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第3章 異説小田原征伐  蘇りし海の亡霊と海神伝説

日本海溝にある海洋族の宮殿、真鶴は王座の間で、亘に命を下していた。
「では、湘が桜龍といすみを手引きしている時、拙者は残りの奴を露払いしておく」
「ああ・・頼んだぞ」
真鶴は無感情な態度で、亘に返答した。亘は不安でいられず、主の背中をさすったが、拒まれた。
「俺に構うな!!俺はお前に頼らずとも、海の支配者になれる」
真鶴のやさぐれた態度に、亘は叱った。
「自分の身体を労われよ真鶴!!それに、支配者ではなく、海王神であろう」
「亘・・・すまない・・・自分でも思うが、最近の俺は変だ。まるで、自分自身では無い何かに精神を支配されている気がする・・・」
真鶴は青ざめた表情で、頭をかかえていると亘は強く手を握ってくれた。
「もう、無理はするな。桜龍の仲間を倒したら、直ぐにお前の元に駆けつけてやる」
「強いな・・亘は。お前だって両親と離れ離れになって、未だに母親に会えないだろうに」
「だから拙者は、真鶴と凪沙と湘に幸せになって欲しいと願っているのだ」
亘は筋骨隆々の人魚の姿となり、宮殿を出た。真鶴は亘の逞しい姿を見て、悲しげな表情になった。すると、王座の下に隠れていたクリクリが姿を現し、真鶴に暗示をかけるように囁いた。
「五十鈴もアナンも敵に寝返ったくり。亘もどうなるかくり〜」
「・・・どうでも良い。俺が欲しいのは、桜龍の聖なる龍の瞳だ。それに、お前とミズチさえ居れば良い」
真鶴は再び、冷酷な顔に戻った。


その頃、湘も門を出て地上へ向かおうとしていた。その時、後ろから仁摩に声をかけられた。
「湘さん・・・桜龍を呼びに行くのですか?」
「これも母の為だ。すまないが、君を宮殿外には連れて行かれない」
仁摩は桜龍を誘き出す人質だと、湘は申し訳ない顔をした。
「私は大丈夫です。今動いてしまっては、皆の足手まといになってしまうし、湘さんの事を信じていますから」
「仁摩殿・・・危険な目に合わせて、本当にすまない」
「私が望んで桜龍に付いてきただけですよ。私も、凪沙さんを目覚めさせる方法を探してみます」
「・・・私を裏切り者と思わないのだね。桜龍達との戦闘は避けられないが、仁摩殿には悪いようにはさせない。それは信じて欲しい」
湘は仁摩の手の甲に口づけをした。すると、手から青く小さい光が現れた。
「この光は、君の行動を導いてくれる。光った時、放つ方向に行くようにしてくれ。」
仁摩は何を言っているのか上手く理解出来なかったが、とりあえず従おうと頷いた。
「分かりました。私は自分に出来ることをします」
湘は笑顔で人魚の姿となり、宮殿を出ていった。


湘が三浦半島、城ヶ島の岬に到着すると、藤乃が待っていた。
「来てくれたのだな、藤乃。風魔忍軍をまとめなくて大丈夫なのかい?」
「副棟梁が指揮してくれてるよ。北条軍も籠城戦に持ちこたえているよ」
現在、豊臣勢は小田原城を攻めているが、海洋族の妨害だけでなく、北条軍の団結力と統率力で苦戦していた。湘は流石は難攻不落の城と、相模の民との団結力で北条はそう簡単に崩れないと感心していた。
「準備は出来ているよ、湘。あの娘を助けたいのだろう」
「引き受けてくれるのか?君を危険な目にさらしてしまうが・・・」
「風魔忍のあたしを舐めるんじゃないよ。それに、あたしは真の敵を倒したら、あんたに言いたい事があるんだよ。だから、あんたも、北条への恩とか気にせず、自分のやりたいようにやりな」
藤乃は優しい笑みで、湘の手を握り言った。
「ありがとう藤乃。君も死なせはしない」
湘は藤乃の胸に海色に光る石を入れた。藤乃は一瞬、驚き胸元を見た。
「その石は南蛮でアクアマリンと呼ばれている。水難から君を護ってくれるよ。戦いが終わったら返してもらうから、死ぬなよ」
「分かっているよ。あんたの父親が何であろうと、湘は湘だから、気にすんじゃないよ」
湘は海に飛び込み、房総へ向かった。藤乃は湘を見届けながら、胸に手を当てた。
「父上に怒られるが、いっその事、あたしもこのまま海洋族になれたら湘を抱きしめられるかねぇ」
藤乃は、湘に頼まれた任務を果たそうと海に飛び込んだ。すると、胸元から青色の光が現れ、人魚の足へと変わった。
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