第3章 異説小田原征伐 蘇りし海の亡霊と海神伝説
「いすみ様!!すぐに傷を治します!!」
常葉は懸命にいすみの傷を癒やしていた。すると亘が俺も手伝うと常葉に力を貸した。いすみは深い傷を負うも、苦しみに耐えながら介抱している亘に小さく笑いかけた。
「亘・・・どうやら、母親に会えたようだな」
「いすみ・・・本音を言うが、拙者は貴様ではなく他種族に寛大な真鶴を王にしたかった。しかし、真鶴も俺達も闇の者に踊らされた。海王神に反いた事と、真鶴を止められなかった償いをさせてくれ」
亘は魔力を込め、いすみの傷を回復させようとしていた。
「それはならん・・・ワレは闇クリオネの言う通り、海洋族の禁忌を犯した。・・・だからワレは掟を・・・」
「もう良い、いすみ。拙者の力を全て渡す。それで傷は治り海王の力も完全に復活する」
亘が静かに力を解放させると、五十鈴とアナンが必死に止めた。
「亘はそんな事するな!!九頭竜の事はボクにも原因がある!!小さすぎるけど、せめてボクの命でいすみ様の傷を治す!!」
「お前のナヨナヨした体で務まるかよ!!俺の命をいすみ様にやるよ!!」
「お前達は黙れ!!拙者は真鶴も海洋族も、そして、いすみ様も救いたい。母にも会えたのだし何も悔いはない」
球磨は五十鈴とアナンを手に持ち、亘から遠ざけた。
「・・・亘が決めた事なんだろ。なら、見届けてやろうぜ。漢の覚悟と忠誠心をな」
「・・・ありがとう、球磨」
亘はいすみの腕を掴み、自分の胸に彼の手を当てた。すると、朱色の暖かい光が彼を包んだ。
「・・・力が戻ってくる」
腹部の傷は消え、海王神の力が完全に蘇った。今までよりも強い力を得たといすみは感じていた。しかし、亘の体は泡に包まれ消えそうになっていた。皆は亘の決意を見届けるしかなかった。
「亘・・・ワレの為にすまなかった。お前の父親を犠牲にし、長い間、母に会わせなかった事に罪悪感を持っている・・・」
いすみは、床で小さくなっている泡に頭を下げ謝った時、泡から8本足の小さな甲殻類の生物が現れた。
「これは、海蜘蛛か?」
「モトスさん・・・これは蟹ですよ」
モトスのボケと千里の突っ込みに皆はほっこり笑っていた。桜龍は蟹を見て納得していた。
「こいつは、全国の海で獲れるワタリガニだな。隠岐の島は松葉ガニが捕れるけどな。亘・・ワタリガニ、なるほど」
ワタリガニの姿になった亘は、目を丸くしながら皆の顔を見た。
「拙者は・・・泡になって消えたのではなかったのか?」
「生きていて良かったよー!!アッミーゴー亘!!これでボクたちも仲間だね」
タツノオトシゴ姿の五十鈴は、亘の甲羅に口付けした。海亀のアナンも涙をこらえながら喜んでいた。
「いすみ様を助けたい、真鶴を救いたい気持ちが奇跡を起こしたんだな」
「・・・そうだな」
「亘、五十鈴、アナン。今まですまなかった。お前達の言葉を聞かず、追放した事を詫びる」
いすみが深く謝ると、真っ先に亘が言葉を返した。
「・・・やはり、海王神はいすみ様だ。辛い過去を背負ったから掟を作ったのだろう」
「・・・いずれは皆に話す。今は、真鶴と闇クリオネを止めよう。・・・力を貸して欲しい、湘」
「言われなくてもそのつもりだ。姿は違うが、母と再会出来た。母と共に、私を見守ってくれてありがとう、いすみ様」
湘は照れ隠ししながらいすみに礼を言った。凪沙は涙を流しながら、湘の元に歩み寄った。
「湘・・・ごめんなさい、会いに行かれなくて。海の世界で見守る事しか出来なかった・・・」
凪沙は湘を抱きしめようとしたが、湘に止められた。
「おいおい母さん、私は子供ではないのだから。でも、私も母に会える日を待ち侘びていたよ」
凪沙は成長した湘の肩と頬に触れた。湘は子供に戻ったかのような無邪気な笑顔で、母に言った。
「父を闇の手から救ったら、親子水入らずで鎌倉の甘味処に行きたいな」
「もちろん。皆さん、湘の事をよろしくお願いします。もう時間だわ、そろそろ体を仁摩さんに返さなくては」
凪沙の体から薄紫色に光る魂が抜け、姿は仁摩に戻った。仁摩は目を覚ましたと同時に、湘の胸ぐらを掴んだ。
「覚悟しなさい!!ミズチ!!凪沙さんと海洋戦士の皆さんに手を出すんじゃないわよ!!」
「え!?落ち着きたまえ!仁摩殿!!」
「え!?湘さん?」
「仁摩・・・まさか、ミズチの野郎に何かされたか?」
桜龍は緊迫した表情で仁摩に問い詰めた。仁摩は照れながら、『心配ないよ』と笑いかけた。
