番外編 桜龍の話 小さき聖龍は出雲へ旅立つ
早朝、桜龍は島根半島、日御碕(ひのみさき)から海岸線を通り、出雲大社へ向かっていた。大社への道は、心地よい海風が吹いていた。途中、鳥居が建つ岩が特徴的な稲佐の浜を訪れた。神官の男達が禊ぎをしているのが見えた。桜龍はこれから海に入ろうとしている神官に、大社で修業したいと尋ねた。
「出雲大社で修業をしたいのですが、そのまま大社へ行っても良いですか」
「神官見習いは大神官様が認めた者でなければならぬから、禊ぎが終わったら案内をする。それにしても、お前さんは何処の子だ?」
「私は、隠岐の島から来た桜龍です。この聖なる龍の瞳と共に強くなる為、出雲で修業したいと参りました」
桜龍は眼帯を外し、白金色に輝く瞳を神官達に見せると、彼らは驚き、禊ぎを止めた。
「これは、本物の聖龍の瞳だ!!桜龍と言ったな、直ちに大神官様に会わせるぞ!!」
「よろしくお願いします。あ・・でも、禊ぎを終えてからでも大丈夫ですよ」
禊ぎを終えた神官達は大急ぎで牛車に桜龍を乗せ、出雲大社へ向かった。
出雲大社は、参拝者で賑わっていた。参道には茶店も数多く並んでいた。一の鳥居に入ると、松や桜の木が並んでおり、緑豊かな神聖な空間だった。少し進んだところに、本殿や多くの宮がある境内に到着した。桜龍は、ここで修業できるんだなと、瞳を輝かせていた。神官は、まずは隠岐の島からの長旅で疲れただろう桜龍を、休み処に連れて行った。
「隠岐の島からはるばる、ご苦労だったな、桜龍。流石にこの身なりでは大神官様に会わせられないから、湯に浸かった後に、子供用の神官服を着させよう」
桜龍は、施設内にある温泉に浸かり、汗と海水を落とした。そして、神官服を着て夕方に、大神官が祈祷をする本殿に案内された。桜龍は、日本海が一望でき、天に届くかと思うほどの長い外階段を上り、出雲大社をまとめる大神官に会える緊張と喜びで、胸がドキドキしていた。本殿に入ると、大神官は桜龍が来るというのを預言していたかのように、入り口前で迎えてくれた。
「良く来たな、桜龍よ。私は、出雲大社の大神官『多々良(たたら)』である。そなたは聖なる龍に選ばれ、その力を宿したと預言で知っておる。覚悟があれば、この出雲大社で存分に強くなるが良い」
「大神官様!!出雲大社で修業できるなんて、嬉しい限りです。この桜龍、心身共に強くなり、聖龍に選ばれたことに恥じぬよう努めたいと思います!!」
桜龍は、左目の眼帯を外し、聖龍の瞳を大神官に見せた。大神官は、少年の純粋で凜とした瞳を見て、深く頷いた。
「貴殿の志にしかと心打たれたぞ。では、明日からはこの地で修業をせよ」
桜龍は『やったぜ!!』と心の中で叫んだ。
「ただし、最初は掃除や雑務からだぞ」
大神官は浮かれている桜龍に念押しした。桜龍は残念な顔をした。
(あちゃー、やっぱり直ぐに術とかは教えてくれないみたいだな・・・・)
こうして、桜龍の出雲大社での修業は始まるのであった。
数日後、桜龍は掃除や雑務を真面目にこなしていた。本心としては、聖なる龍に選ばれた者なのに、神官の身の回りの世話などと、少し不服だったが、ここでは神職の子や、武士、公家、庶民の子など身分関係なく、修業の最初は雑務だと知ると、納得していた。
「まぁ、隠岐の島から来た俺と、身分の高い家の子供達も対等な出だしだから、文句は言えないよなー」
現に、桜龍は誰とでも仲良くなれる性格で、人懐っこさと島で育った逞しさがあるので、共に修業する子供に慕われていた。
「桜龍!!次は神楽殿を雑巾がけしようぜ!!」
「おうよ!!どっちが綺麗に早く終わるか競争だぜ!!」
武士と庶民出身の少年と競争だ!!と意気込むと、神官達に
「元気なのは良いが、『掃除も優雅に上品に』の心得を忘れず」
と注意されるのも日常茶飯事であった。
ある日、桜龍は、掃除をサボっている神職者の子、『輝政(てるまさ)』に声をかけた。
「どうしたの?どこか具合が悪いのか?」
桜龍は手を差し伸べたが、睨まれて嫌な顔をされた。
「僕は、由緒ある京の神社の出身だ。君のような島民と同じ雑務なんてごめんだね」
「おいおい・・・確かに俺は島民だけどさ、島の皆と、他に修業している子供達を馬鹿にするのは頂けねーな。お前だって、ここで修業して立派な神官になるんだろう?」
「僕は、お前みたいに自由気ままで、出雲に来たんじゃないよ!!本当はこんな田舎より京か大和の伝統高い大社か神社で修業したかったよ・・・」
輝政は箒を桜龍に投げ、走って逃げた。桜龍は怒りながら箒を拾った。
