第4章 鬼神の怒りと魔改造戦士の涙
先手を取ったのは球磨だった。球磨は紅蓮の炎をまとわせた槍で重く鋭い突きを連発させた。増鬼は突きを無駄な動き無く避け、同じく炎をまとわせた槍斧で受け止めた。互いの炎と刃がぶつかり合う、熱き激しい攻防が息つく間もなく続いていた。紅史郎は2人の戦いに息をのんでいた。
(これが・・炎の神の化身と、鬼の戦士の実力・・・)
「球磨、まだこの程度の力では私の体に傷一つつけられませんよ。私を超えねば、魔改造戦士やこれから現れる強敵に勝てませんよ」
球磨は嬉しそうな顔をしながら、槍で槍斧を受け止め、熱風を帯びた突き攻撃をし、反撃の好機をうかがっていた。
「へへ・・やっぱ、昔とは違って命がけの戦いだな。こうして昔のように槍の特訓をしてくれたのが懐かしいと思うぜ」
「今の貴方は、大きく成長し立派な炎の勇士です。ですが、私を殺す勢いでなければ、真の力を発揮させられませんよ!!」
増鬼は地面に槍斧の先端を突き刺し、気を発した。すると球磨の周りに勢いよく火柱が現れ、球磨は灼熱の炎に包まれそうになったが、即座に西洋槍でなぎ払った。
「なんて強力な火柱だ。危うく焼き肉にされるところだったぜ・・・」
「この技を直ぐに打ち消せるとは、様々な強敵と戦って強くなりましたね、球磨」
「強敵との戦いだけじゃなく、大切な仲間が居たから俺は強くなったんだぜ。共に強さを高め合う仲間、護りたいと思う仲間。共に強敵に立ち向かう仲間」
球磨は桜龍、湘、モトス、千里の4人の戦っている姿を思い浮かべ、凜とした顔を増鬼に向け、再び気を高めた。
「確かに、師であるアンタを倒す勢いじゃなければこれからの強敵に勝てない。だが、俺の力はただ倒す力じゃねぇ!!」
球磨は再び西洋槍を振り、増鬼の槍斧にぶつけた。増鬼が体勢を崩した時、球磨は彼の頬に鉄拳を喰らわせた。
「俺の闘い方は、刃や拳を交えて相手の本質を見極める事だ!!」
「それが君の揺るがぬ強さですね。相手を知り、正しき者か邪悪な者かと」
増鬼は炎に包まれた槍斧を舞うように振るった。すると炎は乱舞し火炎の龍となった。
「こいつは凄え・・・だが、これで恐れては炎の化身の名がすたるぜ!!」
球磨は気を集中させ、橙色の情熱的な光に包まれた。紅史郎は兄の姿に目を奪われていた。
「生きるか死ぬかの戦いなのに、兄さんは笑顔を絶やしていない。むしろ増鬼の炎を受け止めようとしている」
「紅史郎、俺を信じてくれ!!この炎の龍を受け止め、真の力を覚醒してみせる!!」
炎の龍が迫って来ると同時に、阿蘇の大地は大きく揺れ、溶岩や岩石が降りかかった。紅史郎は光弾を放ち、それらを壊し2人に落下を防いだ。
「それでは、これで決着をつけましょう。君が炎に飲み込まれるか、炎が君を受け入れるか」
「おう!!炎の神プロメテウスの力は屈さないぜ!!」
炎の龍は大きな口を開き、炎の牙で球磨を焼き裂こうとした。球磨は槍で振り払おうとしたが、今までに感じたことが無い魔力で造られた灼熱の龍に飲み込まれてしまった。球磨は苦しみながら熱さに耐えていた。
(く・・・師匠はこんな隠し技を持っていたのか・・・やはり紅蓮の増鬼は強えーな・・・)
球磨は気で灼熱の炎を振り払おうとしたが、増鬼の魔力は強かった。燃えさかる炎に耐え続けていたが、限界が近づいていた。
「この程度の力ですか、球磨。これではこの先、闇の者には勝てませんよ」
「く・・・こんな所で死んでたまるか!!」
「もう、見ていられない!!増鬼殿!!僕が相手だ!!」
紅史郎は二刀流で増鬼に攻撃しようとしたが、球磨に叫ばれ止められた。
「手を出すんじゃねぇ!!紅史郎!!これは俺の戦いだ!!!!」
球磨は苦しみながらもまだ諦めては無かった。すると、炎の中から今までに戦った強敵の幻影が見えた。
