第4章 鬼神の怒りと魔改造戦士の涙
奥州平泉の金鶏山。闇王卑弩羅と腹心朝霧が去った後、桜龍は力を使い果たし、さらに大芹に痛めつけられ瀕死の重傷だった。それでもなお魔改造戦士は再び、千里達に苛烈な攻撃を続け、勇士達は防戦で精一杯だった。
「よくも私の顔と体に傷をつけてくれたな!!貴様らはここで皆殺しだ!!」
大芹は溶け崩れた左顔面を押さえながら勇士達に怒り叫んだ。
「く・・このままでは、全滅だ・・・湘!!桜龍を連れて、海へ逃げるのだ!!」
「・・・それが最善だが、それではモトス達が・・」
湘は戸惑ったが、仁摩に強く言われた。
「湘さん、桜龍をお願いします!!」
「く・・・すまぬ皆。死ぬなよ」
湘は皆を信じ、桜龍を抱え近くを流れる川に飛び込んだ。厳美は呆れた顔で大芹に問うた。
「あーあ、逃げても無駄なのに。どうします?大芹さん」
「さしずめ、海洋族の宮殿へ逃げるのだろう。厳美と若桜は残りの勇士共の相手をしていろ」
「分かりましたー。では、若桜ちゃん、ちゃちゃっと片付けちゃいましょう」
軽い口調の厳美とは違い、若桜は無表情で太刀を構えていた。
「・・・ええ。私達の敵はここで始末するわ」
「桜龍と湘の元へは行かせねぇ!!俺達が相手だ!!」
球磨とモトスは大芹達に攻撃しようとしたが、黒羽が目の前に現れ、黒く細い糸で体を縛られた。
「く・・・何だ?この糸は・・切ねぇ」
2人は糸を切ろうとしたが、強く体に食い込んだ。それと同時に、体を乗っ取られたような奇妙な感覚に陥った。
「素敵な容姿で屈強な殿方ですわねぇ。剣闘士にして戦わせてみたいですわ」
黒羽が右手を振ると、球磨の足が勝手に動き、モトスの顔に当たろうとした。モトスは球磨の様子に異変を感じ、避けようとしたが体が動かない。蹴りが来る寸前に勝手に右腕が動き防御した。そして、持っていた曲刀が勝手に振られ、球磨の頬をかすめた。
「何だよこれは!?体が勝手に動く・・・」
「まさか・・・この糸は俺達の体を支配しているのか!?」
球磨とモトスは戸惑いながら、体は互いに攻撃していた。
「そう。この傀儡(くぐつ)の糸は貴方達に絡み付いて、私の意のままに操る事が出来ますのよ」
「く・・操り人形にされたか・・・」
モトスは気を高め、呪縛を解こうとしたが強力な術でかき消され、むしろ攻撃力を高めてしまった。球磨の胸当てに疾風の爆裂拳を放ち、球磨は胸から強い衝撃が走った。
「すまぬ・・・球磨」
「・・ゲホッ・・・気にすんな、旦那。俺だって攻撃を止められなくてすまねぇ」
球磨は申し訳なさとは反対に、炎をまとった西洋槍の突き攻撃をモトスに繰り出した。
「ふふふ、どちらかが倒れるまで戦ってもらいますわよ。そして、勝った方を私の従順な魔改造戦士にしてさしあげますわ。いっそ共倒れで両方いただくのも良いですわね」
黒羽が愉快な顔をしている一方、球磨とモトスは意志に反する死闘を続けさせられていた。
「人の体を人形のように弄ぶのは最低ね!!」
仁摩は2人を解放させる為、黒羽目掛け、光の矢を放ったが、若桜の太刀筋で矢を裂かれた。
「黒羽様の邪魔はさせないわ」
「若桜さん・・・あなたは、千里さんと共に戦った勇士で、恋人でもあったのでしょう。もう戦うのは止めましょう」
「そんなの知らないわ。私は黒羽様に造られ、闇王様に仕えている。それより、貴方にこの場所は相応しく無いわ。大人しく故郷に帰りなさい」
仁摩は若桜の忠告を聞き入れず、弓から棍棒に変え、若桜に向け宣戦布告した。
「馬鹿にしないで!!私だって戦えるわ。若桜さんを正気に戻してみせる!!」
仁摩の勇ましい姿を、少し離れている場所から厳美が呆れて言った。
「あーあー。あの巫女ちゃん、戦う気満々ですねー。女同士でも戦力差が有りすぎるのに・・・」
「仁摩さん!!若桜との相手は危険です!!ここは逃げてください!!」
千里は鎖鎌で厳美の大鎌攻撃を受け止めながら仁摩に叫び止めていた。
「千里君、君の相手は私ですよ。さぁ、若桜ちゃん、身の程知らずの巫女ちゃんを、死なない程度に痛めつけて良いよ。もしかしたら、黒羽様が魔改造戦士にするのに持ち帰るだろうし」
「分かったわ、厳美。仁摩と言ったわね。最後に言う。貴方は我々にとって、どうでも良い存在だから見逃してあげる」
