第3章 異説小田原征伐 蘇りし海の亡霊と海神伝説
その頃、江ノ島の磯に居る漁師達は、洞窟の中から激しい音を耳にしたが、自分たちには関係無いので、平然としていた。
「洞窟の中が騒々しいねぇ」
「まーた、海洋族が乱闘でもしているんかねぇ?」
島民達には海洋族の行動に関心が薄く、何をしていても、いつものことだという認識程度だった。
そしてまた、水面に浮いている桜龍はのんきに感心しながら見ていた。
「うっひょー、常葉さん強いねぇ。俺も少しは強くなったと思ったんだが、まだまだだなー。海洋族のお兄さん方みたいな体になるよう鍛えるか」
桜龍が海洋族のムキムキの体をお触りしながら呟いていた。その光景を見て五十鈴は体に悪寒を覚えた。
「何という者だ・・・ボクはそちらの趣味はないね」
「あんたは色ボケそうで、ナヨナヨしてそうだから、対象外♪俺が女だったら、そっちの逞しいダンナの方が好みだぜ」
五十鈴は桜龍にお呼びでは無いとあしらわれ、肩を落とした。一方、褒められた亘は少し嬉しそうに照れていた。やりたい放題の桜龍に海洋族達は堪忍袋の尾が切れた。
「何をする!!海洋族を愚弄するか変態め!!」
海洋族達は一斉に槍を構え、桜龍を追いかけるが、彼も浮水の術を足に掛け、優雅に水面を駆けながら、海洋族を相手にした。
「こやつ・・・なかなかやる!?」
「俺は出雲から来た神官侍、桜龍。日ノ本を脅威に奮い立たせる悪者を成敗しに来たのさ!!」
桜龍は次々と彼らの繰り出す槍を交わし、破邪の太刀に雷撃を帯びさせ、気絶させた。そして桜龍は、一気に真鶴に近づき首に刃を当て、叱りつけた。
「あんたが真鶴サンって奴かい?あんたから生命を感じないが、闇の力で蘇ったのか!!」
「・・・侵入者か!!これは海洋族の問題だ。君のような人間には用はない!!命が惜しければとっとと出て行け!!」
真鶴は強い口調で桜龍に反論した。そして直ぐに腰に差している刀を抜き、桜龍に挑んだ。真鶴の剣さばきは、剣豪の実力を持つ桜龍でさえ、なかなか隙を見せない太刀だった。しかし一方、剣には迷いがあった。桜龍に隙ができ次第、致命傷を与えられるほどの実力を持っているのに、どこかためらってしまうようだ。
「あんたの剣技からも瞳からも邪気を感じないなー。もしかして、俺を殺すつもりはないってことか?」
「俺の目的は海王いすみを王座から引きずり下ろすことだ!!だから、邪魔をするなら、本気で始末する!!」
しかし、言葉とは裏腹に真鶴は桜龍を始末するという考えは無く、脅し文句だけだと桜龍は見破っていた。戸惑う真鶴の目の前に、亘が割り込み、桜龍の太刀を斧で受け止めた。
「もう無理して戦うな、真鶴!!俺達を頼れ!!」
「亘・・・すまない。やはり君が指導者になるべきだよ」
「いいや真鶴、お主は海洋族の長にふさわしい男だ。それに、三浦一族の復活と、また凪沙(なぎさ)と湘にも会いたいのだろう?」
「何!?今、湘って言ったか?真鶴はまさか湘さんの・・・親父さんか?」
桜龍は驚き戸惑いながら剣の動きを止めた。すると、真鶴も亘に攻撃を止めさせ、彼に質問した。
「桜龍と言ったか?君は湘を知っているのか?」
真鶴は桜龍に歩み寄り、湘の事を尋ねたが、桜龍は何かを企んでいるなと疑い、教えるのを拒否した。
「あんたは、いすみ様に反乱を起こそうとしている。いくら父親でも、湘さんを悪事に巻き込むってんなら教えられないな」
