第3章 異説小田原征伐 蘇りし海の亡霊と海神伝説
「ああ・・・そうだよ。ボクは・・・大昔、海龍様を祀る島で神官をしていた。そこの島に住む人間と親しくなった。だけどね、海流様が闇に染まって、九頭竜になった時、その島を海の中に沈めてしまったのだよ!!」
五十鈴は必死に涙を堪えながら、モトスに術を放ち続けた。
「ボクは・・・人間を一時的にでも、海洋生物にして水難から命を助けたかった・・・。だから、今度は、真鶴が日ノ本を海に沈めようとしても、誰も犠牲にならないよう、術を完成させたんだ」
「五十鈴・・・そんなに重い過去を背負っていたのか・・・・」
「そう。もう二度と、そんな過去にならないように、研究し、完成させた術なのに・・・いすみは、その術を危険な物と見なし、ボクを宮殿から追放した・・・それだけじゃない」
五十鈴は口籠もりながらも話を続けた。
「ボクといすみで、九頭竜を海龍様に戻した後、ボクの術が成功して、海龍様が人間の赤子になった。ボクは育てようとしたのに、いすみに猛反対され、沈んだ島に封印してしまった・・・」
「そうだったのか・・・・・」
「ボクは、海龍様を育てたかった!!」
「キミキミ、お喋りが過ぎるよ。その口黙らせてあげようか」
突如、五十鈴の目の前に紫黒色の髪の美男子が現れ、念力で吹き飛ばした。
「何をするのかね、セニョール!!って誰だ君?」
「・・・ああ、会うのは初めてだったね。ボクはミズチ。陰から真鶴を支援している闇の遣いだよ」
「闇の遣いだと・・・貴様は闇の一族の者か!!」
モトスはミズチを捕らえようと、蔦で拘束しようとしたが、強力な冷気を放たれ、蔦は枯れてしまった。
「君がモトスかい?ボクは厄神四天王の1人なんだけど、その中に君と同じ、森精霊が居るよ。正確には、気難しい闇の精霊かな」
「同胞が闇精霊だと!?詳しく問いたいが、今はそれどころではない・・・貴様が、真鶴を陰で操っているのか・・・」
「真鶴を海王にしたいのは本当だよ。傀儡の海王神だけどね」
「真鶴を利用して海を闇にするのか!!」
五十鈴は今までに見たことがない剣幕で叫んだ。しかし、ミズチはあくびをしながら軽くあしらった。
「君はもう用済みだよ。まぁ、君の強い魔力だけ頂いておくよ」
ミズチは暗黒の渦を出現させ、五十鈴を閉じ込めた。モトスは彼を助けようと、聖なる風で打ち消そうとしたが、全く効いていなかった。
「無駄だよ。いくら君が強い精霊でも、厄神四天王の僕には敵わないさ」
ミズチは微笑しながら、五十鈴から力を奪っていった。
「まだボクは消えるわけにはいかないんだ!!真鶴を貴様らの好きなようにはさせない!!」
五十鈴は必死に渦を消そうとしたが、強大な力に飲み込まれてしまった。
そしてミズチは、彼の魔力を全部奪い、モトスとお都留に別れの挨拶をした。
「モトス、この戦いで日ノ本を護れたら、君は闇精霊の彼と戦う事になるかもよ」
ミズチはまるで予言したかのような、これから先の未来を告げ、闇の中に消えていった。
「五十鈴は消えてしまったのでしょうか・・・」
「く・・あの者とは分かり合えると思っていたのだか・・・おや?」
モトスは砂浜に何か落ちているのを見かけた。
五十鈴は夢の中で眠っていた。
『五十鈴さん!!大丈夫ですか?』
(うーん・・・このたおやかな声は、セニョリータお都留かい?)
『五十鈴様、私の神楽を見ませんか?』
(ん?愛しの『さい子』ちゃんも居るのか?ここは天国かな?)
