番外編 千里の話 鬼神と呼ばれた人造戦士
平家終焉の地、長門国壇ノ浦(現山口県下関市)。関門海峡には無数の平家の船が止まっていた。千里と若桜は丘から船を数え、潮の満ち引きや風向きなどを読んでいた。
「平家もここまで追い詰められたら、背水の陣で全力で掛かって来るわ。それに奴らは海戦にも長けている・・・アナンという海洋族もまた現れるわ」
「若桜は、この戦い緊張していますか?」
「緊張どころか、武者震いだわ!!」
千里は、若桜の強張っている肩を引き寄せ、口付けをした。若桜は突然の行動に赤面し、言葉が出なかった。
「これで緊張も解けたでしょう。そういえば、まだ、僕からの告白を聞いていませんね」
「な・・何を突然!!これから戦いだというのに・・・」
「だからこそ、僕はあなたの本心を聞いてから戦場に出たいと思っているのですよ」
「う・・・この戦が終わったら、日ノ本の名物を食べ回りたい。だから絶対に死なないで」
「僕も同じ考えです。だから、共に源氏を勝利に導きましょう。そして、生き残りましょうこの戦い」
千里と若桜は、平家の本拠地『彦島(ひこじま)』を目指し、義経の陣営に戻った。こうして、壇ノ浦の戦いが始まった。
戦況は、平氏が有利だった。水軍の指揮に長けており、やはり海戦に慣れていた。一方、海上での戦いに不慣れな源氏は苦戦を強いられていた。平氏軍の船頭は海風の流れを読み、上手く源氏の船を回避したり、波の勢いを利用し源氏の船にぶつかり襲撃した。弁慶は船に飛びかかった平家軍を長刀を振るい、海に落とした。千里は敵の船頭を吹き矢で当て、船の襲撃を阻止した。
「・・っく!!なかなか思う様に進まぬ・・・」
「闇雲に船を近づけては危険です。いずれは潮の流れがこちらに有利になります。長期戦に持ち込みましょう」
「千里!!与一と人造戦士達に矢の雨を射てるか指示を出して欲しい」
義経は平家の船を矢の雨で迎え撃とうと考えた。弓の名手与一と、動体視力と弓の射程力に優れる人造戦士を使うのはここだと、義経は判断した。
「了解しました。奇襲なら我々にお任せください」
千里は与一を連れ、人造戦士達と共に高い岸壁がある小島へ向かった。
与一は人造戦士が並んでピシッと弓を構えている姿に緊張していた。
「人造戦士と一斉に矢を放つなんて、緊張します!!」
「この前、扇を当てたのだから、自信を持って下さい」
人造戦士達も与市に頑張ろうと励ました。与一は千里と彼らを見て、凛々しい表情になった。
小島から一斉に弓が放たれた。船で敵兵と剣を交えていた若桜は好機と思い、素早い剣さばきで敵を海に落とし、扇を取り出し、矢の雨に追い風を放ち、離れた平家の船にも当たるようにした。
「でかしたぞ!!若桜」
弁慶も士気が上がり、近づいてくる平家の船を薙刀の風圧で破壊した。
その後は源氏が優勢になってゆき、平家にも動揺が走った。義経は戻ってきた千里に、船を飛び越えようと提案した。後に八艘飛び(はっそうとび)と言われる神業である。
「やはり義経様は軍神ですね。僕もあなたに遅れはとりません」
「ああ。この戦、勝利に導こう。鬼神千里」
義経は身軽に船と船を飛び越え、総大将の船へ向かった。千里も吹き矢で船頭の動きを止めながら、船と船を飛び越え、水軍の士気を上げているアナンの目の前に現れた。男は嬉しそうに千里を凝視し、牙を向けた。
「やっと来たか、千里。ここで海の藻屑にしてやる!!」
