第4章 鬼神の怒りと魔改造戦士の涙
その頃、九州日向国(現宮崎県)。球磨の弟『紅史郎(こうしろう)』は孤児院の子供達と、青島海岸を歩いていた。引き潮で鬼の洗濯板が見えていた。
「今日は晴れて良かったな、皆んな。兄さんもこの眩しい太陽を見ているのかな?」
紅史郎は、過去に起きた『九州の大一揆』で球磨や桜龍達と敵対した。しかし、九州を支配し、炎の魔神と呼ばれた『ツクモ』と同化し、太陽神『アポロ』として覚醒し真の力を得た。現在は、妻の『つるぎ』と共に日向国で孤児院の院長をしている。子供達が砂浜を駆けている姿を見守っていると、神官のような壮年男性が彼に声を掛けてきた。
「ここは、穏やかな海だな」
「え!?どちら様ですか?」
紅史郎が驚いた顔をして尋ねたが、男は単刀直入に話を進めた。
「太陽神の生まれ変わり、紅史郎殿。どうか、力を貸して欲しい。今回は球磨や勇士達も危うい」
「球磨や勇士達って・・・貴方は兄さん達を知っているのですか?」
「ああ。私は東北の土竜王に仕える江津(ごうつ)。かつて出雲に居たが、今は地底世界で神官をしている。それより球磨達は今、東北に居る。そなたも力になってはくれないか?」
「江津さんと言いましたね・・・東北で何が起きているのですか?」
江津は東北の状況と魔改造戦士について説明した。紅史郎は魔改造戦士に思い当たる事があり、複雑な顔をしていた。
「魔改造戦士の大芹は、僕と同化した炎の魔神『ツクモ』を造った奴です・・・まさか兄さん達が奴らと戦っているとは・・・」
「今回こそは勇士達が敗れたら日ノ本は闇に染まり、民達は魔改造人類とされてしまう・・・私は勇士達の協力者を探している」
「兄達の元へ今すぐにでも行きたいのですが、妻と孤児院の子供達が・・・」
すると、妻のつるぎと、彼女の姉、珠姫(たまき)と次女の美羅(みら)が紅史郎の前に現れた。
「行ってきなさい、紅史郎。孤児院は私達三姉妹に任せなさい」
つるぎは勇ましい表情で紅史郎に言った。
「あたしも、商人の仕事は休業中だから子供達のお世話は任せてー♪」
陽気で聡明な美羅は自信満々に言った。一方、珠姫は事前にまじないで予知していたのか、思い詰めた態度だった。
「九州は益城(ましき)さんや鬼の一族が護ってくれるわよ。・・・だけど、東北で不吉な予感がするわ。あの男・・大芹は憎悪の力で魔改造された科学者よ・・・」
かつて、魔人ツクモの妻だった三姉妹は大芹の恐ろしさを知っていた。
「大芹の脅威と残酷さは僕も見たよ。だけど、僕は兄達を助けたい。だから、皆んな子供達を頼む」
「そうだ!!紅史郎、これを持って行って。森精霊の白州にも渡しているんだー🎵」
紅史郎は美羅から水晶が装飾された手鏡を受け取った。白州とは遠距離恋愛中で他愛ない話から、各地で起きている情報を伝え合ったりする仲である。
「その鏡を通して、あたし達と話す事が出来るわ。特につるぎにはしっかり連絡してねー」
「ありがとう、美羅。随時連絡するよ」
紅史郎は三姉妹と子供達に見送られ、江津と海岸線を歩いていた。
「・・・僕は太陽神アポロの化身のようですが、僕は貴方に認められる程の強者では・・・」
江津は微笑しながら返答した。
「それでは、伝説を聞かせてやろう」
聖なる龍、またを天を中心に4人の守護者が居る。それは地、水、火、風の4つの元素となる力。その他に、陸、海、空そして、太陽と月の5つの守護神も日ノ本を護る守護者達だった。
「海は海洋神いすみ殿、空は飛天族の蕨(わらび)殿。陸は地底の土竜王『八郎殿』。そして太陽は紅史郎殿という事だ」
「はぁ・・・そんな凄い方達と僕が並んで良いものか・・?ところで、月の守護者は誰なのですか?」
「それは、私にも分からぬ。ただ、案外予想外の者が月の守護者かもしれぬな」
