第3章 異説小田原征伐 蘇りし海の亡霊と海神伝説
数刻後、夕方になりモトスは森精霊の里に戻ってきた。すると、棟梁の小屋には、桜龍、常葉、エンザン、白州、そして海王神いすみが、今後の話をしていた。
「ただいま戻りました、エンザン棟梁」
「モトスの旦那!!仁摩殿に報告をありがとうございます!!今、海王神いすみ様を交え、これからの事を考えているところです」
「いすみ殿がこちらに?私は精霊忍者のモトスです。海洋族同士で何かありましたか?」
「モトスか。桜龍と共に戦う勇士だな。本来なら他種族には関係の無い事だが、そうは言ってられんな」
いすみは、これまでの経緯をモトスに話した。すると、小屋に入って来たじゅら吉達がいすみの周りに集まってきた。
「いすみ様が元気になったじゅら〜🎵」
「髪が長くてサラサラじゅら~。お花を乗っけたいじゅらー♪」
小精霊達はいすみの髪で遊び始めた。じゅら子と白州が注意したが、いすみは気にせず、『構わん』と言った。
桜龍はいすみの髪を小精霊達が三つ編みにしたり、花を乗せている光景に、クスッと笑うと、彼にもの凄い形相で睨まれた。
「モトスは確か・・豊臣の配下、真田に仕えておるから小田原を攻めるのだな」
「はい。ですが海洋族が小田原の決戦に関わってくるに違いありません。真鶴の企みを止めるのを優先させます」
「豊臣軍は10万の大軍で攻めてくるようじゃから、それを機に闇の者が豊臣北条共々壊滅させようとしているじゃろう」
「これは、憶測かもしれないが、真鶴は三浦一族の復活と言っていたぜ・・・考えたくないが、湘さんと北条家を利用して、豊臣軍を滅ぼすかもしれない」
「それもあるし、第三勢力として双方を滅ぼす可能性もあるかもな・・三浦は北条に滅ぼされたと聞くし」
桜龍とモトスの考えに、常葉はいすみがどう思っているか尋ねた。
「いずれにせよ、海洋族が人間共の戦に関与するなど掟に反する。ワレは奴らを成敗しに行くぞ!!」
いすみは金の三叉槍を持ち、掲げながら言おうとしたが、海王の力を失っているので、すごい重さでよろけそうになった。モトスと白州は慌てながら槍を支えた。
「く・・・すまぬ。海王の力が無ければ、ワレはこの程度の存在なのか・・・」
いすみが肩を落としていると、エンザンは彼の肩にポンと手を置き、諭した
「どんな状況であれ、いすみ殿は海王神じゃよ。皆が貴殿を支えてくれる」
続いて白州も張り切りながら言葉を続けた。
「俺達、森精霊も助太刀するぜ!!海洋族とは一戦交えてみたいと思っているんだぜ♪」
白州の発言に常葉は驚いていたので、「冗談だよー」と笑って誤魔化した。続いてモトスもいすみを励ました。
「いすみ殿が他種族との関わりを持ちたくない気持ちは分かりますが、共に日ノ本を護る同志として、皆で力を合わせましょう!!」
いすみは言葉が出ずに黙り込んでいると、桜龍が彼の手を強く握った。
「モトスさんや森精霊の他にも、球磨という炎の戦士や、千里という強い鬼神も日ノ本を護る勇士です。それと湘さんだって、海洋族の力を受け継いだことに自信と誇りを持っています」
「湘・・・あの者とだけは分かり合うことは出来ん・・・・」
いすみが眉間にしわを寄せながら苦い顔をすると、エンザンがもう一度励ました。
「直ぐに分かり合わなくても良いのじゃよ。何かきっかけがあれば過去のわだかまりは解ける。今は、海洋族を救うことを考えてみなされ」
「エンザン棟梁の言う通りですよ。さぁ、豊臣家と北条家の戦が本格的に始まる前に、行きましょう、小田原へ!!」
桜龍の強い志に、いすみは『そうだな』と答えた。こうして、桜龍とモトスといすみは急ぎ、小田原へ向かうことにした。