五十鈴は2人に声をかけられ、うっとり良い夢を見ていた。
『おとぎ話のように、口付けでボクを早く起こしてくれ、可愛いセニョリータ達』
五十鈴はお都留に口づけをしようとした時、さい子に頬をつねられた。そして目を覚ますと、目の前に眉間に皺を寄せているモトスの顔が映った。
「貴様は、夢でも二股をかけていたのか」
「姿は変わっても、無事で良かったです」
「ん?姿が変わった?・・・!?」
五十鈴はモトスの手のひらに乗せられて驚いていた。そして、自分の姿をまじまじと見ると、青紫色のタツノオトシゴに変化していた。
「ぼ・・ボクの美しい姿が、タツノオトシゴに!?」
「おそらく、ミズチは命までは取らなかったようだな」
「う・うぅ・・ボクは元々はタツノオトシゴの化身で・・・成長して半魚人になれたんだ」
五十鈴は涙を流しながら2人に説明した。お都留は『可愛いですよ』と五十鈴の頭を撫でた。うっとりしている五十鈴に、モトスは流し目で少しからかった。
「お都留とさい子ちゃんのどちらが良いのか、お前は?」
「それは、両方に決まっているさ!・・ん?何でさい子ちゃんの名前を知ってるの?・・!?まさか君!!」
五十鈴はモトスの顔とさい子の顔を重ね、衝撃を受けた。さらに涙を流し、モトスの手のひらに倒れた。
「うう・・モトス、ボクは君に負けたよ。精霊の力が強いのはもちろん、君の女装姿に見事誘惑された時点で負けだったよ・・・」
「もう、モトスさんたら、そんな事をしたのですね!!」
お都留は少し怒りながら注意した。モトスはおおらかに笑っていた。
「それより、五十鈴をこのままにしておく訳にはいかぬな。俺達はこれから、皆の元へ行く」
「・・・この姿では魔法も使えないし、セニョリータ達を口説けない。役に立たないボクを煮るなり焼くなり好きにしたまえ・・・」
「それはならぬぞ!何故なら、タツノオトシゴの調理方法が分からぬ。刺身は出来ぬし・・・塩焼きか・・いいや佃煮か・・?」
「南蛮の調理法で天ぷらがあるみたいですよ」
「し・・・シャラップ!!本気で食べる気なのかい!!」
「はは、冗談だ。だがこれは本気だ。いすみ様に力を貸してくれないか?」
モトスは切羽詰まる顔で、五十鈴に頼んだ。
「・・・それは無理だね。いすみはボクを危険だとみなし、追放した。今更戻れるわけがないだろう」
「いいや、いすみ様は変わった。きっと今の彼ならお前を元に戻してくれる。真鶴を助ける為にも、協力して欲しい」
「私からもお願いします」
「こんな姿になっちゃったけど、真鶴は大切なアミーゴーだ。アナンと亘にもミズチの事を早く伝えないとだし、休戦といこうか。アミーゴーモトス、アミーゴお都留」
五十鈴は照れながら言うと、2人も笑顔で彼の口先に指を置いた。
「過去に何があったかは聞かぬが、お前は島民を助ける為に最善を尽くそうとしたのだろう。なら自分を責めるな」
モトスの柔らかい言葉に五十鈴は笑顔で誓った。
(犠牲を出さない為に、全種族を海洋生物にするのは、間違っていたんだ。共存ではなく戦うよ。希望の勇士達と)
モトス達は仲間と合流するため、東へ向かった。
第8話 完
五十鈴は必死に涙を堪えながら、モトスに術を放ち続けた。
「ボクは・・・人間を一時的にでも、海洋生物にして水難から命を助けたかった・・・。だから、今度は、真鶴が日ノ本を海に沈めようとしても、誰も犠牲にならないよう、術を完成させたんだ」
「五十鈴・・・そんなに重い過去を背負っていたのか・・・・」
「そう。もう二度と、そんな過去にならないように、研究し、完成させた術なのに・・・いすみは、その術を危険な物と見なし、ボクを宮殿から追放した・・・それだけじゃない」
五十鈴は口籠もりながらも話を続けた。
「ボクといすみで、九頭竜を海龍様に戻した後、ボクの術が成功して、海龍様が人間の赤子になった。ボクは育てようとしたのに、いすみに猛反対され、沈んだ島に封印してしまった・・・」
「そうだったのか・・・・・」
「ボクは、海龍様を育てたかった!!」
「キミキミ、お喋りが過ぎるよ。その口黙らせてあげようか」
突如、五十鈴の目の前に紫黒色の髪の美男子が現れ、念力で吹き飛ばした。
「何をするのかね、セニョール!!って誰だ君?」
「・・・ああ、会うのは初めてだったね。ボクはミズチ。陰から真鶴を支援している闇の遣いだよ」
「闇の遣いだと・・・貴様は闇の一族の者か!!」
モトスはミズチを捕らえようと、蔦で拘束しようとしたが、強力な冷気を放たれ、蔦は枯れてしまった。
「君がモトスかい?ボクは厄神四天王の1人なんだけど、その中に君と同じ、森精霊が居るよ。正確には、気難しい闇の精霊かな」
「同胞が闇精霊だと!?詳しく問いたいが、今はそれどころではない・・・貴様が、真鶴を陰で操っているのか・・・」
「真鶴を海王にしたいのは本当だよ。傀儡の海王神だけどね」
「真鶴を利用して海を闇にするのか!!」
五十鈴は今までに見たことがない剣幕で叫んだ。しかし、ミズチはあくびをしながら軽くあしらった。
「君はもう用済みだよ。まぁ、君の強い魔力だけ頂いておくよ」
ミズチは暗黒の渦を出現させ、五十鈴を閉じ込めた。モトスは彼を助けようと、聖なる風で打ち消そうとしたが、全く効いていなかった。
「無駄だよ。いくら君が強い精霊でも、厄神四天王の僕には敵わないさ」
ミズチは微笑しながら、五十鈴から力を奪っていった。
「まだボクは消えるわけにはいかないんだ!!真鶴を貴様らの好きなようにはさせない!!」
五十鈴は必死に渦を消そうとしたが、強大な力に飲み込まれてしまった。
そしてミズチは、彼の魔力を全部奪い、モトスとお都留に別れの挨拶をした。
「モトス、この戦いで日ノ本を護れたら、君は闇精霊の彼と戦う事になるかもよ」
ミズチはまるで予言したかのような、これから先の未来を告げ、闇の中に消えていった。
「五十鈴は消えてしまったのでしょうか・・・」
「く・・あの者とは分かり合えると思っていたのだか・・・おや?」
モトスは砂浜に何か落ちているのを見かけた。
五十鈴は夢の中で眠っていた。
『五十鈴さん!!大丈夫ですか?』
(うーん・・・このたおやかな声は、セニョリータお都留かい?)
