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第3章 異説小田原征伐  蘇りし海の亡霊と海神伝説

その頃、桜龍達は船で小田原城の大手門に入った。お堀の水は黒く濁っており、櫓や目の前にそびえ立つ天守閣も闇色に染まっていた。天守への通路には闇に操られた海洋戦士や北条兵士が待ち構えていたので、桜龍達は応戦した。無用な戦いを続ける訳にはいかなかったので、いすみは海王神の力で、黄金の三叉槍を天にかざし、神々しい光で皆を正気に戻した。
「く・・無念。海王いすみに屈服するくらいなら、ここで自害する・・・」
海洋戦士は胸を短刀で刺そうとしたが、いすみに一喝いれられた。
「死んではならんぞ!!ワレでは無く、真鶴を慕うのであれば、奴を闇の手から救うよう戦うのだ!!」
いすみの言葉に、敵対していた海洋戦士は我に返り、嬉し涙を流し再び海王神に頭を下げ忠誠を誓った。
「いすみ様・・・裏切った我々に勿体なきお言葉を・・・。我らで何かお役に立てることがあれば、何なりと・・・」
「今、森精霊と飛天族が城下町で救助活動を行っておる。彼らと協力し、洪水被害に遭っている者達の救助をしてくれ。常葉、指示を頼む」
いすみは常葉と海洋戦士に命じ、湘も北条兵士に指示をした。
「皆もここに居るのは危険だから、丹沢や足柄の方へ逃げてくれ。一緒に食料庫の米とか持って避難してくれ」
桜龍達は海洋戦士達と分かれた後、急ぎ天守閣に入ろうとした。しかし、巨大なイカが瓦屋根から降りてきて、入り口を塞いだ。いすみは怪物の正体を真っ先に分析した。
「く・・・こいつは、豊臣兵を取り込んでいる。何とかして救わねば」
「いすみ様と湘と桜龍は先に行くのだ!!怪物の相手は俺達がする」
モトスに続き千里と球磨も武器を構え、3人に行けと促した。
「この怪物は人間、海洋族関係無しに取り込み大きくなっています。これ以上大きくならないように早急に倒します」
「湘、親父さんを助けて親孝行しろよな♪」
球磨が笑顔で湘に言うと、彼は少しムスッとしながらも礼を言った。
「ふん、言われなくても分かっている、暴れ牛。・・・皆、ありがとう。ここはよろしく頼む」
球磨とモトスと千里は、イカの怪物と対峙した。


桜龍達は急ぎ天守台を目指していると、回廊から息を切らせながら駆けてくる氏直と出会った。湘は彼を落ち着かせ、何があったか聞いた。
「父上が真鶴を討ち取ろうとしているが、真鶴の様子が尋常じゃない!!早く2人の元へ!!」
「今すぐに氏政様の元へ向かいます。氏直様は丹沢方面の高台へ避難して下さい」
氏直は桜龍といすみにも一礼し避難した。湘達は即急に最上階へ続く階段を駆け上った。


その頃、球磨とモトスと千里は黒いイカの怪物と戦っていた。イカ墨を吐くと同時に千里は土の壁で防御した。しかし、イカ墨は周りで援護している兵士達に放たれ、兵士をクラゲやタツノオトシゴなどの海洋生物に変えていった。
「こいつはまずいぜ・・・長期戦になったら兵士達を海洋生物にしちまう・・・」
イカの触手をモトスの双曲刀と千里の鎖鎌で切り裂き、球磨の槍から放たれる火弾で燃やしていった。
「く・・こいつはキリがないな。触手は闇の力でまた生えてしまう」
モトスは手の平から種を出現させ怪物目掛け投げると、蔦が蜘蛛の巣状に広がり、胴体を拘束させた。
「ここは同時に術を放ち、浄化させましょう」
蔦から解放されたイカが再び動き出した。3人は触手の軌道を読み、素早い動きで散らばりながら誘導させた。そのうちイカは目が回り始め、ふらふらな動きに変わり、触手と触手が絡み付いた。
「攻めるのは今だ!!」
千里が召喚した無数の岩石に球磨の炎がまとわれ、さらにモトスの竜巻が、隕石の嵐の如くイカに衝撃を与えた。そしてイカの怪物から闇が浄化された。イカの体内に捕らわれていた兵士と、海洋生物にされた者達は無事に戻った。
「闇のイカじゃなかったら、イカの中に餅米入れたり、酒の肴にイカ焼きとか作りたかったなー」
「悠長ですよ、球磨さん。ちなみに僕はイカの活け作り派ですね」
「お前達・・・イカ料理で盛り上がっているが、早くいすみ様達の元へ行こう。この辺りももう海水が迫って来ている」
モトスは一段下がった二の丸御殿が水没しかけているのに慌てていた。球磨はすまねぇと謝った。
「戦いが終わったら皆で、北陸でイカ釣り対決をしような」
モトスは笑顔で2人に言うと、球磨と千里はそうだなと微笑した。そして急ぎ天守閣を上った。
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