第3章 異説小田原征伐 蘇りし海の亡霊と海神伝説
その頃、桜龍、いすみ、モトス、常葉は、山中湖の南にそびえ立つ籠坂峠を通り、駿河国に入っていた。春が訪れても、峠道は霧が発生し視界が悪いので、桜龍はまじないで、箱根へ続く道を示し、モトスは精霊のハネを出現させ、霧を払いながら進んだ。いすみは海王神の力を奪われているので、慣れない山道を歩くのに苦労していた。
「く・・海王神がこんな所でくたばるわけにはいかんぞ」
いすみは何度も根っこ道につまずきそうになった。モトスは彼を支えながら説明した。
「いすみ殿、峠道を歩かせてしまい、申し訳ないです。鳴沢と江ノ島に繋がる氷穴は封鎖されていました」
先日、モトスと常葉は氷穴の中を調査したが、桜龍と常葉を発見した地底湖付近で、強力な結界が張られ、先に進めなかった。常葉に聞いてみたところ、術師の正体は、海洋族一の魔術師『五十鈴』が掛けたものだった。モトスの聖なる風と、常葉の拳を合わせても結界は破られなかった。
「どの道、地底湖や富士川で海に出ても、海洋族が待ち構えています。少々時間は掛かりますが、山道から小田原へ向かうのが良いと思います」
常葉とモトスの案で、箱根裏街道超えで進む事にした。
しばらく峠を下ると、遠くに田畑が広がる村が見えてきた。
「この峠を超えたら、麓に出るぜ。そうしたら、近くの宿場町で休憩して、明日には乙女峠を越えて箱根に入ろうぜ!!」
長旅に慣れている桜龍は元気にいすみと常葉を励まして言った。
「・・・そうだな。今しばらく世話になる。桜龍、モトス、常葉」
「おうよ!!」
桜龍はいすみの三叉槍を掲げ、気合いを入れたが、重くて足元がふらついた。常葉は慌てて桜龍を支えた。いすみは、桜龍の突拍子のない行動に唖然としていた。モトスは優しい笑みをいすみに向けた。
「桜龍はどんな危機が待ち構えていても、前向きで、場を和ませてくれる。身分と種族関係なく、誰とでも仲良くなれるのも、あの者の長所だな」
「そうだな。聖なる龍の力ではなく、あやつの天性の明るさが、皆を惹きつけているのだろうな」
いすみは桜龍の姿を見て、自分には無いものだと思っていた。
夕方になり、麓の街道を歩いていた時、北条兵の検問に遭った。モトスの提案で、桜龍と常葉とそしてモトスの3人は、かつらと化粧をしそして、背を少し低めに見えるように術を掛け、すんなりと巫女服に女装した。いすみは、3人の護衛をしている浪人に化けた。
「では・・鎌倉へ向かう巫女3人の護衛をしていると・・・」
「ああ。この巫女達が、小田原で戦が起きる前に、鶴ヶ岡八幡宮に戻りたいと言っている」
「わたくし達の護衛をこの方が引き受けてくださっているの。彼はとてもお強いのですよ」
モトスは目元涼しげな瞳を周りに向け、いすみの腕を組み、さらに彼の肩に頬を乗せ、誘惑する仕草をした。兵士達は唖然と言葉が出ず、さらには、その場にいる百姓の女達が悲鳴を上げ、興奮していた。桜龍と常葉はヒソヒソと話しながら、2人のやりとりを見ていた。
(流石だぜ!!モトスの旦那。女装しても渋い男の色気を出しているから、いすみ様との絡みは、世の女性も骨抜きだぜ)
(いすみ様・・・固まっていますよ)
検問兵長は、いすみの大柄な体型と、鋭く睨みをきかせた顔に、圧倒されていた。一方、他の兵士と女達は、3人の美形の巫女に頬を赤くしていた。
「あの浪人いいなぁー。綺麗な巫女さんと3人で旅していて。お前は誰が好みだ?」
「あの、年増・・いいや、年長者ぽい巫女が好みだなー。神秘的というか」
巫女姿のモトスは、一瞬、年増は俺のことか?と怒りを抑え、兵士に艶やかに笑いかけた。すると、兵士と女達はうっとりとした顔をした。
「あの眼帯をしている、白金色の髪の巫女も謎めいていて綺麗だなぁ」
「あの黒髪の子は、照れていて初々しいねぇ。新人巫女かな?」
桜龍と常葉も注目され、桜龍は嬉しそうに舞いを披露し兵士達を魅了させた。常葉はモジモジしながら周りにお辞儀をした。
いすみは、無言でこの光景を疑問に思っていた。
(何故、華奢で無い男共が、こんな綺麗に女に化けられるのだ?しかもおなごの声に変えられるなど、モトスの森精霊の力は未知だな・・・)
モトスは彼らが見とれている隙に、眠りの粉をばらまいた。すると、検問兵達は直ぐに眠ってしまった。桜龍はお見事!!と拍手をし、常葉といすみも呆気にとられていた。
「モトスよ・・お前は、女装に慣れているみたいだな・・・・」
「ああ、潜入任務で、渡り巫女や侍女に化けた事もあるから、女装は得意なのですよ」