桜龍は雷を帯びさせた護符を懐から5枚取り出し、真鶴に飛ばした。真鶴の体にまとわりつく護符からは雷撃が放たれ、動きを止めた。亘は、怒りが頂点に達し、桜龍目掛け斧を渾身の力で振り下ろした。その隙に、五十鈴は杖を真鶴に向け、札を取り除こうと呪文を唱えていた。
「これ以上、我が大将に手を出さないで頂きたい。でなければ、貴様をこの斧のサビにしてやろうぞ!!」
「く・・・なんて怪力だ・・ただの海洋族ではないな、旦那」
桜龍は斧を受け止めるので精一杯で、押し退けられない。その時、五十鈴は真鶴にまとわりついている札を取り外せられ、真鶴は解放された。
「すまない・・・五十鈴。大将と呼ばれているのに、もっとしっかりしなければな」
「アミーゴーは1人で背負いすぎだよ。もっとボク達を頼って欲しいよ」
五十鈴も、妖しい光を放つ紫水晶の杖を桜龍に向け、呪文を唱えた。
「神官侍の君、これほどの力を持っているなら、君も海洋生物にならないかい?ふふ、君は・・マンボウかな?」
五十鈴が桜龍に紫の光線を放った時、アナンと戦っていた常葉が素早く五十鈴の懐に入り、杖を蹴り飛ばした。ついでに、彼の顎に拳を振り上げ、岩壁に吹き飛ばした。
「ひ・・酷い・・・アミーゴー常葉。ボクの美しい顔を殴るなんて・・・・」
五十鈴は涙目になりながら、常葉に文句を垂らした。
「その禁術を習得したのですね・・・五十鈴」
常葉は冷や汗をかきながら言った。桜龍は五十鈴の技は危険だと即理解した。その隙に、真鶴は、長弓を構え、桜龍と常葉に向けた。
「形勢逆転だな。これ以上戦っても君達には勝ち目は無い。もう一度言うが、この場から引き下がるのなら見逃す。海洋族の問題に人間は関係ない。だが、いすみの仲間で止めようとするならば、容赦はせんぞ!!」
「やれるものならやってみろよ。だがよ、あんたが闇の力で海洋族の長となって、湘さんも奥さんも喜ぶとでも思っているのか?」
桜龍は左目の眼帯を外し、聖なる龍の瞳で真鶴の迷いの矢を見据えていた。その時、真鶴の懐に入っていたクリクリが、あざとくずる賢そうな声で囁いた。
(真鶴は指導者としての自覚が足らんクリ!!もっと非情になるクリ!!今回は、演説で噛んだり台詞に戸惑っていたから65点クリ!!)
突然、真鶴の瞳は黒く濁り、銀の籠手に装飾されている紅玉が漆黒に変化した。桜龍はそれを見て確信した。
「やはり・・・闇の力を増幅させる禍々しい紅玉を貴様も付けていたのか」
桜龍は再び護符を取り出し、真鶴の籠手を破壊しようと投げ飛ばした。しかし、真鶴の弓は目にも留まらぬ速さで氷の矢が放たれ、護符を凍らせた。そして、氷の矢は、桜龍と常葉の肩に刺さり、2人の体は氷に覆われてしまった。真鶴は先までの優柔不断な様子とは異なり、冷酷な瞳で、2人を海水湖に沈めた。
「お前達は、我が野望に邪魔だ。悪いがここで死んで貰おう・・・」
海洋族は、真鶴の本気の姿を見て大歓声を上げていた。一方、亘達は真鶴の変貌に戸惑いを隠せなかった。
(今までの真鶴とは違う・・・まるで闇に心を操られたかのようだ)
(アミーゴー真鶴の今の行動にゾクゾクしたよぉ・・・)
(真鶴が飼っているクリクリって奴、危険な香りがするぜ・・・真鶴が変な方向に行かねーように、警戒しないとな・・・)
真鶴は我に返り、今さっきの記憶が無いかのように、クリクリに、『桜龍達はどうしたのだ?』と尋ねた。クリクリは、『真鶴の説得で洞窟を出たクリ~』と誤魔化した。真鶴はそうかと安堵していたとき、クリクリは桜龍の聖なる龍の瞳の存在を思い出していた。
(あの瞳は・・・聖龍の片割れクリか?桜龍とかいう男を殺さず、瞳を奪っておけば良かったかな・・・?)