「いずれ見つかりますよ、きっと。僕達は聖なる龍に導かれているのですから」
紅史郎は楽観的な考え方で、青島海岸を照らす太陽を見ながら歩いた。
その頃、陰のニホンでは、闇王卑弩羅が月見櫓で満月を見ていた。
「暗黒世界の月はより一層輝が増して美しい。陽のニホンが陰に取り込まれるのが楽しみだ」
「卑弩羅(ひどら)様、月見酒ですか?」
黒アゲハのハネを背に付けた将軍風の渋い男は、黄緑の餡で覆われた餅を卑弩羅に渡した。
「厄神四天王、朝霧(あさぎり)か。姿が見えないと思ったが、東北へ偵察に行っていたのだな」
「はい。魔改造戦士と勇士共の様子と、東北の状況を見に行きました。こちらは、奥州街道を偵察した時に買った、ずんだ餅です」
枝豆をすり潰し、餡に絡めた餅菓子を卑弩羅は酒と一緒に味わった。
「ほう。なかなかの美味だな。日ノ本の民を闇の中に消した後、ずんだ餅が無くなるのは惜しいな」
卑弩羅は朝霧に一杯付き合えと升を渡し注いだ。朝霧は静かに酒を口にした。朝霧は黒いハネに映る映像を卑弩羅に見せた。朝霧のハネは未来を映すことが出来るようだ。
「今回は魔改造戦士が優勢だ。勇士共もここで滅びるに違いない。我ら四天王の出る幕は無いな」
「そうか。では滅びる前に、聖なる龍の守護者『桜龍』の力を見ておこうではないか」
「卑弩羅様、平泉へ行くのですか?もしや、そこで聖なる龍と決着を付けるつもりですか?」
「いいや、お手並み拝見するだけだ。もし、勇士共が魔改造戦士に敗れたら、我が闇の龍『マガツイノカミ様』にも到底敵わぬという事だ」
「分かりました。卑弩羅様も平泉へ向かう事を黒羽に伝えておきます」
朝霧は櫓から出て行った。卑弩羅はまた月を眺めた。
「日ノ本、いいや、世界が無の空間となれば、月も消えてしまうのだろうか?」
卑弩羅の黒曜石のような瞳には月が反射していた。卑弩羅は自分が宿す闇龍の力と月の光が共鳴している事を不思議だと思っていた。
第4話 完
「今日は晴れて良かったな、皆んな。兄さんもこの眩しい太陽を見ているのかな?」
紅史郎は、過去に起きた『九州の大一揆』で球磨や桜龍達と敵対した。しかし、九州を支配し、炎の魔神と呼ばれた『ツクモ』と同化し、太陽神『アポロ』として覚醒し真の力を得た。現在は、妻の『つるぎ』と共に日向国で孤児院の院長をしている。子供達が砂浜を駆けている姿を見守っていると、神官のような壮年男性が彼に声を掛けてきた。
「ここは、穏やかな海だな」
「え!?どちら様ですか?」
紅史郎が驚いた顔をして尋ねたが、男は単刀直入に話を進めた。
「太陽神の生まれ変わり、紅史郎殿。どうか、力を貸して欲しい。今回は球磨や勇士達も危うい」
「球磨や勇士達って・・・貴方は兄さん達を知っているのですか?」
「ああ。私は東北の土竜王に仕える江津(ごうつ)。かつて出雲に居たが、今は地底世界で神官をしている。それより球磨達は今、東北に居る。そなたも力になってはくれないか?」
「江津さんと言いましたね・・・東北で何が起きているのですか?」
江津は東北の状況と魔改造戦士について説明した。紅史郎は魔改造戦士に思い当たる事があり、複雑な顔をしていた。
「魔改造戦士の大芹は、僕と同化した炎の魔神『ツクモ』を造った奴です・・・まさか兄さん達が奴らと戦っているとは・・・」
「今回こそは勇士達が敗れたら日ノ本は闇に染まり、民達は魔改造人類とされてしまう・・・私は勇士達の協力者を探している」
「兄達の元へ今すぐにでも行きたいのですが、妻と孤児院の子供達が・・・」
すると、妻のつるぎと、彼女の姉、珠姫(たまき)と次女の美羅(みら)が紅史郎の前に現れた。
「行ってきなさい、紅史郎。孤児院は私達三姉妹に任せなさい」
つるぎは勇ましい表情で紅史郎に言った。
