第1章 異説 武田の残党狩り編 桃源郷に集う勇士
梅雪たちが撤退した後に、モトスを敵視していた村人たちも正気に戻った。やっと江津の催眠の術が解けたようだ。
「・・・あれ?おらたち・・・どうしちまったんだ・・・?」
「確か・・・梅雪の仲間に吉田集落に連れてかれて・・・」
どうやら、鳴沢集落から連れてこられた村人も無事だったようだ。しかし、金で梅雪に下ろうとした兵士たちがおろおろとした表情で、彼らに近づいて来るモトスを怖がっていた。
「あ・・・モトス・・ご・・ごめんなさい!!」
兵士たちは泣きながら下を向いていたが、モトスは彼らに優しく肩に手を置いた。
「・・・謝らないでくれ。事実俺は金も権力も無い。織田に行くなり梅雪の元へ行くなり好きにして良い。・・・だが、これだけは忘れないでくれ。勝頼様は信玄公に負けない位に兵や民たちの事を深く思っていたことを・・・」
モトスが兵士たちに諭すと、兵士は梅雪に渡された金をモトスに渡した。
「こんな金いらねえ!!モトス!!!どうかこの金を梅雪と戦う資金にしてくれ!!」
「俺たちは決めたぞ!!この村を護る!!」
兵士たちは勝頼の事を思い出し、再び甲斐の民たちを護ろうと決意をした。
「それはそうと・・・脱がされた鎖帷子(くさりかたびら)と胸当てを返してはくれぬか?」
モトスは露出した上半身を皆に見られ、少し照れていた。
「うっひょー!!旦那の体、引き締まっていてムキムキー!!」
桜龍はモトスの厚い胸板や割れた腹筋などを気持ちよく触っていた。
「こ・・こらお前!!!助けてくれたとはいえ、調子に乗るな!!」
2人がじゃれ合っている場面に皆唖然としていた。そして、湘が球磨に尋ねてみた。
「・・・おい、球磨。あの桜龍とかいう男は君の知り合いのようだが、あの男に計り知れない未知の力があると思うかい?」
「いや・・・桜龍とは何度か共に戦ったりしたが、あいつの事は良く分からん。つかみどころが無いのか、単にアホなのか・・・」
2人は、とても桜龍からは未知の力は感じないと呆れながら思っていた。
「珍しく意見が合うな・・・優男。分かることはあいつは・・・両刀だ・・気を付けた方がいいぜ」
桜龍がモトスの体を触っていると、千里の鎖鎌の鎖が桜龍の胴に巻き付いた。そして、物凄い力で引っ張られ、遠くに投げ飛ばされた。モトスはホッとした顔をすると、後ろに千里が居た。
「昌幸殿はモトスさんを今でも大切な友と申しておりました。勝頼様やモトスさんを助けられなくて悔しいと言っていました。昌幸殿は甲斐の民を護る為に、浅間山に封印されていた僕を目覚めさせてくれました」
千里は静かに淡々とした口調で言っていた。
「そうか。昌幸が・・・あの者も真田家を護る事で精いっぱいだからな・・・。昌幸の頼みを受けてくれて感謝する。千里」
モトスは千里に頭を下げた。エンザンは遠くからモトスや仲間たちを見て喜んでいた。
(モトスも小精霊だった頃は、手の平ほどの小ささじゃったのに、今は逞しく大きくなったのう。風と大地と火と水が集い、そして・・・遠くに飛ばされているが、聖なる龍を守護とする者。この5人が、御伽勇士と言われる鬼神のごとき強さを持つ者たちかのう)
吉田や鳴沢集落の民たちは、モトスや亡き勝頼に謝罪をし、仲間にも礼や応援の言葉を送った。
一方、新府城で留守を任された信康と厳美が、梅雪たちが吉田集落侵略に失敗したことと、御伽勇士が5人集った知らせを受けていた。
「そんな・・・梅雪様に怪我が・・・僕が梅雪様の身代わりとして行くべきだった・・・」
信康が頭を押さえ、取り乱している一方、厳美は呑気に笑っていた。
「良いではないですかー。梅雪様に何かあったら、あなたが穴山家の当主になれば」
厳美が軽い冗談を言うと、信康は鬼のような形相で厳美の胸ぐらを掴んだ。
「ふざけたことを言うな!!梅雪様は僕の恩人なのだぞ!!何もせず下らぬこと言う。お前は黙っていろ!!」
「そう怒らないでくださいよー。次は私も役に立てるように出陣しますからー。あ!!でも、本当は信康殿が梅雪様だったり・・・」
信康は厳美の顔を殴ろうとしたが
「もし、何か気になる事がありましたら、甲府のかつての武田家の居城、躑躅が崎館の書庫へ行ってみると良いですよー。何か分かるかもしれないですねー。」