「そうなのか・・・」
「では、急ごう。乙女峠の宿に着くまでは、この姿が望ましいだろう」
いすみが納得していると、モトスは何時もの凜々しい表情で先を行こうと促した。
「く・・海王神がこんな所でくたばるわけにはいかんぞ」
いすみは何度も根っこ道につまずきそうになった。モトスは彼を支えながら説明した。
「いすみ殿、峠道を歩かせてしまい、申し訳ないです。鳴沢と江ノ島に繋がる氷穴は封鎖されていました」
先日、モトスと常葉は氷穴の中を調査したが、桜龍と常葉を発見した地底湖付近で、強力な結界が張られ、先に進めなかった。常葉に聞いてみたところ、術師の正体は、海洋族一の魔術師『五十鈴』が掛けたものだった。モトスの聖なる風と、常葉の拳を合わせても結界は破られなかった。
「どの道、地底湖や富士川で海に出ても、海洋族が待ち構えています。少々時間は掛かりますが、山道から小田原へ向かうのが良いと思います」
常葉とモトスの案で、箱根裏街道超えで進む事にした。
しばらく峠を下ると、遠くに田畑が広がる村が見えてきた。
「この峠を超えたら、麓に出るぜ。そうしたら、近くの宿場町で休憩して、明日には乙女峠を越えて箱根に入ろうぜ!!」
長旅に慣れている桜龍は元気にいすみと常葉を励まして言った。
「・・・そうだな。今しばらく世話になる。桜龍、モトス、常葉」
「おうよ!!」
桜龍はいすみの三叉槍を掲げ、気合いを入れたが、重くて足元がふらついた。常葉は慌てて桜龍を支えた。いすみは、桜龍の突拍子のない行動に唖然としていた。モトスは優しい笑みをいすみに向けた。
「桜龍はどんな危機が待ち構えていても、前向きで、場を和ませてくれる。身分と種族関係なく、誰とでも仲良くなれるのも、あの者の長所だな」
「そうだな。聖なる龍の力ではなく、あやつの天性の明るさが、皆を惹きつけているのだろうな」
いすみは桜龍の姿を見て、自分には無いものだと思っていた。
夕方になり、麓の街道を歩いていた時、北条兵の検問に遭った。モトスの提案で、桜龍と常葉とそしてモトスの3人は、かつらと化粧をしそして、背を少し低めに見えるように術を掛け、すんなりと巫女服に女装した。いすみは、3人の護衛をしている浪人に化けた。
「では・・鎌倉へ向かう巫女3人の護衛をしていると・・・」
「ああ。この巫女達が、小田原で戦が起きる前に、鶴ヶ岡八幡宮に戻りたいと言っている」
「わたくし達の護衛をこの方が引き受けてくださっているの。彼はとてもお強いのですよ」
モトスは目元涼しげな瞳を周りに向け、いすみの腕を組み、さらに彼の肩に頬を乗せ、誘惑する仕草をした。兵士達は唖然と言葉が出ず、さらには、その場にいる百姓の女達が悲鳴を上げ、興奮していた。桜龍と常葉はヒソヒソと話しながら、2人のやりとりを見ていた。
(流石だぜ!!モトスの旦那。女装しても渋い男の色気を出しているから、いすみ様との絡みは、世の女性も骨抜きだぜ)
(いすみ様・・・固まっていますよ)
検問兵長は、いすみの大柄な体型と、鋭く睨みをきかせた顔に、圧倒されていた。一方、他の兵士と女達は、3人の美形の巫女に頬を赤くしていた。
「あの浪人いいなぁー。綺麗な巫女さんと3人で旅していて。お前は誰が好みだ?」
「あの、年増・・いいや、年長者ぽい巫女が好みだなー。神秘的というか」
巫女姿のモトスは、一瞬、年増は俺のことか?と怒りを抑え、兵士に艶やかに笑いかけた。すると、兵士と女達はうっとりとした顔をした。
「あの眼帯をしている、白金色の髪の巫女も謎めいていて綺麗だなぁ」
「あの黒髪の子は、照れていて初々しいねぇ。新人巫女かな?」
桜龍と常葉も注目され、桜龍は嬉しそうに舞いを披露し兵士達を魅了させた。常葉はモジモジしながら周りにお辞儀をした。
いすみは、無言でこの光景を疑問に思っていた。
(何故、華奢で無い男共が、こんな綺麗に女に化けられるのだ?しかもおなごの声に変えられるなど、モトスの森精霊の力は未知だな・・・)
モトスは彼らが見とれている隙に、眠りの粉をばらまいた。すると、検問兵達は直ぐに眠ってしまった。桜龍はお見事!!と拍手をし、常葉といすみも呆気にとられていた。
「モトスよ・・お前は、女装に慣れているみたいだな・・・・」
「ああ、潜入任務で、渡り巫女や侍女に化けた事もあるから、女装は得意なのですよ」
「そうなのか・・・」
「では、急ごう。乙女峠の宿に着くまでは、この姿が望ましいだろう」
いすみが納得していると、モトスは何時もの凜々しい表情で先を行こうと促した。