第4章 鬼神の怒りと魔改造戦士の涙
桜龍、仁摩、モトス、千里は、出羽国米沢へ向かっていた。北国街道を進む途中、北信濃戸隠に寄った。
「これから魔改造戦士と戦う前に、墓参りをさせてください」
桜龍達はもちろんと頷いた。モトスは桃色の百合、仁摩は桔梗、桜龍はコスモスを用意し、花束を作って千里に渡した。千里は花束に赤い蘭を添えた。
「千里を造ってくれた大切な人だろう。弔い合戦の前に会いに行こうぜ。それに、戸隠は聖地だ。戸隠神社で勝利祈願していこうぜ」
信濃国北部、戸隠。周りには広大な戸隠連峰がそびえ立ち、麓の緑に覆われた杉並木の奥に、戸隠神社が鎮座しており、森を抜けると山々が水面に映る『鏡池』など、美しい池があった。
「自然豊かでそよ風が気持ちいわ。修験者も多いわね」
仁摩は戸隠に来たのが初めてだったので、神秘かつ美しい森と山の風景に感動していた。
「山奥には戸隠の忍びが修行している。真田家に仕える忍びも戸隠出身が多いぞ」
「術師の修行の場にも最適です。特に、戸隠山は修験者に愛されています」
「俺も昔登った事あるけど、生半可な気持ちだと挫折するぜ」
桜龍は頂上まで登れたが、途中の峠越えや岩山を縄で登るなど苦労したようだ。仁摩は『よく頑張ったわね!!』と感動していた。
桜龍達は戸隠神社の奥社で勝利祈願した後、元来た林道を戻ると、木陰から小人の女性が姿を現した。千里は女性の金茶色の髪と気高い姿を見て、生みの親の安曇(あずみ)の面影を感じた。
「私は梓(あずさ)だんべ・・・です。皆さんを待ってました」
梓と名乗った女性は普段、人と関わらないのか少しこわばった口調と訛りで緊張しているのが分かる。桜龍は気軽に声を掛けた。
「お嬢さんはここに住んでいる土竜(どりゅう)族ですかい?俺は桜龍、よろしくお願いします」
モトスと仁摩も桜龍に続き、名を名乗った。そして千里も懐かしいと思いながら挨拶した。
「僕は、千里です。この戸隠で生まれた人造戦士です。梓殿は、安曇様をご存知ですか?」
(千里・・・生きていて良かったべさ・・・)
梓は千里の姿を見て、嬉し涙が出そうになったが、我慢して冷静な口調で答えた。
「安曇は・・・私の母だっただずです。母が地底を出た時、私は小さかったですが、母の死後、私も戸隠で母の意志を継ぐようにしたです」
「そうでしたか・・・。ところでその事について土竜王はご存知なのですか?」
「八郎王は母と縁を切ったから、助けられず死なせてしまったと後悔してます。だから私にあなた方の力になれと託されましたべさ」
「追放ではなく、八郎王に頼まれたのですね」
「母は偉大な術師だったから、私に務まるか不安だったですが、共に来てくれた同胞に助けられて、一応は一人前の術師になれたと思います・・べさ」
梓は少し自信なさげに言うと、仁摩は微笑みながら彼女を励ました。
「一応ではなく、れっきとした術師ですよ。私には分かります。梓殿が一生懸命修行に励んでいた気持ちを」
仁摩に手を握られ、梓は少し頬が緩んでいた。小声でありがとうと仁摩に言った。
「ところで、今、東北が魔改造戦士の魔の手に脅かされてるのですが、土竜族は大丈夫ですか?」
「私達一族は強いべさ。特に八郎王は海王神いすみ殿と飛天族蕨(わらび)殿に並ぶ強者だべさ!!」
梓は小さな体で、自信満々な姿を千里に見せた直後、恥ずかしがって話題を変えた。
「母、安曇のお墓参りへ行くのでしょ?私も一緒に行くです」
皆は梓と戸隠山の麓にある墓地へ行った。
深い森に囲まれた墓地は誰も居なかった。人造戦士の生みの親、安曇を中心に魔改造戦士に殺された土竜族と術士の墓も並んでいた。桜龍と仁摩は死者を弔う祝詞を唱え、千里とモトスと梓は深く祈りを込めた。
(安曇様、戸隠の皆、僕達はこれから魔改造戦士の討伐へ向かいます。皆の仇と、東北を護るため、黄泉の世界で見守っていてください・・・)
千里は皆と作った花束を安曇の墓に添えた。しばらくして梓はそろそろ行こうかと言った。