翌朝、真鶴一行は小田原の海岸を歩いていた。真鶴は直ぐ目の前にそびえ立つ小田原城天守をじっと見つめながら身を引き締めていた。アナンは体が強ばっている真鶴の肩を揉んだ。
「な!?突然何をする、アナン!!」
「いやぁー、あんまりにも大将の体がガチガチだったからよ。緊張をほぐしてやったぜ。そんなに心配しなさんな♪大将を危険な目には遭わせねーし、北条の兵士共を気絶させる程度にしか力を出さないからさ」
「すまないアナン・・皆。俺ってそんなに顔に出やすいのか・・?」
真鶴は困った顔をしながら皆に聞くと、五十鈴はその通りと頷いた。
「真鶴はもしかして、イッホ(スペイン語で息子)の湘を心配しているのかい?彼だって、いすみに、ママシータ(母)凪沙と引き離されたのだから、我々に協力してくれるでしょう」
「おめーはまた訳分かんねぇ『まましーた?』とか、変な『ぽるとがる』語を使うなよ!!南蛮人かぶれめ!!」
「君こそ、一暴れするだの拳で語るだの、物騒な事を言わないで、セニョリータ達に好かれるように男を磨いたらどうだい?ちなみに、ボクの使う言葉はスペイン語だよ♪君も習うかい?」
アナンと五十鈴の幼稚な喧嘩に、真鶴は戸惑っていたが、亘は放っておけと言った。
「これから、豊臣と北条が戦を起こすが、真鶴はどうしたいのだ?第三勢力として両方を滅ぼすか、それとも、どちらかに味方するのか?」
「滅ぼそうとはしない。俺は無意味な殺戮(さつりく)をしたいと思わない。綺麗事だと分かっているが、俺は争いも悲恋も起きない理想郷を創りたい」
皆は、真鶴の争いごとを好まない性格を十分理解していた。
「真鶴の気持ちは十分理解した。では、最初の役目は、北条氏政と謁見(えっけん)してみようではないか」
亘は真鶴の肩に手を置きながら、急ぎ向かおうと促した。真鶴の懐の中で、クリクリは妖しく笑っていた。
(くっくく、その慈悲深い優しさが、闇と憎しみに染まっていくのが楽しみクリねー♪)
第2話 完
「ただいま戻りました、エンザン棟梁」
「モトスの旦那!!仁摩殿に報告をありがとうございます!!今、海王神いすみ様を交え、これからの事を考えているところです」
「いすみ殿がこちらに?私は精霊忍者のモトスです。海洋族同士で何かありましたか?」
「モトスか。桜龍と共に戦う勇士だな。本来なら他種族には関係の無い事だが、そうは言ってられんな」
いすみは、これまでの経緯をモトスに話した。すると、小屋に入って来たじゅら吉達がいすみの周りに集まってきた。
「いすみ様が元気になったじゅら〜🎵」
「髪が長くてサラサラじゅら~。お花を乗っけたいじゅらー♪」
小精霊達はいすみの髪で遊び始めた。じゅら子と白州が注意したが、いすみは気にせず、『構わん』と言った。
桜龍はいすみの髪を小精霊達が三つ編みにしたり、花を乗せている光景に、クスッと笑うと、彼にもの凄い形相で睨まれた。
「モトスは確か・・豊臣の配下、真田に仕えておるから小田原を攻めるのだな」
「はい。ですが海洋族が小田原の決戦に関わってくるに違いありません。真鶴の企みを止めるのを優先させます」
「豊臣軍は10万の大軍で攻めてくるようじゃから、それを機に闇の者が豊臣北条共々壊滅させようとしているじゃろう」
「これは、憶測かもしれないが、真鶴は三浦一族の復活と言っていたぜ・・・考えたくないが、湘さんと北条家を利用して、豊臣軍を滅ぼすかもしれない」
「それもあるし、第三勢力として双方を滅ぼす可能性もあるかもな・・三浦は北条に滅ぼされたと聞くし」
桜龍とモトスの考えに、常葉はいすみがどう思っているか尋ねた。
「いずれにせよ、海洋族が人間共の戦に関与するなど掟に反する。ワレは奴らを成敗しに行くぞ!!」
