番外編 千里の話 鬼神と呼ばれた人造戦士
源平合戦が終わり、泰平の世が訪れるはずだった・・・。
壇ノ浦の戦い後、源頼朝と鎌倉幕府は軍神、義経が邪魔になり、全国に討伐令を出した。京で朝廷の補佐をしていた義経は、兄頼朝の重圧により寺社や民達から攻撃を受けた。突然の事で義経は信じられずに居たが、千里は直ちに奥州藤原氏を頼った方が良いと、京を脱した。北陸道を通る途中、信濃国戸隠に立ち寄った。しかし村は壊滅状態だった。安曇と共に人造戦士を造っていた土竜族や陰陽師は何者かに殺害されていた。
「これは酷い事を・・・源氏軍はここまで来ていたのか」
庵には多くの死体が転がっていた。
「千里と若桜、人造戦士の故郷まで襲ったのか・・・」
千里は口調は冷静だったが、心は悔しさと憎しみに溢れていた。
「僕が早くに襲撃に気づいていれば・・・ですが、後悔しても仕方ありませんね」
「千里・・・これはおそらく、源氏兵の仕業ではないわ。私達同胞の匂いがする・・・それも、邪悪な者」
「邪悪な者・・・安曇様もまさか!?」
千里は安曇に何かあったと、胸騒ぎを感じていた。
「安曇様を探します!!」
千里は安曇が住んでいた地下の祠に入った。しかしそこには、造りかけの人造戦士が破壊され、その側に、小さい体が倒れていた。
「千里・・・と若桜か?」
安曇は胸を一突き刺されていた。千里と若桜は急ぎ、止血をしようとしたが、安曇に止められた。
「もう良い・・・私は長く生き過ぎた。あなた方は、源義経殿と武蔵坊弁慶殿だな。千里達がお世話になった・・・」
「母様!!もう喋らないで下さい。今、手当をします!!」
若桜は術で安曇の傷を治そうとしたが、厳しく止められた。
「やめなさい、若桜。その力はこれから襲ってくる敵・・・魔改造戦士と戦うのに使いなさい」
「魔改造戦士・・・とは?」
「私と同様、土竜族を出て行った闇の傀儡師『黒羽(くろう)』が造った人造兵器よ。あの女は危険だ・・うぅ・・・」
弁慶は魔改造戦士と組んだ頼朝を憎み始めた。
「魔改造戦士とやらと頼朝は手を組んだのか・・・弟を討つために悪に魂を売ったのか!!」
「もし、何かあったら東北に居る土竜族を頼りなさい。千里、若桜。私は破門された身だけど、私の名を言えば通してくれる」
安曇の言葉はこれが最後だった。千里と若桜は涙を見せないものの、生みの親を殺され、悲しさと怒りでいっぱいだった。その後、皆で安曇や殺された土竜族と陰陽師の遺体を戸隠山に埋葬した。
「前に進みましょう、皆んな。義経様を無事に東北へお連れしましょう」
「千里、平泉の藤原家を頼ろう。これは兄と私の問題だ。これ以上、土竜族を巻き込んではいけない」
「確かに、藤原家なら義経様と昔から親交が深い。どのみち、平泉に寄ってみた方が良いな」
弁慶も義経の意見に賛同し、まずは平泉へ向かおうと決めた。
その後一行は、戸隠から越後を通り、東北に入り平泉を目指していた。馬で駆けている途中、陸前多賀城付近で黒ずくめの軍団が待ち伏せていた。千里と若桜は、自分とは違う人造戦士だと察した。
「こやつらが魔改造戦士ね・・・感情や生気を感じないわ」
「おそらく、戦う以外の余計な感情を取り除いたのでしょう」
「く・・・多賀城もすでに頼朝の支配下か・・・」
魔改造戦士は一斉に義経達に襲いかかった。人間はおろか人造戦士にも勝る素早さと攻撃力に苦戦を強いられた。しかし、千里と若桜、義経に忠誠を誓う人造戦士は必死に義経を護った。
