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第4章 鬼神の怒りと魔改造戦士の涙

闇の雲に覆われた陰のニホン、魔改造戦士、厳美(げんび)は城の地下奥にある大芹(おおぜり)の研究室へ向かっていた。すると、小人の女が入り口の前で立っていた。
「これはこれは、黒羽(くろう)様。大芹さんをお待ちですか?」
黒羽は澄ました顔で首を横に振った。
「大芹は居ませんわ。ただ、今度はどんな魔改造戦士を造っているのか、ここで想像していたのですよ」
「黒羽様なら自由に入って良いと思いますよ」
「いいえ、あの人は私を慕っているけど、私でさえ入ってはいけない領域があるのですわ」
厳美は眉間にしわを寄せながら考えていた。
「例えば、大切な人・・・とかですかね?私は愛情や憎しみを知らずに生まれたから、そういうの全く分かりませんねー」
「厳美、あなたは厄神様の為に戦えば良いのですよ。厄神様も卑弩羅(ひどら)様も望んでいますわ」
「分かりました。無駄な感情が無い分、余計な事を考えなくて楽ですね」
(ふふ、厳美は何も考えなくて良いのよ。だってあの子は厄神マガツイノカミ様の・・・)
黒羽は含み笑いを浮かべ、厳美の後ろ姿を見続けた。


その頃、千里とモトスは大阪城の本丸で、京の禁断の地での出来事を天下人、『豊臣秀吉』と彼に仕える信濃の大名『真田昌幸』に報告していた。京の町はもちろん、大阪でも爆発音や爆風が起き、戸惑いと恐怖が絶えない。秀吉は魔改造戦士の脅威に警戒態勢を図ろうとしていたが、とりあえずモトス達が無事でホッとした。
「何はともあれ、お前達が無事で良かった。大阪でも馬鹿でかい爆発音が聞こえたから何事かと思ったよ」
「幸い、人災はほとんど無くて良かったですな。その、魔改造奴隷とやらが爆発して死んだのは酷い話ですが・・・」
昌幸も今回の事件に心を痛めていた。現に大爆発で禁断の地の近くにある村は爆風で家屋が倒壊し、怪我人も出たりと少なからず被害はあった。現在、豊臣の兵士達は村の復興活動を行っている。
「奴らの話ですと、東北に眠る戦女神を起こすと言っていました。もう禁断の地には来ないとも言っていましたが、引き続き警戒を」
「そうだな・・・太平の世を狙って闇の者が現れるかもしれないしな・・・」
「魔改造戦士は東北の民を利用して戦女神を起こすかもしれません。・・・天下人から一番離れる東北で」
千里は深刻な顔で秀吉と昌幸に告げた。
「東北には伊達政宗殿や諸大名も居るから、その者達が危ないな・・・」
秀吉は決心し、2人に魔改造戦士討伐を命じた。
「千里とモトスは東北で魔改造戦士の討伐を命ずる。仲間の桜龍も京に来ているようだし、湘と球磨は伊達家に渡す舶来品を持って、米沢へ行っている」
数日前に仁摩から聞いたので、2人が米沢に行っていることは知っていた。
「決して無理はするな、2人共。だが、心強い仲間がいるなら大丈夫だな」
昌幸はモトス達勇士の実力を知っていた。モトスと千里は本丸御殿を出て、大阪城の正門で桜龍と仁摩と待ち合わせをしていた。すると、昌幸の息子『幸村』が駆けつけた。
「モトス!!千里!!これから米沢へ行くのか?政宗に会ったら、また共に武芸を見せ合い、焼酎を酌み交わしたいと伝えてくれないか?」
「幸村と政宗殿は年も近く仲が良いな。会ったら伝えておくよ。政宗殿も同じ気持ちだと思うぞ」
「政宗殿を危険な目にあわせぬよう、全力でお護りします」
「政宗は少し無鉄砲なところもあるけど、民を護ることを優先するから、敵に対して無茶はしないと思う。2人も未知の敵に気をつけてくれ」
「ありがとう、幸村。せっかく泰平の世になったのだ。闇の者に平和を脅かされるわけにはいかぬな」
「大阪や京の護りは、父上と俺に任せてくれ。それと、兄上は上州沼田城に居るから、何かあったら頼ってくれ」
モトスと千里は、幸村の頼もしさに大阪の守りを任すことができた。大阪には秀吉に仕える強者が多い。モトス達は存分に闇の者を成敗しに行く事が出来る。
モトスと千里は幸村と別れ、その後桜龍と仁摩が門に来た。
「米沢までどうやって行く?越前から船で酒田まで行くか、内陸だから陸路で馬を飛ばすか」
「陸路でお願いします。先を急いでいますが、どうしても戸隠に寄りたいので・・・」
滅多に頼み事をしない千里に対し、3人は意外だなと思ったが、戸隠は彼の故郷だと知っているので理由を聞かなかった。
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