番外編 モトスの話 森の精霊忍者への道
そんなある日、武田家で事件が起こった。勝頼が高熱を出してしまった。医師が処方した薬を飲んでも熱は下がらず、信玄と家臣達は不安でたまらなかった。モトスも勝頼の容態を心配していた。
「勝頼様、熱下がらないずら?」
そんな時、廊下で信玄と真田幸隆が深刻な表情で話しているのを耳にした。
「・・・そうか、浅間山に咲く万病の花で勝頼の熱病は治るのか」
「はい。ですが、浅間山は今、噴火の恐れがあると、偵察の者から聞きましたぞ」
モトスは2人に自分が行くと手を上げた。
「おら・・・私が、浅間山へ行き、万病の花を摘んで参ります」
「モトス!!いくら自然に長けている森精霊のお前でも行くのは危険だ」
幸隆はモトスを止めた。
「ですが、このまま勝頼様の容態が悪化しては、武田家の士気が下がります。私は、野山を駆けるのが得意なので、行って参ります!!」
信玄公はモトスの強い決意に心打たれ、託そうと思った。
「強い覚悟を持っておるな、モトス。浅間山は皆も恐れる活火山だ。決して無理をするでないぞ」
「承知しております!!私は、勝頼様に早く元気になってほしいずら!!・・あ・・すみません」
「元気があって良いぞ、モトス。ただ、本当に危険だと感じたら、直ぐに引き返すのだぞ」
信玄と幸隆と昌幸は館の門で、モトスを見送り無事を祈った。
そこを木の影から、梅雪が怪しい顔をしながら見ていた。
「ふん、万病の花なんて高い金出せば手に入るものを。まぁ、浅間山で噴火に巻き込まれるのがせいぜいだな」
2、3日が経ち、モトスは甲州街道を駆け抜け、諏訪湖から中山道に入った。そして数日後に難なく小諸に到着し、浅間山を登っていた。
「確かに、この辺りは硫黄の匂いが凄い・・・微かに風も火山灰が含まれてるずら・・」
モトスは布で口を押さえながら、火山灰を避けて先を目指した。
しばらく山を駆け登ると、漆黒の溶岩石が連なる原野に着いた。浅間山の噴火により、高原に落ちてきた溶岩石が無造作に並んでいる、後に鬼押し出しと呼ばれる聖地である。
「何だか、鬼が出てきそうな岩の道ずら」
モトスは岩と岩を軽々と跳び移りながら浅間の草原を目指した。すると一際目立つ大きな氷の柱が見えた。
(あんな所に氷柱ずら?何だか不思議な力を感じるずら・・・)
その頃、上空から白い天狗のような羽をはばたかせる、山伏姿の青年が氷柱近くを飛空していた。
「定期的に氷柱周辺に結界を強化させないとなー。もう、もうかれこれ300年以上は続けてるぜ」
口調の軽い青年はモトスを発見した。
「え!?こんな所に人が!?・・・いいや、あの尖った耳は、富士五湖の森精霊か?」
青年はモトスに気づかれないようにゆっくり下降した。
「これは・・眼鏡の兄ちゃんが閉じ込められてるずら?」
モトスは眼鏡をかけた青年が、氷柱の中に封印されているのを間近で見た。手をかざそうとしたが特殊な術が掛けられて触れられなかった。
「何だか、おらの生まれるずっと前から閉じ込められている感じがするずら・・・この兄ちゃん、悪い人じゃなさそうずら。助けたいずら」
青年は岩の陰に隠れ、仙人のような低い声を出し、モトスに語りかけた。
「森精霊の少年よ、この者が目覚めるのにはもう少し時間が掛かる。日ノ本に災いがもたらされる時、この大地の守護を持つ鬼神は目覚める。少年もその時に備え、強くなれ」
「浅間の神様からのお告げずら?そっか、いつかは目を覚ますずらね。それまでに、おら、一人前の精霊忍者になるずら」
モトスは氷柱の青年に一礼し、その場を去った。青年はホッとため息をつき、少年の後をこっそり追いかけた。
