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第4章 鬼神の怒りと魔改造戦士の涙

一方その頃、真田家と豊臣家に使える、精霊忍者の『モトス』と、人造戦士の隠密、『千里(せんり)』も京の荒地で起きている怪事件を調査していた。
2人は京の中心通りで開催されている行商市場で話を聞き込んでいた。
「これだけ賑わいを見せている都で不可解な事件が広まるのは危険だ。一刻も早く根源を叩かねば」
「市場や都の人はまだ事件を知らないようですね。荒地に誰も行かないからだと思いますが・・」
2人はひたすら行商人や町人に聞き込みを続けていると、モトスの足に軽く女の子の顔がぶつかった。少女は慌てて謝った。
「ああ!!ごめんなさい。市場を初めて見たので・・・はしゃいじゃって」
直ぐに野菜を籠に担いだ男が駆けつけ、少女を注意し、2人に謝った。
「こら、目が見えるようになったからって、突然走ったら駄目だろ!!すみません・・・娘を市場に連れて行くの初めてで・・・」
モトスはしゃがみ込み、少女と目線を合わせながら尋ねた。
「元気な娘さんで何よりです。ところで、目が見えるようになったとは・・・?お嬢ちゃん、今まで見えなかったのかい?」
少女はコクリと頷いた。父が代わりに説明した。
「はい・・・私たちは貧しい百姓で、娘は生まれつき目が見えず、高額なお金で治療するのが出来なかったのですが・・・」
しかし奇妙な男が、娘に新しい目を入れて、見えるようにしてくれた。父はその事を2人に話した。

数日前の事だった。
『わーい!!目が見えるようになったー!!おじちゃんありがとう!!』
『娘の目を治してもらい、ありがとうございます!!これは僅かな金ですが、足りなくても必ず返します』
『お金は要らないよ、私の好きでやった事なのだから。・・・娘が生きていたらこの子みたいな元気で可愛い子だったかな・・・』
男の顔は少し涙を流しそうだった。
『娘さんを亡くしたのですか・・・?』
『いいや、死んでなどいない。再び蘇らせてみせるさ。・・・全てが終わった後に』
男は妖しく笑みを浮かべ、呟いた。百姓は彼の言葉が気になったが、男に話題を変えられた。
『助けた代わりに、私の事を忘れて欲しい。礼をしたいなど考えなくて良い。それと、荒地には絶対に行かぬように』
男はこれ以上百姓と話をせずその場を去った。


モトスは話を聞いて感心している反面、不可解な部分もあった。
「無償で目を治してくれたのか。なんとも献身的な医者だな・・・」
「はい。彼は娘の病を治してくれた恩人です!!」
「・・・・」
千里は屈み、少女の瞳をじっと見つめた。一瞬、眉をひそめた。少女に『どうしたの?』と聞かれると直ぐに笑顔で答えた。
「目が見えるようになって、良かったですね」
2人は親子と別れた後、都の東にある清水寺の舞台で景色を見ていた。
「空は綺麗だな。だが、これからまた不吉な事が起きる・・・それも今までに無い脅威を感じる」
「・・・あの少女の目は、他の人間から奪い取った物です。おそらく、最近囚われた役人の目・・・あんな事をするのは・・」
「・・・心当たりがあるのか?」
モトスは恐る恐る千里に聞いてみた。
「おそらく、魔改造戦士の『大芹(おおぜり)』です。奴は科学者ですが、改造される前は医師だったようです」
「あやつか・・・しかし、少女の目を治したのはどういうつもりなのだろう。奴は根からの悪者ではないのか?しかし、他人から目を奪うのも犯罪であるし・・・」
「大芹の真意は分かりません。ただ、人への憎しみから魔改造戦士となったのは確かです」
千里が苦い顔をして考え込むと、モトスは遠くに見える荒れ地を指差し決断した。
「とりあえず、その禁断の地へ行ってみよう。犯人は大芹かもしれぬし」
千里は『そうですね』と頷いた後、都全体を見渡し、懐かしさで胸を膨らませた。
「京の都は、義経様が育ち修行され、それと弁慶殿とも出会った地です。特に、この清水の舞台からよく景色を見ていたそうです」
モトスは偵察がてら、千里と五条大橋や鞍馬寺を巡った。その時の千里は熱意を込めて案内してくれた。モトスはそんな彼の義経への想いに感化され、弔い合戦に気合いを入れていた。
「義経殿と弁慶殿の無念を晴らし、ここに居る民達を魔の手から守ろう」
2人は武器を確認し、西の荒地へ向かった。
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