番外編 千里の話 鬼神と呼ばれた人造戦士
千里は嵐の中、義経と150騎の部隊と数十名の人造戦士で屋島攻めを実行しようとした。部隊には那須与一もおり、千里は景時の部隊に入っていない事に驚いていた。
「千里!!屋島攻め緊張してるけど、父上に教えてもらった弓術で義経様を支えるよ!!」
「期待しています、与一殿。ところで、あれから景時様から何か言われましたか?」
「いいや、弓術に励みなさいと扇を渡されただけで、特に何も」
「・・・そうですか」
「ところで、若桜は今回一緒じゃないんだね」
「若桜は別行動で景時様の部隊に居ます」
「それこそ珍しいな。いつも千里と行動を共にしているのに」
屋島のある高松の街は見事に防衛が手薄だった。密かに内通し、源氏に寝返り放棄した村を、人造戦士が焼き払い、義経軍は引き潮に合わせ、一気に屋島を攻めた。屋島に残る兵は義経軍と同じ位居たが、義経は臆する事なく馬を前進させた。屋島の砦から無数の矢が放たれたが、千里は大地の壁を出現させ、そこから跳躍し、砦の隙間にいる兵士に小刀を投げ、刺し倒した。そして、砦の中に入り、鎖鎌や鉤爪を臨機応変に使いこなし、50人の兵を数秒で倒していった。
「千里が道を開いてくれました!!義経様!!」
「ああ!!攻めるは今ぞ!!」
兵士達は『おー!!』と掛け声を上げ、砦に乗り込んだ。義経も軽やかに敵兵の頭上を飛び越え、首を斬っていき、弁慶は薙刀で一気に30人の兵士を薙ぎ払った。
その頃、アナンは平知盛や徳子達を砦から脱出させようとしていた。
「まさか、摂津から奇襲に来るとは思ってもいなかった!!それに、人造戦士が攻めてきたら跡形も無い。アナン頼む!!平家の皆にも避難しろと伝えてくれ!!」
「分かりました!!知盛様は徳子と安徳と先に避難を!!」
(源氏共め・・・予想外の奇襲をしやがって。千里と戦いたかったが、ここは平家を護るのが先だな)
アナンは千里との闘いを諦め、平氏の皆を砦から脱出させた。
景時が援軍に来た時には、屋島はすでに義経が墜としていた。
「まずは、これで良いのだな・・・」
景時は身震いしながら笑っていた。若桜はその様子を疑わしい表情で見ていた。
戦が終わり、源氏軍は屋島砦の屋根に勝どき旗を揚げていると、夕刻に平家の侍女と護衛に来たアナンが現れた。
「我が殿が休戦を申し込みたいと申しておりました。そのお祝いに、源氏の弓の名手様に矢で扇を射貫いて欲しいとも申しておりましたわ」
「扇は小舟に乗せる。まぁ、せいぜい失敗しないように練習しとくんだな」
侍女とアナンは挑発する言い方で要件を告げ、帰っていった。
「この期に及んで何を考えておるのだろう・・・だが、女と海洋族に挑発されては受けてたつしかない。弓に長けている者を探さねば」
義経は弓兵を尋ねたが、戦で傷ついている者や、こんな大役出来ないと辞退する者が多かった。しかし、自信満々に名乗り出る若武者が居た。
「その命、私がお受け致します!!」
「おお!!与一引き受けてくれるのか?」
「景時様が私を見込んで、扇をたくさんくれました。その期待に応えられるように、射抜いてみせます!!」
景時は呆気にとられた顔をして言った。
「はは・・まさか本当になるとは・・・」
(景時様・・・こうなることを知っていたようにみえます・・・)
千里は景時を疑わしい目で見ていた。
与一は、平家との休戦の余興として扇落としに挑む事になった。海岸から離れた小舟の先端に日輪が描かれた扇が置かれていた。与一は不思議と緊張せず冷静だった。
