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第4章 鬼神の怒りと魔改造戦士の涙

しばらくして、3人は阿蘇山を降り、麓にある古代から火山信仰の聖地と言われる『阿蘇神社』でお参りをした。
「どうか、皆も無事に試練を終えていますように。桜龍が陽気な姿で目を覚ましますように」
「ここは五穀豊穣や縁結びを司る神社ですが、古くから阿蘇の火山も信仰されています。炎や太陽の守護者に力を貸してくれるでしょう」
「ほんとだ!!何だか力がみなぎってくるぜ!!」
球磨と紅史郎は賽銭箱の前で祈っていると、親しい女性2人に声を掛けられた。
「球磨さん!!紅史郎さん、試練を達成出来て良かったです」
「胡桃と由布殿!!どうしてここに?」
「元気そうで何よりだ。兄者もお勤めご苦労様」
「へ?兄者ってまさか・・・院長、由布殿の兄貴だったのか!!」
「益城殿の角を見て、もしかしたらと思っていたよ、兄さん」
「驚かせてすみません、球磨。由布は私の妹ですが、彼女が族長を務めています」
「兄上が戦で家族を失った子供達を救いたいと、鬼の里を出たのだ。だが、決別した訳では無いから、時々わらわ達の様子を見に来てくれていたのだよ」
「そうだったんですか・・・言われてみれば兄妹似てるっすね。怒らせると恐そうというか・・・」
「ほう?わらわにも球磨の覚醒とやらを見せて貰おうかのう」
「じょ・・冗談っすよ!?由布殿」
「ふふ、球磨さんたら。そうだ、皆さんお腹空いているでしょう。とり天を作りましたよ」
胡桃は風呂敷を外し、皿から沢山の鳥の天ぷらを出して皆に見せた。すると球磨と紅史郎は目を丸くしながら匂いを嗅いだ。
「これは、九州の地鶏を南蛮料理の天ぷらにしたんだな。胡桃、手間を掛けて作ってくれてありがとうな」
「由布殿や鬼の皆も手伝ってくれました。鬼の子供達は美味しそうにモグモグ食べていましたよ」
球磨達はとり天を笑顔で食べた。
「これは上手いぜ。今度皆にも作って食べて貰いたいぜ。胡桃、作り方を教えてくれ」
「ええ、喜んで」
こうして、先程の戦いが嘘だったかのように皆でとり天やおにぎりを食べた。益城は穏やかな孤児院の院長の顔に戻り、球磨と紅史郎を見てしみじみ思っていた。
(君達のような若い勇士達が日ノ本を救う力となります。私達鬼の一族や孤児院の子供達は君達の行く末を見守っていますよ)
益城は十字架の首飾りを握り、真正面に見える阿蘇山に強く祈った。


その後、球磨と紅史郎は金色の鳥居を潜り、地底世界に戻った。すると八郎と江津が迎えてくれた。
「一段と凛々しくなったな、球磨。鬼族の軍神と戦ったようだべ」
「八郎王は益城さんが鬼族だと存じていたのですか?」
「ああ。深く関わらねーが、鬼族は炎と大地を司る種族だべ。まぁ、共に日ノ本を護る同士だべ」
「八郎王も鬼族と深く交流されてはいかがですか?鳥のてんぷら美味しいですし、九州を案内しますよ」
球磨は、胡桃達が作ったとり天を八郎と江津に渡した。紅史郎はかぼすの汁が入った小瓶を彼に渡した。
「胡桃さんと鬼族の皆さんが土竜族の皆さんにと作ってくれました。九州の地鶏ですよ、サクサクで美味しい南蛮料理です。かぼす汁と一緒に食べても美味しいですよ」
「ふん、比内地鶏のが美味いべさ」
八郎は頑固な態度を取りながらも、かぼす汁をかけたとり天を1つ受け取り、後ろを向いて口にした。江津はニヤリと笑みを浮かべながら八郎の口元を見た。
「ほう、口元が緩んでいますな、八郎王」
「黙れ、ホカホカだから舌を火傷しないように食ってるだけだべ」
なんだかんだで嬉しそうに食べている八郎の後ろ姿を見て、球磨と紅史郎は微笑んでいた。
「何だか、八郎王との距離が縮まった感じがするね、兄さん」
「これも、阿蘇神社の縁結びの力かな。八郎王も親しくなると可愛いなぁ」
「黙れ小童共。覚醒したからと調子に乗るな。・・・まぁ、九州の温泉や食い物も悪くはなさそうだべ」
八郎は頭巾で顔を隠しながらも、微かに小さな口元が緩んでいた。球磨と紅史郎は地底八幡平の温泉で疲れを癒やし、今後の作戦を企てる為、米沢城の伊達政宗の元へ向かった。


その頃日本海溝、海洋族の宮殿で仁摩はいすみの前でひざまずいていた。
「いすみ様、どうか私に武芸を教えて下さい!!」
「顔を上げよ仁摩・・・それは、桜龍を護るためか?」
「それだけではありません。仲間を護るのはもちろん、闇に怯える者達を護りたいと決心しています」
「・・・そうか。その強い眼差し、覚悟が出来ているようだな。ワレの修行は女でも厳しいぞ。心してかかれ」
「ありがとうございます、いすみ様。期待を裏切らせぬよう精進いたします」
仁摩はいすみに深くお辞儀し、棍棒と黄金の弓を握りしめ、彼の鋭い瞳を見つめた。
(桜龍、皆、私もいすみ様に鍛えられ強くなってみせるわ。私に出来ることを努められるように)
勇士達が試練を受けている間、仁摩の修行も始まった。




第7話 ① 炎の神、灼熱の戦い 完
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