厳美の意味有りげな言葉に信康の心は揺らぎ始めていた。
第6話 完
「・・・あれ?おらたち・・・どうしちまったんだ・・・?」
「確か・・・梅雪の仲間に吉田集落に連れてかれて・・・」
どうやら、鳴沢集落から連れてこられた村人も無事だったようだ。しかし、金で梅雪に下ろうとした兵士たちがおろおろとした表情で、彼らに近づいて来るモトスを怖がっていた。
「あ・・・モトス・・ご・・ごめんなさい!!」
兵士たちは泣きながら下を向いていたが、モトスは彼らに優しく肩に手を置いた。
「・・・謝らないでくれ。事実俺は金も権力も無い。織田に行くなり梅雪の元へ行くなり好きにして良い。・・・だが、これだけは忘れないでくれ。勝頼様は信玄公に負けない位に兵や民たちの事を深く思っていたことを・・・」
モトスが兵士たちに諭すと、兵士は梅雪に渡された金をモトスに渡した。
「こんな金いらねえ!!モトス!!!どうかこの金を梅雪と戦う資金にしてくれ!!」
「俺たちは決めたぞ!!この村を護る!!」
兵士たちは勝頼の事を思い出し、再び甲斐の民たちを護ろうと決意をした。
「それはそうと・・・脱がされた鎖帷子(くさりかたびら)と胸当てを返してはくれぬか?」
モトスは露出した上半身を皆に見られ、少し照れていた。
「うっひょー!!旦那の体、引き締まっていてムキムキー!!」
桜龍はモトスの厚い胸板や割れた腹筋などを気持ちよく触っていた。
「こ・・こらお前!!!助けてくれたとはいえ、調子に乗るな!!」
2人がじゃれ合っている場面に皆唖然としていた。そして、湘が球磨に尋ねてみた。
「・・・おい、球磨。あの桜龍とかいう男は君の知り合いのようだが、あの男に計り知れない未知の力があると思うかい?」
「いや・・・桜龍とは何度か共に戦ったりしたが、あいつの事は良く分からん。つかみどころが無いのか、単にアホなのか・・・」
2人は、とても桜龍からは未知の力は感じないと呆れながら思っていた。
「珍しく意見が合うな・・・優男。分かることはあいつは・・・両刀だ・・気を付けた方がいいぜ」
桜龍がモトスの体を触っていると、千里の鎖鎌の鎖が桜龍の胴に巻き付いた。そして、物凄い力で引っ張られ、遠くに投げ飛ばされた。モトスはホッとした顔をすると、後ろに千里が居た。
「昌幸殿はモトスさんを今でも大切な友と申しておりました。勝頼様やモトスさんを助けられなくて悔しいと言っていました。昌幸殿は甲斐の民を護る為に、浅間山に封印されていた僕を目覚めさせてくれました」
千里は静かに淡々とした口調で言っていた。
「そうか。昌幸が・・・あの者も真田家を護る事で精いっぱいだからな・・・。昌幸の頼みを受けてくれて感謝する。千里」
モトスは千里に頭を下げた。エンザンは遠くからモトスや仲間たちを見て喜んでいた。
(モトスも小精霊だった頃は、手の平ほどの小ささじゃったのに、今は逞しく大きくなったのう。風と大地と火と水が集い、そして・・・遠くに飛ばされているが、聖なる龍を守護とする者。この5人が、御伽勇士と言われる鬼神のごとき強さを持つ者たちかのう)
吉田や鳴沢集落の民たちは、モトスや亡き勝頼に謝罪をし、仲間にも礼や応援の言葉を送った。
一方、新府城で留守を任された信康と厳美が、梅雪たちが吉田集落侵略に失敗したことと、御伽勇士が5人集った知らせを受けていた。
「そんな・・・梅雪様に怪我が・・・僕が梅雪様の身代わりとして行くべきだった・・・」
信康が頭を押さえ、取り乱している一方、厳美は呑気に笑っていた。
「良いではないですかー。梅雪様に何かあったら、あなたが穴山家の当主になれば」
厳美が軽い冗談を言うと、信康は鬼のような形相で厳美の胸ぐらを掴んだ。
「ふざけたことを言うな!!梅雪様は僕の恩人なのだぞ!!何もせず下らぬこと言う。お前は黙っていろ!!」
「そう怒らないでくださいよー。次は私も役に立てるように出陣しますからー。あ!!でも、本当は信康殿が梅雪様だったり・・・」
信康は厳美の顔を殴ろうとしたが
「もし、何か気になる事がありましたら、甲府のかつての武田家の居城、躑躅が崎館の書庫へ行ってみると良いですよー。何か分かるかもしれないですねー。」
厳美の意味有りげな言葉に信康の心は揺らぎ始めていた。
第6話 完