第3章 異説小田原征伐 蘇りし海の亡霊と海神伝説
数時間後の甲斐国、鳴沢氷穴の地底湖で、森精霊の忍び『モトス』は、真田家に仕える精霊忍者と、小精霊の『じゅら吉』と『じゅら子』を連れ、洞窟内を散策していた。鳴沢氷穴は、富士山麓から丹沢山地の地底を通り、江ノ島の洞窟に繋がっているという噂があった。彼らは小田原征伐へ向かう近道になるかと、水晶のような氷に覆われた洞窟内を散策していた。
「とっても深い洞窟じゅらねー。相模の海まで繋がっているって本当じゅら?」
「この洞窟は自然に詳しい、森精霊ではないと迷っちゃうじゅら」
興味津々に氷柱に顔を覗かせているじゅら吉と、少し緊張しているじゅら子の様子を、モトス達は和やかに見ていた。すると、地底湖から何かが浮かび上がっているのを目撃した。
「何だ!?地底湖に眠る怪魚でも現れたか?」
「くじらやシャチとかいう海の巨大生物がここまで泳いできたか?」
精霊忍者達は忍具を構え、警戒しながら湖に近づいた。すると、氷漬けにされた2人の男が浮かび上がった。モトスは凍らされている者の姿を見て、1人はよく知る人物・・いいや、共に戦う勇士だった。じゅら吉とじゅら子は水死体と勘違いし、怖がりながら精霊忍者の懐に隠れた
「ドザエモンじゅらー!!!!!」
「桜龍!!なぜこのような姿に・・・。それにもう一人の者は海洋族か?」
モトス達は直ぐに地底湖に浸かり、二人を引き上げた。強力な魔力で凍らされているのか、持っている火打ち石や松明の炎では消せなかった。モトスは桜龍達の救助と、何が起きているのかを彼らに聞くため、洞窟の調査は中止し、森精霊の長老、『エンザン』の元に連れて行こうと決めた。
数時間後、鳴沢の森で、エンザンによる森精霊の力で呪いを解いてもらい、桜龍と常葉の氷は溶けた。二人は息をしていたので、生きていたことに森精霊と小精霊達はホッとした。木漏れ日の差す、楓の大木に建っている小屋で二人は療養され、彼らを見守りながら、エンザンとモトスは原因を探っていた。
「こいつは、海洋族の術じゃな・・・それも、かなり強力な闇の術。海王神いすみ殿の身に何かあったのじゃろうか・・・」
「洞窟を歩いていたときに、奥の方から何かとてつもない邪気を感じました。もう直ぐ、豊臣軍と共に小田原を制圧しますが、それに合わせるかのように、不吉な事が起きそうです」
数分後、桜龍と常葉は目を覚ますと、辺り一面、木で出来た小屋の中に居ることに驚いた。桜龍は、『ここはもしや!!』と、直ぐに察したが、海中で暮らしていた常葉にとっては全く馴染みの無い風景で、驚きを隠せないでいた。
「ここは、甲斐の森精霊の里か?あの洞窟はここまで繋がっていたんだなー」
「こ・・ここは何処ですか?海は・・海はあるのですか!?」
『おやおや、元気に目を覚ましたな』と、エンザンとモトスは笑いながら二人の傍に寄った。常葉は二人に素性と礼を言った。
「お助けいただき、ありがとうございます!!私は、海洋族の常葉という者です。海王神いすみ殿の側近ですが、この有様で、反乱者を止められませんでした・・・」
モトスとエンザンも自分の名を名乗り、事情を聞いた。
「真鶴とは・・・湘の父親か。亡霊となり海洋族として蘇り、闇の紅玉を身につけていたということは、厄神の今度の狙いは真鶴という者か・・・」
「海洋族の反乱か・・・確かにいすみ殿は掟を大切にし、刃向かう者には容赦ないと聞くが、それも海洋族を護るためじゃと分かる。もし、いすみ殿が海王神の権限を失ったら、闇に海洋族は乗っ取られてしまうのう・・・」
モトスとエンザンは、小田原攻めの前に厄介事が出たなと頭を悩ませていたが、桜龍と常葉は直ぐにいすみを助けなくてはと立ち上がった。
「旦那!!エンザン棟梁、助けてくれてありがとうございます!!命拾いしました!!へ・・へっくしゅん!!」
「わたくし達は今から、いすみ様を助けに行きます!!は・・はっくしょん!!」
しかし、直後にくしゃみをし、ぶるぶると寒気がして、布団をかぶった。モトスは2人に無理はするなと優しく寝かした。
「その体で戦いに行くのは危険だ。まずは、湘にこの事を話そう」
「そうじゃ、お主達は凍っていたから少し風邪を引いてしまったようじゃのう。今はゆっくり休め」
「おら達が子守唄を歌うじゅら🎵」
じゅら吉達は布団の周りに集まり、可愛らしい声で子守唄を輪唱した。
「あ!?待ってくれ!仁摩殿が箱根神社に居る。俺が森精霊の所で世話になっていると言わねーと・・・スヤスヤ・・」
桜龍と常葉は心地良い歌声に即眠りについた。
「案ずるな。仁摩殿にしっかりと伝えておくぞ!」