(何でだろう?必ず当たる気がする・・・)
静かに弓を構え、矢を小さい扇に向け、今だ!!と強く矢を放った。
与一の矢は見事に扇に命中し、船から落とした。平知盛は『天晴れ!!』と喜び、盛大に盛り上がった。しかし、千里は何処からか殺気を感じ、何かが義経に放たれた。
「義経様!!危ない!!」
千里は義経の前に現れ、短刀で弾いた。すると、黒鉄の小刀が床に落ちた。千里は投げられた方向に吹き矢を放った。すると、松の木に隠れていた黒頭巾の者の手の甲に命中したが、直後怯む事なく逃げられた。
(この吹き矢は神経麻痺させるが、容易に動けるとは・・・刺客は人間では無いですね・・・)
「これは平家の罠だ!!皆戦闘態勢に入れー!!」
義経の命で源氏軍は、突然の出来事に驚いている平家の者達に刃を向け、弓を放った。
「わ・・私は知らんぞ!!本当に和平を申し込んだのに・・・誰の仕業だ!!」
知盛は慌てふためきながら、叫んだ。アナンは刺客が逃げて行くのを見つけ、追いかけた。
「てめぇの仕業か!!待ちやがれ!!」
アナンは俊足で刺客に追いつき、飛び蹴りを喰らわせた。倒れた好機に鉄拳で倒そうとしたが、影から黒い刃が現れ、即座に回避した。
「私に構っていて良いのですかー?こうしている間に貴方の大切な人達が危ないですよー」
男の甘く妖しい声が、アナンの神経を逆撫でする。
「く・・・貴様は、平家でも源氏の者でもないな。何で義経を攻撃した!!」
「これからの未来の為ですよ。私は予言者に言われて従ったまでですよ。いつかは滅びる世界にね」
アナンは捕縛しようと、再び拳を出そうとしたが、黒い頭巾から見える深紅の瞳に睨まれ、動けなかった。
「安心してください、貴方は殺しませんよ。ちなみに、次の戦では私は現れないのでご安心を」
男はアナンを嘲笑いながら、闇の中へ消えていった。アナンは動けるようになり、屋島の海岸へ戻った。そして争いの中、大嵐を起こし、義経達が戸惑っている隙に平氏の皆を撤退させた。
千里と若桜は景時を捕まえ、この出来事を知っていたのかと問い詰めた。
「わ・・私は・・予言者の使いに言われただけだ!!」
「予言者の使いはまさか、義経様を暗殺しようとした輩ですか!!」
「それは知らなかった!!まさかこんな事になるなんて・・・私が奴から聞いた事を全て話すぞ!!」
景時は2人に全てを内明けた。予言者の使いからは・・・
屋島の戦いは義経軍が勝つ。その後、平家から休戦の話が来て、余興に扇の的当てがある。那須与一に弓を当てさせれば必ず当たり、平家は喜ぶ。
「私はてっきり、その通りにすれば、平家と和平が結べるのかと思ったのだよ。しかし、余計に戦となってしまうとは・・・」
「目的が分かりませんね・・・次の戦は何か言っていましたか?」
「いいや。今回の屋島だけで、次の予言は一切聞いていない。ここで和平が結べるかと期待していた位だ」
「景時様、疑ってしまい申し訳ございませんでした」
千里と若桜は深く謝った。景時は誤解が解けたから良いと言っていたが、次にいつ予言者の使いが来るか不安でならなかった。すると、海岸から小さな海亀が文を加えているのを千里が見つけた。受け取ると、果たし状と重要な内容だった。
千里、次は壇ノ浦で勝負だ。平家は海戦に長けている。平家の武士魂舐めんなよ!!あと、刺客の野郎に問い詰めたが、次の戦には現れないと言っていたから、壇ノ浦には来ないな。
「・・・この海洋族の文を信じるか?」
景時は乱暴な文章を疑いの目で読んでいた。一方、千里は安心して文の内容を信じていた。
