第3章 異説小田原征伐 蘇りし海の亡霊と海神伝説
季節は、蛍が辺り一面に輝く初夏、小田原城から少し離れた山林に『太閤一夜城』で豊臣秀吉率いる軍勢は宴会をしていた。
「家臣皆と森精霊達のおかげで北条に見つからず、こんな立派な城を建てられて見事!!に天晴れである!!」
秀吉は広い月見櫓で、小田原城を見下ろしながら酒を飲んでいた。弟の秀長は、兄がおちゃらけている姿を心配していた。
「兄上・・・あまり櫓ではしゃいでいると、北条の刺客に襲われてしまいますよ・・・」
「心配するな、一夜城は小田原城からはそう簡単に見えない造りになっておるし、森精霊の力で木々と同化させとる」
秀吉は自信満々に笑いながら、『今宵は宴じゃ!!』と、皆に豪華な酒と食事を振る舞った。その近くで球磨と、甲斐から援軍に来た白州も、久しぶりに酒を酌み交わしていた。
「これから戦だってのに、秀吉様も皆も楽しそうで何よりだぜ。俺達、森精霊も築城を手伝ったが、武将に築城の名人が多くて驚いたよ」
「特に、清正殿や官兵衛軍師が気合いを入れていたな。皆なで協力したから、城が出来上がるのも早かったぜ」
白州はしんみりとおちょこを口にしながら言った。
「俺もお前らと出会う前は、ばっちゃんと村人以外の人間とは関わらないつもりだったが、他種族が一丸となるのも悪くねぇな」
球磨と白州は、目の前で桜龍と清正、そして海洋族の常葉と海王神いすみが一緒の席で酒を酌み交わしているのを見て感心していた。
「よ!!清正殿、良い飲みっぷりですね!!」
「まぁな、肥後で焼酎をたくさん飲んでんから、これ位余裕だ!!」
桜龍も便乗して酒を飲もうとしたが、球磨に『清正殿に対抗すんなよ!!』と注意された。桜龍は前に酔い潰れた事を反省し、今回は控えた。一方、いすみは淡々と杯で酒を飲み続けていた。清正を始め武将達は目を丸くしながら、いすみの飲みっぷりを見ていた。
「なかなか美味い酒だが、それ程強くはないな」
「海洋族は大半の者がお酒強いですからねぇ」
いすみ程では無いが、常葉も随分と飲んでいた。
皆は海王神が大酒豪だと知り、次から次へと名産の酒を渡した。
「いすみ殿、こいつは長宗我部家に伝わる土佐の酒だ。是非飲んで欲しいぜよ」
「これは、越後の銘酒ですぞ!!」
いすみは皆から貰った酒を見事に飲み干した。戦を前に盛り上がった宴会となった。
一方、モトスと恋人のお都留は、一夜城から小田原城と相模湾を見て、身を引き締めていた。
「皆、宴を楽しんでいるようだな」
「モトスさんは皆さんと参加しなくて良かったのですか?」
「ああ。いつ何時敵が現れるか分からぬからな。それに、お都留と2人きりになれたし」
「まぁ、モトスさんたら」
2人の世界に浸っていると、ゴホン!と木の上から声がした。
「ヒュー、熱いねぇ〜お二人さん🎵」
飛天族の長、蕨と千里が木から飛び降り目の前に現れた。
「蕨殿!!それに千里も。覗き見など悪趣味ですぞ!!」
「いやいや・・忍びのアンタが言うかい?」
「さっき見回っていたら、こんな物を見つけました」
千里は朱色のヒトデをモトス達に見せた。すると、ヒトデの裏側にはタツノオトシゴ型の紋章が付いていた。モトスとお都留は驚き、蕨に聞いた。
「これは、海洋族の仕業か?」
「敵に、石垣山城を知られてしまったのですか?」
「まぁ、仕業は魔術師の五十鈴だろうが、それなら今頃、宴の隙に襲撃に来るはず。さしずめ、このヒトデを飛ばして、一夜城を偵察していたんだろうな」
モトスは気づかず油断したと、悔しい顔をした。しかし、ヒトデを捕らえたのに、五十鈴が現れない事にも不思議だと思っていた。
「敵も、本戦が始まってから動き出すつもりですね。10万以上居る豊臣軍に挑む位、相当の自信でかかって来るでしょう」
「明日からいよいよ本番だな」
モトスとお都留は兜の緒を引き締めた。
その頃、五十鈴は箱根を流れる早川の上流で、偵察を終えていた。
(うーん、バレたか。それにしても、森精霊の術は少し厄介だな。面白いことをしてやろうと🎵)
五十鈴は悪巧みした後、ふと、脳裏に過去の光景が浮かんだ。大昔、今は無き島で神官を勤めていた時、島の皆で仲良く椰子の実を飲み、宴や祭りを楽しんだ穏やかな日々。五十鈴は、海に飲み込まれた島民を助けられず、今でも悔やんでいた。
