第3章 異説小田原征伐 蘇りし海の亡霊と海神伝説
真鶴は、相模国南東部三崎に来ていた。三浦家終焉の地、油壺の海を見て感傷に浸っていた。
「俺の一族はここで滅び、幼かった父は逃げ延び三浦の姓を捨て、船頭になったのか。そして、俺は今、海洋族の力を借りて、三浦一族を復活させようとしている」
真鶴は、今、自分が亡霊から蘇り、北条を三浦の傘下に入れた事を信じられないでいた。すると、陰のニホンに住む、厄神四天王の一人、『ミズチ』が現れ、彼に近づいた。
「こんな所にいたのか、真鶴。そろそろ小田原へ戻った方が良いんじゃない?」
「ああ、そうだな。少し昔の事を考えていた。皮肉な話だろう。俺は一族の終焉の地で生まれ、城ヶ島への渡し船の船頭をしていた。そして、人魚の凪沙と出会い、湘を授かった・・・」
「それを、憎たらしい元海王が、引き裂いたクリ!!」
「真鶴も随分と辛い過去を送ったのだね。だけど、今はもう前に進むだけだよ。いすみを見限った海洋族達も、僕も卑弩羅(ひどら)様も、君の味方だよ」
「・・・ミズチ殿。卑弩羅様にも感謝している。最初は君達が何を考えているのか分からなかったが、俺の願いを叶えてくれた事に感謝している」
「オラには感謝しているクリ?」
「もちろんだとも。クリクリが亘達を見つけてくれたから、心強い仲間も出来た」
「真鶴が満足そうで良かったよ。ただ、この先は、自分で考えて指揮をして、海洋族と北条をまとめないといけないよ。流石にもう、船頭だったから、兵法も指導力も知らないなんて言ってはいられないよ」
「心配ないよ。息子も俺に力を貸してくれるし、秀吉が本格的に攻めてきても、準備をしっかり進めている。そして、全てが終わったら、凪沙に俺が創った海の世界を見せてあげたい」
真鶴は、そろそろ小田原へ戻ろうと、海に潜ろうとした。クリクリは少しミズチと話してから戻るクリと言い、真鶴と分かれた。ミズチは真鶴が泳ぐ姿を、妖しい表情で見ていた。
「相変わらず健気だねぇ。凪沙が僕の術で眠っている事も知らず」
「真鶴が、今すぐに凪沙に会いたいって思わないで良かったクリ」
「ああ。闇に墜ち、憎悪の力が発動されるにはまだ早すぎるからね」
ミズチはクリクリを肩に乗せ、会話をしていると、油壺の村民が2人に近づいてきた。
「お兄さんが今話していたのは、もしかして、真鶴かい?もう何十年も会っていないが、面影を感じたぞ」
初老の男達が真鶴について尋ねてきた。ミズチは村民に爽やかな笑顔を向け、答えた。
「ああ、そうだけど、皆は真鶴を知っているのかい?」
「ああ。真鶴と親父さんには昔から世話になって、よく城ヶ島への渡し船に乗せてって貰ったよ。漁師の皆を交えて、飲みに行ったこともあったよ。ただ、数十年前に、奥さんの凪沙ちゃんと別れた直後に、息子の湘ちゃんを連れて三崎を出て行ってしまったんだよ。生まれ故郷へ帰ったのかなと」
生まれ故郷?ミズチと懐に隠れているクリクリは疑問に思い、それについて尋ねた。
「生まれ故郷とは?真鶴はここで生まれたのではないのかい?」
村の男達は、真鶴の出生を話した。
真鶴の父は、三浦道寸(どうすん)の孫に当たり、まだ幼かった父は、一族が滅びた後、漁村の民として逃げ延びた。そして、三崎の船頭となり、漁村の娘と結ばれた。ある日、父が船頭の仕事をしていた時、海から巨大なハマグリが浮かんできた。家に帰り、中を空けると、黒い龍の刺繍が施された衣を着た赤子が出てきた。
「真鶴の両親は、流行病で早くに亡くなってしまったが、逞しく優しい船頭に育ててくれたのじゃよ」
ミズチは、貴重な話を聞けてありがとうと、老人達に礼を言い、その場を後にした。
「真鶴はただの船頭ではなかったのだな・・・。黒い龍の衣を着ていた・・・もしかしたら真鶴はあの時の・・・」
ミズチは何かを思い出した顔をし、クリクリと何かを企み始めた。