「洞窟の中が騒々しいねぇ」
「まーた、海洋族が乱闘でもしているんかねぇ?」
島民達には海洋族の行動に関心が薄く、何をしていても、いつものことだという認識程度だった。
そしてまた、水面に浮いている桜龍はのんきに感心しながら見ていた。
「うっひょー、常葉さん強いねぇ。俺も少しは強くなったと思ったんだが、まだまだだなー。海洋族のお兄さん方みたいな体になるよう鍛えるか」
桜龍が海洋族のムキムキの体をお触りしながら呟いていた。その光景を見て五十鈴は体に悪寒を覚えた。
「何という者だ・・・ボクはそちらの趣味はないね」
「あんたは色ボケそうで、ナヨナヨしてそうだから、対象外♪俺が女だったら、そっちの逞しいダンナの方が好みだぜ」
五十鈴は桜龍にお呼びでは無いとあしらわれ、肩を落とした。一方、褒められた亘は少し嬉しそうに照れていた。やりたい放題の桜龍に海洋族達は堪忍袋の尾が切れた。
「何をする!!海洋族を愚弄するか変態め!!」
海洋族達は一斉に槍を構え、桜龍を追いかけるが、彼も浮水の術を足に掛け、優雅に水面を駆けながら、海洋族を相手にした。
「こやつ・・・なかなかやる!?」
「俺は出雲から来た神官侍、桜龍。日ノ本を脅威に奮い立たせる悪者を成敗しに来たのさ!!」
桜龍は次々と彼らの繰り出す槍を交わし、破邪の太刀に雷撃を帯びさせ、気絶させた。そして桜龍は、一気に真鶴に近づき首に刃を当て、叱りつけた。
「あんたが真鶴サンって奴かい?あんたから生命を感じないが、闇の力で蘇ったのか!!」
「・・・侵入者か!!これは海洋族の問題だ。君のような人間には用はない!!命が惜しければとっとと出て行け!!」
真鶴は強い口調で桜龍に反論した。そして直ぐに腰に差している刀を抜き、桜龍に挑んだ。真鶴の剣さばきは、剣豪の実力を持つ桜龍でさえ、なかなか隙を見せない太刀だった。しかし一方、剣には迷いがあった。桜龍に隙ができ次第、致命傷を与えられるほどの実力を持っているのに、どこかためらってしまうようだ。
「あんたの剣技からも瞳からも邪気を感じないなー。もしかして、俺を殺すつもりはないってことか?」
「俺の目的は海王いすみを王座から引きずり下ろすことだ!!だから、邪魔をするなら、本気で始末する!!」
しかし、言葉とは裏腹に真鶴は桜龍を始末するという考えは無く、脅し文句だけだと桜龍は見破っていた。戸惑う真鶴の目の前に、亘が割り込み、桜龍の太刀を斧で受け止めた。
「もう無理して戦うな、真鶴!!俺達を頼れ!!」
「亘・・・すまない。やはり君が指導者になるべきだよ」
「いいや真鶴、お主は海洋族の長にふさわしい男だ。それに、三浦一族の復活と、また凪沙(なぎさ)と湘にも会いたいのだろう?」
「何!?今、湘って言ったか?真鶴はまさか湘さんの・・・親父さんか?」
桜龍は驚き戸惑いながら剣の動きを止めた。すると、真鶴も亘に攻撃を止めさせ、彼に質問した。
「桜龍と言ったか?君は湘を知っているのか?」
真鶴は桜龍に歩み寄り、湘の事を尋ねたが、桜龍は何かを企んでいるなと疑い、教えるのを拒否した。
「あんたは、いすみ様に反乱を起こそうとしている。いくら父親でも、湘さんを悪事に巻き込むってんなら教えられないな」
桜龍は雷を帯びさせた護符を懐から5枚取り出し、真鶴に飛ばした。真鶴の体にまとわりつく護符からは雷撃が放たれ、動きを止めた。亘は、怒りが頂点に達し、桜龍目掛け斧を渾身の力で振り下ろした。その隙に、五十鈴は杖を真鶴に向け、札を取り除こうと呪文を唱えていた。