「千里!!若桜!!ここは我々に任せろ!!2人は我が殿と弁慶殿を連れ、平泉へ向かえ!!」
人造戦士達は武器を構え、必死に魔改造戦士と対峙した。義経は彼らを置いて行けないと思ったが、千里と若桜に止められた。
「・・・気持ちは分かります。ですが、同胞の頼みを無駄にはできません。皆、分かっています。義経様を無事に藤原氏の元へ連れて行くと・・・」
「人造戦士は決して捨て駒ではありません。義経様を護れた事に誇りを持っています」
義経はすまぬ・・・と、馬に乗り平泉を目指した。しかし、平泉の手前、『一ノ関』に入る前、再び魔改造戦士が現れた。千里と若桜は必死に抵抗したが、彼らの闇の力が上手だった。不意を突かれ、千里に黒い刃が刺さりそうになった瞬間、若桜は彼を庇い、胸を貫かれ心臓部となる魔石を破壊された。
「わ・・・若桜!!!!」
千里の真紅の瞳は夜叉の目となり、怒りで力が増し、魔改造戦士を全滅させた。千里は直ぐに若桜の傷を治した。しかし、魔石を粉々にされては、死を待つしか無かった。
「千里・・・・ごめんね、約束守れなくって・・・。私、千里の事好きだよ。千里と旅したり、家を建てて幸せな家庭を築いたり、とにかく、千里と一緒に居られたらいいなと思ったわ。・・・だけど、私の事は忘れて義経様と弁慶殿と平泉へ向かって。そして、幸せになって・・・千里」
若桜は虚ろな瞳で、千里の頬を触り、顔を近づけさせ口付けした。
「・・・あなたなら魔改造戦士にも、厄神にも負けないわ」
若桜は息絶えた。千里は涙を流さず、黙って彼女の墓を立てた。
「義経様、弁慶殿。平泉へ向かいましょう・・・・」
千里は若桜や人造戦士の死を悲しむ時間は無いと心に言い聞かせていた。
千里達が一ノ関を去ると、小人の女が木の影から現れ、妖しい笑みを浮かべていた。
壇ノ浦の戦い後、源頼朝と鎌倉幕府は軍神、義経が邪魔になり、全国に討伐令を出した。京で朝廷の補佐をしていた義経は、兄頼朝の重圧により寺社や民達から攻撃を受けた。突然の事で義経は信じられずに居たが、千里は直ちに奥州藤原氏を頼った方が良いと、京を脱した。北陸道を通る途中、信濃国戸隠に立ち寄った。しかし村は壊滅状態だった。安曇と共に人造戦士を造っていた土竜族や陰陽師は何者かに殺害されていた。
「これは酷い事を・・・源氏軍はここまで来ていたのか」
庵には多くの死体が転がっていた。
「千里と若桜、人造戦士の故郷まで襲ったのか・・・」
千里は口調は冷静だったが、心は悔しさと憎しみに溢れていた。
「僕が早くに襲撃に気づいていれば・・・ですが、後悔しても仕方ありませんね」
「千里・・・これはおそらく、源氏兵の仕業ではないわ。私達同胞の匂いがする・・・それも、邪悪な者」
「邪悪な者・・・安曇様もまさか!?」
千里は安曇に何かあったと、胸騒ぎを感じていた。
「安曇様を探します!!」
千里は安曇が住んでいた地下の祠に入った。しかしそこには、造りかけの人造戦士が破壊され、その側に、小さい体が倒れていた。
「千里・・・と若桜か?」
安曇は胸を一突き刺されていた。千里と若桜は急ぎ、止血をしようとしたが、安曇に止められた。
「もう良い・・・私は長く生き過ぎた。あなた方は、源義経殿と武蔵坊弁慶殿だな。千里達がお世話になった・・・」
「母様!!もう喋らないで下さい。今、手当をします!!」
若桜は術で安曇の傷を治そうとしたが、厳しく止められた。
「やめなさい、若桜。その力はこれから襲ってくる敵・・・魔改造戦士と戦うのに使いなさい」
