第4章 鬼神の怒りと魔改造戦士の涙
桜龍達は、米沢から平泉へ向かっていた。現在は山形盆地を北上し、出羽国の北西から陸前国に入り、東北の景勝地『鳴子峡』を歩いていた。
「この辺りは人の気配が無いな。だが、たかぶっている気持ちとは裏腹に、随分と落ち着く場所だな」
モトスと仁摩は目を見開きながら雄大な山々を見ていた。
「自然豊かで身も心も洗練されるわ。修験者が通りそうな道ですね」
谷道から見える、重なる様に連なる山々、断崖の真下を流れる川と、秋には真っ赤に染まる楓などの木々が当たり一面に生い茂っている。野生動物の鳴き声や気配は感じるが、人の姿は見当たらない。モトスは森精霊の能力で、人間の気配は無いと察していた。
「さすがに、百姓や町人が険しい鳴子峡を通って平泉まで行くのは難しいだろう」
湘は少し疲れ気味の顔をしながら言った。
「ふう・・水辺や温泉があるから、休み休み歩けるが、馬を走らせられないのは少し不便だな」
「ここは道が狭いうえ、馬で駆けると崩落の恐れがあります。もう少し歩けば鳴子の村に辿り着きます」
千里は球磨の開いている地図を見て、村の位置を指さした。
「ユリ殿から奥州街道から行くのは難しいと教えてもらい、鳴子の地図を貰えてよかったな」
桜龍は村まであと一歩と皆を元気づけさせた。
「鳴子の村で休んだら、栗駒(くりこま)山の麓を通って一ノ関に入ろうぜ!!」
奥州街道の重要地、仙台と多賀城は職業身分問わず北へ行く道を封鎖している。いくら伊達家の命でも、正体が分からない魔改造戦士が桜龍達に化けて侵入するだろうと警戒されてしまう。なので、検問が無い鳴子峡から栗駒高原を通り、奥州平泉へ向うのが適切だと千里が提案した。
「多賀城は奈良時代から奥州の防衛や政治をしてきた所だから、万全に警備するだろうな」
「・・・ですが、魔改造戦士は闇の配下です。多賀城の警備は無意味に等しいです」
皆は確かにそうだなと頭を悩ませた。しかし、桜龍は動じていなかった。
「それでも東北を護り、千里の大切な仲間を弔う為に、戦おう!!」
仁摩は桜龍の強い眼差しに頬が赤くなった。そして皆も『そうだな』と頷いた。
夕方に鳴子峡麓の村に着いたが、外には誰も居なかった。
「まさか・・・戦女神を探しに村人は出て行ってしまったのかしら?」
仁摩は当たりを見回し心配していたが、モトスは気配を察してホッとした。
「いいや、それはないな。家から人の気配はする」
「だが、戸は閉まっているし、周りに防壁も立てられている。何かに警戒しているみたいだぜ」
すると、球磨は村人が木陰から現れるのを見た。
「おんめーらは、鳴子を荒らす不届き者だべか!!」
村人は鍬を持ち、桜龍達に襲い掛かろうとした。
「俺達は魔改造戦士を倒しに来たんです。この村にも奴らが来たのですか?」
村人は桜龍の堂々とした姿に敵ではないと分かり、鍬を地に置いた。
「いいや、発掘者がこの辺りに戦女神とやらが埋まってると、近くの畑を荒らしている。次はこの村の地面を掘ると馬鹿な事を言っていたべさ」
「とりあえず、魔改造戦士の魔の手は無くてホッとしたが、村の侵入は深刻であるな・・・」
「お前さん達は、見たところ襲いに来た奴らでは無いな。無礼な態度を取り、すまねーだ」
桜龍達は村人に、『気にしていないよ』と返した。
「いいえ、誤解が解けたので良かったです。もし良ければ、この村で休ませて貰えないでしょうか?」
村人は皆を村長の屋敷に案内した。村長は桜龍と同世代くらいの若い男性だった。最近父を亡くし、急遽村長を継いだらしい。
「村長に成り立てですが、村を守れるよう頑張っています。私は、道衡(みちひら)と申します」
千里は道衡を見て、藤原泰衡(やすひら)の面影を感じた。
(泰衡に似ている・・・まさか・・)
千里は道衡を魔改造戦士ではないかと疑った。モトスは彼の戸惑いに気が付いていた。
「大したもてなしは出来ませんが、しばらくゆっくりしていって下さい」
