第3章 異説小田原征伐 蘇りし海の亡霊と海神伝説
仁摩は、海洋族の宮殿で軟禁状態だった。真鶴の命令で、外へ逃げ出したり、凪沙が眠っている部屋へ入ることを除けば、自由に宮殿内を歩く事が出来る。
「このまま助けを待つだけは嫌だわ。少しでも情報を集めてみるわ」
仁摩は、大きなかけ声が響く海洋戦士の訓練所を覗いていた。すると、後ろから亘に声をかけられた。
「巫女の娘よ、海洋戦士に入隊したいのか?残念だが、人間の娘は募集していないのだ」
「違うわよ!!どのような戦い方をするのか、見ているだけよ!!」
仁摩は強気な態度で亘に言ったが、軽く笑われた。
「人質とはいえ、宮殿の中で不自由な生活をさせてしまっている。気分転換に良い所へ連れてってやろう」
仁摩は、亘を疑いそうになったが、彼の曇り無い瞳を見て、なんとなく信じられると思い従った。
「心配するな。襲ったりはせぬ。今のお主は、宮殿外でも息を出来るようになっておるが、逃げたら即、呼吸術を解くぞ」
仁摩は『望むところよ!!』と、強気な顔をして、頷いた。
数分後、仁摩は亘に深い洞窟まで連れてこられた。日本海溝から北へ泳いだ、東北三陸沖の深海にある洞窟だった。海底洞窟内は、無数の海ほたるが輝きを放ち、様々な鉱物が七色の光に反射し、煌めいていた。
「凄く綺麗・・この洞窟は何処に繋がっているの?」
「最終的には、土竜族の里だ。奴らとは断交しているから、途中で洞窟は強力な結界で封鎖されている」
「何故、断交してしまったのかしら?」
「・・・興味があれば、昔話を聞いてみるか?」
仁摩は聞きたいと頷いた。
大昔、海王神いすみと、土竜族の王『八郎(はちろう)』は、共に日ノ本を護っていた。互いに頑固で他種族とは関わらない主義だったが、強い信頼関係で結ばれていた。しかし、数百年後、屈強な体型の海洋族の男は、この洞窟を通り、東北八幡平の地底湖に入り、小柄で赤い髪の土竜族の女と恋に落ちた。しかし、双方の王の約束で、他種族の恋は認められず、2人は駆け落ちし、三陸の無人島に住み、赤毛の男の子を授かった。子は、海洋族と土竜族の混血で、人魚にもなれ、土竜族の遺伝子で、力も強く逞しかった。
「その子も、幼い頃の湘のように、優しい父と母の元、大切に育てられたよ。だが・・・」
亘は、暗い顔をしながら話を続けた。
少年は突如、苦しみ始めた。父と母は治癒の術を掛けても、効果を示さず、命尽きようとした時、小柄な体型の土竜族の王『八郎』が現れ、土色の頭巾で顔を隠し、条件を言った。
「息子を助けたければ、どっちかの命を犠牲にし、異種族間で結ばれた償いをするんべさ。そうすれば息子は助かるんべ!!」
2人は深く悩んだ末、父が命を落とし、泡になって消えた代わりに、子の命は助かった。その時、海王神いすみが、同胞を死なせた事に怒りを感じ、八郎に襲い掛かった。しかし、八郎に怒りの一言を浴びせられた。
「異種族の禁断の恋を止めなかったおめぇも同罪だべ!!」
いすみは、槍を振るうのを止め、少年の額に術を施した。
「こやつの、土竜族の力と記憶は封印した。金輪際、貴様ら土竜族とは関わらぬ。土竜の小娘も、二度と息子に会いたいなど言うな!!」
「そんな!!夫が犠牲になり、命助かった我が子をお返し下さい!!」
「おめぇが生きていただけでも、有り難く思え!!海洋族と土竜族は血が強すぎて、結ばれねーべさと何度教えたんだ!!」
「では、この子は海洋族として育てる。貴様とは断交だ」
いすみは、涙を流している母に何も言葉をかけず、眠っている少年を連れ海へ帰った。
仁摩は、種族間での悲劇に涙を流していた。
「そんな・・どんなに愛し合っても、家族は壊れてしまうの?」
亘は何も言わず頷き、話を続けた。
「その少年は、歳を取るに連れ、記憶が戻ってしまい、土竜族の母に会いたいと何度も土竜の里へ行ったが、追い払われてしまった。そして、海王神と仲違いし、宮殿を出ていったそうだ」
亘は仁摩の涙を拭った後、笑いかけて言った。
「流石に、海洋族と土竜族は血が濃すぎるから、子を授かるのには無理があり過ぎたな。それを考えると真鶴は人間だから、湘の体にそれ程負担が掛からなかったのだろう」
亘は気を取り直し、そろそろ戻ろうと促した。
「人質を遅くまで外に出すのはまずいから、そろそろ宮殿へ帰るぞ」
仁摩は亘に腕を優しく握られ泳いだ。仁摩には男の子の正体が誰だか分かっていた。亘は一瞬後ろを向き、仁摩に小声で伝えた。