「その勝負、受けて立ちます。源氏軍、人造戦士棟梁、千里参ります!!」
「名乗るとは良い心掛けだな。改めて、俺は平氏軍、ケンカ屋アナンだ!!」
アナンは地を強く蹴り、千里の懐に入った。千里は彼の蹴りを左腕で受け止めた。
「やはりあなたは海洋族の強者ですね」
「はん!!戦う為に生まれた人造戦士なんぞに、負けたりはしねーぜ!!」
アナンはその場で跳躍し、蹴りの動作で風の刃を出現させた。千里は避けたが、頬と腕に擦り、血が流れた。
「人造戦士も血を流すんだな」
「僕達の素材は土でも、体内は人間とほぼ同じに作られています」
「だが、人間を超える身体能力や魔力を持ってるじゃねーか!!」
千里は、アナンの爆裂拳を素早く避けているが、船が揺れ、体勢が一瞬崩れた時、アナンの蹴りが腹部に入った。
「く・・・なかなか強い蹴りですね・・」
千里は眼鏡を懐にしまい、真紅の瞳から鋭さと熱い闘志が映った。
「そうこなくっちゃ面白くねぇ。全力のお前とやり合えるのが待ち遠しかったぜ!!」
再びアナンの拳と蹴りが繰り広げられた。しかし千里の動きは先程よりも素早くしなやかなでアナンを翻弄した。そして千里は容赦なく彼の腹部に蹴りを入れた。
「先程のお返しです。そろそろ本気を出しますよ!!」
千里は鬼神の如く、素早い動きと怪力で、アナンに拳を繰り出した。
「く・・・テメェ・・武器を使うこと無く、そんな力を隠し持っていたのか!!」
アナンは形勢逆転され、なんとか反撃に出ようとしたその時、周りの船から切腹や入水自殺をする兵士や侍女を目にした。
「どうしたんだ・・・皆んな」
伝令兵が青ざめた顔でアナンに伝えた。
「潮の満ち干が変わり、源氏に有利となりました。それと・・・・我が大将、知盛様が義経に負けを認め、海に飛び込みました!!」
「何だと!?・・・おい!?徳子!!安徳!!」
アナンと同じ船に乗っていた徳子と安徳は絶望感に陥り、入水自殺を計ろうとした。
「最後まで諦めんじゃねぇー!!千里ぶっ潰せば、形勢は逆転する!!」
アナンは渾身の力を込め、巨大旋風をまとった拳で千里を倒そうとした。しかし、千里の大地を揺るがす気迫に打ち消され、鋼鉄の拳を腹部に喰らい、柱に追突した。
「・・・アナンもう、戦わなくて良いの。今まで、平家の為に戦ってくれてありがとう。あなたを本当の家族だと思っていたわ。・・・さようなら」
徳子は涙で目を潤ませながらもアナンに笑顔を向け、幼い安徳を抱え、海に飛び込んだ。
「徳子!!安徳!!馬鹿野郎!!」
アナンは千里との決闘を放棄し、海に飛び込んだ。
千里は、徳子と安徳を抱えながら水面から顔を出したアナンに鎖鎌の剣先を向けた。しかしアナンは潔く負けを認めた。
「俺はてめぇに負けた。だがよ、てめぇが人造戦士とやらだからじゃない。俺が、弱かっただけだ。・・・頼む!!徳子と安徳天皇だけは見逃してくれ!!」
「僕の任務は、この戦いに勝利を導かせるだけです。女性と子供、戦意を失った貴方には用はありません」
千里は、徳子と安徳天皇を船に引き上げた。アナンは悔し涙を向け、宣戦布告した。
「千里・・・次にてめぇに会うまでに俺はもっと強くなってやる。そうしたら、勝負しろ!!」
「次に会えたら、受けて立ちます」
千里は素っ気ない態度で退散し、船と船を飛び越え、義経の元に戻った。アナンとは、約四百年後の戦国の世で再び戦うとは知る由もなかった。
