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第4章 鬼神の怒りと魔改造戦士の涙

その頃、千里と厳美の戦いは続いていた。厳美はそろそろ本気を出そうと、握り拳程の黒い球をいくつも出現させた。そして、千里に投げつけた。千里は球を避けたり鎖鎌で壊したが、幾つもの球は千里に集中し、彼の頬に命中した。鉛玉で殴られたような衝撃だった。
「う・・・くそ・・」
「ははは!!体を穴だらけにしてあげますよ!!」
黒い球は千里の体を殴り続けた。千里はひたすら防御していたが、目の前に翡翠のハネを広げたモトスが双曲刀で壊し、頬や腹部に当たったが、それでも怯まず千里を護った。
「・・・怒る気持ちは分かる。だが、自分だけで背負うな。お前の辛い過去を知った俺こそ、奴らへの強く怒りを感じておる」
「モトスさん・・・すみません・・僕は・・」
モトスは千里が謝ろうとした時、花びらを千里の口元に付けた。とても癒される香りで、受けた傷が回復した。
「これで落ち着いたか、俺は心配ないぞ。太陽の光で回復するから」
モトスはハネを広げ、日光の光を吸収させ頬の腫れなど傷跡が無くなった。
「ありがとうございます・・・」
千里がうつむきながら礼を言うと、湘達も駆けつけてきた。
「・・・盛り上がっているところ悪いが、私達を忘れていないか?」
「遅くなっちまったが、モグラは無事に浄化させたぜ♪」
「皆んな、ありがとうございます。・・・後は厳美だけです」
厳美は苦虫を潰したような顔をし、道衡に薬を飲めと促した。
「く・・・さぁ、道衡さん今こそ薬を飲む時です。こんなへんぴな村の長ではなく、東北の王となりたいでしょう?」
「あんた!!この後に及んで!!」
仁摩は厳美を矢で撃ち抜こうとしたが、桜龍に止められた。桜龍の様子がいつもと違っていたのに皆も気づいていた。
「僕は・・・村長として頼りない。父のように強く賢くない。皆に認めて貰えないのは分かる。だけど僕は、村の皆も鳴子も大好きだ!!だから、こんな薬で強くなりたくない!!」
道衡は薬を地面に叩きつけ、黒い液体は消えた。すると、桜龍が道衡の目の前に現れ、笑顔で褒めた。
「我が子孫よ。よくぞ、自ら道を切り開いてくれた!!私のように、厳美に薬漬けにされず良かった」
「お・・桜龍殿?いいえ・・・貴方はまさか」
「そう、私は藤原泰衡だ。私は心身共に弱かったから、義経様と敵対してしまい、我が一族も滅ぼしてしまった。だが道衡、お前は違う。お前には千里達勇士が応援してくれて、村の皆もお前に手を差し伸べてくれる」
「く・・・無能が今更何を諭しているのですか!!」
厳美は泰衡が憑依した桜龍を始末しようと襲い掛かろうとしたが、モトスに強烈な拳と蹴りを腹に入れられ、仁摩の護符で束縛された。球磨と湘はトドメを刺そうとしたが、彼の闇の波動に吹き飛ばされ、その隙に闇の中に逃げられた。皆は悔しい顔をしたが、気を取り直し、千里に道衡と泰衡の元へ行っておいでと促した。
「ですが、泰衡殿。僕は父のようになれません!!村の皆を守れるか自信がありません!!」
「無理に、父親のようになる必要はないよ。道衡は厳美の薬を捨てたんだ。自分が思っている以上に強いよ」
千里は2人の傍へ駆け寄り、泰衡に語りかけた。
「泰衡・・様・・・このような形で再開するとは思っても見なかったです」
「千里か・・・こたびは義経様やお主を裏切り、刃を向けた事を深く詫びる。本当に申し訳ない」
「良いのですよ、泰衡様。道衡殿を導いてくださり、ありがとうございます」
千里は泰衡の手を握った。泰衡は涙を流し、千里を抱きしめた。
「俺は・・黄泉でお前達の無事を祈る事しか出来ないが、どうかご武運を。・・・藤原家・・いいや、義経様や弁慶殿の無念を晴らしてくれ・・・」
「泰衡様、これから平泉で魔改造戦士と決着をつけます」
泰衡は満足そうな笑みを浮かべ、天に還った。桜龍は霊媒が終わった後も、千里を抱きしめ続け、涙を流していた。
「泰衡さん・・・千里や義経公と戦えなかった事を悔やんでいたぜ。まだその悲しさや無念が俺の心に残ってるんだ・・・」
「・・・桜龍・・泰衡様を呼んでくれて、ありがとうございます。そして、彼の心に共感してくれて、ありがとう・・・」
千里は涙を堪えながら桜龍の背中をさすった。モトスは2人の肩に腕を回し、強く抱きしめ言った。
「この戦い、勝とうな。もう悲劇を生まぬ為に・・・」
皆は北の方角を見ながら強く誓った。腰が抜けた道衡は、村人達に支えられ、これからは皆で村を支え、護ろうと決心した。


翌日、千里達は鳴子の村を出発しようとした。道衡と村人は笑顔で見送ってくれた。
「何から何までお世話になりました。僕は勇士様と出会い、励まされ勇気を貰いました。まだまだ未熟ですが、立派な村長になれるように頑張ります!!」
「道衡は自分が思う以上に芯が強いべさ。まぁ、オラ達が支えてやるから安心するべさ!!」
村人は道衡の肩を組み、笑いかけた。
「ご先祖様にも会えて、嬉しかったです。また鳴子に遊びに来てください。どうか、これからの戦いにご武運を」
桜龍達は道衡達に一礼し、村を後にした。鳴子から一ノ関へと続く栗駒高原を目指し、魔改造戦士が立ちはだかる平泉へ向かった。
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