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第3章 異説小田原征伐  蘇りし海の亡霊と海神伝説

「いい加減にしな!!これ以上、湘の親父さんを利用するんじゃないよ!!」
急に仁摩が目を覚まし、術でクリクリの動きを封じていた。真鶴は苦しんでいる中、仁摩がなぜ動けるのか戸惑っていた。そして、口調と雰囲気がいつもの彼女と違っていた。
「ば・・馬鹿な、巫女の体に入れた毒は強力なはず・・・それに、君そんな喋り方だったか?」
「そんな喋り方とは、褒め言葉かい?あんた本質は単純で甘いな。忍びのあたしには痛くも痒くも無い毒だったよ」
何と、仁摩の姿は藤乃に変わった。そして驚いている桜龍といすみに笑いかけながら説明した。
「湘から借りた宝石で、一時的に海洋族になれたのさ」
そして直ぐ湘に目で合図した。湘は『ご苦労』と藤乃に頷き、素早く銃から氷の弾を放ち、クリクリを凍らせた。真鶴は湘の予想外の行動に戸惑っていた。
「し・・・湘・・どういうつもりだ・・・俺を裏切るのか・・?」
「私は、最初から闇の力で蘇った亡霊を父だと思ってないよ」
湘は真鶴に銃剣を向け、冷たい目線を向けた。
「湘・・・身を粉にして大切に育てた父に銃を向けるのか・・お前は母さんに会いたくないのか?」
「いいや、今の君は父の身体を支配している闇の龍・・・九頭竜なのだよ!!」
「な・・俺が九頭竜だと?何を寝ぼけた事を!!」
真鶴は湘の言う事を信じられずにいた。桜龍も彼の正体に驚いていたが、いすみは心当たりがある顔していた。
「・・・真鶴は大昔に封印した九頭竜の人間姿だったのか・・・」
「俺を封印しただと・・・説明しやがれ!!いすみ!!」
真鶴は籠手に付いている紅玉に力を込めた。すると、紅玉は漆黒に染まり、真鶴は黒い霧に包まれ、聖なる龍の力を振り払った。桜龍は吹き飛ばされたが、いすみが後ろから支え衝突を免れた。桜龍は直ぐに瞳をまぶたに戻した。
「俺は・・九頭竜ではない!!三浦真鶴だ!!三浦一族の末裔で人間だ!!」
真鶴は我を失い力が暴走し出し、いすみに襲い掛かった。いすみは真鶴の太刀を槍で受け止め、対抗した。
「いすみ!!俺は貴様が殺してやりたい程憎い!!海王神の権力を振りかざし、俺達家族を引き離した!」
真鶴は激しい怒りで攻撃し続けた。桜龍は聞き捨てならないといすみを擁護した。
「それは!!凪沙さんが地上での環境に適応出来なくて、泡になって消えるから連れ戻すしかなかったんだろ!!」
「これ以上言うな、桜龍。これはワレと真鶴の戦いだ!!ワレが・・太古の昔、小さな島を海に沈めた闇の九頭竜を封印した。まさか、その正体が真鶴だったとはな・・・。それならなおさらこの手で決着を付けなければならん!!」
いすみはひたすら真鶴の攻撃を受け止め、彼の憎しみも受け入れていた。湘はいすみの姿を見て、結論を導かせていた。
「海王にも辛い過去があったのだな。それが理由で掟を作り、海洋族の反乱を生んでしまった。その罪を償う為に、父と向き合っているのだな」
湘は銃口に力を込めていた。
「どうした?かかってこいよ!!闇の力を持つ俺が怖いか?それとも、俺に罪悪感でも持っているのか!!」
真鶴は冷酷な瞳でいすみを見下しながら、腹を蹴っ飛ばした。いすみは攻撃を喰らっても、毅然とした態度で真鶴を見た。
「真鶴・・・貴様をこの姿にしてしまったのは、ワレの罪だ」
いすみは頭を下げ、真鶴に謝った。
「・・・謝罪か?どういうつもりだ?」
「ワレは今まで掟で皆を縛っていた・・・それは、海洋族と他種族が不幸にならぬ為だった。しかし、結果的に憎しみを生んでしまった・・・」
「何を今更・・ならなぜ凪沙を人間にする事は出来なかったのか!!他種族と結ばれる術は無かったのか!!」
真鶴が叫ぶと、凍らされていたクリクリが闇の力で解放され、真鶴に近づき憎悪の力を注いだ。
「そうだクリ!!いすみは全てを放棄して、ただ掟で一族を縛るしか能が無かったクリ!!真鶴とおらはいすみに捨てられたんだクリ!!」
「闇クリオネ・・・あれは仕方なかったのだ。お前はワレが招いた災いの元なのだから・・・」
「災いとは何とも酷い事を言うな!!クリクリに何があったか聞かないが、お前の無念も晴らしてやるぞ!!」
真鶴は至近距離から矢を放ち、いすみの体を凍らせた。桜龍と湘は止めようとしたが、クリクリの放つ水圧に吹き飛ばされてしまった。
「粉々に砕けて死ね!!いすみ!!」
氷の矢が放たれる瞬間、仁摩らしき女が間に入ってきた。
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