「魔改造戦士・・・とは?」
「私と同様、土竜族を出て行った闇の傀儡師『黒羽(くろう)』が造った人造兵器よ。あの女は危険だ・・うぅ・・・」
弁慶は魔改造戦士と組んだ頼朝を憎み始めた。
「魔改造戦士とやらと頼朝は手を組んだのか・・・弟を討つために悪に魂を売ったのか!!」
「もし、何かあったら東北に居る土竜族を頼りなさい。千里、若桜。私は破門された身だけど、私の名を言えば通してくれる」
安曇の言葉はこれが最後だった。千里と若桜は涙を見せないものの、生みの親を殺され、悲しさと怒りでいっぱいだった。その後、皆で安曇や殺された土竜族と陰陽師の遺体を戸隠山に埋葬した。
「前に進みましょう、皆んな。義経様を無事に東北へお連れしましょう」
「千里、平泉の藤原家を頼ろう。これは兄と私の問題だ。これ以上、土竜族を巻き込んではいけない」
「確かに、藤原家なら義経様と昔から親交が深い。どのみち、平泉に寄ってみた方が良いな」
弁慶も義経の意見に賛同し、まずは平泉へ向かおうと決めた。
その後一行は、戸隠から越後を通り、東北に入り平泉を目指していた。馬で駆けている途中、陸前多賀城付近で黒ずくめの軍団が待ち伏せていた。千里と若桜は、自分とは違う人造戦士だと察した。
「こやつらが魔改造戦士ね・・・感情や生気を感じないわ」
「おそらく、戦う以外の余計な感情を取り除いたのでしょう」
「く・・・多賀城もすでに頼朝の支配下か・・・」
魔改造戦士は一斉に義経達に襲いかかった。人間はおろか人造戦士にも勝る素早さと攻撃力に苦戦を強いられた。しかし、千里と若桜、義経に忠誠を誓う人造戦士は必死に義経を護った。
「千里!!若桜!!ここは我々に任せろ!!2人は我が殿と弁慶殿を連れ、平泉へ向かえ!!」
人造戦士達は武器を構え、必死に魔改造戦士と対峙した。義経は彼らを置いて行けないと思ったが、千里と若桜に止められた。
「・・・気持ちは分かります。ですが、同胞の頼みを無駄にはできません。皆、分かっています。義経様を無事に藤原氏の元へ連れて行くと・・・」
「人造戦士は決して捨て駒ではありません。義経様を護れた事に誇りを持っています」
義経はすまぬ・・・と、馬に乗り平泉を目指した。しかし、平泉の手前、『一ノ関』に入る前、再び魔改造戦士が現れた。千里と若桜は必死に抵抗したが、彼らの闇の力が上手だった。不意を突かれ、千里に黒い刃が刺さりそうになった瞬間、若桜は彼を庇い、胸を貫かれ心臓部となる魔石を破壊された。
「わ・・・若桜!!!!」
千里の真紅の瞳は夜叉の目となり、怒りで力が増し、魔改造戦士を全滅させた。千里は直ぐに若桜の傷を治した。しかし、魔石を粉々にされては、死を待つしか無かった。
「千里・・・・ごめんね、約束守れなくって・・・。私、千里の事好きだよ。千里と旅したり、家を建てて幸せな家庭を築いたり、とにかく、千里と一緒に居られたらいいなと思ったわ。・・・だけど、私の事は忘れて義経様と弁慶殿と平泉へ向かって。そして、幸せになって・・・千里」
若桜は虚ろな瞳で、千里の頬を触り、顔を近づけさせ口付けした。
「・・・あなたなら魔改造戦士にも、厄神にも負けないわ」
若桜は息絶えた。千里は涙を流さず、黙って彼女の墓を立てた。
「義経様、弁慶殿。平泉へ向かいましょう・・・・」
千里は若桜や人造戦士の死を悲しむ時間は無いと心に言い聞かせていた。
千里達が一ノ関を去ると、小人の女が木の影から現れ、妖しい笑みを浮かべていた。