「敵も味方も問わず、誰も海の藻屑にはさせないよ。例え、生態系を変えてもね」
翌日の早朝、早川付近に陣を構えていた兵に不吉な事が起きていた。突如、相模湾から川が逆流し、陣営が水浸しになってしまった。兵士達は水に浸かりながら、高台にある石垣山城を目指している時、魔術師の五十鈴に出くわした。
「セニョール達、こんな状態では、石垣山城へ行くのも大変だろう。ボクが動きやすい姿に変えてあげるよ」
「貴様は!!モトスから聞いたが、こいつは色ボケ魔術師だ!!皆かかれー!!」
「色ボケとは失礼だねぇ・・・。まあいいや。海洋生物になってしまえー🎵」
五十鈴は短杖から虹色の淡い光を出現させた。すると、兵士の姿は人型の大きさのタツノオトシゴになってしまった。
数時間後、桜龍達は午前中に小田原を出発し、日本海溝にある海洋族の宮殿へ行く事にした。常葉と蕨はとある事情で、別行動に出ていた。石垣山城の門の前で秀吉と秀長に見送られた。
「皆さん、どうか気をつけて。私達も難攻不落の小田原城での持久戦に努めます」
「俺らの心配はせず、安心して行ってこい!!こっちには対海洋族用の武器も術士も用意してあるぞ!!」
真面目な秀長とは対照に、秀吉は自信満々に言った。いすみは秀吉達に忠告した。
「海洋族は人間よりも腕力も体力も強い。だが、お主達が皆で力を合わせれば、負けはせんぞ」
「いすみ殿・・同胞に攻撃する事になりますが・・」
秀長は戸惑ながら言ったが、いすみは動じていなかった。
「海洋族は真の敵に、日ノ本を壊させようと動かされている。それを止めるのは、天下人の秀吉達だ」
「黒幕の成敗は私達にお任せください!」
桜龍達が意気込んでいる時、豊臣兵が緊迫した状態で知らせに来た。
「殿ー!!大変です!!早川中流から異形の海洋生物がこちらに向かってきています!!」
「何だと!!石垣山城を見破られたか・・それにしても、異形の海洋生物とは?」
モトスは海洋生物を操っている者を即理解した。
「五十鈴の仕業だな。俺が奴を成敗する。皆は先に海洋族の宮殿へ向かってくれ」
「分かりましたぜ!!旦那も色ボケの術に気をつけてください」
桜龍達はモトスを残し、先に海洋族の宮殿へ向かう事にした。
「家臣皆と森精霊達のおかげで北条に見つからず、こんな立派な城を建てられて見事!!に天晴れである!!」
秀吉は広い月見櫓で、小田原城を見下ろしながら酒を飲んでいた。弟の秀長は、兄がおちゃらけている姿を心配していた。
「兄上・・・あまり櫓ではしゃいでいると、北条の刺客に襲われてしまいますよ・・・」
「心配するな、一夜城は小田原城からはそう簡単に見えない造りになっておるし、森精霊の力で木々と同化させとる」
秀吉は自信満々に笑いながら、『今宵は宴じゃ!!』と、皆に豪華な酒と食事を振る舞った。その近くで球磨と、甲斐から援軍に来た白州も、久しぶりに酒を酌み交わしていた。
「これから戦だってのに、秀吉様も皆も楽しそうで何よりだぜ。俺達、森精霊も築城を手伝ったが、武将に築城の名人が多くて驚いたよ」
「特に、清正殿や官兵衛軍師が気合いを入れていたな。皆なで協力したから、城が出来上がるのも早かったぜ」
白州はしんみりとおちょこを口にしながら言った。
「俺もお前らと出会う前は、ばっちゃんと村人以外の人間とは関わらないつもりだったが、他種族が一丸となるのも悪くねぇな」
球磨と白州は、目の前で桜龍と清正、そして海洋族の常葉と海王神いすみが一緒の席で酒を酌み交わしているのを見て感心していた。
「よ!!清正殿、良い飲みっぷりですね!!」
「まぁな、肥後で焼酎をたくさん飲んでんから、これ位余裕だ!!」
桜龍も便乗して酒を飲もうとしたが、球磨に『清正殿に対抗すんなよ!!』と注意された。桜龍は前に酔い潰れた事を反省し、今回は控えた。一方、いすみは淡々と杯で酒を飲み続けていた。清正を始め武将達は目を丸くしながら、いすみの飲みっぷりを見ていた。
「なかなか美味い酒だが、それ程強くはないな」
「海洋族は大半の者がお酒強いですからねぇ」
いすみ程では無いが、常葉も随分と飲んでいた。
皆は海王神が大酒豪だと知り、次から次へと名産の酒を渡した。
「いすみ殿、こいつは長宗我部家に伝わる土佐の酒だ。是非飲んで欲しいぜよ」
