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第3章 異説小田原征伐  蘇りし海の亡霊と海神伝説

房総半島の南東にある日本海溝。海王神の宮殿は深海の溝に囲まれた神聖な地。しかし今は亡霊真鶴に支配されている。宮殿近くを守備している海洋戦士は、桜龍といすみを警戒し槍を向けていたが、湘は『手を出すな』と彼らに視線を向け命じた。そして湘は2人に説明した。
「君達は私の力で海に潜れている。下手な真似をしたら呼吸術を止めるから命はないと思え」
いすみは疑わしい顔をしながら湘に尋ねた。
「湘・・・本当にワレ達を真鶴に会わせるのだな」
湘は感情を表さず答えたが、言葉にどこか後ろめたさがあった。
「・・・父は桜龍に用があるが、新たな海王となったところをいすみ様に見せつけたいそうだ」
「・・・そうか。それで前海王を始末するつもりだな」
いすみは皮肉めいた口調で言ったが、湘はこれ以上何も答えなかった。桜龍は湘の本心を探っていた。
(湘さん、今いすみ様と言っていたな?もしかしたら本当は慕っているのか?)
桜龍はとりあえず今は黙っておこうと、湘の様子を見ながら宮殿へと進んだ。


数刻が経ち宮殿の正門に到着し、直ぐに王座の間に入った。かつていすみが座っていた威厳さと神々しさを漂わせる黄金の王座。しかし今は真鶴が涼しい顔をして座っていた。
「来たか、桜龍と元海王いすみ。約束通り聖龍の瞳を渡してもらおうか」
真鶴は単刀直入に言うと、桜龍は仁摩の身を案じながら真鶴に感情を殺しながら尋ねた。
「・・・仁摩殿は無事なんだろうな?」
真鶴は術で、横に置いてある大きな二枚貝を開けた。そこには仁摩が深い眠りについていた。
「仁摩殿!!」
桜龍が彼女の元へ行こうとしたが、湘に遮られた。
「巫女の体に毒を入れた。回るのは遅いが、解毒剤を飲まさなければ死ぬぞ。聖なる龍の瞳を渡せば毒を解いてやる」
「く・・・なんて卑劣な・・」
いすみは歯を食いしばりながら真鶴を睨んでいたが、桜龍は冷静な対応をした。
「・・・渡すよ、俺の瞳を」
「ほう、随分と素直だが、この状況では賢明な判断だな」
「桜龍・・・聖なる龍を手放す覚悟は出来ているのか?」
「いすみ様、俺を信じてください」
桜龍の強い意志に、いすみは反論せず静かに頷いた。
「・・・分かった。貴殿を信じる」
桜龍は眼帯を外し、念を込め聖なる龍の瞳を取り出し、真鶴に渡そうとした。真鶴は勝ち誇った顔をしながら受け取ろうとしたが、桜龍は真鶴の胸に瞳を押し入れた。
「あんたが単純な性格で良かったぜ。さあ、目を覚ませ!!真鶴!!」
聖なる龍の瞳から眩い光が真鶴を包み込んだ。仁摩の近くで見ていたクリクリは、慌てながら脅した。
「もう止めるクリ!!これ以上続けたら巫女を殺すクリ!!」
クリクリは手を硬くさせ、彼女の首を斬ろうとした時、金縛りで動けなくなった。
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