第3章 異説小田原征伐 蘇りし海の亡霊と海神伝説
その頃、氏直は丹沢へ逃げようとしていたが、父の身を心配し天守へ戻ってきた。ひたすら浸水している天守内を駆け上がり、最上階へ向かっていたが、途中で海水が一気に迫っていき、階段を上る前に天井に水位が達し、溺れてしまった。
(く・・父上・・・!!僕は父上を助けられず、ここで死ぬのか・・・・)
氏直は息が止まり意識を失いそうになったが、誰かに手を握られ、同時に息ができるようになった。氏直は目を開けて、助けてくれた者の姿を見ると、海のような美しい青緑色の足を持つ人魚が笑いかけていた。人魚の男性はよく知る人物だった。
「貴方はもしかして!!」
「大切な父の元へ行きたいのだろう。俺が連れて行く」
男は凜々しく気高い姿で、氏直を父の元へ導いた。
ついに天守閣の最上階にも海水が上がってきていた。氏政は膝を海水で濡らしながらも天守台から皆の無事をただ祈るしか無かった。
「湘・・勇士達・・・が押されている。このままでは日ノ本も世界も海に沈んでしまうのか・・・」
氏政は桜龍達が九頭竜王の攻撃を喰らい、海面に落とされるのを見て、涙を流していた。
「こんなはずでは無かった・・・ただ、豊臣の侵略から民と領地を護りたかっただけなのに・・・」
氏政は真鶴を頼ったことに罪悪感を抱き、罪を償うため短刀を抜き、切腹しようとしていた。
「・・・私が海洋族の力を頼ってしまった罰だ。武士として失格だが、せめて自分の命と引き換えに九頭竜の怒りが鎮まって欲しい・・・」
氏政が自らの胸を短刀で刺そうとした瞬間、氏直がずぶ濡れの状態で、父に抱きつき止めた。
「死んでは駄目です!!父上!!最後まで希望を捨ててはなりませんよ!!」
「氏直・・・その男はまさか・・・真鶴か?」
氏政は息子の隣に居る男をまじまじと見た。長い青緑色の髪、三浦一族の家紋が描かれた銀の胸当てに、白銀と群青色に輝く光沢布が巻かれていた。まるで、日本神話と古代ギリシャ神話の海神が合わさった姿に見えた。
「奇跡が起きたのか、俺は海龍として目覚めた。氏直の父に会いたいという想いが俺に届いたのだろう。俺は再び九頭竜を浄化しに行く」
真鶴は両端に海龍の彫刻が施されている黄金の長弓を出現させ、天守台の外へ出ようとした。氏政は息子を助けてくれてありがとうと、涙を流しながら礼を言った。
「親子の絆が伝わったよ。湘を本当の家族のように迎えてくれてありがとう。氏政殿、氏直殿」
真鶴は笑顔で北条親子と別れ、天守台を出た。
その頃、仁摩はアナン達と小田原の西、『石垣山城』の天守台で、悔しさを胸に皆の無事を祈るしかなかった。アナンはウミガメ姿で戦いに行こうとしていたが、皆に止められた。
「ここで黙って見てられるかよ!!このままじゃ、日ノ本が沈む!!」
ワタリガニ姿の亘は、手足をバタバタさせているアナンを止めていた。
「気持ちは分かるが、今の拙者達には何も出来ぬ。九頭竜を倒さぬ限り、元の姿には戻れぬ・・・」
「何だろう?この懐かしい感じは・・・」
タツノオトシゴ姿の五十鈴は何か気配を感じ取り、もしかしたらと声を上げた。
「アッミーゴ真鶴・・・いいえ、海龍様ですか!!」
五十鈴が呼ぶと同時に、海神姿の真鶴が姿を現した。
「真鶴で良いよ、五十鈴。皆には迷惑をかけてしまったな。君達の力を復活させるよ」
真鶴は仁摩から亘達を受け取り、祝詞を唱えた。すると、3人は煌びやかな光に包まれ、元の半魚人に戻った。
「よっしゃあー!!これで九頭竜の野郎と戦えるぜ!!」
「感謝するぞ、真鶴。この力で湘達を助けに行けるぞ!!」
アナンと亘は気合いを入れ、装備を整える一方、五十鈴は何か謝りたい様子だった。
「真鶴・・・僕は人間になった君を育てたかった。いすみ様の反対に背けず、君の父親になれずに、長い間封印してしまい、すまなかった・・・」
五十鈴は頭を下げ謝ったが、真鶴は笑顔で首を横に振った。
「そんな事は気にするな。そのおかげで、凪沙と出会い、湘が生まれたのだからな。それと、お前達とも出会えたのだし」
3人は真鶴に一礼し、九頭竜と戦う為、天守台を出た。見送った仁摩は悔しそうな顔をしていた。
「私は・・・待っているしか出来ないの」
真鶴は、歯を食いしばっている仁摩の頭を優しく触れ、諭した。
「見守る事も戦いだよ、仁摩。それに、君にしか出来ない事だってあるさ」
「仁摩ちゃん!!怪我人が運ばれたよ。救護を手伝えるかねぇ!!」
「仁摩さん!!祈祷火で行方不明者の居場所を見つけて欲しいのですが」
クノイチの藤乃と東北から戻ってきたお都留が部屋に入ってきて、仁摩に協力を求めていた。
「藤乃さん、お都留さん、はい!!今行きます!!」
