第3章 異説小田原征伐 蘇りし海の亡霊と海神伝説
その頃、海洋族の宮殿で、仁摩は、氷漬けにされていたが、真鶴に術を解かれた。
「手荒な真似をして、すまなかったな。だが君は、桜龍を誘き寄せる為の人質となってもらう」
「・・・あなたの目的はなんなの?桜龍の瞳を奪って、海を支配しようとしているの?」
「支配ではないな。誰もが争いも悲しみも無い、理想郷を創りたいだけだ。まだ俺の力では足りないから、彼の瞳を手に入れたいのだ」
真鶴は言葉を切り、亘を呼んだ。
「彼女を見張れ。縛ったり拘束はするなよ」
「承知した。部屋に案内する」
亘は手荒な真似をする事なく、紳士的な対応で仁摩を部屋に連れて行った。
仁摩は亘の大きな背中を黙って見ていた。
(武器も取り上げず、拘束もしないという事は、相当の自信ね)
仁摩は持っている杖で不意打ちをしようと考えたが、直ぐにねじ伏せられるだろうと思い、諦めていた。
「真鶴も拙者も、女を監禁するのは好きではないからな。城の中は自由に回っても良いが、逃げ出そうとしたら、呼吸術を解除するぞ」
仁摩は、真鶴に深海でも生きられる術をかけられている。しかし、それを外されては即死だと仁摩は思った。
「これでは、逃げたくても逃げようがないわ・・・」
「人質とはいえ、不自由な思いをさせてすまぬ。海洋族達も気は良い奴ばかりだから、あまり不安になるな」
「それなら何故、いすみ様に反乱を起こしたの?」
「・・・皆は、掟で縛る奴よりも、種族関係なく幸せに暮らせる真鶴の意思を選んだのだよ」
「幸せにと言っても、豊臣家と戦うのでしょう!!」
「まぁ、そうなるが、真鶴や海洋族は、豊臣に犠牲を出させず、北条を勝たせる。それは、五十鈴の力も必要になる。さあ、この話は終わりだ。お嬢さんは桜龍を連れてくるまで、部屋で寛いでな」
亘は仁摩を、真珠貝で出来た寝台やクラゲ型の椅子が置いてある、可愛らしい部屋に案内した。
「海産物で良ければ、食事も保証するから安心せよ」
亘は小さく笑いながら部屋を出ていった。仁摩は廊下から彼の姿が見えなくなった後、意気込んだ。
「宮殿内なら自由に回って良いと言っていたんだから、好きにさせてもらうわよ」
仁摩は部屋を出て、宮殿の配置を確認したり、情報収集をすることにした。
宮殿を見回っていると、最奥の大きな扉の前に着いた。仁摩は、この先に何かある!!と察し、ゆっくり扉を開けた。すると、部屋の奥にある巨大な二枚貝の寝台に、黒髪の美女が眠っていた。
「人魚の女性?何故こんな所で眠っているのかしら?」
仁摩は美女の紫がかった黒髪と、左目の泣きぼくろを見ると、湘といすみに共通するところがあった。
「確か、湘さんといすみさまにも左目にほくろがあったような・・・・」
仁摩は静かに美女の髪に触れようとしたが、部屋に入ってきた真鶴に鬼のような形相で怒鳴られた。
「貴様!!この部屋で何をしている!!!俺の凪沙に触れるな!!早く出て行け!!!!」
真鶴は仁摩を突き倒し、凪沙の身を案じていた。仁摩は真鶴の取り乱した様子を見て、思い出していた。
(そういえばさっき、凪沙は深い眠りについていると真鶴が言っていたわ・・・)
仁摩は立ち上がり、真鶴に尋ねた。
「もしかしたら、桜龍の聖なる龍の瞳で、凪沙さんを目覚めさせようとしているの?」
「凪沙を助けるには、桜龍の聖なる龍の瞳が必要なんだよ!!」
「他にも方法はあるはずだわ!!どんな理由であっても、桜龍の瞳を取っては駄目よ!!」
「それでは、このまま凪沙を眠らせるのか!!方法は1つしか無いんだよ!!凪沙はいすみに強力な呪いをかけられた。だから、殺してでも奴から奪ってやる!!」
「それなら、いすみ様と和平を結んで、凪沙を目覚めさせてくれと歩み寄ればいいじゃない!!それに、いすみ様は眠らせていないと言っていたのを貴方だって聞いたでしょう!!」
真鶴は強く説得する仁摩に腹を立て、平手打ちしてしまった。
「人質の分際で、俺に指図するんじゃねーぞ!!これ以上いすみを慕うようなことを言ったら、呼吸を止め、溺死させてやる!!」
真鶴は目くじらを立てて怒鳴ると、部屋に亘とアナンが入ってきた。亘は、真鶴が取り乱し、仁摩に攻撃しようとしたところを止め、必死になだめた。そして、アナンに、仁摩を連れてこの場を離れろと目で合図した。アナンは呆然としている仁摩の腕を引っ張り、部屋を出た。
アナンは仁摩の少し腫れている頬に薬をぬってあげた。
「俺達も言い忘れたのが悪かったが、凪沙の部屋だけは入らないでくれ。真鶴は、凪沙の事になると周りが見えなくなる。だから、首を突っ込まないでくれ」
「・・・・助けてくれてありがとう。そうね、今の状況を見ていたら、その方がいいわね」