「桜龍・・・皆んな揃っているから、凪沙さんを霊媒するまでの事を話すわ」
常葉は懸命にいすみの傷を癒やしていた。すると亘が俺も手伝うと常葉に力を貸した。いすみは深い傷を負うも、苦しみに耐えながら介抱している亘に小さく笑いかけた。
「亘・・・どうやら、母親に会えたようだな」
「いすみ・・・本音を言うが、拙者は貴様ではなく他種族に寛大な真鶴を王にしたかった。しかし、真鶴も俺達も闇の者に踊らされた。海王神に反いた事と、真鶴を止められなかった償いをさせてくれ」
亘は魔力を込め、いすみの傷を回復させようとしていた。
「それはならん・・・ワレは闇クリオネの言う通り、海洋族の禁忌を犯した。・・・だからワレは掟を・・・」
「もう良い、いすみ。拙者の力を全て渡す。それで傷は治り海王の力も完全に復活する」
亘が静かに力を解放させると、五十鈴とアナンが必死に止めた。
「亘はそんな事するな!!九頭竜の事はボクにも原因がある!!小さすぎるけど、せめてボクの命でいすみ様の傷を治す!!」
「お前のナヨナヨした体で務まるかよ!!俺の命をいすみ様にやるよ!!」
「お前達は黙れ!!拙者は真鶴も海洋族も、そして、いすみ様も救いたい。母にも会えたのだし何も悔いはない」
球磨は五十鈴とアナンを手に持ち、亘から遠ざけた。
「・・・亘が決めた事なんだろ。なら、見届けてやろうぜ。漢の覚悟と忠誠心をな」
「・・・ありがとう、球磨」
亘はいすみの腕を掴み、自分の胸に彼の手を当てた。すると、朱色の暖かい光が彼を包んだ。
「・・・力が戻ってくる」
腹部の傷は消え、海王神の力が完全に蘇った。今までよりも強い力を得たといすみは感じていた。しかし、亘の体は泡に包まれ消えそうになっていた。皆は亘の決意を見届けるしかなかった。
「亘・・・ワレの為にすまなかった。お前の父親を犠牲にし、長い間、母に会わせなかった事に罪悪感を持っている・・・」
いすみは、床で小さくなっている泡に頭を下げ謝った時、泡から8本足の小さな甲殻類の生物が現れた。
「これは、海蜘蛛か?」
「モトスさん・・・これは蟹ですよ」
モトスのボケと千里の突っ込みに皆はほっこり笑っていた。桜龍は蟹を見て納得していた。
「こいつは、全国の海で獲れるワタリガニだな。隠岐の島は松葉ガニが捕れるけどな。亘・・ワタリガニ、なるほど」
ワタリガニの姿になった亘は、目を丸くしながら皆の顔を見た。
「拙者は・・・泡になって消えたのではなかったのか?」
「生きていて良かったよー!!アッミーゴー亘!!これでボクたちも仲間だね」
タツノオトシゴ姿の五十鈴は、亘の甲羅に口付けした。海亀のアナンも涙をこらえながら喜んでいた。
「いすみ様を助けたい、真鶴を救いたい気持ちが奇跡を起こしたんだな」
「・・・そうだな」
「亘、五十鈴、アナン。今まですまなかった。お前達の言葉を聞かず、追放した事を詫びる」
いすみが深く謝ると、真っ先に亘が言葉を返した。
「・・・やはり、海王神はいすみ様だ。辛い過去を背負ったから掟を作ったのだろう」
「・・・いずれは皆に話す。今は、真鶴と闇クリオネを止めよう。・・・力を貸して欲しい、湘」
「言われなくてもそのつもりだ。姿は違うが、母と再会出来た。母と共に、私を見守ってくれてありがとう、いすみ様」
湘は照れ隠ししながらいすみに礼を言った。凪沙は涙を流しながら、湘の元に歩み寄った。
「湘・・・ごめんなさい、会いに行かれなくて。海の世界で見守る事しか出来なかった・・・」
凪沙は湘を抱きしめようとしたが、湘に止められた。
「おいおい母さん、私は子供ではないのだから。でも、私も母に会える日を待ち侘びていたよ」
凪沙は成長した湘の肩と頬に触れた。湘は子供に戻ったかのような無邪気な笑顔で、母に言った。
「父を闇の手から救ったら、親子水入らずで鎌倉の甘味処に行きたいな」
「もちろん。皆さん、湘の事をよろしくお願いします。もう時間だわ、そろそろ体を仁摩さんに返さなくては」
凪沙の体から薄紫色に光る魂が抜け、姿は仁摩に戻った。仁摩は目を覚ましたと同時に、湘の胸ぐらを掴んだ。
「覚悟しなさい!!ミズチ!!凪沙さんと海洋戦士の皆さんに手を出すんじゃないわよ!!」
「え!?落ち着きたまえ!仁摩殿!!」
「え!?湘さん?」
「仁摩・・・まさか、ミズチの野郎に何かされたか?」
桜龍は緊迫した表情で仁摩に問い詰めた。仁摩は照れながら、『心配ないよ』と笑いかけた。
「桜龍・・・皆んな揃っているから、凪沙さんを霊媒するまでの事を話すわ」