかい!!何でここに?」
「藤乃(ふじの)こそ、何故城ヶ島に?」
藤乃と呼ばれた女性は、風魔忍者の棟梁小太郎の娘でクノイチであったが、北条の滅亡と共に一族はバラバラになり、現在は近畿河内国に隠居している五代目北条氏直の下で情報収集などをしている。
「関東を統治した徳川の様子を見ながら、ちょいと城ヶ島を見たくなってさ。あんたこそ、東北から帰っていたんだね」
「ああ。こうして君に会えて良かったよ」
藤乃は普段、湘が言わなそうな言葉を言ったので、少し戸惑いながら返答した。
「らしくない台詞だな・・・東北で何かあったのかい?」
湘は藤乃にこれまでの出来事を話した。すると藤乃は魔改造戦士の強さと闇王卑弩羅(ひどら)が現れた事に、脅威を感じていた。
「東北はそんなに危険だったのか・・・そんな状況だったのに私はあんた達の元へ行かれなかったよ」
「いいや、君は来なくて良かったよ。今の私では君を護れる保証は無かったからな」
「湘・・本当に無事で良かったよ」
藤乃は胸に湘の顔を当て、強く抱きしめた。
「う・・・苦しい・・私は子供ではないのだぞ・・・」
「良いじゃないか。あたしの元に帰ってきた証でさ」
湘と藤乃が子供のようなやりとりをしていると、海洋族の魔術師『五十鈴(いすず)』が祠の扉から現れた。
「やはり、水の祠はここに出たか、って!?何をやっているんだ!!君達は!!」
五十鈴はあたふたしている一方、湘は淡々とした態度で彼に問うた。
「五十鈴か?君は何しにここに来たのだ?」
「いやー、君を聖地に連れて行きたくて。その前に、藤乃ちゃーん、その大きい胸に、ボクの顔ももみもみしてー」
ボコ!!
藤乃は五十鈴を殴り飛ばした。
「湘、色ボケスケベ海洋族は放っておいて、聖地探し手伝うよ」
「ああ・・・そうだな」
「シャラーップ!!ボクが居ないと案内出来ないのだよ!!」
五十鈴は鼻を抑えながら、2人を説得した。
「まずは城ヶ島の馬の背洞門に案内するよ」
五十鈴は2人を馬の背洞門がある磯まで連れて行った。
磯の波は穏やかで、人気は無く静かだった。湘は何の変哲もない磯だと首を傾げたが、五十鈴は杖を持ち、湘に問うた。
「では湘、改めて聞く。君は父、真鶴の故郷へ行く覚悟はあるかな?」
「父の故郷ということは、海底の都が聖地という訳だな」
「そう。今は無き島国『マナマール』はボクが神官を勤めていた、美しい水の都だったよ」
「父の故郷に行ってみたいものだな」
「私も行こうか、湘」
「いいや、藤乃は氏直様からの任務を遂行していてくれ。長い間、廃墟となった深海の都だ。危険があるかもしれない」
「確かに、あたしは任務の途中だったな。湘、あんたも強くなって帰って来なよ。それと、その都が良かったなら、今度あたしも案内しとくれよ」
「ああ、もちろん。その為にも無事に帰ってくるよ」
湘は藤乃に約束の言葉を交わし、五十鈴に行くぞと言った。五十鈴は湘に優しく笑いかけ、馬の背洞門に向けて、杖を振った。すると、穴から天の川のように輝いた道が現れ、海に続いていた。
「これが、マナマールへの道だよ。洞門を抜けた先は深海へと続いている」
「これは・・修羅の道ではなく楽園へ行くみたいだな」
湘は試練の緊張よりもまだ見ぬ深海の都へ行かれる事に心を躍らせていた。
「では、行ってくる、藤乃。五十鈴、案内を頼む」
「ああ。ボクも千年以上行ってないからどうなっているか、緊張するよ」
「五十鈴、湘を頼んだよ。2人共無事に帰って来るんだよ!!」
湘と五十鈴は洞門をくぐり、輝く軌道に沿って泳いだ。最初は浅瀬を通っていたが、直ぐに深海へと進んでいった。
「今は日ノ本の南へ進んでいるのか?」
「ああ。マナマールは結構南にあった島国だったけど、赤道までは行かないよ」
「ということは、季節は日ノ本変らないな。いすみ様が言っていたな、赤道を越えると季節が逆になると」
「そう、赤道を越えた南半球にも、まだ未開の大陸があるのだよ。もしかしたら遠い未来、他国が見つけて、開拓しそうだけど。そうしたら、外国の女性を口説きに行きたいものだな」
「その為には、日ノ本だけでなく、この世界が闇に染まらぬように努めなければな」
湘と五十鈴は他愛の無い雑談をしながら海底の都を目指し泳いだ。