「おいおい・・・お前ならもっとやれるだろう?ここでお前が敗れたら、お前に負けた俺が弱くなっちまうじゃねーか」
森精霊の戦士、白州(はくしゅう)が呆れた顔で球磨を叱った。
「その声は白州か?」
「この戦いが終わったら、紅史郎も交えて飲みに行こうぜ♪九州の料理や酒を楽しみたいぜ」
次に海洋族と土竜族との混血の海洋戦士『亘(わたり)』が現れた。
「貴殿の力はその程度ではないはず。覚醒した貴殿と一戦交えてみたいと思っている」
「亘・・・そういや、お前とはまだ決着がついていなかったな」
かつて、敵として戦っていた2人は、今では大切な戦友である。球磨は2人の期待に応えるよう、力がみなぎっていった。すると、紅史郎の姿は金の長い髪の美青年に変り、球磨は苦い顔をした。
「なんて顔をしとるね、暴れ牛。余はこんな軟弱者に負けたと思うとガッカリとね・・・」
ツクモはため息をつきながら球磨を小馬鹿にしていた。
「貴様は・・ツクモ!?うるせぇ!!何でお前が出て来るんだよ!!」
「ふん、余を倒した力はその程度ではなかとーね。君は人間だが、炎の神の生まれ変わりだと忘れてはならんとね」
「・・・お前に説教されるのは悔しいな」
「魔改造戦士の力の根源は、憎しみや悲しみとね。それを焼き焦がせる炎がなければなかとーね」
「焼き焦がす・・それは違うなツクモ」
「俺は闇雲に悪い奴を滅ぼしたりはしねぇ。俺の炎は憎しみや闇に囚われた心を浄化する力だ!!」
球磨は魔改造戦士の豹剛(ひょうごう)の顔を思い浮かべていた。
「魔改造戦士と戦ったが、あいつらは心の奥底に憎しみや悲しみを持っている。それにつけ込んで改造された者達を救いたい。ツクモ、お前だって魔改造戦士にされた被害者だろう」
ツクモは大昔、太陽神アポロだった。炎の神プロメテウスと古代ギリシャを護っていたが、炎の魔神『イフリート』に体を乗っ取られてしまった。アポロの魂は、遙かなる時を超え、球磨の弟、紅史郎の胎児に宿った。そして封印された魔神は闇の手の者達によって、魂を泥人形に入れられ、邪悪な人造戦士として、九州を支配しようとした教祖となってしまった。しかしツクモは過去の話だと冷めた顔をして、直後球磨に笑顔を向けた。
「そんな事もあったとね。ばってん、紅史郎と同化して太陽神に戻れて良かったとね」
「ああ。紅史郎の体を受け入れてくれてありがとうな」
「余のためにも紅史郎の為にも、この戦い、負けたらいかんとね。君が戦おうとしている魔改造戦士の魂を救いたいのなら、己の信念を消えない炎のように貫くとね」
「ああ。ありがとうな、ツクモ、紅史郎」
球磨は穏やかな表情で深呼吸し、再び黄金色の光に包まれ、龍の炎を打ち消した。そして彼は黄金の鎧と橙のマントを身にまとい、炎の戦士の姿となった。西洋槍を紅蓮の炎でまとわせた。熱風で増鬼は飛ばされそうになったが、槍斧を地に刺し耐えた。
「本気を出しましたか、球磨。ですが、まだまだ君の力はその程度ではないでしょう」
「紅蓮の増鬼、俺はアンタを倒すつもりはない」
球磨は増鬼に炎の槍の突きを繰り出した。増鬼は槍斧で受け止めたが、球磨の方が押し始めていた。
「だが、俺はアンタに勝ちたい。俺の信念の炎を受け止めて欲しい」
「こちらも死ぬ気でかからないといけませんね」
増鬼は斧で大地を割り、溶岩の嵐を球磨に放った。しかし球磨は槍でなぎ払い、さらに槍に溶岩を吸収させた。
「これが、プロメテウスの大火炎砲だ!!」
球磨は増鬼に巨大な炎の槍を放った。増鬼は槍斧で受け止めたが、とてつもない威力に立って抑えているのがやっとだった。
「これが、真の炎の守護神プロメテウスの覚醒・・・やはり成長しましたね、球磨」
増鬼は凄まじい炎に包まれ吹き飛ばされ、火口に落ちそうになった。しかし球磨は直ぐに彼の腕を掴み引き上げた。
「俺にとってアンタは憧れでもあり、越えたい相手だ。それと同時に、大切な院長でもありますよ、益城院長」
