第4章 鬼神の怒りと魔改造戦士の涙
「こいつは・・・千里の術が無かったら、俺達こっぱ微塵だったな・・・」
「いいえ、桜龍さんとモトスさんの魔力で防壁を強くしてくれたおかげで、助かりました」
土の防壁は消え、3人は辺り一面を見ると墓標は炎と灰に包まれ、嫌な焦げ臭さを感じた。
「何てむごいことしやがるんだ・・・ここには疫病にかかった村人が眠っているんだぞ!!」
「・・・安心しろ。ここに納骨など無い。私が、疫病にかかった者の研究をしたくて引き上げたのだ」
大芹が得意げに言うと、彼の足下にうつ伏せに倒れている魔改造奴隷が何かを訴えようとしていた。
「う・・うぅ・・すまなかった。もう、我々が君や村人にした行為を許して欲しい・・・・・」
「おやおや、君はあれ程の爆発の中で、まだ生きていたとは。まぁ、自分の名誉と保身が大事な官僚サマならしぶといのも当然か」
「もう・・お許しください・・・・私は、あなた様の・・・」
「・・・いいよ、許してあげる。もう君を使うのも飽きた。だから、最後に勇士どもを道連れにして死ね!!」
大芹は狂ったような笑い方をし、魔改造奴隷の頭を握りつぶす程の力で掴み、鞠を蹴るように遠くに蹴り飛ばした。そして先程のように、爆発させようとしていた。
「もう止めろ!!」
桜龍の聖なる龍の瞳は白金色に光だし、爆発寸前の魔改造奴隷に五芒星を描き、優しい光に包み込んだ。すると、体は土に戻り魔石と共に魂は浄化された。
「さあ、大芹。全ての魔改造戦士は浄化した。あとは貴様だけだ」
「ふ・・ふふふ、アーハハハハ!!貴様らなんぞいつでも始末出来るから、今日のところは引いてやる」
「何か、企んでいるようですね・・・」
「千里がよく知っている、戦女神を目覚めさせる余興を東北で行うのだが、良かったら君達も見に来ないか?」
「戦女神というのも魔改造戦士なのか!!」
桜龍は大芹に問い詰めようとしたが、千里に止められた。
「いずれ分かるさ。東北は戦女神と我らを筆頭に、魔改造人類の世界となるのだから」
大芹は勝ち誇った顔をし、闇の中へ消えていった。桜龍が指から光線を出し、ゆっくり体を回した。すると、荒地を囲むように光の結界が現れ、散らばっていた魔改造奴隷の魔石の破片や泥となった死体を浄化し消し去った。
「・・・この地のけがれを打ち消した。これで、禁断の地とも呼ばれなくなるし、奴も二度とここには来ないだろう」
「何だか、後味の悪い戦いだったな・・・」
「信じたくありませんが、おそらく大芹はこの村の医師をしていた者だと思います」
「その医師って・・・もしかして・・」
桜龍は墓石で見た、幻影を2人に話そうとした。すると、桜龍と共に京に来ていた、出雲の巫女『仁摩(にま)』と輝政が河原に駆けつけた。
「桜龍!!モトスさん!!千里さん!!物凄い爆発があったけど、怪我はない?」
桜龍達は2人が戦い中に来なくて良かったとほっとしていた。仁摩も3人が無事で良かったと涙を流していた。
「仁摩殿、何かあったのか!!」
「輝政の神社の池に、湘さんが映って、今は球磨さんと出羽の米沢城に居るみたいなの。詳しい事は神社で話すわ」
「おう、俺も色々話したい事があるぜ。輝政、この禁断の地のけがれを払っておいたぜ」
「ありがとう、桜龍。凄まじい戦いだったみたいだな。牛車を用意したから乗っていってくれ」
桜龍達は牛車に乗り、輝政の神社へ向かった。
夜になり、皆は輝政の実家の神社で休んでいた。輝政は3人が敵と激しい戦いをしていた事を知り、深く謝った。
「危険な目に合わせてしまってすまない・・・桜龍、モトス殿、千里殿」
モトスは笑顔で『気にするな』と言った。
「いいや、心配には及ばぬ。これで、大芹や魔改造戦士の戦法が分かったしな」
「荒地は跡形も無く、大芹が爆発させちまったよ。だが、奴は二度とそこには行かないと思う」
「それで、湘さんからの伝言は何ですか?」
仁摩は湘からの伝言を皆に教えた。
「湘さんと球磨さんは、出羽国の最上川で魔改造戦士と戦ったと言っていたわ。被害は少なかったけど、敵が『東北は戦女神が民主を束ねる地となる』と告げて逃げたそうだわ」