「って!!しっかり掃除しろよ!!というか、出雲大社が日ノ本古来の神殿だろうが!!」
その後も、桜龍と輝政は身分の違いや、輝政が雑務をサボるのを注意する等で、衝突する事が多かった。
「出雲大社で修業をしたいのですが、そのまま大社へ行っても良いですか」
「神官見習いは大神官様が認めた者でなければならぬから、禊ぎが終わったら案内をする。それにしても、お前さんは何処の子だ?」
「私は、隠岐の島から来た桜龍です。この聖なる龍の瞳と共に強くなる為、出雲で修業したいと参りました」
桜龍は眼帯を外し、白金色に輝く瞳を神官達に見せると、彼らは驚き、禊ぎを止めた。
「これは、本物の聖龍の瞳だ!!桜龍と言ったな、直ちに大神官様に会わせるぞ!!」
「よろしくお願いします。あ・・でも、禊ぎを終えてからでも大丈夫ですよ」
禊ぎを終えた神官達は大急ぎで牛車に桜龍を乗せ、出雲大社へ向かった。
出雲大社は、参拝者で賑わっていた。参道には茶店も数多く並んでいた。一の鳥居に入ると、松や桜の木が並んでおり、緑豊かな神聖な空間だった。少し進んだところに、本殿や多くの宮がある境内に到着した。桜龍は、ここで修業できるんだなと、瞳を輝かせていた。神官は、まずは隠岐の島からの長旅で疲れただろう桜龍を、休み処に連れて行った。
「隠岐の島からはるばる、ご苦労だったな、桜龍。流石にこの身なりでは大神官様に会わせられないから、湯に浸かった後に、子供用の神官服を着させよう」
桜龍は、施設内にある温泉に浸かり、汗と海水を落とした。そして、神官服を着て夕方に、大神官が祈祷をする本殿に案内された。桜龍は、日本海が一望でき、天に届くかと思うほどの長い外階段を上り、出雲大社をまとめる大神官に会える緊張と喜びで、胸がドキドキしていた。本殿に入ると、大神官は桜龍が来るというのを預言していたかのように、入り口前で迎えてくれた。
「良く来たな、桜龍よ。私は、出雲大社の大神官『多々良(たたら)』である。そなたは聖なる龍に選ばれ、その力を宿したと預言で知っておる。覚悟があれば、この出雲大社で存分に強くなるが良い」
「大神官様!!出雲大社で修業できるなんて、嬉しい限りです。この桜龍、心身共に強くなり、聖龍に選ばれたことに恥じぬよう努めたいと思います!!」
桜龍は、左目の眼帯を外し、聖龍の瞳を大神官に見せた。大神官は、少年の純粋で凜とした瞳を見て、深く頷いた。
「貴殿の志にしかと心打たれたぞ。では、明日からはこの地で修業をせよ」
桜龍は『やったぜ!!』と心の中で叫んだ。
「ただし、最初は掃除や雑務からだぞ」
大神官は浮かれている桜龍に念押しした。桜龍は残念な顔をした。
(あちゃー、やっぱり直ぐに術とかは教えてくれないみたいだな・・・・)
こうして、桜龍の出雲大社での修業は始まるのであった。
数日後、桜龍は掃除や雑務を真面目にこなしていた。本心としては、聖なる龍に選ばれた者なのに、神官の身の回りの世話などと、少し不服だったが、ここでは神職の子や、武士、公家、庶民の子など身分関係なく、修業の最初は雑務だと知ると、納得していた。
「まぁ、隠岐の島から来た俺と、身分の高い家の子供達も対等な出だしだから、文句は言えないよなー」
現に、桜龍は誰とでも仲良くなれる性格で、人懐っこさと島で育った逞しさがあるので、共に修業する子供に慕われていた。
「桜龍!!次は神楽殿を雑巾がけしようぜ!!」
「おうよ!!どっちが綺麗に早く終わるか競争だぜ!!」
武士と庶民出身の少年と競争だ!!と意気込むと、神官達に
「元気なのは良いが、『掃除も優雅に上品に』の心得を忘れず」
と注意されるのも日常茶飯事であった。
ある日、桜龍は、掃除をサボっている神職者の子、『輝政(てるまさ)』に声をかけた。
「どうしたの?どこか具合が悪いのか?」
桜龍は手を差し伸べたが、睨まれて嫌な顔をされた。
「僕は、由緒ある京の神社の出身だ。君のような島民と同じ雑務なんてごめんだね」
「おいおい・・・確かに俺は島民だけどさ、島の皆と、他に修業している子供達を馬鹿にするのは頂けねーな。お前だって、ここで修業して立派な神官になるんだろう?」
「僕は、お前みたいに自由気ままで、出雲に来たんじゃないよ!!本当はこんな田舎より京か大和の伝統高い大社か神社で修業したかったよ・・・」
輝政は箒を桜龍に投げ、走って逃げた。桜龍は怒りながら箒を拾った。
「って!!しっかり掃除しろよ!!というか、出雲大社が日ノ本古来の神殿だろうが!!」
その後も、桜龍と輝政は身分の違いや、輝政が雑務をサボるのを注意する等で、衝突する事が多かった。