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第3章 異説小田原征伐  蘇りし海の亡霊と海神伝説

桜龍は、箱根神社の本殿で祈祷をしていた。深海に囚われている仁摩の気を察知し、彼女が無事か祈祷火に映し出していた。すると、予想外の光景が出てきた。
「おのれ・・・追放者3人衆め!!長生きのじじぃ共が、仁摩殿に好き勝手に言い寄りやがって!!」
仁摩は亘と海底を散歩したり、アナンと酒を飲み交わしていたり、五十鈴に口説かれたりと、桜龍は、やきもきしながら祈祷火を見ていたが、とりあえず危害は加えられていないだけ安心はした。しかし、人生経験豊富で魅力のある亘、五十鈴、アナンに、仁摩が誘惑されないか気がかりでならなかった、すると、戸からそっといすみと蕨が入ってきた。
「随分と立腹のようだが、巫女の娘が心配なのだな。嫉妬心むき出しが炎に出ていたぞ」
「いすみ様、蕨さん!!あちゃー・・・お恥ずかしところを見られました・・・。仁摩殿が、追放者共に丁重に扱われていて良かったのか、悔しいのか、複雑です」
「人間だから、嫉妬する事もある。それは、海洋族も言えるな」
いすみは今までに見せたことの無い優しい笑みを、桜龍に向けた。
「おお!!いすみちゃんが笑った♪少しは丸くなったかー?」
「蕨・・貴様!!助けて貰った事は感謝はしているが、調子に乗るな!!」
いすみは宙に舞って逃げる蕨を棒で叩こうとした。桜龍は呆気に取られていた。
(こうしてみると、仲が良いんだなー海王神と飛天族長は)
桜龍は気を取り直し、2人に言った。
「仁摩殿が追放者の誰かに骨抜きにされる前に、救わなければです!!」
桜龍の気迫にいすみと蕨は一瞬、度肝を抜かれた。
「貴殿が、仁摩という巫女を大切にしているのかがよく分かるな」
「若者の恋はいいねぇ〜。飛天族の女は、自己主張が強くて、かかあ天下だから、付き合いにくいぜ・・・」
「貴様が遊びまわっているから、女達がしっかりしているのだろう」
「遊びまわってねーぜ。今の時代がどんな感じか、偵察だぜ。何が流行ってるか気になるしな」
「蕨さんは、新しいもの好きなんですねー」
「ふん、こやつは言動が軽率過ぎるぞ。少しは一族をまとめる自覚を持て」
「もう!!相変わらずいすみちゃんは口が悪いよ~。もう少し年上を敬え敬え」
「え!?蕨さんのが年上なんですか?」
蕨は桜龍の驚いている顔にニヤリと笑い肯定した。一方、いすみはふてくされた顔をし、本殿を出た。
「いすみはあれでも、随分と心を開いたと思うよ」
蕨は、大昔からいすみの事を知っているので、彼の心境が良く分かっていた。桜龍は何故、いすみが急に他種族との関わりを持たなくなったのかを尋ねてみた。
「それは俺も知らねーが、もしかしたら、いすみちゃんにも大切な人が居たんだと思う。きっとそれを境に、人間や他種族と深い関わりを持つのが怖くなったんだと思うぜ」
「でも、蕨さんはいすみ様を気にかけていますね」
「拒絶されようが、反発しようが、いすみとは切っても切れねぇ関係だからさ。もう1人、地底の奴も居るが、あいつも気難しいからなぁ・・・」
桜龍は蕨の戦友話を聞き、この3人が揃えば最強だと思った。
「絶対にまた3人で戦える日が来ると思いますよ。聖龍と俺が保証しますぜ!!」
桜龍は左目の眼帯を外し、蕨に白金色に輝く瞳を見せた。蕨は桜龍の額に手を当て、告げた。
「いすみがお前を見込んでいるのは俺にも分かる。聖龍の力はお前にしか使えないから、誰にも奪われるなよ、桜龍。そしてお前なら、いすみの心の傷を癒やせると信じている」
蕨の深い言葉に、桜龍は強く決心した。
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