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第1章 異説 武田の残党狩り編 桃源郷に集う勇士

樹海を歩き続けていると、少しずつ木々の奥から光が見えてきた。3人は少し広場になっている所で休んだ。
「もう少し歩けば、鳴沢や忍野の集落に抜ける。そこにも武田の兵や精霊戦士も戦っているだろう。今日中にはその地に着きたいところだな」
「それにしても、樹海だけあって、織田兵も梅雪たちも襲って来ねーな」
モトスと球磨は少し緊張が解けていた。一方、湘は深く考えていた。
「・・・確かに、法主様が申していた、この先の強敵というのも気になるし・・・。それに小山田信茂のように精霊を操るものがいるとすれば・・・」
モトスも警戒し始めた。しかし、球磨はニヤッと笑っていた。
「強敵だと!!面白そうじゃねーか。腕が鳴って来たぜ!!」
強敵相手を楽しみにしている球磨に2人は唖然としていた。
「心配すんなって!!ダンナと湘は絶対に護るからよ!!」
続いて湘も不敵に笑いながら言った。
「ふん。大きく出たな球磨。・・・やれやれ。生真面目すぎるモトスと戦バカを私の知略で護ってあげないとな」
モトスも真剣な眼差しを2人に向け
「俺も絶対にお前たちを死なせたりはしない!!生きて共に戦おうぞ!!」
3人が誓いの言葉を宣言すると、突然強い突風が吹き始めた。木々は激しく揺れた。
「熱い友情ごっこは終わったか?待ちくたびれたぜ・・・」
木の上から、黄金色に輝くハネを生やした青年が舞い降りてきた。色白で神秘的な容姿とは裏腹に、背は球磨位の大柄で細身ながらもがっちりとした体型であった。
「お前は!!精霊戦士か!!!」
モトスが武器を構えながら尋ねた。
「これは申し遅れた。俺は森精霊の白州。梅雪サマの命でお前らの討伐に来たのさ!!」
白州はハネを消し、代わりに背負っている自分の背丈位の大太刀を抜いた。
「君は・・・操られているわけでも、死霊でもないな。・・・自分の意志で梅雪に下ったのかね?」
湘も銃剣を構えた。すると、白州は問答無用と武器を振り下ろし、衝撃波を放った。3人は横に跳躍し回避した。湘は手から水流の渦を出現させ、白州を中に閉じ込めた。
「・・・やれやれ。血気盛んな精霊だこと。頭と体を冷やしてあげようか」
湘は銃口から氷弾を撃とうとした瞬間、足元から植物の根が彼の体を拘束した。
「う・・・くぅ・・・・・何なのだ・・・これは?」
根は湘の首を絞めている。白州は水の渦を気迫で消した。
「その程度の力、俺には効かないぜ!!おじさん。まずはお前から始末してやろうか!!!」
白州の植物を操る術がさらに湘を苦しめた。モトスは助けようと、風の術を根に放ったが、白州の大太刀から放たれたかまいたちにより遮られてしまった。
「・・・う・・私はおじさんでは・・・ない・・・貴様とて私とそれほど歳は変わらないだろう・・・・」
湘は苦しみながらも白州を睨み反論した。
「こんな根っこ燃やしてやるぜ!!!」
球磨が西洋槍を地面に突き、根っこを燃やした。それと同時に、湘は解放された。
「やれやれ・・・私も燃やされるところだったよ・・・」
湘は絡みついている根を振り払った。
「これでも手加減したんだぜ。・・・死なせたくなかったからな」
球磨が少し照れながら下を向いている、湘は彼に小さな声でありがとうと優しく笑いながら礼を言った。
「さてと!!ダンナと湘は先に樹海を抜けな。こいつの相手は俺がする!!」
球磨が白州を挑発すると、白州は嘲笑った。
「一対一で俺に挑むのかー?俺もなめられたもんだなぁ」
「そう笑ってんのも今のうちだぜ!!!!」
球磨は西洋槍で突きの攻撃を仕掛けた。白州は素早く大太刀で受け止めた。
「・・・強い一撃だが・・・力だけでは俺には勝てねーぞ!!」
「それはどうかな?」
球磨は足に聖なる炎を纏い、白州目掛けて回し蹴りを喰らわせた。白州は強力な攻撃に吹き飛ばされ、木に叩きつけられた。
「・・・く・・思ったよりもやるじゃねーか・・・暴れ牛」
「俺は熊でも暴れ牛でもないぜ!!九州男児の球磨だ!!」
「球磨か・・・よく覚えておくか。俺をここまで追い詰めるとは相当の者だな。だがよ!!次は本気で行くぜ!!!!」
白州は再び背中から黄金色のハネを出現させた。そして、森林から差す光を吸収し、より一層強さを増していった。
「今度は3人がかりで仕掛けても良いんだぜ。最も3人がかりでも勝てるかだがな」
白州の大太刀は煌びやかに光を帯びていった。
「この技は・・・危ない!!湘、球磨!!俺たちも力を合わせて攻撃に備えるぞ!!」
3人もそれぞれ魔力を高め、気を集中させた。すると、白州の元に1羽のキアゲハが止まり、大太刀の光が消えた。
「・・・ん?梅雪サマがお呼び?・・・至急この地に来い・・・?お前ら!!とりあえず命拾いしたな!!!今日のところは見逃してやる。生き延びていたらまた相手してやるよ!!暴れ牛」
白州はハネを広げ、空に羽ばたこうとした。
「逃がすかよ!!!」
球磨とモトスは追撃しようとしたが、日光の力で強さを増している白州の突風の力で吹き飛ばされてしまった。
「梅雪サマめ・・・一番良いとこだったのによー」
白州は不満な表情をしながら、東の吉田方面に飛んで行った。
(・・・まぁ、樹海を抜けたらあの娘が待ち構えているからなー。残念だが、モトス達もそこで終わりだな・・・)



モトス達は白州を追うことを諦め、先を急ぐことにした。
「あの野郎を逃がしちまったのは悔しいが、今は吉田周辺の民を救出するのが先だな!!」
球磨が悔しがっていると、モトスは思い悩んでいた。
「白州や他の精霊たちは再びハネを出現させていた・・・皆、森の守護者として覚醒したのか・・・」
「そういえば、森の精霊は小精霊の時はハネがあって、5歳を境に人間と同じような体型になり、体が成長し、ハネも自然と無くなるのだっけ?」
湘がモトスに尋ねた。
「ああ。精霊は大人になり、再びハネを出現させることが出来る。しかし・・・俺はまだ覚醒していない・・・俺に何かが欠けているのかもしれない」
深く悩んでいるモトスの肩を球磨が優しく叩いた。
「そんな深く悩むなよダンナ!!ダンナの皆を護りたいという優しい力できっとハネも出てくるって!!」
「焦らずとも、何かのきっかけでハネが出てくると思うよ」
湘も優しく励ました。
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