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第1章 異説 武田の残党狩り編 桃源郷に集う勇士

その頃、身延の地では、モトスと球磨と湘の勇士と、民たちは久遠寺の前に集っていた。そして、法主がモトスたちに礼を言った。
「この度は、寅時を救出し誠に感謝をしている。モトス、球磨、湘。甲府から連れてきた民たちは我々が保護しますぞ」
寅時を始め、僧兵一同、薙刀や刀などを天に掲げ、任されたと凛々しい顔をしていた。そして、寅時が真剣に尋ねた。
「モトスたちは本当に梅雪たちを討伐しに行くのか?」
3人は全く揺らぐことのない意志で答えた。
「ああ。他にも梅雪たちの手により、苦しめられている民や精霊達も居る・・・それに、あと2つの強い力が近づいている気がするのだ」
モトスたち3人は気づいていた。近くに自分たちと同じ、強く神秘的な勇士が居ることを。1つは突如現れた大地の力、そしてもう1つは・・・計り知れない未知の力。
「あとの2人は俺のような豪傑な者かなー。若作りおじさんは勘弁なー」
球磨が強者に期待していると、ムッときた湘は
「2人とも、私のような優雅で知性のある上品な者がいいなー。戦バカは勘弁だ・・・・」
何だとー!!と球磨が言い、湘と再び口論となった。民や僧兵達は、この2人大丈夫か・・・?と不安になっていたが、寅時と法主とモトスはその光景を見て笑っていた。
「皆、案ずるな。球磨と湘も計り知れぬ強者だ!!これから青木ヶ原樹海を通り、吉田集落(現山梨県富士吉田市)や、大月の民たちも救出する!!」
モトスが民たちに決意を告げると、法主は祈りを込めた。
「モトス達よ。この先には強敵が待ち構えておる。危なくなったら直ぐに引き返しなさい」
すると、法主は3人に柔らかい光の術をかけた。
「この術は迷いやすい樹海の道を光で導いてくれる。それに、野犬や熊避けにもなる。・・・どうか、ご武運を」
3人は法主に礼を言い、久遠寺の門を出た。
「モトスさん!!クマ兄ちゃん!!湘おじちゃーん!!気を付けていくずらー!!!」
寅時の娘、ささ子が3人を応援しながら見送っていた。隣でささ子の母の多香もお辞儀をしていた。
「ふむ・・・いくら小さい少女とはいえ、モトスはさん付けで、私にはおじちゃんとは納得がいかんな・・・モトスの方が年上ではないか・・・」
湘はぶつぶつ言いながら門前町を歩いた。球磨とモトスは顔を合わせて笑っていた。



昼になり、3人は青木ヶ原樹海の奥へ入っていった。樹海の中は、晴天の昼間でも、辺り一面密集している木々により、光は遮られ、薄暗い景色であった。
「ここは羅針盤の針が狂って方向を示さねーぜ」
球磨は南蛮渡来の小型の羅針盤を見て、針が回り続けているのに驚いた。
「この森は、富士の噴火で出来たものだから、地面は溶岩石で、磁鉄鉱が含まれている。それで磁針も狂ってしまうのだ」
モトスが説明すると、湘も納得していた。
「確かに・・・足場も良いとは言えないし、木々が多くて似たような景色ばかりだ。法主様が迷わずの術をかけてくれて良かったよ」
足場は気の太い根や、岩などの段差で、動くのに少し苦労していた。しかし、久遠寺の法主がかけた術で野犬や熊なども出没せず、小さな光が行くべき道を示してくれたので、進むのに苦痛ではなかった。
「球磨と湘。本当についてきてくれて、感謝する。あと2人の仲間とも合流しよう。そして、この樹海を抜けると、同じ森精霊の女子で心強い仲間がいる」
そう。女精霊戦士のお都留(つる)もおそらく甲斐東部で戦っている。早く合流し、助太刀をしなければ!!
「その女の戦士はダンナの想い人かい?」
球磨がモトスにニヤニヤとした顔で質問すると、続いて湘も便乗し
「生真面目な君も隅に置けないねー」
球磨と笑いながらモトスをいじくった。
「・・・お前たち・・その・・・お都留とはまだ・・・そのような関係では・・・・」
モトスは赤面していた
「と・・とにかく!!!先を急ぐぞ!!!!」
モトスは駆け足になり、2人はやれやれと笑いながら後を追った。
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