『五十鈴様、私の神楽を見ませんか?』
(ん?愛しの『さい子』ちゃんも居るのか?ここは天国かな?)
五十鈴は2人に声をかけられ、うっとり良い夢を見ていた。
『おとぎ話のように、口付けでボクを早く起こしてくれ、可愛いセニョリータ達』
五十鈴はお都留に口づけをしようとした時、さい子に頬をつねられた。そして目を覚ますと、目の前に眉間に皺を寄せているモトスの顔が映った。
「貴様は、夢でも二股をかけていたのか」
「姿は変わっても、無事で良かったです」
「ん?姿が変わった?・・・!?」
五十鈴はモトスの手のひらに乗せられて驚いていた。そして、自分の姿をまじまじと見ると、青紫色のタツノオトシゴに変化していた。
「ぼ・・ボクの美しい姿が、タツノオトシゴに!?」
「おそらく、ミズチは命までは取らなかったようだな」
「う・うぅ・・ボクは元々はタツノオトシゴの化身で・・・成長して半魚人になれたんだ」
五十鈴は涙を流しながら2人に説明した。お都留は『可愛いですよ』と五十鈴の頭を撫でた。うっとりしている五十鈴に、モトスは流し目で少しからかった。
「お都留とさい子ちゃんのどちらが良いのか、お前は?」
「それは、両方に決まっているさ!・・ん?何でさい子ちゃんの名前を知ってるの?・・!?まさか君!!」
五十鈴はモトスの顔とさい子の顔を重ね、衝撃を受けた。さらに涙を流し、モトスの手のひらに倒れた。
「うう・・モトス、ボクは君に負けたよ。精霊の力が強いのはもちろん、君の女装姿に見事誘惑された時点で負けだったよ・・・」
「もう、モトスさんたら、そんな事をしたのですね!!」
お都留は少し怒りながら注意した。モトスはおおらかに笑っていた。
「それより、五十鈴をこのままにしておく訳にはいかぬな。俺達はこれから、皆の元へ行く」
「・・・この姿では魔法も使えないし、セニョリータ達を口説けない。役に立たないボクを煮るなり焼くなり好きにしたまえ・・・」
「それはならぬぞ!何故なら、タツノオトシゴの調理方法が分からぬ。刺身は出来ぬし・・・塩焼きか・・いいや佃煮か・・?」
「南蛮の調理法で天ぷらがあるみたいですよ」
「し・・・シャラップ!!本気で食べる気なのかい!!」
「はは、冗談だ。だがこれは本気だ。いすみ様に力を貸してくれないか?」
モトスは切羽詰まる顔で、五十鈴に頼んだ。
「・・・それは無理だね。いすみはボクを危険だとみなし、追放した。今更戻れるわけがないだろう」
「いいや、いすみ様は変わった。きっと今の彼ならお前を元に戻してくれる。真鶴を助ける為にも、協力して欲しい」
「私からもお願いします」
「こんな姿になっちゃったけど、真鶴は大切なアミーゴーだ。アナンと亘にもミズチの事を早く伝えないとだし、休戦といこうか。アミーゴーモトス、アミーゴお都留」
五十鈴は照れながら言うと、2人も笑顔で彼の口先に指を置いた。
「過去に何があったかは聞かぬが、お前は島民を助ける為に最善を尽くそうとしたのだろう。なら自分を責めるな」
モトスの柔らかい言葉に五十鈴は笑顔で誓った。
(犠牲を出さない為に、全種族を海洋生物にするのは、間違っていたんだ。共存ではなく戦うよ。希望の勇士達と)
モトス達は仲間と合流するため、東へ向かった。
第8話 完