第4章 鬼神の怒りと魔改造戦士の涙
勇士一行は、鳴子峡からニッコウキスゲなどの高山植物が咲き誇る栗駒高原を通っていた。そして麓を超えた先に、平泉の町が見えた。仁摩は景色を見て少し身震いしていた。
「この先からは、ただならぬ妖気を感じるわね・・・」
視力に優れるモトスも、町の様子を見て冷や汗をかいていた。
「ああ。遠くからでも見えるが、町は荒れ果てている」
遠くからでも役人の邸宅や武家屋敷から煙が上がっているのが見えた。領主を失った身分の高い者は没落し、逆に百姓や浪人などが屋敷に押し寄せ、食料や財を奪いに来ていると推測出来た。そして、それをあおっている輩も想像がついた。
平泉は平安末期、奥州藤原氏の繁栄で平安京と並ぶ、大きな都だった。しかし平家滅亡後、源氏による藤原氏討伐で都は崩壊し、その後繁栄はされなかった。湘はさぞ美しい都だったのだろうとしみじみ思いながら、現状を皆に教えた。
「この辺りは豊臣家による奥州征伐後、治めていた葛西(かさい)氏が討たれ、統治する者が居なくなったから荒れてしまった。それを機に厳美達に乗っ取られてしまったのだろう」
球磨は『酷い事しやがる』と怒りを抑えながら皆に言った。
「急いで、平泉に行こうぜ。領民が奴らにそそのかされて何するか分からねぇ!!」
千里は邪気が集う平泉を見て、拳を強く握り決心した。しだいに胸に強い怒りが込み上げてきた。
「・・・もう、魔改造戦士による犠牲者は出したくありません」
「ああ。敵は今までとは違う。一筋縄じゃいかないと思うが、これ以上奴らの好きにはさせない」
桜龍も聖なる龍を宿す左目に手を当てながら決意した。
奥州平泉にそびえ立つ金鶏山(きんけいざん)には村人や浪人、他地域から抜け出した男達が見物に来ていた。山頂の広場には十二単風の着物と、珍しい宝石を散りばめられた金の髪飾りを着けた小人の女『黒羽(くろう)』が皆を導いていた。
「皆様、良くぞ平泉までお越しくださいました。この金鶏山には戦女神、若桜が眠っております」
皆は黒羽の登場に拍手していた。彼女の隣に大芹、厳美、氷雨、豹剛も満遍な笑みを浮かべ、立っていた。すると、壊れかけた甲冑を身につけた青年が黒羽達に刃を向け現れた。
「貴様ら!!領民を巻き込んで、平泉を荒らすのはもう止めろ!!」
必死に抗う顔をする青年を大芹は鼻で笑っていた。
「おやおや、お飾りの領主のおでましか?」
現在、平泉周辺には有力な大名が居なかった。葛西が藤原に代わり、鎌倉時代から戦国時代まで収めていた。しかし、最近起きた、葛西を始め、豊臣秀吉に領地を没収された東北の大名による一揆で、平泉周辺は荒れ果て、さらに葛西は討ち死にした。現在は葛西の旧家臣が何とか領主を務めている。
「領主サンも若桜ちゃん目覚めさすのに手伝ってくださいよー」
厳美が陽気な口調で領主を誘ったが、怒鳴りながら断られた。
「ふざけるな!!私は亡き葛西家の意志を継ぎ、平泉を護る。領民にも藤原氏が残した文化財にも手を出させはしない!!」
黒羽は彼の熱意を聞き、あくびをしながら返答した。
「随分と郷土愛と亡き大名への忠誠心が強いですわねぇ。ですが今の平泉を見て言える事ですか?」
平泉は無法地帯となっていた。男はもちろん、女も武器を持ち戦女神探しに参加し、藤原氏の遺産、毛越寺や中尊寺などを荒らし、役人が止めに入っても、領民に痛めつけられ、なす術が無かった。
