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第3章 異説小田原征伐  蘇りし海の亡霊と海神伝説

闇の九頭竜王との戦いは終わり、洪水被害に遭った小田原の町は元に戻った。その後、豊臣の大軍が天守閣に押し寄せ、北条軍は降伏した。氏政は領民と家臣の安堵を条件に投降した。
「この戦は私が闇の者と手を組み、海洋族を利用してしまった。私が処罰される代わりに、息子達と関東の民の命は見逃してくれ!!」
湘達は門の前で連行される氏政を見ていた。すると、いすみが秀吉の目の前に現れ、頭を下げ訴えた。
「海洋族が北条に加担したのは、ワレが招いた事だ!!氏政には大切な息子と家族がおる。処罰するなら、ワレにしてくれ!!」
「何、海王神が頭を下げているのですか!!」
湘はいすみを立たせ、代わりに自分が秀吉に頭を下げた。
「そもそもの原因は、私が海洋族と協力し、豊臣を迎え撃つと氏政様を促したのです。処罰を受けるのは私の方です」
いすみと湘が口論していると、秀吉は困った顔をしていた。氏政は2人の仲裁に入り決断していた。
「海王神と湘、私はもう良いのだ。私達は海洋族に頼らなければ豊臣と戦えなかったと身にしみたよ。・・・秀吉殿。どうか私の命と引き換えに、関東の民を護ってくれ」
「お主の志、引き継ごう。関東は家康殿に任せる。あの者は敵味方関係なく領民を大切にするから、安心してくれ」
秀吉は湘といすみに顔を上げよと言い、氏政の答えも待っていた。
「秀吉殿の言う通りだ。私は今まで、北条家の皆と民達を護れた事に誇りを持っている。湘にも多く助けられた。だから、もう人生に悔いはない」
氏政は最後にいすみに頼んだ。
「いすみ様、湘の事をよろしく頼む」
いすみは無言で氏政の瞳を見て、強く頷いた。氏政は笑顔で返し、秀吉に行こうと言い小田原城を後にした。


その頃、真鶴は鎌倉の材木座海岸で桜龍と仁摩に深く謝っていた。
「仁摩よ、そなたを誘拐し、手をあげた事を申し訳ない。それと、桜龍にも大切な瞳を奪おうとし、心からお詫び申す」
「謝らないでください、真鶴さん。宮殿で亘さん達の事もよく知れたし、海洋族の皆さんの待遇も親切でしたよ」
「闇の者に操られていたのだから、真鶴さんは悪くないですぜ。それに、一途に凪沙さんを想っていたことがよく伝わりました」
「本当に数々の無礼、すまなかった」
真鶴は再び2人に頭を下げ、謝った後、術で黄金色に輝く長弓を仁摩に渡した。
「これは俺が海神姿で使っていた弓だ。巫女の君が使うのに相応しい」
「このような貴重な物、私に良いのですか?」
「俺には使い道がないからな。護るべき者がおる君が使う方が、価値を見出せる」
真鶴は優しく桜龍の瞳を見て笑いかけた。
「桜龍、聖なる龍の力は偉大な存在だとしみじみ感じた。君なら闇から日ノ本を護る事ができるぞ」
「真鶴さん・・・」
「俺は、死後の世界から見守る事しか出来ないが、皆にご武運を。それと、湘とはいつまでも仲良くしてくれ」
真鶴は桜龍と仁摩に握手を求めた。2人は手を握ると、真鶴の手から温かさを感じた。
「凪沙と湘が来たな。これから親子水入らずで最期の時間を過ごすよ」
「是非、満喫して下さい。真鶴さん」
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