第4章 鬼神の怒りと魔改造戦士の涙
数日が経った、安房国、日本海溝にある海洋族の宮殿。2枚貝の寝台に寝かされているモトスの周りには小精霊が心配そうな目で見ていた。そして、彼が目を覚ますと皆一斉に涙を流しながら飛びかかってきた。
「モトスおじちゃーん!!無事で良かったじゅらー!!」
「モトスさん・・・目を覚まして良かったです。3日も目を覚まさなかったのですよ」
モトスは目を覚ますと、目の前に恋人のお都留と球磨、じゃら吉とじゅら子を始め、小精霊達が枕元で涙を流していた。しかしモトスは、小精霊に人魚の足が付いていて驚いていた。さらに見たこともない色鮮やかな熱帯魚が泳いでいるのを見て、すぐに場所が分かった。
「お前達・・・その姿は?ここはもしかして海洋族の宮殿か?」
「五十鈴おじちゃんがオラ達を人魚にしてくれたじゅら」
五十鈴が部屋に入ってきて、小精霊達の頭をなでていた。
「一命を取り留めて良かったよー。アッミーゴ・モトス。あれから、八郎王といすみ様が協力して君達をここまで連れてきたんだよ。君のアモーレお都留と可愛い精霊達も心配で来たんだよ」
「そうだったのか・・・心配をかけてしまったな。五十鈴もありがとう、感謝する。ところで球磨、起きていて平気なのか!!」
「ああ。俺はこの通り、ピンピンしているぜ。旦那こそ、操られていたとはいえ、気を失うほどまで攻撃してすまなかったぜ・・・」
「謝るな球磨。俺こそ力不足だった・・・お前が生きていて良かった」
球磨とモトスは近い距離で見つめ合っていた。お都留と小精霊達は、頬を赤くしながら、口元に手を置いていたので、五十鈴は叫んだ。
「こらこら!!2人共男同士で近いよー!!お都留ちゃんは僕が貰っちゃうよー」
「何故そうなる!!」
モトスと球磨は同時に五十鈴に叫んだ。
「お二人が近くで見つめ合っていると、ドキッとしますわ・・・」
「いやいや・・・ときめかないでくれ、お都留さん・・・」
お都留と球磨は笑い、周りは和んだ。
「皆んな笑顔で嬉しいじゅらー。ところで『ときめき』って何じゅら?」
小精霊達はモトスに聞いた。
「うーん・・美しい花や自然を見て、目を奪われることをときめきと言うかな」
「オラの場合は、美味しい食べ物を見たときにときめくじゅら」
「じゅら吉は花より団子じゅらねー」
じゅら子や小精霊達の突っ込みにその場は一気に和んだ。モトスは五十鈴に桜龍達の容態を聞いた。
「心配ないさ。千里は体力の回復が早いし、湘と桜龍はまだ眠っているけど、命に別状は無いよ。仁摩ちゃんが看病している。湘も凪沙ちゃんがずっと見ているよ」
「良かった・・・」
モトスは安心しながら、小精霊達の頭を撫でた。
その頃、湘は母『凪沙(なぎさ)』の寝室で目を覚ました。
「こ・・ここは・・母さん?」
「湘!!無事で良かったわ!!」
凪沙はゆっくり起きあがろうとした湘の体を支えた。いすみの腹心、常葉(ときわ)と共に看病していた紅史郎と蕨もホッとした顔で親子を見ていた。
「常葉殿に紅史郎・・蕨殿も駆けつけてくれたのか」
湘は紅史郎と蕨が宮殿に居ることに驚いたので、常葉が答えた。
「はい。いすみ様と海洋族の皆があなた方をここまで連れて来ました。球磨達は、紅史郎と、蕨殿と八郎王が助けてくれました。あと、ここには居ませんが、神官の江津殿も協力してくれましたよ」
「江津を知っているのか?」
湘は目を丸くしながら、常葉に言った。すると蕨も知っていたらしく笑顔で頷いていた。
「ああ。前の小田原征伐の時に、八郎じいに会いに八幡平まで行ったら、江津が地底世界を案内してくれたんだぜ。人間なのに八郎じいの下で修行しているし、桜龍の事も知っていて、不思議な者だったよー」
「そうだったのか・・・」
湘は、江津は訳あって、過去に敵勢力にいた事を伏せておこうと思った。紅史郎は察したのか話題を変え、江津の状況を説明した。
「江津殿は今、地底世界に戻っているよ。彼が僕を兄達の元へ導いてくれたんだよ」
「江津さんて、まるで道士みたいな方ね。湘、次に会った時にお礼を言いなさいね」
「あ・・ああ。そうするよ、母さん」
湘は苦笑いしながら応えた。