「あたしも、商人の仕事は休業中だから子供達のお世話は任せてー♪」
陽気で聡明な美羅は自信満々に言った。一方、珠姫は事前にまじないで予知していたのか、思い詰めた態度だった。
「九州は益城(ましき)さんや鬼の一族が護ってくれるわよ。・・・だけど、東北で不吉な予感がするわ。あの男・・大芹は憎悪の力で魔改造された科学者よ・・・」
かつて、魔人ツクモの妻だった三姉妹は大芹の恐ろしさを知っていた。
「大芹の脅威と残酷さは僕も見たよ。だけど、僕は兄達を助けたい。だから、皆んな子供達を頼む」
「そうだ!!紅史郎、これを持って行って。森精霊の白州にも渡しているんだー🎵」
紅史郎は美羅から水晶が装飾された手鏡を受け取った。白州とは遠距離恋愛中で他愛ない話から、各地で起きている情報を伝え合ったりする仲である。
「その鏡を通して、あたし達と話す事が出来るわ。特につるぎにはしっかり連絡してねー」
「ありがとう、美羅。随時連絡するよ」
紅史郎は三姉妹と子供達に見送られ、江津と海岸線を歩いていた。
「・・・僕は太陽神アポロの化身のようですが、僕は貴方に認められる程の強者では・・・」
江津は微笑しながら返答した。
「それでは、伝説を聞かせてやろう」
聖なる龍、またを天を中心に4人の守護者が居る。それは地、水、火、風の4つの元素となる力。その他に、陸、海、空そして、太陽と月の5つの守護神も日ノ本を護る守護者達だった。
「海は海洋神いすみ殿、空は飛天族の蕨(わらび)殿。陸は地底の土竜王『八郎殿』。そして太陽は紅史郎殿という事だ」
「はぁ・・・そんな凄い方達と僕が並んで良いものか・・?ところで、月の守護者は誰なのですか?」
「それは、私にも分からぬ。ただ、案外予想外の者が月の守護者かもしれぬな」
「いずれ見つかりますよ、きっと。僕達は聖なる龍に導かれているのですから」
紅史郎は楽観的な考え方で、青島海岸を照らす太陽を見ながら歩いた。
その頃、陰のニホンでは、闇王卑弩羅が月見櫓で満月を見ていた。
「暗黒世界の月はより一層輝が増して美しい。陽のニホンが陰に取り込まれるのが楽しみだ」
「卑弩羅(ひどら)様、月見酒ですか?」
黒アゲハのハネを背に付けた将軍風の渋い男は、黄緑の餡で覆われた餅を卑弩羅に渡した。
「厄神四天王、朝霧(あさぎり)か。姿が見えないと思ったが、東北へ偵察に行っていたのだな」
「はい。魔改造戦士と勇士共の様子と、東北の状況を見に行きました。こちらは、奥州街道を偵察した時に買った、ずんだ餅です」
枝豆をすり潰し、餡に絡めた餅菓子を卑弩羅は酒と一緒に味わった。
「ほう。なかなかの美味だな。日ノ本の民を闇の中に消した後、ずんだ餅が無くなるのは惜しいな」
卑弩羅は朝霧に一杯付き合えと升を渡し注いだ。朝霧は静かに酒を口にした。朝霧は黒いハネに映る映像を卑弩羅に見せた。朝霧のハネは未来を映すことが出来るようだ。
「今回は魔改造戦士が優勢だ。勇士共もここで滅びるに違いない。我ら四天王の出る幕は無いな」
「そうか。では滅びる前に、聖なる龍の守護者『桜龍』の力を見ておこうではないか」
「卑弩羅様、平泉へ行くのですか?もしや、そこで聖なる龍と決着を付けるつもりですか?」
「いいや、お手並み拝見するだけだ。もし、勇士共が魔改造戦士に敗れたら、我が闇の龍『マガツイノカミ様』にも到底敵わぬという事だ」
「分かりました。卑弩羅様も平泉へ向かう事を黒羽に伝えておきます」
朝霧は櫓から出て行った。卑弩羅はまた月を眺めた。
「日ノ本、いいや、世界が無の空間となれば、月も消えてしまうのだろうか?」
卑弩羅の黒曜石のような瞳には月が反射していた。卑弩羅は自分が宿す闇龍の力と月の光が共鳴している事を不思議だと思っていた。
第4話 完