「皆は、藤原氏が残した美しい寺、そして長い間、葛西家が領民を思い、住みやすい土地へとした平泉を捨てるのか!!」
「だって、葛西は豊臣に討たれただろうが!!藤原が源氏に滅ぼされたのと一緒だ!!」
「京の都と同格の都に造り直せなかったじゃねーか!!」
領民はそうだそうだ!!と罵声を上げた。すると、大芹が領主に言った。
「最後に言う。落ちぶれた元家臣でも、戦女神と我々の仲間になるなら大歓迎だ」
「・・・私は、平泉の地を愛し、葛西家の代わりにこの地を護りたい。だから貴様らの配下になどならぬ!!」
「そうか、それは残念だ。魔改造人類となった民よ。愚かな領主に力を見せつけてやれ」
見た目は人間と変わらない魔改造人類は、領主を殴った。
「大名や武士が威張る時代は終わったんだよ!!!弱き者は魔改造人類に生まれ変わり、新しい時代は大芹様や俺達で創る!!」
平泉の領民や、他の地から来た人間は自らの意志で魔改造人類となってしまった。領主は涙を堪えながら領民から攻撃を食らっていた。大芹は領主に戦う力が無いとみなし、豹剛に命じた。
「豹剛、腹減っただろう。こいつ喰って良いぞ」
豹剛は弱い肉は嫌いなのか、後ずさりした。
「え・・止めとく・・・弱くて美味しくなさそう・・・」
「まぁ、そうだろうなぁ。では氷雨、好きに殺して良いぞ」
「それじゃあ、内臓から凍らせてみようかしら」
氷雨は、地に倒れている領主の頭を掴み、口を無理やり開けさせ、自らの手を液体に変え、領主の口に突っ込んだ。領主の体温は急激に下がり、内臓も体も凍りそうになったその時、湘が放った熱湯が2人に目掛け、降りかかった。氷雨は領主の口から液体化した手を出し、後退した。球磨は急ぎ領主の胸に暖かい手を置いた。領主の凍死寸前の内臓と体は温まり、仁摩が癒しの術で傷を治した。桜龍と千里とモトスは魔改造戦士の目の前に現れ、睨みながら武器を向けた。
「この先からは、ただならぬ妖気を感じるわね・・・」
視力に優れるモトスも、町の様子を見て冷や汗をかいていた。
「ああ。遠くからでも見えるが、町は荒れ果てている」
遠くからでも役人の邸宅や武家屋敷から煙が上がっているのが見えた。領主を失った身分の高い者は没落し、逆に百姓や浪人などが屋敷に押し寄せ、食料や財を奪いに来ていると推測出来た。そして、それをあおっている輩も想像がついた。
平泉は平安末期、奥州藤原氏の繁栄で平安京と並ぶ、大きな都だった。しかし平家滅亡後、源氏による藤原氏討伐で都は崩壊し、その後繁栄はされなかった。湘はさぞ美しい都だったのだろうとしみじみ思いながら、現状を皆に教えた。
「この辺りは豊臣家による奥州征伐後、治めていた葛西(かさい)氏が討たれ、統治する者が居なくなったから荒れてしまった。それを機に厳美達に乗っ取られてしまったのだろう」
球磨は『酷い事しやがる』と怒りを抑えながら皆に言った。
「急いで、平泉に行こうぜ。領民が奴らにそそのかされて何するか分からねぇ!!」
千里は邪気が集う平泉を見て、拳を強く握り決心した。しだいに胸に強い怒りが込み上げてきた。
「・・・もう、魔改造戦士による犠牲者は出したくありません」
「ああ。敵は今までとは違う。一筋縄じゃいかないと思うが、これ以上奴らの好きにはさせない」
桜龍も聖なる龍を宿す左目に手を当てながら決意した。
奥州平泉にそびえ立つ金鶏山(きんけいざん)には村人や浪人、他地域から抜け出した男達が見物に来ていた。山頂の広場には十二単風の着物と、珍しい宝石を散りばめられた金の髪飾りを着けた小人の女『黒羽(くろう)』が皆を導いていた。