「これは、越後の銘酒ですぞ!!」
いすみは皆から貰った酒を見事に飲み干した。戦を前に盛り上がった宴会となった。
一方、モトスと恋人のお都留は、一夜城から小田原城と相模湾を見て、身を引き締めていた。
「皆、宴を楽しんでいるようだな」
「モトスさんは皆さんと参加しなくて良かったのですか?」
「ああ。いつ何時敵が現れるか分からぬからな。それに、お都留と2人きりになれたし」
「まぁ、モトスさんたら」
2人の世界に浸っていると、ゴホン!と木の上から声がした。
「ヒュー、熱いねぇ〜お二人さん🎵」
飛天族の長、蕨と千里が木から飛び降り目の前に現れた。
「蕨殿!!それに千里も。覗き見など悪趣味ですぞ!!」
「いやいや・・忍びのアンタが言うかい?」
「さっき見回っていたら、こんな物を見つけました」
千里は朱色のヒトデをモトス達に見せた。すると、ヒトデの裏側にはタツノオトシゴ型の紋章が付いていた。モトスとお都留は驚き、蕨に聞いた。
「これは、海洋族の仕業か?」
「敵に、石垣山城を知られてしまったのですか?」
「まぁ、仕業は魔術師の五十鈴だろうが、それなら今頃、宴の隙に襲撃に来るはず。さしずめ、このヒトデを飛ばして、一夜城を偵察していたんだろうな」
モトスは気づかず油断したと、悔しい顔をした。しかし、ヒトデを捕らえたのに、五十鈴が現れない事にも不思議だと思っていた。
「敵も、本戦が始まってから動き出すつもりですね。10万以上居る豊臣軍に挑む位、相当の自信でかかって来るでしょう」
「明日からいよいよ本番だな」
モトスとお都留は兜の緒を引き締めた。
その頃、五十鈴は箱根を流れる早川の上流で、偵察を終えていた。
(うーん、バレたか。それにしても、森精霊の術は少し厄介だな。面白いことをしてやろうと🎵)
五十鈴は悪巧みした後、ふと、脳裏に過去の光景が浮かんだ。大昔、今は無き島で神官を勤めていた時、島の皆で仲良く椰子の実を飲み、宴や祭りを楽しんだ穏やかな日々。五十鈴は、海に飲み込まれた島民を助けられず、今でも悔やんでいた。
「敵も味方も問わず、誰も海の藻屑にはさせないよ。例え、生態系を変えてもね」
翌日の早朝、早川付近に陣を構えていた兵に不吉な事が起きていた。突如、相模湾から川が逆流し、陣営が水浸しになってしまった。兵士達は水に浸かりながら、高台にある石垣山城を目指している時、魔術師の五十鈴に出くわした。
「セニョール達、こんな状態では、石垣山城へ行くのも大変だろう。ボクが動きやすい姿に変えてあげるよ」
「貴様は!!モトスから聞いたが、こいつは色ボケ魔術師だ!!皆かかれー!!」
「色ボケとは失礼だねぇ・・・。まあいいや。海洋生物になってしまえー🎵」
五十鈴は短杖から虹色の淡い光を出現させた。すると、兵士の姿は人型の大きさのタツノオトシゴになってしまった。
数時間後、桜龍達は午前中に小田原を出発し、日本海溝にある海洋族の宮殿へ行く事にした。常葉と蕨はとある事情で、別行動に出ていた。石垣山城の門の前で秀吉と秀長に見送られた。
「皆さん、どうか気をつけて。私達も難攻不落の小田原城での持久戦に努めます」
「俺らの心配はせず、安心して行ってこい!!こっちには対海洋族用の武器も術士も用意してあるぞ!!」
真面目な秀長とは対照に、秀吉は自信満々に言った。いすみは秀吉達に忠告した。
「海洋族は人間よりも腕力も体力も強い。だが、お主達が皆で力を合わせれば、負けはせんぞ」
「いすみ殿・・同胞に攻撃する事になりますが・・」
秀長は戸惑ながら言ったが、いすみは動じていなかった。
「海洋族は真の敵に、日ノ本を壊させようと動かされている。それを止めるのは、天下人の秀吉達だ」
「黒幕の成敗は私達にお任せください!」
桜龍達が意気込んでいる時、豊臣兵が緊迫した状態で知らせに来た。
「殿ー!!大変です!!早川中流から異形の海洋生物がこちらに向かってきています!!」
「何だと!!石垣山城を見破られたか・・それにしても、異形の海洋生物とは?」
モトスは海洋生物を操っている者を即理解した。
「五十鈴の仕業だな。俺が奴を成敗する。皆は先に海洋族の宮殿へ向かってくれ」
「分かりましたぜ!!旦那も色ボケの術に気をつけてください」
桜龍達はモトスを残し、先に海洋族の宮殿へ向かう事にした。