「戦女神って大芹の野郎も言ってたな・・・」
「・・・・」
黙り込む千里に、モトスは聞いてみた。
「千里、もしかして戦女神と接点があるのか?」
「・・・はい。僕の戦友であり・・・恋人でした」
「え!?千里、恋人がいたのか?」
桜龍が目をパチクリして驚くと、輝政に突っ込まれ、仁摩に呆れられた。
「桜龍、驚くところはそこか!?」
千里は桜龍達とのやりとりを気にせず、淡々と話を続けた。
「はい。彼女も僕と同じ人造戦士でした。ですが、彼女は源氏に追われる中、討ち死にしました」
「そうだったのか、しかし、目覚めさせるという事は、まさか・・・」
「はい。彼女は厳美や大芹の手によって、冷酷な魔改造戦士に作り変えられてしまったのです・・・」
「そうだったのか。辛い過去を話してくれてありがとう、千里」
モトスはうつむいている千里の背中を優しく撫でた。
「千里の恋人も闇の奴らに悪用されるに違いない。大芹達に囚われる前に救い出そうぜ」
「私も行くわ、桜龍。私だって東北の民達を護ってみせるわ!!」
「仁摩殿・・・今回は、正直今まで以上に危険を伴います。僕達でも命がけの戦いになるのは絶対です」
「仁摩殿がついてきてくれるのは心強いが、魔改造戦士も強敵だ。仁摩殿を護りきれるか分からぬ」
「私には、私の出来る事をします。湘さんのお父さん、真鶴さんに教えられました。それに、新しい武器で桜龍達を護れと」
仁摩は小田原成敗の時に海龍の化身『真鶴(まなづる)』から授かった黄金の弓を持ち、勇ましい姿で立った。
「・・・やれやれ、仁摩殿には負けるなー。ただ、これだけは言っておく。危険な目にはあわせない」
「そうと決まれば、明日には出発だな。行かれるか、千里?」
(ついに魔改造戦士と戦う時が来ました。もう、誰も犠牲にはさせない)
千里は武者震いが止まらなかった。モトスが彼の頭を胸に引き寄せた。
「心配するな、俺達がついている。・・・お前を護る」
仁摩と輝政は口を押さえながら照れていた。
「俺も居る事を忘れずにねー」
桜龍はモトスと千里を見て、微笑んでいた。
第1話 完
「いいえ、桜龍さんとモトスさんの魔力で防壁を強くしてくれたおかげで、助かりました」
土の防壁は消え、3人は辺り一面を見ると墓標は炎と灰に包まれ、嫌な焦げ臭さを感じた。
「何てむごいことしやがるんだ・・・ここには疫病にかかった村人が眠っているんだぞ!!」
「・・・安心しろ。ここに納骨など無い。私が、疫病にかかった者の研究をしたくて引き上げたのだ」
大芹が得意げに言うと、彼の足下にうつ伏せに倒れている魔改造奴隷が何かを訴えようとしていた。
「う・・うぅ・・すまなかった。もう、我々が君や村人にした行為を許して欲しい・・・・・」
「おやおや、君はあれ程の爆発の中で、まだ生きていたとは。まぁ、自分の名誉と保身が大事な官僚サマならしぶといのも当然か」
「もう・・お許しください・・・・私は、あなた様の・・・」
「・・・いいよ、許してあげる。もう君を使うのも飽きた。だから、最後に勇士どもを道連れにして死ね!!」
大芹は狂ったような笑い方をし、魔改造奴隷の頭を握りつぶす程の力で掴み、鞠を蹴るように遠くに蹴り飛ばした。そして先程のように、爆発させようとしていた。
「もう止めろ!!」
桜龍の聖なる龍の瞳は白金色に光だし、爆発寸前の魔改造奴隷に五芒星を描き、優しい光に包み込んだ。すると、体は土に戻り魔石と共に魂は浄化された。
「さあ、大芹。全ての魔改造戦士は浄化した。あとは貴様だけだ」
「ふ・・ふふふ、アーハハハハ!!貴様らなんぞいつでも始末出来るから、今日のところは引いてやる」
「何か、企んでいるようですね・・・」
「千里がよく知っている、戦女神を目覚めさせる余興を東北で行うのだが、良かったら君達も見に来ないか?」
「戦女神というのも魔改造戦士なのか!!」
桜龍は大芹に問い詰めようとしたが、千里に止められた。
「いずれ分かるさ。東北は戦女神と我らを筆頭に、魔改造人類の世界となるのだから」