「これ以上、我が大将に手を出さないで頂きたい。でなければ、貴様をこの斧のサビにしてやろうぞ!!」
「く・・・なんて怪力だ・・ただの海洋族ではないな、旦那」
桜龍は斧を受け止めるので精一杯で、押し退けられない。その時、五十鈴は真鶴にまとわりついている札を取り外せられ、真鶴は解放された。
「すまない・・・五十鈴。大将と呼ばれているのに、もっとしっかりしなければな」
「アミーゴーは1人で背負いすぎだよ。もっとボク達を頼って欲しいよ」
五十鈴も、妖しい光を放つ紫水晶の杖を桜龍に向け、呪文を唱えた。
「神官侍の君、これほどの力を持っているなら、君も海洋生物にならないかい?ふふ、君は・・マンボウかな?」
五十鈴が桜龍に紫の光線を放った時、アナンと戦っていた常葉が素早く五十鈴の懐に入り、杖を蹴り飛ばした。ついでに、彼の顎に拳を振り上げ、岩壁に吹き飛ばした。
「ひ・・酷い・・・アミーゴー常葉。ボクの美しい顔を殴るなんて・・・・」
五十鈴は涙目になりながら、常葉に文句を垂らした。
「その禁術を習得したのですね・・・五十鈴」
常葉は冷や汗をかきながら言った。桜龍は五十鈴の技は危険だと即理解した。その隙に、真鶴は、長弓を構え、桜龍と常葉に向けた。
「形勢逆転だな。これ以上戦っても君達には勝ち目は無い。もう一度言うが、この場から引き下がるのなら見逃す。海洋族の問題に人間は関係ない。だが、いすみの仲間で止めようとするならば、容赦はせんぞ!!」
「やれるものならやってみろよ。だがよ、あんたが闇の力で海洋族の長となって、湘さんも奥さんも喜ぶとでも思っているのか?」
桜龍は左目の眼帯を外し、聖なる龍の瞳で真鶴の迷いの矢を見据えていた。その時、真鶴の懐に入っていたクリクリが、あざとくずる賢そうな声で囁いた。
(真鶴は指導者としての自覚が足らんクリ!!もっと非情になるクリ!!今回は、演説で噛んだり台詞に戸惑っていたから65点クリ!!)
突然、真鶴の瞳は黒く濁り、銀の籠手に装飾されている紅玉が漆黒に変化した。桜龍はそれを見て確信した。
「やはり・・・闇の力を増幅させる禍々しい紅玉を貴様も付けていたのか」
桜龍は再び護符を取り出し、真鶴の籠手を破壊しようと投げ飛ばした。しかし、真鶴の弓は目にも留まらぬ速さで氷の矢が放たれ、護符を凍らせた。そして、氷の矢は、桜龍と常葉の肩に刺さり、2人の体は氷に覆われてしまった。真鶴は先までの優柔不断な様子とは異なり、冷酷な瞳で、2人を海水湖に沈めた。
「お前達は、我が野望に邪魔だ。悪いがここで死んで貰おう・・・」
海洋族は、真鶴の本気の姿を見て大歓声を上げていた。一方、亘達は真鶴の変貌に戸惑いを隠せなかった。
(今までの真鶴とは違う・・・まるで闇に心を操られたかのようだ)
(アミーゴー真鶴の今の行動にゾクゾクしたよぉ・・・)
(真鶴が飼っているクリクリって奴、危険な香りがするぜ・・・真鶴が変な方向に行かねーように、警戒しないとな・・・)
真鶴は我に返り、今さっきの記憶が無いかのように、クリクリに、『桜龍達はどうしたのだ?』と尋ねた。クリクリは、『真鶴の説得で洞窟を出たクリ~』と誤魔化した。真鶴はそうかと安堵していたとき、クリクリは桜龍の聖なる龍の瞳の存在を思い出していた。
(あの瞳は・・・聖龍の片割れクリか?桜龍とかいう男を殺さず、瞳を奪っておけば良かったかな・・・?)