モトスが2人に布団を掛けた後、精霊戦士の『白州(はくしゅう)』に看病を頼んだ。そして、エンザンに箱根と小田原へ行くと告げ、翡翠のハネを羽ばたかせ、目的地へと飛んでいった。
第1話 完
「とっても深い洞窟じゅらねー。相模の海まで繋がっているって本当じゅら?」
「この洞窟は自然に詳しい、森精霊ではないと迷っちゃうじゅら」
興味津々に氷柱に顔を覗かせているじゅら吉と、少し緊張しているじゅら子の様子を、モトス達は和やかに見ていた。すると、地底湖から何かが浮かび上がっているのを目撃した。
「何だ!?地底湖に眠る怪魚でも現れたか?」
「くじらやシャチとかいう海の巨大生物がここまで泳いできたか?」
精霊忍者達は忍具を構え、警戒しながら湖に近づいた。すると、氷漬けにされた2人の男が浮かび上がった。モトスは凍らされている者の姿を見て、1人はよく知る人物・・いいや、共に戦う勇士だった。じゅら吉とじゅら子は水死体と勘違いし、怖がりながら精霊忍者の懐に隠れた
「ドザエモンじゅらー!!!!!」
「桜龍!!なぜこのような姿に・・・。それにもう一人の者は海洋族か?」
モトス達は直ぐに地底湖に浸かり、二人を引き上げた。強力な魔力で凍らされているのか、持っている火打ち石や松明の炎では消せなかった。モトスは桜龍達の救助と、何が起きているのかを彼らに聞くため、洞窟の調査は中止し、森精霊の長老、『エンザン』の元に連れて行こうと決めた。
数時間後、鳴沢の森で、エンザンによる森精霊の力で呪いを解いてもらい、桜龍と常葉の氷は溶けた。二人は息をしていたので、生きていたことに森精霊と小精霊達はホッとした。木漏れ日の差す、楓の大木に建っている小屋で二人は療養され、彼らを見守りながら、エンザンとモトスは原因を探っていた。
「こいつは、海洋族の術じゃな・・・それも、かなり強力な闇の術。海王神いすみ殿の身に何かあったのじゃろうか・・・」
「洞窟を歩いていたときに、奥の方から何かとてつもない邪気を感じました。もう直ぐ、豊臣軍と共に小田原を制圧しますが、それに合わせるかのように、不吉な事が起きそうです」
数分後、桜龍と常葉は目を覚ますと、辺り一面、木で出来た小屋の中に居ることに驚いた。桜龍は、『ここはもしや!!』と、直ぐに察したが、海中で暮らしていた常葉にとっては全く馴染みの無い風景で、驚きを隠せないでいた。
「ここは、甲斐の森精霊の里か?あの洞窟はここまで繋がっていたんだなー」
「こ・・ここは何処ですか?海は・・海はあるのですか!?」
『おやおや、元気に目を覚ましたな』と、エンザンとモトスは笑いながら二人の傍に寄った。常葉は二人に素性と礼を言った。
「お助けいただき、ありがとうございます!!私は、海洋族の常葉という者です。海王神いすみ殿の側近ですが、この有様で、反乱者を止められませんでした・・・」
モトスとエンザンも自分の名を名乗り、事情を聞いた。
「真鶴とは・・・湘の父親か。亡霊となり海洋族として蘇り、闇の紅玉を身につけていたということは、厄神の今度の狙いは真鶴という者か・・・」
「海洋族の反乱か・・・確かにいすみ殿は掟を大切にし、刃向かう者には容赦ないと聞くが、それも海洋族を護るためじゃと分かる。もし、いすみ殿が海王神の権限を失ったら、闇に海洋族は乗っ取られてしまうのう・・・」
モトスとエンザンは、小田原攻めの前に厄介事が出たなと頭を悩ませていたが、桜龍と常葉は直ぐにいすみを助けなくてはと立ち上がった。
「旦那!!エンザン棟梁、助けてくれてありがとうございます!!命拾いしました!!へ・・へっくしゅん!!」
「わたくし達は今から、いすみ様を助けに行きます!!は・・はっくしょん!!」
しかし、直後にくしゃみをし、ぶるぶると寒気がして、布団をかぶった。モトスは2人に無理はするなと優しく寝かした。
「その体で戦いに行くのは危険だ。まずは、湘にこの事を話そう」
「そうじゃ、お主達は凍っていたから少し風邪を引いてしまったようじゃのう。今はゆっくり休め」
「おら達が子守唄を歌うじゅら🎵」
じゅら吉達は布団の周りに集まり、可愛らしい声で子守唄を輪唱した。
「あ!?待ってくれ!仁摩殿が箱根神社に居る。俺が森精霊の所で世話になっていると言わねーと・・・スヤスヤ・・」
桜龍と常葉は心地良い歌声に即眠りについた。
「案ずるな。仁摩殿にしっかりと伝えておくぞ!」
モトスが2人に布団を掛けた後、精霊戦士の『白州(はくしゅう)』に看病を頼んだ。そして、エンザンに箱根と小田原へ行くと告げ、翡翠のハネを羽ばたかせ、目的地へと飛んでいった。
第1話 完