千里は桜龍の眠っている部屋に入った。すると仁摩が、桜龍が横になっている2枚貝の寝台の側で祈りを込めていた。
「あら千里さん、お体は大丈夫?」
「仁摩さん・・ずっと桜龍を見ていてくれたのですね」
「今の私には、目を覚ますのを祈る事しか出来なくて・・・」
「いいえ、貴方は魔改造戦士相手に勇敢に戦っていました。特に、若桜を正気に戻そうと懸命に声を掛けてくれてありがとうございます」
「私の言葉が、少しでも若桜さんに届いて欲しいと願っています」
千里は苦笑いする仁摩の隣に座った。仁摩は悲痛な顔をしながら千里に言った。
「私は桜龍が聖なる龍に飲み込まれ、力を暴走させたのを止められなかった・・・怖くて何も出来なかったわ」
「それでも、貴方は今ここで桜龍が目覚めるのを見守っています。本当に怖いと思うなら、彼に近づけないと思います」
「千里さん・・・ありがとうございます。私はもっと強くならなければいけないですね」
「仁摩さん、僕は本当は強くありません。いくら鬼神と呼ばれ、大地の光玉を宿しても若桜に攻撃出来ませんでした。桜龍の方が強いです。信じていた師匠が闇王だと知っても、ためらうこと無く刃を向けていましたから」
仁摩は千里の考えに首を横に振った。
「それは違います。桜龍も師匠が闇王だった事に傷ついたと思います。だけど、誰にも動揺を見せまいと・・・闇王だった真実よりも、若桜さんを戦いの道具にしたのを許せなかったのでしょう。桜龍は昔から自分の事では怒らないけど、相手の事になると本気で怒れる人なんですよ」
「・・・やはり、仁摩さんは桜龍の事を良く知っていますね。桜龍を護れず・・・すみません」
「謝らないでください、千里さん。桜龍は絶対に元気でお茶目な姿で目を覚ましますよ。聖龍に選ばれた聖者は簡単には死にません」
仁摩は千里の手を握り、励ました後アナンが心配そうな顔をしながら部屋に入ってきた。
「千里、仁摩。桜龍はまだ目を覚まさないのか・・・」
「アナン!!桜龍と湘さんを助けてくれて、ありがとう」
「礼なら、五十鈴と亘、いすみ様に言いな。いすみ様から話がある。球磨と湘とモトスが王座の間に呼ばれているから、お前達も準備が出来たら来てくれ」
「モトスおじちゃーん!!無事で良かったじゅらー!!」
「モトスさん・・・目を覚まして良かったです。3日も目を覚まさなかったのですよ」
モトスは目を覚ますと、目の前に恋人のお都留と球磨、じゃら吉とじゅら子を始め、小精霊達が枕元で涙を流していた。しかしモトスは、小精霊に人魚の足が付いていて驚いていた。さらに見たこともない色鮮やかな熱帯魚が泳いでいるのを見て、すぐに場所が分かった。
「お前達・・・その姿は?ここはもしかして海洋族の宮殿か?」
「五十鈴おじちゃんがオラ達を人魚にしてくれたじゅら」
五十鈴が部屋に入ってきて、小精霊達の頭をなでていた。
「一命を取り留めて良かったよー。アッミーゴ・モトス。あれから、八郎王といすみ様が協力して君達をここまで連れてきたんだよ。君のアモーレお都留と可愛い精霊達も心配で来たんだよ」
「そうだったのか・・・心配をかけてしまったな。五十鈴もありがとう、感謝する。ところで球磨、起きていて平気なのか!!」
「ああ。俺はこの通り、ピンピンしているぜ。旦那こそ、操られていたとはいえ、気を失うほどまで攻撃してすまなかったぜ・・・」
「謝るな球磨。俺こそ力不足だった・・・お前が生きていて良かった」
球磨とモトスは近い距離で見つめ合っていた。お都留と小精霊達は、頬を赤くしながら、口元に手を置いていたので、五十鈴は叫んだ。
「こらこら!!2人共男同士で近いよー!!お都留ちゃんは僕が貰っちゃうよー」
「何故そうなる!!」
モトスと球磨は同時に五十鈴に叫んだ。
「お二人が近くで見つめ合っていると、ドキッとしますわ・・・」
「いやいや・・・ときめかないでくれ、お都留さん・・・」
お都留と球磨は笑い、周りは和んだ。
「皆んな笑顔で嬉しいじゅらー。ところで『ときめき』って何じゅら?」
小精霊達はモトスに聞いた。
「うーん・・美しい花や自然を見て、目を奪われることをときめきと言うかな」
