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第3章 異説小田原征伐  蘇りし海の亡霊と海神伝説

その頃、桜龍達は天守の最上階へ行くと、氏政が封印の数珠紐で苦しんでいる真鶴を拘束させ動きを止めていた。
「湘!!来てくれたか!!今、真鶴は闇の力と戦っている。止めるなら今だ!!」
「助かります、氏政様。危険な思いをさせてしまい、申し訳ございません・・・」
「湘さん・・・俺が浄化させるよ。大切な親父さんを湘さんが手にかけてはいけないですよ」
桜龍が静かに太刀を抜こうとした時、真鶴はいすみに視線がいき、憎悪の力が増幅され、数珠紐をバラバラに引き裂いた。
「いすみ!!死ねー!!」
真鶴は制止する桜龍を突き飛ばし、いすみに攻撃しようとした。しかし・・・真鶴は心の中で『止めろ!!』と決死の覚悟で氷柱を出し、籠手に付いている闇色に染まる紅玉を砕いた。すると、真鶴はいすみの前に倒れた。
「・・・これで良かったのだ。もう復讐なんてしたくない。俺は・・いすみに勝ちたいと思っていたが、殺したいとは思わなかったよ」
「父さん!!」
真鶴の体からは泡が出現した。すると同時にミズチが姿を現した。
「ははは、何とも無様な姿だねぇ、真鶴。結局君は悪には染まれなかった。残念ながら九頭竜の力を発揮出来ないまま最期を迎えるね」
「黙れ!!ミズチ!!海洋族の裏切り者め!!」
「ふふ、裏切り者呼ばわれか。僕が7つの海を統べるのに相応しかっただろうに、生まれながら海王神と決まっていた君が気に食わなかっただけだよ」
「・・・・・・・・」
いすみはミズチに反論できず黙っていた。
「さぁ、クリクリ・・・いいや、九頭竜の力を手に入れた闇の海神(わだつみ)よ。真の力に目覚めよ!!」
クリクリは真鶴の体を捨て、ミズチに近づいた。そして闇の力を与えられると、姿は黒髪長髪の青年姿の邪神へと姿を変え、小さな海洋生物の面影を感じさせなかった。
「我は、九頭竜の力に選ばれた神。所詮、真鶴なんぞただの死に損ないだったのう」
クリクリは言葉も神のような口調に変わり、皆は驚き、冷や汗をかいていた。湘は九頭竜の化身に銃弾を放ったが、いとも簡単に弾かれてしまった。
「こんな鉛玉は我には効かんな。お前達の相手は日ノ本を海底に沈めてからしてやろう。海の中で生きていられればな!!」
九頭竜は闇の波動を桜龍達に放ち壁に叩きつけた。
「今後はクリクリではなく、九頭竜王と呼んでいただこう」
九頭竜王とミズチは、泡が消え白骨化した真鶴のむくろをあざ笑いながら天守の外に出た。湘は悔しさを胸に、真鶴の頭蓋骨を手に持った。
「父さんは、無様でも死に損ないでも無い・・・」
湘は怒りを抑えながら、銃剣を握り天守閣の屋根へ向かった。
「氏政殿は安全な場所へお逃げください。湘さんの後を追います!!」
桜龍もむくろを弔い、湘を追った。最後にいすみは、むくろの前にしゃがみ込み、願いを込めた。
「・・・真鶴。貴殿は九頭竜の化身ではない。貴殿の真の姿は・・・『海神(わだつみ)、海龍の化身』だったのだ・・・」
いすみは無念だと思いながら真鶴に最後の言葉を掛け、九頭竜王の元へ向かった。すると一瞬、むくろから一筋の光が現れた。


真鶴は深い眠りについていた。闇の深海に沈み続け、死を迎えようとしていた。ところが・・・。
『目覚めよ。海龍の化身、真鶴よ』
(誰だ・・・俺を海龍と呼んでいるのか?)
真鶴はまぶたを開けると、目の前に自分とうり二つの男が立っていたが、神話の神のような姿と気高さを見て、驚いていた。
『ワレは海龍海神(わだつみ)。そなたの真の姿。海龍は闇の龍の力を吸収した結果、九頭竜となってしまった。真鶴よ、今再び海王神と力を合わせ、九頭竜を浄化せよ』
(俺が・・・海龍海神?そんな偉大な力が俺にあるのか?)
『思い出せ、小さき島国を見守っていた日々を。そして、海の守護神としての力を』
真鶴はもう一人の自分から力を授かった。そして、黄金の光を浴び、消えかけた魂は不死鳥の如く蘇った。
「俺は九頭竜ではなく、海龍の化身だったのか・・・。だが、これなら皆を助けられる」
真鶴の骸から海色に輝く魂が現れ、氏政は驚いた。
「この光は?真鶴・・・」
真鶴の魂は向かうべき場所へ飛んでいった。



                        第12話 完
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