大芹は勝ち誇った顔をし、闇の中へ消えていった。桜龍が指から光線を出し、ゆっくり体を回した。すると、荒地を囲むように光の結界が現れ、散らばっていた魔改造奴隷の魔石の破片や泥となった死体を浄化し消し去った。
「・・・この地のけがれを打ち消した。これで、禁断の地とも呼ばれなくなるし、奴も二度とここには来ないだろう」
「何だか、後味の悪い戦いだったな・・・」
「信じたくありませんが、おそらく大芹はこの村の医師をしていた者だと思います」
「その医師って・・・もしかして・・」
桜龍は墓石で見た、幻影を2人に話そうとした。すると、桜龍と共に京に来ていた、出雲の巫女『仁摩(にま)』と輝政が河原に駆けつけた。
「桜龍!!モトスさん!!千里さん!!物凄い爆発があったけど、怪我はない?」
桜龍達は2人が戦い中に来なくて良かったとほっとしていた。仁摩も3人が無事で良かったと涙を流していた。
「仁摩殿、何かあったのか!!」
「輝政の神社の池に、湘さんが映って、今は球磨さんと出羽の米沢城に居るみたいなの。詳しい事は神社で話すわ」
「おう、俺も色々話したい事があるぜ。輝政、この禁断の地のけがれを払っておいたぜ」
「ありがとう、桜龍。凄まじい戦いだったみたいだな。牛車を用意したから乗っていってくれ」
桜龍達は牛車に乗り、輝政の神社へ向かった。
夜になり、皆は輝政の実家の神社で休んでいた。輝政は3人が敵と激しい戦いをしていた事を知り、深く謝った。
「危険な目に合わせてしまってすまない・・・桜龍、モトス殿、千里殿」
モトスは笑顔で『気にするな』と言った。
「いいや、心配には及ばぬ。これで、大芹や魔改造戦士の戦法が分かったしな」
「荒地は跡形も無く、大芹が爆発させちまったよ。だが、奴は二度とそこには行かないと思う」
「それで、湘さんからの伝言は何ですか?」
仁摩は湘からの伝言を皆に教えた。
「湘さんと球磨さんは、出羽国の最上川で魔改造戦士と戦ったと言っていたわ。被害は少なかったけど、敵が『東北は戦女神が民主を束ねる地となる』と告げて逃げたそうだわ」
「戦女神って大芹の野郎も言ってたな・・・」
「・・・・」
黙り込む千里に、モトスは聞いてみた。
「千里、もしかして戦女神と接点があるのか?」
「・・・はい。僕の戦友であり・・・恋人でした」
「え!?千里、恋人がいたのか?」
桜龍が目をパチクリして驚くと、輝政に突っ込まれ、仁摩に呆れられた。
「桜龍、驚くところはそこか!?」
千里は桜龍達とのやりとりを気にせず、淡々と話を続けた。
「はい。彼女も僕と同じ人造戦士でした。ですが、彼女は源氏に追われる中、討ち死にしました」
「そうだったのか、しかし、目覚めさせるという事は、まさか・・・」
「はい。彼女は厳美や大芹の手によって、冷酷な魔改造戦士に作り変えられてしまったのです・・・」
「そうだったのか。辛い過去を話してくれてありがとう、千里」
モトスはうつむいている千里の背中を優しく撫でた。
「千里の恋人も闇の奴らに悪用されるに違いない。大芹達に囚われる前に救い出そうぜ」
「私も行くわ、桜龍。私だって東北の民達を護ってみせるわ!!」
「仁摩殿・・・今回は、正直今まで以上に危険を伴います。僕達でも命がけの戦いになるのは絶対です」
「仁摩殿がついてきてくれるのは心強いが、魔改造戦士も強敵だ。仁摩殿を護りきれるか分からぬ」
「私には、私の出来る事をします。湘さんのお父さん、真鶴さんに教えられました。それに、新しい武器で桜龍達を護れと」
仁摩は小田原成敗の時に海龍の化身『真鶴(まなづる)』から授かった黄金の弓を持ち、勇ましい姿で立った。
「・・・やれやれ、仁摩殿には負けるなー。ただ、これだけは言っておく。危険な目にはあわせない」
「そうと決まれば、明日には出発だな。行かれるか、千里?」
(ついに魔改造戦士と戦う時が来ました。もう、誰も犠牲にはさせない)
千里は武者震いが止まらなかった。モトスが彼の頭を胸に引き寄せた。
「心配するな、俺達がついている。・・・お前を護る」
仁摩と輝政は口を押さえながら照れていた。
「俺も居る事を忘れずにねー」
桜龍はモトスと千里を見て、微笑んでいた。
第1話 完