「彼の素直な文に嘘は感じられません。・・・次の戦地は長門の壇ノ浦ですね」
千里達は最後の戦いに兜の緒を引き締めた。
「千里!!屋島攻め緊張してるけど、父上に教えてもらった弓術で義経様を支えるよ!!」
「期待しています、与一殿。ところで、あれから景時様から何か言われましたか?」
「いいや、弓術に励みなさいと扇を渡されただけで、特に何も」
「・・・そうですか」
「ところで、若桜は今回一緒じゃないんだね」
「若桜は別行動で景時様の部隊に居ます」
「それこそ珍しいな。いつも千里と行動を共にしているのに」
屋島のある高松の街は見事に防衛が手薄だった。密かに内通し、源氏に寝返り放棄した村を、人造戦士が焼き払い、義経軍は引き潮に合わせ、一気に屋島を攻めた。屋島に残る兵は義経軍と同じ位居たが、義経は臆する事なく馬を前進させた。屋島の砦から無数の矢が放たれたが、千里は大地の壁を出現させ、そこから跳躍し、砦の隙間にいる兵士に小刀を投げ、刺し倒した。そして、砦の中に入り、鎖鎌や鉤爪を臨機応変に使いこなし、50人の兵を数秒で倒していった。
「千里が道を開いてくれました!!義経様!!」
「ああ!!攻めるは今ぞ!!」
兵士達は『おー!!』と掛け声を上げ、砦に乗り込んだ。義経も軽やかに敵兵の頭上を飛び越え、首を斬っていき、弁慶は薙刀で一気に30人の兵士を薙ぎ払った。
その頃、アナンは平知盛や徳子達を砦から脱出させようとしていた。
「まさか、摂津から奇襲に来るとは思ってもいなかった!!それに、人造戦士が攻めてきたら跡形も無い。アナン頼む!!平家の皆にも避難しろと伝えてくれ!!」
「分かりました!!知盛様は徳子と安徳と先に避難を!!」
(源氏共め・・・予想外の奇襲をしやがって。千里と戦いたかったが、ここは平家を護るのが先だな)
アナンは千里との闘いを諦め、平氏の皆を砦から脱出させた。
景時が援軍に来た時には、屋島はすでに義経が墜としていた。
「まずは、これで良いのだな・・・」
景時は身震いしながら笑っていた。若桜はその様子を疑わしい表情で見ていた。
戦が終わり、源氏軍は屋島砦の屋根に勝どき旗を揚げていると、夕刻に平家の侍女と護衛に来たアナンが現れた。
「我が殿が休戦を申し込みたいと申しておりました。そのお祝いに、源氏の弓の名手様に矢で扇を射貫いて欲しいとも申しておりましたわ」
「扇は小舟に乗せる。まぁ、せいぜい失敗しないように練習しとくんだな」
侍女とアナンは挑発する言い方で要件を告げ、帰っていった。
「この期に及んで何を考えておるのだろう・・・だが、女と海洋族に挑発されては受けてたつしかない。弓に長けている者を探さねば」
義経は弓兵を尋ねたが、戦で傷ついている者や、こんな大役出来ないと辞退する者が多かった。しかし、自信満々に名乗り出る若武者が居た。
「その命、私がお受け致します!!」
「おお!!与一引き受けてくれるのか?」
「景時様が私を見込んで、扇をたくさんくれました。その期待に応えられるように、射抜いてみせます!!」
景時は呆気にとられた顔をして言った。
「はは・・まさか本当になるとは・・・」
(景時様・・・こうなることを知っていたようにみえます・・・)
千里は景時を疑わしい目で見ていた。
与一は、平家との休戦の余興として扇落としに挑む事になった。海岸から離れた小舟の先端に日輪が描かれた扇が置かれていた。与一は不思議と緊張せず冷静だった。
(何でだろう?必ず当たる気がする・・・)
静かに弓を構え、矢を小さい扇に向け、今だ!!と強く矢を放った。