壇ノ浦の戦いは源氏の勝利で、平家は滅亡した。義経軍は平家の本拠地、彦島で勝どきを揚げ、勝利を喜んだが遥か遠くの地で、それをよく思わない者が居た事も知らずに。そして、千里は一抹の不安を抱いていた。
(壇ノ浦では刺客は現れなかった・・・・だけど、この胸騒ぎは何でしょう・・・・)
千里は予言者や謎の刺客など謎を残し、素直に戦の勝利を喜ぶことが出来なかった。
壇ノ浦の戦い後の相模国鎌倉、源氏の居館で頼朝は文を見ながら怒りだっていた。
「何故・・・後白河は義経を京に置くのだ・・・平家の次は奴が力を持ってしまう・・・」
「そうねぇ〜、大将の弟君は戦に長けているものね」
突然、頼朝の寝室に小人の黒髪術士の少女が入ってきた。
「誰だ!!小娘?いいや・・・童?どこから入って来た!!近衛兵はどうした?」
「安心して。少し操って通してもらっただけですわ。私は、元土竜族の傀儡師『黒羽(くろう)』。あなたに協力者を紹介しますわ」
黒羽は、部屋に4人の従者を入れた。顔に傷のあり、右腕を漢服の袖で隠した科学者の男と、性別が分からない程の美麗で透明感のある者、白ヒョウの皮で出来た毛皮と耳の着いた頭巾をかぶった獣のような大男、そして美しい顔に似合わない程の邪気を放つ男の4人であった。頼朝は人ではない異様な者達と察し、刀を抜こうとしたが、中性的な者が腕を液体にし、刀を奪い取った。黒羽は丸腰になった頼朝に忠告した。
「無駄な抵抗はやめた方が良くってよ。あなただって欲しいのでしょう。鬼神千里を超える、魔改造戦士達を」
「な・・何が条件だ!!報酬か?名誉か?」
「そんなちっぽけな物は要りませんわ。私はただ、忌々しい大地の魔石を宿す、千里を捕えれば良いので」
「・・・利害の一致で良いのだな。では、これから義経討伐をしようではないか」
頼朝の瞳は黒く濁り、黒羽の思うがままに支配された。
中編 勝利の先の闇 完
「平家もここまで追い詰められたら、背水の陣で全力で掛かって来るわ。それに奴らは海戦にも長けている・・・アナンという海洋族もまた現れるわ」
「若桜は、この戦い緊張していますか?」
「緊張どころか、武者震いだわ!!」
千里は、若桜の強張っている肩を引き寄せ、口付けをした。若桜は突然の行動に赤面し、言葉が出なかった。
「これで緊張も解けたでしょう。そういえば、まだ、僕からの告白を聞いていませんね」
「な・・何を突然!!これから戦いだというのに・・・」
「だからこそ、僕はあなたの本心を聞いてから戦場に出たいと思っているのですよ」
「う・・・この戦が終わったら、日ノ本の名物を食べ回りたい。だから絶対に死なないで」
「僕も同じ考えです。だから、共に源氏を勝利に導きましょう。そして、生き残りましょうこの戦い」
千里と若桜は、平家の本拠地『彦島(ひこじま)』を目指し、義経の陣営に戻った。こうして、壇ノ浦の戦いが始まった。
戦況は、平氏が有利だった。水軍の指揮に長けており、やはり海戦に慣れていた。一方、海上での戦いに不慣れな源氏は苦戦を強いられていた。平氏軍の船頭は海風の流れを読み、上手く源氏の船を回避したり、波の勢いを利用し源氏の船にぶつかり襲撃した。弁慶は船に飛びかかった平家軍を長刀を振るい、海に落とした。千里は敵の船頭を吹き矢で当て、船の襲撃を阻止した。
「・・っく!!なかなか思う様に進まぬ・・・」
「闇雲に船を近づけては危険です。いずれは潮の流れがこちらに有利になります。長期戦に持ち込みましょう」