「いいえ・・・私では貴方に勝てなくても、皆が懸命に戦っている。桜龍と湘さんだって必死に逃げている。だから私も戦うわ!!」
仁摩は棍棒を構え、若桜に立ち向かった。
「・・・覚悟は出来ているのね。後悔しても遅いから!!」
若桜は仁摩の棍棒の突きを、太刀で受け止めた。
「筋は良いわね。だけど・・・私の敵ではないわ!!」
若桜は強い力で太刀を振り払った。仁摩は間一髪後ろに跳ね避けたが、彼女の太刀筋に重さと速さを感じた。
「私は貴方を傷つけないわ。千里さんの事を思い出して!!」
仁摩は護符を取り出し、若桜に投げた。淡い癒しの光で若桜の記憶を戻そうとした。しかし、若桜は冷徹な瞳で札を斬った。
「何度も言わせないで!!私は、黒羽様や卑弩羅様の為に武を振るうのだから」
若桜は仁摩に反撃し始めた。仁摩は棍棒で受け止めるのが精一杯で、姿勢が崩れ、棍棒に蹴りを入れられ、木にぶつかってしまった。起きあがろうとしたが、右肩を若桜に踏まれた。
「さぁ、これで分かったでしょう。貴方で私は倒せない。今ならまだ見逃してあげるわよ」
「私は・・若桜さんを倒すなんて考えてない。ただ、闇の手から救いたいだけよ!!」
仁摩は懸命に若桜に訴えたが、言葉は全く届かなかった。黒羽は仁摩を呆れた表情で見ていた。
「健気な娘ですわね。ですが、若桜の昔の記憶は消したから無駄な事ですわ」
千里は苦い顔をしながら、仁摩の説得を止めた。
「もう良いです!!仁摩さん。この者はもう若桜ではありません!!若桜は・・・もう亡くなったのですから」
「千里さん!!でも・・・」
仁摩は話を続けようとした時、太刀の刃を首に当てられた。首から浅く血が出た。
「これ以上戯言を言うなら、その喉元斬ってやるわ」
(やはり私では若桜さんを正気に戻せないの?桜龍が・・・皆が必死なのに、私は・・・)
仁摩の瞳から一筋の涙が流れた。厳美は仁摩に己の無力さを教えた。
「若桜ちゃん、あまりいじめてはいけませんよ。巫女ちゃんも、これで分かったでしょう。生半可な力では何も救えないとね」
「・・・仁摩さんを侮辱するな!!」
千里は怒りの刃を厳美に向けた。しかし、厳美に軽々と攻撃を避けられていた。
「よくも私の顔と体に傷をつけてくれたな!!貴様らはここで皆殺しだ!!」
大芹は溶け崩れた左顔面を押さえながら勇士達に怒り叫んだ。
「く・・このままでは、全滅だ・・・湘!!桜龍を連れて、海へ逃げるのだ!!」
「・・・それが最善だが、それではモトス達が・・」
湘は戸惑ったが、仁摩に強く言われた。
「湘さん、桜龍をお願いします!!」
「く・・・すまぬ皆。死ぬなよ」
湘は皆を信じ、桜龍を抱え近くを流れる川に飛び込んだ。厳美は呆れた顔で大芹に問うた。
「あーあ、逃げても無駄なのに。どうします?大芹さん」
「さしずめ、海洋族の宮殿へ逃げるのだろう。厳美と若桜は残りの勇士共の相手をしていろ」
「分かりましたー。では、若桜ちゃん、ちゃちゃっと片付けちゃいましょう」
軽い口調の厳美とは違い、若桜は無表情で太刀を構えていた。
「・・・ええ。私達の敵はここで始末するわ」
「桜龍と湘の元へは行かせねぇ!!俺達が相手だ!!」
球磨とモトスは大芹達に攻撃しようとしたが、黒羽が目の前に現れ、黒く細い糸で体を縛られた。
「く・・・何だ?この糸は・・切ねぇ」
2人は糸を切ろうとしたが、強く体に食い込んだ。それと同時に、体を乗っ取られたような奇妙な感覚に陥った。
「素敵な容姿で屈強な殿方ですわねぇ。剣闘士にして戦わせてみたいですわ」
黒羽が右手を振ると、球磨の足が勝手に動き、モトスの顔に当たろうとした。モトスは球磨の様子に異変を感じ、避けようとしたが体が動かない。蹴りが来る寸前に勝手に右腕が動き防御した。そして、持っていた曲刀が勝手に振られ、球磨の頬をかすめた。
「何だよこれは!?体が勝手に動く・・・」
「まさか・・・この糸は俺達の体を支配しているのか!?」
球磨とモトスは戸惑いながら、体は互いに攻撃していた。
「そう。この傀儡(くぐつ)の糸は貴方達に絡み付いて、私の意のままに操る事が出来ますのよ」
「く・・操り人形にされたか・・・」