球磨は増鬼に無邪気な笑顔を向けた。彼も朗らかに笑い返した。激しい阿蘇の火山活動は戦いが終わったと同時に静まりかえった。
(これが・・炎の神の化身と、鬼の戦士の実力・・・)
「球磨、まだこの程度の力では私の体に傷一つつけられませんよ。私を超えねば、魔改造戦士やこれから現れる強敵に勝てませんよ」
球磨は嬉しそうな顔をしながら、槍で槍斧を受け止め、熱風を帯びた突き攻撃をし、反撃の好機をうかがっていた。
「へへ・・やっぱ、昔とは違って命がけの戦いだな。こうして昔のように槍の特訓をしてくれたのが懐かしいと思うぜ」
「今の貴方は、大きく成長し立派な炎の勇士です。ですが、私を殺す勢いでなければ、真の力を発揮させられませんよ!!」
増鬼は地面に槍斧の先端を突き刺し、気を発した。すると球磨の周りに勢いよく火柱が現れ、球磨は灼熱の炎に包まれそうになったが、即座に西洋槍でなぎ払った。
「なんて強力な火柱だ。危うく焼き肉にされるところだったぜ・・・」
「この技を直ぐに打ち消せるとは、様々な強敵と戦って強くなりましたね、球磨」
「強敵との戦いだけじゃなく、大切な仲間が居たから俺は強くなったんだぜ。共に強さを高め合う仲間、護りたいと思う仲間。共に強敵に立ち向かう仲間」
球磨は桜龍、湘、モトス、千里の4人の戦っている姿を思い浮かべ、凜とした顔を増鬼に向け、再び気を高めた。
「確かに、師であるアンタを倒す勢いじゃなければこれからの強敵に勝てない。だが、俺の力はただ倒す力じゃねぇ!!」
球磨は再び西洋槍を振り、増鬼の槍斧にぶつけた。増鬼が体勢を崩した時、球磨は彼の頬に鉄拳を喰らわせた。
「俺の闘い方は、刃や拳を交えて相手の本質を見極める事だ!!」
「それが君の揺るがぬ強さですね。相手を知り、正しき者か邪悪な者かと」
増鬼は炎に包まれた槍斧を舞うように振るった。すると炎は乱舞し火炎の龍となった。
「こいつは凄え・・・だが、これで恐れては炎の化身の名がすたるぜ!!」
球磨は気を集中させ、橙色の情熱的な光に包まれた。紅史郎は兄の姿に目を奪われていた。
「生きるか死ぬかの戦いなのに、兄さんは笑顔を絶やしていない。むしろ増鬼の炎を受け止めようとしている」
「紅史郎、俺を信じてくれ!!この炎の龍を受け止め、真の力を覚醒してみせる!!」
炎の龍が迫って来ると同時に、阿蘇の大地は大きく揺れ、溶岩や岩石が降りかかった。紅史郎は光弾を放ち、それらを壊し2人に落下を防いだ。
「それでは、これで決着をつけましょう。君が炎に飲み込まれるか、炎が君を受け入れるか」
「おう!!炎の神プロメテウスの力は屈さないぜ!!」
炎の龍は大きな口を開き、炎の牙で球磨を焼き裂こうとした。球磨は槍で振り払おうとしたが、今までに感じたことが無い魔力で造られた灼熱の龍に飲み込まれてしまった。球磨は苦しみながら熱さに耐えていた。
(く・・・師匠はこんな隠し技を持っていたのか・・・やはり紅蓮の増鬼は強えーな・・・)
球磨は気で灼熱の炎を振り払おうとしたが、増鬼の魔力は強かった。燃えさかる炎に耐え続けていたが、限界が近づいていた。
「この程度の力ですか、球磨。これではこの先、闇の者には勝てませんよ」
「く・・・こんな所で死んでたまるか!!」
「もう、見ていられない!!増鬼殿!!僕が相手だ!!」
紅史郎は二刀流で増鬼に攻撃しようとしたが、球磨に叫ばれ止められた。
「手を出すんじゃねぇ!!紅史郎!!これは俺の戦いだ!!!!」
球磨は苦しみながらもまだ諦めては無かった。すると、炎の中から今までに戦った強敵の幻影が見えた。
「おいおい・・・お前ならもっとやれるだろう?ここでお前が敗れたら、お前に負けた俺が弱くなっちまうじゃねーか」
森精霊の戦士、白州(はくしゅう)が呆れた顔で球磨を叱った。
「その声は白州か?」