「千里!!与一と人造戦士達に矢の雨を射てるか指示を出して欲しい」
義経は平家の船を矢の雨で迎え撃とうと考えた。弓の名手与一と、動体視力と弓の射程力に優れる人造戦士を使うのはここだと、義経は判断した。
「了解しました。奇襲なら我々にお任せください」
千里は与一を連れ、人造戦士達と共に高い岸壁がある小島へ向かった。
与一は人造戦士が並んでピシッと弓を構えている姿に緊張していた。
「人造戦士と一斉に矢を放つなんて、緊張します!!」
「この前、扇を当てたのだから、自信を持って下さい」
人造戦士達も与市に頑張ろうと励ました。与一は千里と彼らを見て、凛々しい表情になった。
小島から一斉に弓が放たれた。船で敵兵と剣を交えていた若桜は好機と思い、素早い剣さばきで敵を海に落とし、扇を取り出し、矢の雨に追い風を放ち、離れた平家の船にも当たるようにした。
「でかしたぞ!!若桜」
弁慶も士気が上がり、近づいてくる平家の船を薙刀の風圧で破壊した。
その後は源氏が優勢になってゆき、平家にも動揺が走った。義経は戻ってきた千里に、船を飛び越えようと提案した。後に八艘飛び(はっそうとび)と言われる神業である。
「やはり義経様は軍神ですね。僕もあなたに遅れはとりません」
「ああ。この戦、勝利に導こう。鬼神千里」
義経は身軽に船と船を飛び越え、総大将の船へ向かった。千里も吹き矢で船頭の動きを止めながら、船と船を飛び越え、水軍の士気を上げているアナンの目の前に現れた。男は嬉しそうに千里を凝視し、牙を向けた。
「やっと来たか、千里。ここで海の藻屑にしてやる!!」
「その勝負、受けて立ちます。源氏軍、人造戦士棟梁、千里参ります!!」
「名乗るとは良い心掛けだな。改めて、俺は平氏軍、ケンカ屋アナンだ!!」
アナンは地を強く蹴り、千里の懐に入った。千里は彼の蹴りを左腕で受け止めた。
「やはりあなたは海洋族の強者ですね」
「はん!!戦う為に生まれた人造戦士なんぞに、負けたりはしねーぜ!!」
アナンはその場で跳躍し、蹴りの動作で風の刃を出現させた。千里は避けたが、頬と腕に擦り、血が流れた。
「人造戦士も血を流すんだな」
「僕達の素材は土でも、体内は人間とほぼ同じに作られています」
「だが、人間を超える身体能力や魔力を持ってるじゃねーか!!」
千里は、アナンの爆裂拳を素早く避けているが、船が揺れ、体勢が一瞬崩れた時、アナンの蹴りが腹部に入った。
「く・・・なかなか強い蹴りですね・・」
千里は眼鏡を懐にしまい、真紅の瞳から鋭さと熱い闘志が映った。
「そうこなくっちゃ面白くねぇ。全力のお前とやり合えるのが待ち遠しかったぜ!!」
再びアナンの拳と蹴りが繰り広げられた。しかし千里の動きは先程よりも素早くしなやかなでアナンを翻弄した。そして千里は容赦なく彼の腹部に蹴りを入れた。
「先程のお返しです。そろそろ本気を出しますよ!!」
千里は鬼神の如く、素早い動きと怪力で、アナンに拳を繰り出した。
「く・・・テメェ・・武器を使うこと無く、そんな力を隠し持っていたのか!!」
アナンは形勢逆転され、なんとか反撃に出ようとしたその時、周りの船から切腹や入水自殺をする兵士や侍女を目にした。
「どうしたんだ・・・皆んな」
伝令兵が青ざめた顔でアナンに伝えた。
「潮の満ち干が変わり、源氏に有利となりました。それと・・・・我が大将、知盛様が義経に負けを認め、海に飛び込みました!!」
「何だと!?・・・おい!?徳子!!安徳!!」