モトスは気を高め、呪縛を解こうとしたが強力な術でかき消され、むしろ攻撃力を高めてしまった。球磨の胸当てに疾風の爆裂拳を放ち、球磨は胸から強い衝撃が走った。
「すまぬ・・・球磨」
「・・ゲホッ・・・気にすんな、旦那。俺だって攻撃を止められなくてすまねぇ」
球磨は申し訳なさとは反対に、炎をまとった西洋槍の突き攻撃をモトスに繰り出した。
「ふふふ、どちらかが倒れるまで戦ってもらいますわよ。そして、勝った方を私の従順な魔改造戦士にしてさしあげますわ。いっそ共倒れで両方いただくのも良いですわね」
黒羽が愉快な顔をしている一方、球磨とモトスは意志に反する死闘を続けさせられていた。
「人の体を人形のように弄ぶのは最低ね!!」
仁摩は2人を解放させる為、黒羽目掛け、光の矢を放ったが、若桜の太刀筋で矢を裂かれた。
「黒羽様の邪魔はさせないわ」
「若桜さん・・・あなたは、千里さんと共に戦った勇士で、恋人でもあったのでしょう。もう戦うのは止めましょう」
「そんなの知らないわ。私は黒羽様に造られ、闇王様に仕えている。それより、貴方にこの場所は相応しく無いわ。大人しく故郷に帰りなさい」
仁摩は若桜の忠告を聞き入れず、弓から棍棒に変え、若桜に向け宣戦布告した。
「馬鹿にしないで!!私だって戦えるわ。若桜さんを正気に戻してみせる!!」
仁摩の勇ましい姿を、少し離れている場所から厳美が呆れて言った。
「あーあー。あの巫女ちゃん、戦う気満々ですねー。女同士でも戦力差が有りすぎるのに・・・」
「仁摩さん!!若桜との相手は危険です!!ここは逃げてください!!」
千里は鎖鎌で厳美の大鎌攻撃を受け止めながら仁摩に叫び止めていた。
「千里君、君の相手は私ですよ。さぁ、若桜ちゃん、身の程知らずの巫女ちゃんを、死なない程度に痛めつけて良いよ。もしかしたら、黒羽様が魔改造戦士にするのに持ち帰るだろうし」
「分かったわ、厳美。仁摩と言ったわね。最後に言う。貴方は我々にとって、どうでも良い存在だから見逃してあげる」
「いいえ・・・私では貴方に勝てなくても、皆が懸命に戦っている。桜龍と湘さんだって必死に逃げている。だから私も戦うわ!!」
仁摩は棍棒を構え、若桜に立ち向かった。
「・・・覚悟は出来ているのね。後悔しても遅いから!!」
若桜は仁摩の棍棒の突きを、太刀で受け止めた。
「筋は良いわね。だけど・・・私の敵ではないわ!!」
若桜は強い力で太刀を振り払った。仁摩は間一髪後ろに跳ね避けたが、彼女の太刀筋に重さと速さを感じた。
「私は貴方を傷つけないわ。千里さんの事を思い出して!!」
仁摩は護符を取り出し、若桜に投げた。淡い癒しの光で若桜の記憶を戻そうとした。しかし、若桜は冷徹な瞳で札を斬った。
「何度も言わせないで!!私は、黒羽様や卑弩羅様の為に武を振るうのだから」
若桜は仁摩に反撃し始めた。仁摩は棍棒で受け止めるのが精一杯で、姿勢が崩れ、棍棒に蹴りを入れられ、木にぶつかってしまった。起きあがろうとしたが、右肩を若桜に踏まれた。
「さぁ、これで分かったでしょう。貴方で私は倒せない。今ならまだ見逃してあげるわよ」
「私は・・若桜さんを倒すなんて考えてない。ただ、闇の手から救いたいだけよ!!」
仁摩は懸命に若桜に訴えたが、言葉は全く届かなかった。黒羽は仁摩を呆れた表情で見ていた。
「健気な娘ですわね。ですが、若桜の昔の記憶は消したから無駄な事ですわ」
千里は苦い顔をしながら、仁摩の説得を止めた。
「もう良いです!!仁摩さん。この者はもう若桜ではありません!!若桜は・・・もう亡くなったのですから」
「千里さん!!でも・・・」
仁摩は話を続けようとした時、太刀の刃を首に当てられた。首から浅く血が出た。
「これ以上戯言を言うなら、その喉元斬ってやるわ」
(やはり私では若桜さんを正気に戻せないの?桜龍が・・・皆が必死なのに、私は・・・)
仁摩の瞳から一筋の涙が流れた。厳美は仁摩に己の無力さを教えた。
「若桜ちゃん、あまりいじめてはいけませんよ。巫女ちゃんも、これで分かったでしょう。生半可な力では何も救えないとね」
「・・・仁摩さんを侮辱するな!!」
千里は怒りの刃を厳美に向けた。しかし、厳美に軽々と攻撃を避けられていた。