「あの坊主、何か目的があって浅間に来たようだな。ここに長居されても困るし、手助けしてやるか」
「勝頼様、熱下がらないずら?」
そんな時、廊下で信玄と真田幸隆が深刻な表情で話しているのを耳にした。
「・・・そうか、浅間山に咲く万病の花で勝頼の熱病は治るのか」
「はい。ですが、浅間山は今、噴火の恐れがあると、偵察の者から聞きましたぞ」
モトスは2人に自分が行くと手を上げた。
「おら・・・私が、浅間山へ行き、万病の花を摘んで参ります」
「モトス!!いくら自然に長けている森精霊のお前でも行くのは危険だ」
幸隆はモトスを止めた。
「ですが、このまま勝頼様の容態が悪化しては、武田家の士気が下がります。私は、野山を駆けるのが得意なので、行って参ります!!」
信玄公はモトスの強い決意に心打たれ、託そうと思った。
「強い覚悟を持っておるな、モトス。浅間山は皆も恐れる活火山だ。決して無理をするでないぞ」
「承知しております!!私は、勝頼様に早く元気になってほしいずら!!・・あ・・すみません」
「元気があって良いぞ、モトス。ただ、本当に危険だと感じたら、直ぐに引き返すのだぞ」
信玄と幸隆と昌幸は館の門で、モトスを見送り無事を祈った。
そこを木の影から、梅雪が怪しい顔をしながら見ていた。
「ふん、万病の花なんて高い金出せば手に入るものを。まぁ、浅間山で噴火に巻き込まれるのがせいぜいだな」
2、3日が経ち、モトスは甲州街道を駆け抜け、諏訪湖から中山道に入った。そして数日後に難なく小諸に到着し、浅間山を登っていた。
「確かに、この辺りは硫黄の匂いが凄い・・・微かに風も火山灰が含まれてるずら・・」
モトスは布で口を押さえながら、火山灰を避けて先を目指した。
しばらく山を駆け登ると、漆黒の溶岩石が連なる原野に着いた。浅間山の噴火により、高原に落ちてきた溶岩石が無造作に並んでいる、後に鬼押し出しと呼ばれる聖地である。
「何だか、鬼が出てきそうな岩の道ずら」
モトスは岩と岩を軽々と跳び移りながら浅間の草原を目指した。すると一際目立つ大きな氷の柱が見えた。
(あんな所に氷柱ずら?何だか不思議な力を感じるずら・・・)
その頃、上空から白い天狗のような羽をはばたかせる、山伏姿の青年が氷柱近くを飛空していた。
「定期的に氷柱周辺に結界を強化させないとなー。もう、もうかれこれ300年以上は続けてるぜ」
口調の軽い青年はモトスを発見した。
「え!?こんな所に人が!?・・・いいや、あの尖った耳は、富士五湖の森精霊か?」
青年はモトスに気づかれないようにゆっくり下降した。
「これは・・眼鏡の兄ちゃんが閉じ込められてるずら?」
モトスは眼鏡をかけた青年が、氷柱の中に封印されているのを間近で見た。手をかざそうとしたが特殊な術が掛けられて触れられなかった。
「何だか、おらの生まれるずっと前から閉じ込められている感じがするずら・・・この兄ちゃん、悪い人じゃなさそうずら。助けたいずら」
青年は岩の陰に隠れ、仙人のような低い声を出し、モトスに語りかけた。
「森精霊の少年よ、この者が目覚めるのにはもう少し時間が掛かる。日ノ本に災いがもたらされる時、この大地の守護を持つ鬼神は目覚める。少年もその時に備え、強くなれ」
「浅間の神様からのお告げずら?そっか、いつかは目を覚ますずらね。それまでに、おら、一人前の精霊忍者になるずら」
モトスは氷柱の青年に一礼し、その場を去った。青年はホッとため息をつき、少年の後をこっそり追いかけた。
「あの坊主、何か目的があって浅間に来たようだな。ここに長居されても困るし、手助けしてやるか」