いすみは金の三叉槍を持ち、掲げながら言おうとしたが、海王の力を失っているので、すごい重さでよろけそうになった。モトスと白州は慌てながら槍を支えた。
「く・・・すまぬ。海王の力が無ければ、ワレはこの程度の存在なのか・・・」
いすみが肩を落としていると、エンザンは彼の肩にポンと手を置き、諭した
「どんな状況であれ、いすみ殿は海王神じゃよ。皆が貴殿を支えてくれる」
続いて白州も張り切りながら言葉を続けた。
「俺達、森精霊も助太刀するぜ!!海洋族とは一戦交えてみたいと思っているんだぜ♪」
白州の発言に常葉は驚いていたので、「冗談だよー」と笑って誤魔化した。続いてモトスもいすみを励ました。
「いすみ殿が他種族との関わりを持ちたくない気持ちは分かりますが、共に日ノ本を護る同志として、皆で力を合わせましょう!!」
いすみは言葉が出ずに黙り込んでいると、桜龍が彼の手を強く握った。
「モトスさんや森精霊の他にも、球磨という炎の戦士や、千里という強い鬼神も日ノ本を護る勇士です。それと湘さんだって、海洋族の力を受け継いだことに自信と誇りを持っています」
「湘・・・あの者とだけは分かり合うことは出来ん・・・・」
いすみが眉間にしわを寄せながら苦い顔をすると、エンザンがもう一度励ました。
「直ぐに分かり合わなくても良いのじゃよ。何かきっかけがあれば過去のわだかまりは解ける。今は、海洋族を救うことを考えてみなされ」
「エンザン棟梁の言う通りですよ。さぁ、豊臣家と北条家の戦が本格的に始まる前に、行きましょう、小田原へ!!」
桜龍の強い志に、いすみは『そうだな』と答えた。こうして、桜龍とモトスといすみは急ぎ、小田原へ向かうことにした。
翌朝、真鶴一行は小田原の海岸を歩いていた。真鶴は直ぐ目の前にそびえ立つ小田原城天守をじっと見つめながら身を引き締めていた。アナンは体が強ばっている真鶴の肩を揉んだ。
「な!?突然何をする、アナン!!」
「いやぁー、あんまりにも大将の体がガチガチだったからよ。緊張をほぐしてやったぜ。そんなに心配しなさんな♪大将を危険な目には遭わせねーし、北条の兵士共を気絶させる程度にしか力を出さないからさ」
「すまないアナン・・皆。俺ってそんなに顔に出やすいのか・・?」
真鶴は困った顔をしながら皆に聞くと、五十鈴はその通りと頷いた。
「真鶴はもしかして、イッホ(スペイン語で息子)の湘を心配しているのかい?彼だって、いすみに、ママシータ(母)凪沙と引き離されたのだから、我々に協力してくれるでしょう」
「おめーはまた訳分かんねぇ『まましーた?』とか、変な『ぽるとがる』語を使うなよ!!南蛮人かぶれめ!!」
「君こそ、一暴れするだの拳で語るだの、物騒な事を言わないで、セニョリータ達に好かれるように男を磨いたらどうだい?ちなみに、ボクの使う言葉はスペイン語だよ♪君も習うかい?」
アナンと五十鈴の幼稚な喧嘩に、真鶴は戸惑っていたが、亘は放っておけと言った。
「これから、豊臣と北条が戦を起こすが、真鶴はどうしたいのだ?第三勢力として両方を滅ぼすか、それとも、どちらかに味方するのか?」
「滅ぼそうとはしない。俺は無意味な殺戮(さつりく)をしたいと思わない。綺麗事だと分かっているが、俺は争いも悲恋も起きない理想郷を創りたい」
皆は、真鶴の争いごとを好まない性格を十分理解していた。
「真鶴の気持ちは十分理解した。では、最初の役目は、北条氏政と謁見(えっけん)してみようではないか」
亘は真鶴の肩に手を置きながら、急ぎ向かおうと促した。真鶴の懐の中で、クリクリは妖しく笑っていた。
(くっくく、その慈悲深い優しさが、闇と憎しみに染まっていくのが楽しみクリねー♪)
第2話 完