「オラの場合は、美味しい食べ物を見たときにときめくじゅら」
「じゅら吉は花より団子じゅらねー」
じゅら子や小精霊達の突っ込みにその場は一気に和んだ。モトスは五十鈴に桜龍達の容態を聞いた。
「心配ないさ。千里は体力の回復が早いし、湘と桜龍はまだ眠っているけど、命に別状は無いよ。仁摩ちゃんが看病している。湘も凪沙ちゃんがずっと見ているよ」
「良かった・・・」
モトスは安心しながら、小精霊達の頭を撫でた。
その頃、湘は母『凪沙(なぎさ)』の寝室で目を覚ました。
「こ・・ここは・・母さん?」
「湘!!無事で良かったわ!!」
凪沙はゆっくり起きあがろうとした湘の体を支えた。いすみの腹心、常葉(ときわ)と共に看病していた紅史郎と蕨もホッとした顔で親子を見ていた。
「常葉殿に紅史郎・・蕨殿も駆けつけてくれたのか」
湘は紅史郎と蕨が宮殿に居ることに驚いたので、常葉が答えた。
「はい。いすみ様と海洋族の皆があなた方をここまで連れて来ました。球磨達は、紅史郎と、蕨殿と八郎王が助けてくれました。あと、ここには居ませんが、神官の江津殿も協力してくれましたよ」
「江津を知っているのか?」
湘は目を丸くしながら、常葉に言った。すると蕨も知っていたらしく笑顔で頷いていた。
「ああ。前の小田原征伐の時に、八郎じいに会いに八幡平まで行ったら、江津が地底世界を案内してくれたんだぜ。人間なのに八郎じいの下で修行しているし、桜龍の事も知っていて、不思議な者だったよー」
「そうだったのか・・・」
湘は、江津は訳あって、過去に敵勢力にいた事を伏せておこうと思った。紅史郎は察したのか話題を変え、江津の状況を説明した。
「江津殿は今、地底世界に戻っているよ。彼が僕を兄達の元へ導いてくれたんだよ」
「江津さんて、まるで道士みたいな方ね。湘、次に会った時にお礼を言いなさいね」
「あ・・ああ。そうするよ、母さん」
湘は苦笑いしながら応えた。
千里は桜龍の眠っている部屋に入った。すると仁摩が、桜龍が横になっている2枚貝の寝台の側で祈りを込めていた。
「あら千里さん、お体は大丈夫?」
「仁摩さん・・ずっと桜龍を見ていてくれたのですね」
「今の私には、目を覚ますのを祈る事しか出来なくて・・・」
「いいえ、貴方は魔改造戦士相手に勇敢に戦っていました。特に、若桜を正気に戻そうと懸命に声を掛けてくれてありがとうございます」
「私の言葉が、少しでも若桜さんに届いて欲しいと願っています」
千里は苦笑いする仁摩の隣に座った。仁摩は悲痛な顔をしながら千里に言った。
「私は桜龍が聖なる龍に飲み込まれ、力を暴走させたのを止められなかった・・・怖くて何も出来なかったわ」
「それでも、貴方は今ここで桜龍が目覚めるのを見守っています。本当に怖いと思うなら、彼に近づけないと思います」
「千里さん・・・ありがとうございます。私はもっと強くならなければいけないですね」
「仁摩さん、僕は本当は強くありません。いくら鬼神と呼ばれ、大地の光玉を宿しても若桜に攻撃出来ませんでした。桜龍の方が強いです。信じていた師匠が闇王だと知っても、ためらうこと無く刃を向けていましたから」
仁摩は千里の考えに首を横に振った。
「それは違います。桜龍も師匠が闇王だった事に傷ついたと思います。だけど、誰にも動揺を見せまいと・・・闇王だった真実よりも、若桜さんを戦いの道具にしたのを許せなかったのでしょう。桜龍は昔から自分の事では怒らないけど、相手の事になると本気で怒れる人なんですよ」
「・・・やはり、仁摩さんは桜龍の事を良く知っていますね。桜龍を護れず・・・すみません」
「謝らないでください、千里さん。桜龍は絶対に元気でお茶目な姿で目を覚ましますよ。聖龍に選ばれた聖者は簡単には死にません」
仁摩は千里の手を握り、励ました後アナンが心配そうな顔をしながら部屋に入ってきた。
「千里、仁摩。桜龍はまだ目を覚まさないのか・・・」
「アナン!!桜龍と湘さんを助けてくれて、ありがとう」
「礼なら、五十鈴と亘、いすみ様に言いな。いすみ様から話がある。球磨と湘とモトスが王座の間に呼ばれているから、お前達も準備が出来たら来てくれ」