「この戦いが終わったら、紅史郎も交えて飲みに行こうぜ♪九州の料理や酒を楽しみたいぜ」
次に海洋族と土竜族との混血の海洋戦士『亘(わたり)』が現れた。
「貴殿の力はその程度ではないはず。覚醒した貴殿と一戦交えてみたいと思っている」
「亘・・・そういや、お前とはまだ決着がついていなかったな」
かつて、敵として戦っていた2人は、今では大切な戦友である。球磨は2人の期待に応えるよう、力がみなぎっていった。すると、紅史郎の姿は金の長い髪の美青年に変り、球磨は苦い顔をした。
「なんて顔をしとるね、暴れ牛。余はこんな軟弱者に負けたと思うとガッカリとね・・・」
ツクモはため息をつきながら球磨を小馬鹿にしていた。
「貴様は・・ツクモ!?うるせぇ!!何でお前が出て来るんだよ!!」
「ふん、余を倒した力はその程度ではなかとーね。君は人間だが、炎の神の生まれ変わりだと忘れてはならんとね」
「・・・お前に説教されるのは悔しいな」
「魔改造戦士の力の根源は、憎しみや悲しみとね。それを焼き焦がせる炎がなければなかとーね」
「焼き焦がす・・それは違うなツクモ」
「俺は闇雲に悪い奴を滅ぼしたりはしねぇ。俺の炎は憎しみや闇に囚われた心を浄化する力だ!!」
球磨は魔改造戦士の豹剛(ひょうごう)の顔を思い浮かべていた。
「魔改造戦士と戦ったが、あいつらは心の奥底に憎しみや悲しみを持っている。それにつけ込んで改造された者達を救いたい。ツクモ、お前だって魔改造戦士にされた被害者だろう」
ツクモは大昔、太陽神アポロだった。炎の神プロメテウスと古代ギリシャを護っていたが、炎の魔神『イフリート』に体を乗っ取られてしまった。アポロの魂は、遙かなる時を超え、球磨の弟、紅史郎の胎児に宿った。そして封印された魔神は闇の手の者達によって、魂を泥人形に入れられ、邪悪な人造戦士として、九州を支配しようとした教祖となってしまった。しかしツクモは過去の話だと冷めた顔をして、直後球磨に笑顔を向けた。
「そんな事もあったとね。ばってん、紅史郎と同化して太陽神に戻れて良かったとね」
「ああ。紅史郎の体を受け入れてくれてありがとうな」
「余のためにも紅史郎の為にも、この戦い、負けたらいかんとね。君が戦おうとしている魔改造戦士の魂を救いたいのなら、己の信念を消えない炎のように貫くとね」
「ああ。ありがとうな、ツクモ、紅史郎」
球磨は穏やかな表情で深呼吸し、再び黄金色の光に包まれ、龍の炎を打ち消した。そして彼は黄金の鎧と橙のマントを身にまとい、炎の戦士の姿となった。西洋槍を紅蓮の炎でまとわせた。熱風で増鬼は飛ばされそうになったが、槍斧を地に刺し耐えた。
「本気を出しましたか、球磨。ですが、まだまだ君の力はその程度ではないでしょう」
「紅蓮の増鬼、俺はアンタを倒すつもりはない」
球磨は増鬼に炎の槍の突きを繰り出した。増鬼は槍斧で受け止めたが、球磨の方が押し始めていた。
「だが、俺はアンタに勝ちたい。俺の信念の炎を受け止めて欲しい」
「こちらも死ぬ気でかからないといけませんね」
増鬼は斧で大地を割り、溶岩の嵐を球磨に放った。しかし球磨は槍でなぎ払い、さらに槍に溶岩を吸収させた。
「これが、プロメテウスの大火炎砲だ!!」
球磨は増鬼に巨大な炎の槍を放った。増鬼は槍斧で受け止めたが、とてつもない威力に立って抑えているのがやっとだった。
「これが、真の炎の守護神プロメテウスの覚醒・・・やはり成長しましたね、球磨」
増鬼は凄まじい炎に包まれ吹き飛ばされ、火口に落ちそうになった。しかし球磨は直ぐに彼の腕を掴み引き上げた。
「俺にとってアンタは憧れでもあり、越えたい相手だ。それと同時に、大切な院長でもありますよ、益城院長」
球磨は増鬼に無邪気な笑顔を向けた。彼も朗らかに笑い返した。激しい阿蘇の火山活動は戦いが終わったと同時に静まりかえった。