仁摩は凪沙を助ける方法は、他に無いのかと、悔しい顔をしながら自室に戻った。
第6話 完
「手荒な真似をして、すまなかったな。だが君は、桜龍を誘き寄せる為の人質となってもらう」
「・・・あなたの目的はなんなの?桜龍の瞳を奪って、海を支配しようとしているの?」
「支配ではないな。誰もが争いも悲しみも無い、理想郷を創りたいだけだ。まだ俺の力では足りないから、彼の瞳を手に入れたいのだ」
真鶴は言葉を切り、亘を呼んだ。
「彼女を見張れ。縛ったり拘束はするなよ」
「承知した。部屋に案内する」
亘は手荒な真似をする事なく、紳士的な対応で仁摩を部屋に連れて行った。
仁摩は亘の大きな背中を黙って見ていた。
(武器も取り上げず、拘束もしないという事は、相当の自信ね)
仁摩は持っている杖で不意打ちをしようと考えたが、直ぐにねじ伏せられるだろうと思い、諦めていた。
「真鶴も拙者も、女を監禁するのは好きではないからな。城の中は自由に回っても良いが、逃げ出そうとしたら、呼吸術を解除するぞ」
仁摩は、真鶴に深海でも生きられる術をかけられている。しかし、それを外されては即死だと仁摩は思った。
「これでは、逃げたくても逃げようがないわ・・・」
「人質とはいえ、不自由な思いをさせてすまぬ。海洋族達も気は良い奴ばかりだから、あまり不安になるな」
「それなら何故、いすみ様に反乱を起こしたの?」
「・・・皆は、掟で縛る奴よりも、種族関係なく幸せに暮らせる真鶴の意思を選んだのだよ」
「幸せにと言っても、豊臣家と戦うのでしょう!!」
「まぁ、そうなるが、真鶴や海洋族は、豊臣に犠牲を出させず、北条を勝たせる。それは、五十鈴の力も必要になる。さあ、この話は終わりだ。お嬢さんは桜龍を連れてくるまで、部屋で寛いでな」
亘は仁摩を、真珠貝で出来た寝台やクラゲ型の椅子が置いてある、可愛らしい部屋に案内した。
「海産物で良ければ、食事も保証するから安心せよ」
亘は小さく笑いながら部屋を出ていった。仁摩は廊下から彼の姿が見えなくなった後、意気込んだ。
「宮殿内なら自由に回って良いと言っていたんだから、好きにさせてもらうわよ」
仁摩は部屋を出て、宮殿の配置を確認したり、情報収集をすることにした。
宮殿を見回っていると、最奥の大きな扉の前に着いた。仁摩は、この先に何かある!!と察し、ゆっくり扉を開けた。すると、部屋の奥にある巨大な二枚貝の寝台に、黒髪の美女が眠っていた。
「人魚の女性?何故こんな所で眠っているのかしら?」
仁摩は美女の紫がかった黒髪と、左目の泣きぼくろを見ると、湘といすみに共通するところがあった。
「確か、湘さんといすみさまにも左目にほくろがあったような・・・・」
仁摩は静かに美女の髪に触れようとしたが、部屋に入ってきた真鶴に鬼のような形相で怒鳴られた。
「貴様!!この部屋で何をしている!!!俺の凪沙に触れるな!!早く出て行け!!!!」
真鶴は仁摩を突き倒し、凪沙の身を案じていた。仁摩は真鶴の取り乱した様子を見て、思い出していた。
(そういえばさっき、凪沙は深い眠りについていると真鶴が言っていたわ・・・)
仁摩は立ち上がり、真鶴に尋ねた。
「もしかしたら、桜龍の聖なる龍の瞳で、凪沙さんを目覚めさせようとしているの?」
「凪沙を助けるには、桜龍の聖なる龍の瞳が必要なんだよ!!」
「他にも方法はあるはずだわ!!どんな理由であっても、桜龍の瞳を取っては駄目よ!!」
「それでは、このまま凪沙を眠らせるのか!!方法は1つしか無いんだよ!!凪沙はいすみに強力な呪いをかけられた。だから、殺してでも奴から奪ってやる!!」
「それなら、いすみ様と和平を結んで、凪沙を目覚めさせてくれと歩み寄ればいいじゃない!!それに、いすみ様は眠らせていないと言っていたのを貴方だって聞いたでしょう!!」
真鶴は強く説得する仁摩に腹を立て、平手打ちしてしまった。
「人質の分際で、俺に指図するんじゃねーぞ!!これ以上いすみを慕うようなことを言ったら、呼吸を止め、溺死させてやる!!」
真鶴は目くじらを立てて怒鳴ると、部屋に亘とアナンが入ってきた。亘は、真鶴が取り乱し、仁摩に攻撃しようとしたところを止め、必死になだめた。そして、アナンに、仁摩を連れてこの場を離れろと目で合図した。アナンは呆然としている仁摩の腕を引っ張り、部屋を出た。
アナンは仁摩の少し腫れている頬に薬をぬってあげた。
「俺達も言い忘れたのが悪かったが、凪沙の部屋だけは入らないでくれ。真鶴は、凪沙の事になると周りが見えなくなる。だから、首を突っ込まないでくれ」
「・・・・助けてくれてありがとう。そうね、今の状況を見ていたら、その方がいいわね」
仁摩は凪沙を助ける方法は、他に無いのかと、悔しい顔をしながら自室に戻った。
第6話 完