「益々、いすみへの憎悪が増すクリねー♪」
「俺の一族はここで滅び、幼かった父は逃げ延び三浦の姓を捨て、船頭になったのか。そして、俺は今、海洋族の力を借りて、三浦一族を復活させようとしている」
真鶴は、今、自分が亡霊から蘇り、北条を三浦の傘下に入れた事を信じられないでいた。すると、陰のニホンに住む、厄神四天王の一人、『ミズチ』が現れ、彼に近づいた。
「こんな所にいたのか、真鶴。そろそろ小田原へ戻った方が良いんじゃない?」
「ああ、そうだな。少し昔の事を考えていた。皮肉な話だろう。俺は一族の終焉の地で生まれ、城ヶ島への渡し船の船頭をしていた。そして、人魚の凪沙と出会い、湘を授かった・・・」
「それを、憎たらしい元海王が、引き裂いたクリ!!」
「真鶴も随分と辛い過去を送ったのだね。だけど、今はもう前に進むだけだよ。いすみを見限った海洋族達も、僕も卑弩羅(ひどら)様も、君の味方だよ」
「・・・ミズチ殿。卑弩羅様にも感謝している。最初は君達が何を考えているのか分からなかったが、俺の願いを叶えてくれた事に感謝している」
「オラには感謝しているクリ?」
「もちろんだとも。クリクリが亘達を見つけてくれたから、心強い仲間も出来た」
「真鶴が満足そうで良かったよ。ただ、この先は、自分で考えて指揮をして、海洋族と北条をまとめないといけないよ。流石にもう、船頭だったから、兵法も指導力も知らないなんて言ってはいられないよ」
「心配ないよ。息子も俺に力を貸してくれるし、秀吉が本格的に攻めてきても、準備をしっかり進めている。そして、全てが終わったら、凪沙に俺が創った海の世界を見せてあげたい」
真鶴は、そろそろ小田原へ戻ろうと、海に潜ろうとした。クリクリは少しミズチと話してから戻るクリと言い、真鶴と分かれた。ミズチは真鶴が泳ぐ姿を、妖しい表情で見ていた。
「相変わらず健気だねぇ。凪沙が僕の術で眠っている事も知らず」
「真鶴が、今すぐに凪沙に会いたいって思わないで良かったクリ」
「ああ。闇に墜ち、憎悪の力が発動されるにはまだ早すぎるからね」
ミズチはクリクリを肩に乗せ、会話をしていると、油壺の村民が2人に近づいてきた。
「お兄さんが今話していたのは、もしかして、真鶴かい?もう何十年も会っていないが、面影を感じたぞ」
初老の男達が真鶴について尋ねてきた。ミズチは村民に爽やかな笑顔を向け、答えた。
「ああ、そうだけど、皆は真鶴を知っているのかい?」
「ああ。真鶴と親父さんには昔から世話になって、よく城ヶ島への渡し船に乗せてって貰ったよ。漁師の皆を交えて、飲みに行ったこともあったよ。ただ、数十年前に、奥さんの凪沙ちゃんと別れた直後に、息子の湘ちゃんを連れて三崎を出て行ってしまったんだよ。生まれ故郷へ帰ったのかなと」
生まれ故郷?ミズチと懐に隠れているクリクリは疑問に思い、それについて尋ねた。
「生まれ故郷とは?真鶴はここで生まれたのではないのかい?」
村の男達は、真鶴の出生を話した。
真鶴の父は、三浦道寸(どうすん)の孫に当たり、まだ幼かった父は、一族が滅びた後、漁村の民として逃げ延びた。そして、三崎の船頭となり、漁村の娘と結ばれた。ある日、父が船頭の仕事をしていた時、海から巨大なハマグリが浮かんできた。家に帰り、中を空けると、黒い龍の刺繍が施された衣を着た赤子が出てきた。
「真鶴の両親は、流行病で早くに亡くなってしまったが、逞しく優しい船頭に育ててくれたのじゃよ」
ミズチは、貴重な話を聞けてありがとうと、老人達に礼を言い、その場を後にした。
「真鶴はただの船頭ではなかったのだな・・・。黒い龍の衣を着ていた・・・もしかしたら真鶴はあの時の・・・」
ミズチは何かを思い出した顔をし、クリクリと何かを企み始めた。
「益々、いすみへの憎悪が増すクリねー♪」