「皆様、良くぞ平泉までお越しくださいました。この金鶏山には戦女神、若桜が眠っております」
皆は黒羽の登場に拍手していた。彼女の隣に大芹、厳美、氷雨、豹剛も満遍な笑みを浮かべ、立っていた。すると、壊れかけた甲冑を身につけた青年が黒羽達に刃を向け現れた。
「貴様ら!!領民を巻き込んで、平泉を荒らすのはもう止めろ!!」
必死に抗う顔をする青年を大芹は鼻で笑っていた。
「おやおや、お飾りの領主のおでましか?」
現在、平泉周辺には有力な大名が居なかった。葛西が藤原に代わり、鎌倉時代から戦国時代まで収めていた。しかし、最近起きた、葛西を始め、豊臣秀吉に領地を没収された東北の大名による一揆で、平泉周辺は荒れ果て、さらに葛西は討ち死にした。現在は葛西の旧家臣が何とか領主を務めている。
「領主サンも若桜ちゃん目覚めさすのに手伝ってくださいよー」
厳美が陽気な口調で領主を誘ったが、怒鳴りながら断られた。
「ふざけるな!!私は亡き葛西家の意志を継ぎ、平泉を護る。領民にも藤原氏が残した文化財にも手を出させはしない!!」
黒羽は彼の熱意を聞き、あくびをしながら返答した。
「随分と郷土愛と亡き大名への忠誠心が強いですわねぇ。ですが今の平泉を見て言える事ですか?」
平泉は無法地帯となっていた。男はもちろん、女も武器を持ち戦女神探しに参加し、藤原氏の遺産、毛越寺や中尊寺などを荒らし、役人が止めに入っても、領民に痛めつけられ、なす術が無かった。
「皆は、藤原氏が残した美しい寺、そして長い間、葛西家が領民を思い、住みやすい土地へとした平泉を捨てるのか!!」
「だって、葛西は豊臣に討たれただろうが!!藤原が源氏に滅ぼされたのと一緒だ!!」
「京の都と同格の都に造り直せなかったじゃねーか!!」
領民はそうだそうだ!!と罵声を上げた。すると、大芹が領主に言った。
「最後に言う。落ちぶれた元家臣でも、戦女神と我々の仲間になるなら大歓迎だ」
「・・・私は、平泉の地を愛し、葛西家の代わりにこの地を護りたい。だから貴様らの配下になどならぬ!!」
「そうか、それは残念だ。魔改造人類となった民よ。愚かな領主に力を見せつけてやれ」
見た目は人間と変わらない魔改造人類は、領主を殴った。
「大名や武士が威張る時代は終わったんだよ!!!弱き者は魔改造人類に生まれ変わり、新しい時代は大芹様や俺達で創る!!」
平泉の領民や、他の地から来た人間は自らの意志で魔改造人類となってしまった。領主は涙を堪えながら領民から攻撃を食らっていた。大芹は領主に戦う力が無いとみなし、豹剛に命じた。
「豹剛、腹減っただろう。こいつ喰って良いぞ」
豹剛は弱い肉は嫌いなのか、後ずさりした。
「え・・止めとく・・・弱くて美味しくなさそう・・・」
「まぁ、そうだろうなぁ。では氷雨、好きに殺して良いぞ」
「それじゃあ、内臓から凍らせてみようかしら」
氷雨は、地に倒れている領主の頭を掴み、口を無理やり開けさせ、自らの手を液体に変え、領主の口に突っ込んだ。領主の体温は急激に下がり、内臓も体も凍りそうになったその時、湘が放った熱湯が2人に目掛け、降りかかった。氷雨は領主の口から液体化した手を出し、後退した。球磨は急ぎ領主の胸に暖かい手を置いた。領主の凍死寸前の内臓と体は温まり、仁摩が癒しの術で傷を治した。桜龍と千里とモトスは魔改造戦士の目の前に現れ、睨みながら武器を向けた。