与一の矢は見事に扇に命中し、船から落とした。平知盛は『天晴れ!!』と喜び、盛大に盛り上がった。しかし、千里は何処からか殺気を感じ、何かが義経に放たれた。
「義経様!!危ない!!」
千里は義経の前に現れ、短刀で弾いた。すると、黒鉄の小刀が床に落ちた。千里は投げられた方向に吹き矢を放った。すると、松の木に隠れていた黒頭巾の者の手の甲に命中したが、直後怯む事なく逃げられた。
(この吹き矢は神経麻痺させるが、容易に動けるとは・・・刺客は人間では無いですね・・・)
「これは平家の罠だ!!皆戦闘態勢に入れー!!」
義経の命で源氏軍は、突然の出来事に驚いている平家の者達に刃を向け、弓を放った。
「わ・・私は知らんぞ!!本当に和平を申し込んだのに・・・誰の仕業だ!!」
知盛は慌てふためきながら、叫んだ。アナンは刺客が逃げて行くのを見つけ、追いかけた。
「てめぇの仕業か!!待ちやがれ!!」
アナンは俊足で刺客に追いつき、飛び蹴りを喰らわせた。倒れた好機に鉄拳で倒そうとしたが、影から黒い刃が現れ、即座に回避した。
「私に構っていて良いのですかー?こうしている間に貴方の大切な人達が危ないですよー」
男の甘く妖しい声が、アナンの神経を逆撫でする。
「く・・・貴様は、平家でも源氏の者でもないな。何で義経を攻撃した!!」
「これからの未来の為ですよ。私は予言者に言われて従ったまでですよ。いつかは滅びる世界にね」
アナンは捕縛しようと、再び拳を出そうとしたが、黒い頭巾から見える深紅の瞳に睨まれ、動けなかった。
「安心してください、貴方は殺しませんよ。ちなみに、次の戦では私は現れないのでご安心を」
男はアナンを嘲笑いながら、闇の中へ消えていった。アナンは動けるようになり、屋島の海岸へ戻った。そして争いの中、大嵐を起こし、義経達が戸惑っている隙に平氏の皆を撤退させた。
千里と若桜は景時を捕まえ、この出来事を知っていたのかと問い詰めた。
「わ・・私は・・予言者の使いに言われただけだ!!」
「予言者の使いはまさか、義経様を暗殺しようとした輩ですか!!」
「それは知らなかった!!まさかこんな事になるなんて・・・私が奴から聞いた事を全て話すぞ!!」
景時は2人に全てを内明けた。予言者の使いからは・・・
屋島の戦いは義経軍が勝つ。その後、平家から休戦の話が来て、余興に扇の的当てがある。那須与一に弓を当てさせれば必ず当たり、平家は喜ぶ。
「私はてっきり、その通りにすれば、平家と和平が結べるのかと思ったのだよ。しかし、余計に戦となってしまうとは・・・」
「目的が分かりませんね・・・次の戦は何か言っていましたか?」
「いいや。今回の屋島だけで、次の予言は一切聞いていない。ここで和平が結べるかと期待していた位だ」
「景時様、疑ってしまい申し訳ございませんでした」
千里と若桜は深く謝った。景時は誤解が解けたから良いと言っていたが、次にいつ予言者の使いが来るか不安でならなかった。すると、海岸から小さな海亀が文を加えているのを千里が見つけた。受け取ると、果たし状と重要な内容だった。
千里、次は壇ノ浦で勝負だ。平家は海戦に長けている。平家の武士魂舐めんなよ!!あと、刺客の野郎に問い詰めたが、次の戦には現れないと言っていたから、壇ノ浦には来ないな。
「・・・この海洋族の文を信じるか?」
景時は乱暴な文章を疑いの目で読んでいた。一方、千里は安心して文の内容を信じていた。
「彼の素直な文に嘘は感じられません。・・・次の戦地は長門の壇ノ浦ですね」
千里達は最後の戦いに兜の緒を引き締めた。