「・・・長話に付き合ってくれたうえに、涙を流してくれて・・・ありがとう」
「このまま助けを待つだけは嫌だわ。少しでも情報を集めてみるわ」
仁摩は、大きなかけ声が響く海洋戦士の訓練所を覗いていた。すると、後ろから亘に声をかけられた。
「巫女の娘よ、海洋戦士に入隊したいのか?残念だが、人間の娘は募集していないのだ」
「違うわよ!!どのような戦い方をするのか、見ているだけよ!!」
仁摩は強気な態度で亘に言ったが、軽く笑われた。
「人質とはいえ、宮殿の中で不自由な生活をさせてしまっている。気分転換に良い所へ連れてってやろう」
仁摩は、亘を疑いそうになったが、彼の曇り無い瞳を見て、なんとなく信じられると思い従った。
「心配するな。襲ったりはせぬ。今のお主は、宮殿外でも息を出来るようになっておるが、逃げたら即、呼吸術を解くぞ」
仁摩は『望むところよ!!』と、強気な顔をして、頷いた。
数分後、仁摩は亘に深い洞窟まで連れてこられた。日本海溝から北へ泳いだ、東北三陸沖の深海にある洞窟だった。海底洞窟内は、無数の海ほたるが輝きを放ち、様々な鉱物が七色の光に反射し、煌めいていた。
「凄く綺麗・・この洞窟は何処に繋がっているの?」
「最終的には、土竜族の里だ。奴らとは断交しているから、途中で洞窟は強力な結界で封鎖されている」
「何故、断交してしまったのかしら?」
「・・・興味があれば、昔話を聞いてみるか?」
仁摩は聞きたいと頷いた。
大昔、海王神いすみと、土竜族の王『八郎(はちろう)』は、共に日ノ本を護っていた。互いに頑固で他種族とは関わらない主義だったが、強い信頼関係で結ばれていた。しかし、数百年後、屈強な体型の海洋族の男は、この洞窟を通り、東北八幡平の地底湖に入り、小柄で赤い髪の土竜族の女と恋に落ちた。しかし、双方の王の約束で、他種族の恋は認められず、2人は駆け落ちし、三陸の無人島に住み、赤毛の男の子を授かった。子は、海洋族と土竜族の混血で、人魚にもなれ、土竜族の遺伝子で、力も強く逞しかった。
「その子も、幼い頃の湘のように、優しい父と母の元、大切に育てられたよ。だが・・・」
亘は、暗い顔をしながら話を続けた。
少年は突如、苦しみ始めた。父と母は治癒の術を掛けても、効果を示さず、命尽きようとした時、小柄な体型の土竜族の王『八郎』が現れ、土色の頭巾で顔を隠し、条件を言った。
「息子を助けたければ、どっちかの命を犠牲にし、異種族間で結ばれた償いをするんべさ。そうすれば息子は助かるんべ!!」
2人は深く悩んだ末、父が命を落とし、泡になって消えた代わりに、子の命は助かった。その時、海王神いすみが、同胞を死なせた事に怒りを感じ、八郎に襲い掛かった。しかし、八郎に怒りの一言を浴びせられた。
「異種族の禁断の恋を止めなかったおめぇも同罪だべ!!」
いすみは、槍を振るうのを止め、少年の額に術を施した。
「こやつの、土竜族の力と記憶は封印した。金輪際、貴様ら土竜族とは関わらぬ。土竜の小娘も、二度と息子に会いたいなど言うな!!」
「そんな!!夫が犠牲になり、命助かった我が子をお返し下さい!!」
「おめぇが生きていただけでも、有り難く思え!!海洋族と土竜族は血が強すぎて、結ばれねーべさと何度教えたんだ!!」
「では、この子は海洋族として育てる。貴様とは断交だ」
いすみは、涙を流している母に何も言葉をかけず、眠っている少年を連れ海へ帰った。
仁摩は、種族間での悲劇に涙を流していた。
「そんな・・どんなに愛し合っても、家族は壊れてしまうの?」
亘は何も言わず頷き、話を続けた。
「その少年は、歳を取るに連れ、記憶が戻ってしまい、土竜族の母に会いたいと何度も土竜の里へ行ったが、追い払われてしまった。そして、海王神と仲違いし、宮殿を出ていったそうだ」
亘は仁摩の涙を拭った後、笑いかけて言った。
「流石に、海洋族と土竜族は血が濃すぎるから、子を授かるのには無理があり過ぎたな。それを考えると真鶴は人間だから、湘の体にそれ程負担が掛からなかったのだろう」
亘は気を取り直し、そろそろ戻ろうと促した。
「人質を遅くまで外に出すのはまずいから、そろそろ宮殿へ帰るぞ」
仁摩は亘に腕を優しく握られ泳いだ。仁摩には男の子の正体が誰だか分かっていた。亘は一瞬後ろを向き、仁摩に小声で伝えた。
「・・・長話に付き合ってくれたうえに、涙を流してくれて・・・ありがとう」