仁摩は気合いを入れ、今できることに専念すると決めていた。
「凪沙を呼び起こしてくれて、ありがとう。仁摩」
真鶴は仁摩に礼を言い、直ぐに亘達と戦場へ行った
(く・・父上・・・!!僕は父上を助けられず、ここで死ぬのか・・・・)
氏直は息が止まり意識を失いそうになったが、誰かに手を握られ、同時に息ができるようになった。氏直は目を開けて、助けてくれた者の姿を見ると、海のような美しい青緑色の足を持つ人魚が笑いかけていた。人魚の男性はよく知る人物だった。
「貴方はもしかして!!」
「大切な父の元へ行きたいのだろう。俺が連れて行く」
男は凜々しく気高い姿で、氏直を父の元へ導いた。
ついに天守閣の最上階にも海水が上がってきていた。氏政は膝を海水で濡らしながらも天守台から皆の無事をただ祈るしか無かった。
「湘・・勇士達・・・が押されている。このままでは日ノ本も世界も海に沈んでしまうのか・・・」
氏政は桜龍達が九頭竜王の攻撃を喰らい、海面に落とされるのを見て、涙を流していた。
「こんなはずでは無かった・・・ただ、豊臣の侵略から民と領地を護りたかっただけなのに・・・」
氏政は真鶴を頼ったことに罪悪感を抱き、罪を償うため短刀を抜き、切腹しようとしていた。
「・・・私が海洋族の力を頼ってしまった罰だ。武士として失格だが、せめて自分の命と引き換えに九頭竜の怒りが鎮まって欲しい・・・」
氏政が自らの胸を短刀で刺そうとした瞬間、氏直がずぶ濡れの状態で、父に抱きつき止めた。
「死んでは駄目です!!父上!!最後まで希望を捨ててはなりませんよ!!」
「氏直・・・その男はまさか・・・真鶴か?」
氏政は息子の隣に居る男をまじまじと見た。長い青緑色の髪、三浦一族の家紋が描かれた銀の胸当てに、白銀と群青色に輝く光沢布が巻かれていた。まるで、日本神話と古代ギリシャ神話の海神が合わさった姿に見えた。
「奇跡が起きたのか、俺は海龍として目覚めた。氏直の父に会いたいという想いが俺に届いたのだろう。俺は再び九頭竜を浄化しに行く」
真鶴は両端に海龍の彫刻が施されている黄金の長弓を出現させ、天守台の外へ出ようとした。氏政は息子を助けてくれてありがとうと、涙を流しながら礼を言った。
「親子の絆が伝わったよ。湘を本当の家族のように迎えてくれてありがとう。氏政殿、氏直殿」
真鶴は笑顔で北条親子と別れ、天守台を出た。
その頃、仁摩はアナン達と小田原の西、『石垣山城』の天守台で、悔しさを胸に皆の無事を祈るしかなかった。アナンはウミガメ姿で戦いに行こうとしていたが、皆に止められた。
「ここで黙って見てられるかよ!!このままじゃ、日ノ本が沈む!!」
ワタリガニ姿の亘は、手足をバタバタさせているアナンを止めていた。
「気持ちは分かるが、今の拙者達には何も出来ぬ。九頭竜を倒さぬ限り、元の姿には戻れぬ・・・」
「何だろう?この懐かしい感じは・・・」
タツノオトシゴ姿の五十鈴は何か気配を感じ取り、もしかしたらと声を上げた。
「アッミーゴ真鶴・・・いいえ、海龍様ですか!!」
五十鈴が呼ぶと同時に、海神姿の真鶴が姿を現した。
「真鶴で良いよ、五十鈴。皆には迷惑をかけてしまったな。君達の力を復活させるよ」
真鶴は仁摩から亘達を受け取り、祝詞を唱えた。すると、3人は煌びやかな光に包まれ、元の半魚人に戻った。
「よっしゃあー!!これで九頭竜の野郎と戦えるぜ!!」
「感謝するぞ、真鶴。この力で湘達を助けに行けるぞ!!」
アナンと亘は気合いを入れ、装備を整える一方、五十鈴は何か謝りたい様子だった。
「真鶴・・・僕は人間になった君を育てたかった。いすみ様の反対に背けず、君の父親になれずに、長い間封印してしまい、すまなかった・・・」
五十鈴は頭を下げ謝ったが、真鶴は笑顔で首を横に振った。
「そんな事は気にするな。そのおかげで、凪沙と出会い、湘が生まれたのだからな。それと、お前達とも出会えたのだし」
3人は真鶴に一礼し、九頭竜と戦う為、天守台を出た。見送った仁摩は悔しそうな顔をしていた。
「私は・・・待っているしか出来ないの」
真鶴は、歯を食いしばっている仁摩の頭を優しく触れ、諭した。
「見守る事も戦いだよ、仁摩。それに、君にしか出来ない事だってあるさ」
「仁摩ちゃん!!怪我人が運ばれたよ。救護を手伝えるかねぇ!!」
「仁摩さん!!祈祷火で行方不明者の居場所を見つけて欲しいのですが」
クノイチの藤乃と東北から戻ってきたお都留が部屋に入ってきて、仁摩に協力を求めていた。
「藤乃さん、お都留さん、はい!!今行きます!!」
仁摩は気合いを入れ、今できることに専念すると決めていた。
「凪沙を呼び起こしてくれて、ありがとう。仁摩」
真鶴は仁摩に礼を言い、直ぐに亘達と戦場へ行った