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第1章 異説 武田の残党狩り編 桃源郷に集う勇士

モトスは2人の戦いぶりを見て、驚いていた。
「この2人は・・・一体?」
すると初老の忍びの男が、彼を縛っていた拘束具を外し解放した。
「よくぞここまで頑張ったのう。モトス。お前は1人ではない。強い勇士がお前の元に集ったぞ!!」
モトスは懐かしい声の主に生気を取り戻して言った。
「・・・あなたは・・エンザン棟梁!!!無事だったのですね!!」
モトスの目から少し涙が出そうであったが、エンザンは強く叱った。
「たわけ!!息子が親よりも先に逝く馬鹿があるか!!・・・じゃが、わしも駆けつけるのが遅くなってしまった・・・すまぬ。」
エンザンは謝ったが、モトスは笑顔で棟梁を抱きしめた。
「謝らないでください!!棟梁。正直、俺1人ではもう終わりだと思っていました。共に戦ってくれた湘と球磨と離れ離れになってしまい・・・」
すると、エンザンはモトスの顔を覗き込んで、ニッコリと笑い、彼の傷を癒しの術で治療した。
「その共に戦っていた2人の若造がこのまま終わると思っているのか?」
エンザンは桜龍たちが戦っている方向を向くと、さらに2つの力が出現した。
「オラオラオラ!!!相手してー奴はまとめてかかってきな!!!」
球磨が周りにいる兵士たちを西洋槍や炎の魔法で一掃していた。すると、千里と交えていた白州が大男の存在に気が付いた。
「やはり暴れ牛がそう簡単に敗れるわけねーか。まぁ、ここでくたばったらつまんねーからな!!」
白州の大太刀突き攻撃を千里は鎖で受け止めたり、避け続けていた。すると突然、白州の黄金色のハネがどこからか氷の術が放たれ、凝固した。
「突然、割り込みをして悪いねぇー。この前の仕返しをしないと気が済まなくてねぇ~」
薄紫色の髪の優男は気障な口調で銃剣を構えていた。そして、千里は飛べなくなった白州に大地の魔法で辺り一面に転がっている岩石の嵐を放った。
「・・・く・・なかなかやるじゃねーか・・・・」
白州は痛手を負い、凍ったハネを切り落とした。


一方、梅雪は殺陣で桜龍に追い詰められていた。普段剣の稽古をロクにしていない梅雪にとって、2本の刀を装備しても、桜龍の剣さばきを受け止めるのでやっとであった。
「どうした!!その刀はお飾りか!!!てめえは弱者や動けぬ者を虐げるのは得意だが、俺程度の武芸者にさえ本気を出してもその程度なのかー?」
桜龍は見下すように梅雪を追い詰めていった。そして、桜龍は普段めったに見せない怒りをも含んだ冷徹な表情で言った。
「てめえみたいな極悪大名をこれ以上野放しに出来るか!!これで終わりだ!!」
桜龍は雷電を帯びた太刀で、梅雪の2本の刀を弾いた。そして、無防備になった梅雪を成敗しようとした。しかし突如、強風が彼を襲った。
「な・・・くっそー!!!!!」
桜龍は遠くに飛ばされ、木に叩きつけられた。
「悪いなぁー。呪い師さんよ。主とは大切な契約をしているんだ。ここで死んでもらっては困るんでな。江津とお都留も先に行ったしたことだし、俺らもここで撤退するわー。」
白州は梅雪を担ぎ、再び背中から黄金色のハネを出現させ、物凄い速さで空に飛び去った。
「お・・おい待ちやがれ!!!!」
桜龍は護符から聖なる光線を空を飛ぶ白州に当てようとしたが、攻撃は届かなかった。


「く・・・梅雪に気を取られていたからか・・・俺もまだまだ修行が足りないな」
桜龍は砂ぼこりや木の葉を払いながら、悔しい顔をしていた。すると、モトスや皆が彼の元に駆け付けてきた。
「大丈夫か?桜龍!!!」
一足先に桜龍に肩を貸したのは球磨だった。
「くまちゃん!!久しぶりー♪助けに来てくれたのか?」
桜龍は嬉しそうな顔をしていたが、球磨は呆れていた。
「お前なぁ・・・くまちゃんは止めろ!!でもまぁ、モトスのダンナも無事でよかったな」
「球磨と桜龍は知り合いなのか?」
モトスが2人に尋ねた。
「こいつとは、いろんな所での戦で味方になったり敵になったりと、切っても切れない縁でな・・・。まぁ、モトスのダンナと湘おじとの関係みてーだな」
球磨が桜龍の髪をくしゃくしゃと触りながら説明をした。すると、湘が少しムスッとした顔で否定した。
「・・・君たちのような自由奔放人とは一緒にして欲しくないねぇ・・・。それに、その湘おじはやめたまえ!!」
桜龍は笑いながら初めて会うモトスと湘に改めて自己紹介をした。
「初めまして。俺は出雲の神官、桜龍でーす♪全国の社を周っているよ。出雲って分かるよねー?砂丘はないよー」
冗談交じりの紹介に、モトスはクスっと笑い、湘は理解不能の表情をしていた。続いて後ろに控えていた千里が皆に自己紹介をした。
「僕は浅間山から来ました、千里と申します」
千里は桜龍とは正反対で来た場所と名前だけを答えた。皆は不思議に思ったが、桜龍は驚かずに彼のことをすでに理解していた。
「まぁ、今は仲間が集ったってことで良いじゃねーか。とりあえず、村の人の様子を見ようぜ!!」
一同は操られた村人たちが正気に戻ったか確認をしに行った。

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