アナンと同じ船に乗っていた徳子と安徳は絶望感に陥り、入水自殺を計ろうとした。
「最後まで諦めんじゃねぇー!!千里ぶっ潰せば、形勢は逆転する!!」
アナンは渾身の力を込め、巨大旋風をまとった拳で千里を倒そうとした。しかし、千里の大地を揺るがす気迫に打ち消され、鋼鉄の拳を腹部に喰らい、柱に追突した。
「・・・アナンもう、戦わなくて良いの。今まで、平家の為に戦ってくれてありがとう。あなたを本当の家族だと思っていたわ。・・・さようなら」
徳子は涙で目を潤ませながらもアナンに笑顔を向け、幼い安徳を抱え、海に飛び込んだ。
「徳子!!安徳!!馬鹿野郎!!」
アナンは千里との決闘を放棄し、海に飛び込んだ。
千里は、徳子と安徳を抱えながら水面から顔を出したアナンに鎖鎌の剣先を向けた。しかしアナンは潔く負けを認めた。
「俺はてめぇに負けた。だがよ、てめぇが人造戦士とやらだからじゃない。俺が、弱かっただけだ。・・・頼む!!徳子と安徳天皇だけは見逃してくれ!!」
「僕の任務は、この戦いに勝利を導かせるだけです。女性と子供、戦意を失った貴方には用はありません」
千里は、徳子と安徳天皇を船に引き上げた。アナンは悔し涙を向け、宣戦布告した。
「千里・・・次にてめぇに会うまでに俺はもっと強くなってやる。そうしたら、勝負しろ!!」
「次に会えたら、受けて立ちます」
千里は素っ気ない態度で退散し、船と船を飛び越え、義経の元に戻った。アナンとは、約四百年後の戦国の世で再び戦うとは知る由もなかった。
壇ノ浦の戦いは源氏の勝利で、平家は滅亡した。義経軍は平家の本拠地、彦島で勝どきを揚げ、勝利を喜んだが遥か遠くの地で、それをよく思わない者が居た事も知らずに。そして、千里は一抹の不安を抱いていた。
(壇ノ浦では刺客は現れなかった・・・・だけど、この胸騒ぎは何でしょう・・・・)
千里は予言者や謎の刺客など謎を残し、素直に戦の勝利を喜ぶことが出来なかった。
壇ノ浦の戦い後の相模国鎌倉、源氏の居館で頼朝は文を見ながら怒りだっていた。
「何故・・・後白河は義経を京に置くのだ・・・平家の次は奴が力を持ってしまう・・・」
「そうねぇ〜、大将の弟君は戦に長けているものね」
突然、頼朝の寝室に小人の黒髪術士の少女が入ってきた。
「誰だ!!小娘?いいや・・・童?どこから入って来た!!近衛兵はどうした?」
「安心して。少し操って通してもらっただけですわ。私は、元土竜族の傀儡師『黒羽(くろう)』。あなたに協力者を紹介しますわ」
黒羽は、部屋に4人の従者を入れた。顔に傷のあり、右腕を漢服の袖で隠した科学者の男と、性別が分からない程の美麗で透明感のある者、白ヒョウの皮で出来た毛皮と耳の着いた頭巾をかぶった獣のような大男、そして美しい顔に似合わない程の邪気を放つ男の4人であった。頼朝は人ではない異様な者達と察し、刀を抜こうとしたが、中性的な者が腕を液体にし、刀を奪い取った。黒羽は丸腰になった頼朝に忠告した。
「無駄な抵抗はやめた方が良くってよ。あなただって欲しいのでしょう。鬼神千里を超える、魔改造戦士達を」
「な・・何が条件だ!!報酬か?名誉か?」
「そんなちっぽけな物は要りませんわ。私はただ、忌々しい大地の魔石を宿す、千里を捕えれば良いので」
「・・・利害の一致で良いのだな。では、これから義経討伐をしようではないか」
頼朝の瞳は黒く濁り、黒羽の思うがままに支配された。
中編 勝利の先の闇 完