このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

第3章 異説小田原征伐  蘇りし海の亡霊と海神伝説

仁摩は五十鈴の部屋に入り、凪沙を起こす方法を考えないか、相談しようとした。しかし、彼は、人魚達に囲まれ、気持ちよく酒を飲み浮かれていたので、仁摩は唖然として言葉が出なかった。
「やぁ、仁摩ちゃんと言ったかな?可愛い子ちゃんと一緒に僕と楽しい一時を過ごさないかい?」
五十鈴が笑顔で手を伸ばし誘ったが、仁摩は結構よ!!と怒りながら扉を閉めた。

「全く・・・亘とアナンの過去が深刻だったから、五十鈴の色ボケには呆れるわ・・・」
仁摩は疲れた顔をしながら、自室に入ろうとした時、後ろから誰かに目隠しをされた。
「セニョリーター、せっかく誘ったのに、帰っちゃうのはつれないねぇー」
「もう、人魚達との楽しい時間は終わったの?」
「むくれた顔のセニョリータを放って置けなかったから、早めに切り上げてきたよ♪」
五十鈴は仁摩の頬を指で触った。
「凪沙さんを目覚めさせる魔法は使えないの?」
「出来たならとっくに目覚めさせているさ。悔しいことに、ボクの魔法では凪沙は目覚めなかったよ。いすみは、真鶴と湘君を凪沙ちゃんに会わせないように強力な呪いで眠らせたんだね」
「いすみ様がそんな酷なことをする方ではありません!!」
「いすみはさ、ボク達に隠し事をしているんだよ。掟が出来る前のいすみは、好奇心旺盛で結構、他種族とも関わっていたんだよ。何かを境に、掟を作り、他種族との関わりをしなくなったのだよ」
「あなたも、掟に背いたの?」
「背いたわけでは無いけど、禁断の術を研究し、危険海洋族と見做され、追放されてしまったよ。まあ、過去にも色々あって。種族関係なく自由に恋愛や子育てが出来たり、争いもなく皆んなが海の世界で暮らせればってね」
「それはつまり、全種族を海洋生物にするという事?」
「ふふ、それは、直に豊臣の軍勢が小田原に攻めてきた時に分かるよ。愉快で面白い事が起きるよ♪。・・・もう二度と、アミーゴ達を犠牲にはしたくない」
「犠牲とは?」
「何でもないさ。それより・・・」
五十鈴は仁摩の手を握り、懇願した。
「君って、まじないも出来るよね♪気になる女性が居て、彼女とお近づきになりたいんだ。相性占いして貰って良いかな?」
「は・・はぁ・・・それは構わないけど、あの人魚達といい、貴方は何又してるのよ!!」
「ははは、セニョリータを愛する数なんて無限大で良いではないか。ただ、乙女峠で出会った巫女のセニョリータには本気で恋をしてしまった」
仁摩はあきれ返りながら、首飾りの鏡に祈りを捧げ、五十鈴が想いを寄せる『さい子』という渡り巫女の名を唱えた。すると、驚くことにモトスの姿が映され、仁摩は驚いた。
(何でモトスさんが・・・・?まさか・・・・・)
仁摩は察した。おそらく、情報収集かで巫女の姿に化けたモトスが、五十鈴と接触したのだろうと。五十鈴が惚れ込んだくらいだから、相当美女に化けたのだろうと、仁摩は唖然としていた。
(モトス・・本栖湖。さい子・・・西湖。ああそうか、富士五湖繋がりの名前ね)
「ねえ、ねえ、さい子ちゃん映ってるー?」
五十鈴はニヤニヤしながら鏡を覗こうとしたが、仁摩は隠して誤魔化した。
「さい子さんは、入浴中だから、お見せできません!!ちなみに、2人は再び巡り会う、赤い糸で結ばれています」
「ふむ、やはりさい子ちゃんとは出会った時から運命を感じていたんだよ。次に会ったときには、海の世界へ招待したいものだ」
(・・・運命の相手の正体がモトスおじさんと知ったら、どんな反応をするのかしら?)
仁摩は苦笑いしながら、浮かれている五十鈴の顔を見ていた。
(この者達は、根は悪者ではないから、敵ながらも憎めないわね・・・でもやっぱり、桜龍達とは戦う事になるのかしらね!)
仁摩は複雑に思いを巡らせながら、今後の事を考えていた。



                        前半 完
34/66ページ
スキ