道衡は皆が泊まる部屋を用意した。桜龍達は広間で寛いだ。
「この辺りは人の気配が無いな。だが、たかぶっている気持ちとは裏腹に、随分と落ち着く場所だな」
モトスと仁摩は目を見開きながら雄大な山々を見ていた。
「自然豊かで身も心も洗練されるわ。修験者が通りそうな道ですね」
谷道から見える、重なる様に連なる山々、断崖の真下を流れる川と、秋には真っ赤に染まる楓などの木々が当たり一面に生い茂っている。野生動物の鳴き声や気配は感じるが、人の姿は見当たらない。モトスは森精霊の能力で、人間の気配は無いと察していた。
「さすがに、百姓や町人が険しい鳴子峡を通って平泉まで行くのは難しいだろう」
湘は少し疲れ気味の顔をしながら言った。
「ふう・・水辺や温泉があるから、休み休み歩けるが、馬を走らせられないのは少し不便だな」
「ここは道が狭いうえ、馬で駆けると崩落の恐れがあります。もう少し歩けば鳴子の村に辿り着きます」
千里は球磨の開いている地図を見て、村の位置を指さした。
「ユリ殿から奥州街道から行くのは難しいと教えてもらい、鳴子の地図を貰えてよかったな」
桜龍は村まであと一歩と皆を元気づけさせた。
「鳴子の村で休んだら、栗駒(くりこま)山の麓を通って一ノ関に入ろうぜ!!」
奥州街道の重要地、仙台と多賀城は職業身分問わず北へ行く道を封鎖している。いくら伊達家の命でも、正体が分からない魔改造戦士が桜龍達に化けて侵入するだろうと警戒されてしまう。なので、検問が無い鳴子峡から栗駒高原を通り、奥州平泉へ向うのが適切だと千里が提案した。
「多賀城は奈良時代から奥州の防衛や政治をしてきた所だから、万全に警備するだろうな」
「・・・ですが、魔改造戦士は闇の配下です。多賀城の警備は無意味に等しいです」
皆は確かにそうだなと頭を悩ませた。しかし、桜龍は動じていなかった。
「それでも東北を護り、千里の大切な仲間を弔う為に、戦おう!!」
仁摩は桜龍の強い眼差しに頬が赤くなった。そして皆も『そうだな』と頷いた。
夕方に鳴子峡麓の村に着いたが、外には誰も居なかった。
「まさか・・・戦女神を探しに村人は出て行ってしまったのかしら?」
仁摩は当たりを見回し心配していたが、モトスは気配を察してホッとした。
「いいや、それはないな。家から人の気配はする」
「だが、戸は閉まっているし、周りに防壁も立てられている。何かに警戒しているみたいだぜ」
すると、球磨は村人が木陰から現れるのを見た。
「おんめーらは、鳴子を荒らす不届き者だべか!!」
村人は鍬を持ち、桜龍達に襲い掛かろうとした。
「俺達は魔改造戦士を倒しに来たんです。この村にも奴らが来たのですか?」
村人は桜龍の堂々とした姿に敵ではないと分かり、鍬を地に置いた。
「いいや、発掘者がこの辺りに戦女神とやらが埋まってると、近くの畑を荒らしている。次はこの村の地面を掘ると馬鹿な事を言っていたべさ」
「とりあえず、魔改造戦士の魔の手は無くてホッとしたが、村の侵入は深刻であるな・・・」
「お前さん達は、見たところ襲いに来た奴らでは無いな。無礼な態度を取り、すまねーだ」
桜龍達は村人に、『気にしていないよ』と返した。
「いいえ、誤解が解けたので良かったです。もし良ければ、この村で休ませて貰えないでしょうか?」
村人は皆を村長の屋敷に案内した。村長は桜龍と同世代くらいの若い男性だった。最近父を亡くし、急遽村長を継いだらしい。
「村長に成り立てですが、村を守れるよう頑張っています。私は、道衡(みちひら)と申します」
千里は道衡を見て、藤原泰衡(やすひら)の面影を感じた。
(泰衡に似ている・・・まさか・・)
千里は道衡を魔改造戦士ではないかと疑った。モトスは彼の戸惑いに気が付いていた。
「大したもてなしは出来ませんが、しばらくゆっくりしていって下さい」
道衡は皆が泊まる部屋を用意した。桜龍達は広間で寛いだ。