「米沢へ行くのでしょう。『チカミチ』へ案内しますべさ」
「これから魔改造戦士と戦う前に、墓参りをさせてください」
桜龍達はもちろんと頷いた。モトスは桃色の百合、仁摩は桔梗、桜龍はコスモスを用意し、花束を作って千里に渡した。千里は花束に赤い蘭を添えた。
「千里を造ってくれた大切な人だろう。弔い合戦の前に会いに行こうぜ。それに、戸隠は聖地だ。戸隠神社で勝利祈願していこうぜ」
信濃国北部、戸隠。周りには広大な戸隠連峰がそびえ立ち、麓の緑に覆われた杉並木の奥に、戸隠神社が鎮座しており、森を抜けると山々が水面に映る『鏡池』など、美しい池があった。
「自然豊かでそよ風が気持ちいわ。修験者も多いわね」
仁摩は戸隠に来たのが初めてだったので、神秘かつ美しい森と山の風景に感動していた。
「山奥には戸隠の忍びが修行している。真田家に仕える忍びも戸隠出身が多いぞ」
「術師の修行の場にも最適です。特に、戸隠山は修験者に愛されています」
「俺も昔登った事あるけど、生半可な気持ちだと挫折するぜ」
桜龍は頂上まで登れたが、途中の峠越えや岩山を縄で登るなど苦労したようだ。仁摩は『よく頑張ったわね!!』と感動していた。
桜龍達は戸隠神社の奥社で勝利祈願した後、元来た林道を戻ると、木陰から小人の女性が姿を現した。千里は女性の金茶色の髪と気高い姿を見て、生みの親の安曇(あずみ)の面影を感じた。
「私は梓(あずさ)だんべ・・・です。皆さんを待ってました」
梓と名乗った女性は普段、人と関わらないのか少しこわばった口調と訛りで緊張しているのが分かる。桜龍は気軽に声を掛けた。
「お嬢さんはここに住んでいる土竜(どりゅう)族ですかい?俺は桜龍、よろしくお願いします」
モトスと仁摩も桜龍に続き、名を名乗った。そして千里も懐かしいと思いながら挨拶した。
「僕は、千里です。この戸隠で生まれた人造戦士です。梓殿は、安曇様をご存知ですか?」
(千里・・・生きていて良かったべさ・・・)
梓は千里の姿を見て、嬉し涙が出そうになったが、我慢して冷静な口調で答えた。
「安曇は・・・私の母だっただずです。母が地底を出た時、私は小さかったですが、母の死後、私も戸隠で母の意志を継ぐようにしたです」
「そうでしたか・・・。ところでその事について土竜王はご存知なのですか?」
「八郎王は母と縁を切ったから、助けられず死なせてしまったと後悔してます。だから私にあなた方の力になれと託されましたべさ」
「追放ではなく、八郎王に頼まれたのですね」
「母は偉大な術師だったから、私に務まるか不安だったですが、共に来てくれた同胞に助けられて、一応は一人前の術師になれたと思います・・べさ」
梓は少し自信なさげに言うと、仁摩は微笑みながら彼女を励ました。
「一応ではなく、れっきとした術師ですよ。私には分かります。梓殿が一生懸命修行に励んでいた気持ちを」
仁摩に手を握られ、梓は少し頬が緩んでいた。小声でありがとうと仁摩に言った。
「ところで、今、東北が魔改造戦士の魔の手に脅かされてるのですが、土竜族は大丈夫ですか?」
「私達一族は強いべさ。特に八郎王は海王神いすみ殿と飛天族蕨(わらび)殿に並ぶ強者だべさ!!」
梓は小さな体で、自信満々な姿を千里に見せた直後、恥ずかしがって話題を変えた。
「母、安曇のお墓参りへ行くのでしょ?私も一緒に行くです」
皆は梓と戸隠山の麓にある墓地へ行った。
深い森に囲まれた墓地は誰も居なかった。人造戦士の生みの親、安曇を中心に魔改造戦士に殺された土竜族と術士の墓も並んでいた。桜龍と仁摩は死者を弔う祝詞を唱え、千里とモトスと梓は深く祈りを込めた。
(安曇様、戸隠の皆、僕達はこれから魔改造戦士の討伐へ向かいます。皆の仇と、東北を護るため、黄泉の世界で見守っていてください・・・)
千里は皆と作った花束を安曇の墓に添えた。しばらくして梓はそろそろ行こうかと言った。
「米沢へ行くのでしょう。『チカミチ』へ案内しますべさ」