第3章 異説小田原征伐 蘇りし海の亡霊と海神伝説
真鶴とクリクリは亘の案内で、東海伊勢国まで泳ぎ着いた。そこは、お伊勢参りで賑っており、内宮への街道『おはらい町』も参拝客が多く行き交っていた。亘は顔見知りの質屋を訪れ、主人に尋ねた。
「ここに五十鈴(いすず)は来たか?」
「おや、亘さんですかい。五十鈴は昨日も真珠を沢山持ってきたよ。お陰で、大名家が真珠を買ってくれて大儲けだよ」
(五十鈴という者は、どんな人物なのだろう?金持ちなのか?)
「それで、あいつは今、伊勢に居るのか?」
「いや、早速祇園に行くと、張り切っていたぞ。多分今頃は京で遊んでいるんじゃないかな?」
亘は頭を押さえながら、そうか・・・と、主人に礼を言った。
「なぁ、亘さん。五十鈴とはどんな者なのだ?」
「奴は訳の分からぬ言葉を使うが、どうか気にせんでくれ・・・」
真鶴と亘とクリクリは、伊勢から京に向かった。
京の都、老舗旅館や料亭が水路に沿って並ぶ祇園街で真鶴は、夜の街を艶やかに灯す灯籠に目を見張っていた。
「はぁ・・・俺には無縁な所だ。華やかで高級そうだし、何より・・・」
妻だった凪沙を一途に愛している真鶴にとって、芸妓の多い花街に何の魅力も感じなかった。クリクリは彼の戸惑っている顔を見て、笑っている一方、亘は真鶴を気遣い、言った。
「お主は何もしなくて良い。ここは俺に任せてくれ」
「きっと面白いことになるよー」
真鶴達は、祇園で一番高級な料亭に入ると、大広間からは芸妓と陽気な男性の声が響いていた。
「まぁ、五十鈴様はご冗談がお得意で可愛らしいですわー。頭のヒレもぴょこぴょこと可愛いどすえ」
「冗談ではないさ、セニョリータ。この海洋族一の美男子が、君を美しい海の世界に誘うよ」
彼は五十鈴。青紫の髪と、側頭部には綺麗に湾曲した薄紫色のヒレを持つ純血の海洋族。さらに南蛮風の上着を身につけた、異国語を口にする風変わりな男性だった。五十鈴は、ほろ酔い気分で酒を飲み、懐石料理を口にしながら、悠々自適に芸妓と戯れていた。その光景に見兼ねた亘は強く襖を開け、五十鈴の襟元を掴み上げた。
「・・・芸妓遊びはそこまでにしろ、五十鈴」
「アッミーゴー亘君!!君も祇園セニョリータ達と楽しいひと時を過ごさないかい?」
五十鈴は陽気な言葉で亘を誘った。襖の横に控えている真鶴は、彼の南蛮語の意味が分からず、呆気にとられていた。亘は彼に、『アミーゴ』はスペイン語で友人、『セニョリータ』は彼女という意味だと説明した。
五十鈴は彼の存在に気が付き、挨拶した。
「セニョールは、亘のアミーゴーかな?僕の名前は魔術師、五十鈴。海洋族一の美男子と、伊勢の貴公子と言われているよ」
セニョールはスペイン語で彼という意味か?と真鶴は察していた。それにしても・・・いい歳して美男子という言葉は如何な物かと真鶴は呆れながら自己紹介した。
「はぁ・・俺は真鶴。元は人間だったが、分けあって海洋族に生まれ変わった」
五十鈴は、真鶴の儚げな瞳を見て、何か訳ありだねぇと見破っていた。
「人間が海洋族になれるなんて聞いたことがないけど、まぁいいや。僕に何か用かね?」
「詳しい話は、店を出てからするぞ!!」
亘は五十鈴を持ち上げ、問答無用で店を出た。
「強引なアミーゴだねぇ、亘君は。セニョリータ、また来るよー🎵」
五十鈴は亘に引っ張られながらも、キザな態度で芸妓に口説き文句を言っていた。真鶴は彼の姿を見て呆気にとられながら、『お代は・・・』と店主に聞いたが、前払いだから大丈夫と苦笑いしながら見送られた。真鶴は店主と芸妓に頭を下げ、亘と五十鈴を追いかけた。
祇園に近い鴨川の河原で、五十鈴は真鶴の話を聞いていた。
「真鶴君は、凪沙というセニョリータと恋に落ち結ばれ、子も出来たのに、いすみが家族を引き離したのかい?海洋族が人間と結ばれないのは、いすみが呪いをかけている噂だよー」
真鶴は、五十鈴には海王への憎しみは感じなかったので、率直に尋ねてみた。
「五十鈴さんは、いすみに恨みがあるのか?」
「うーん・・・正直、恨みってわけではないけど、僕は掟に縛られるのが嫌いでね。人間や色々な種族のセニョリータと交流したいから、いすみの宮殿を出て行ったのさ」
そんな理由でか?と真鶴とクリクリは拍子抜けした。亘は頭を押さえながら言った。
「この者は、種族問わず女をたらし込んでいるからな・・・・」
「たらし込むとは失礼だねぇ、亘君。これも、日ノ本の情勢を知る、情報収集だよ♪」
五十鈴は話を変え、もう1人アミーゴーも仲間に入れる?と亘に聞くと、当然だと言い、京の都から四国へ向かった。
「ここに五十鈴(いすず)は来たか?」
「おや、亘さんですかい。五十鈴は昨日も真珠を沢山持ってきたよ。お陰で、大名家が真珠を買ってくれて大儲けだよ」
(五十鈴という者は、どんな人物なのだろう?金持ちなのか?)
「それで、あいつは今、伊勢に居るのか?」
「いや、早速祇園に行くと、張り切っていたぞ。多分今頃は京で遊んでいるんじゃないかな?」
亘は頭を押さえながら、そうか・・・と、主人に礼を言った。
「なぁ、亘さん。五十鈴とはどんな者なのだ?」
「奴は訳の分からぬ言葉を使うが、どうか気にせんでくれ・・・」
真鶴と亘とクリクリは、伊勢から京に向かった。
京の都、老舗旅館や料亭が水路に沿って並ぶ祇園街で真鶴は、夜の街を艶やかに灯す灯籠に目を見張っていた。
「はぁ・・・俺には無縁な所だ。華やかで高級そうだし、何より・・・」
妻だった凪沙を一途に愛している真鶴にとって、芸妓の多い花街に何の魅力も感じなかった。クリクリは彼の戸惑っている顔を見て、笑っている一方、亘は真鶴を気遣い、言った。
「お主は何もしなくて良い。ここは俺に任せてくれ」
「きっと面白いことになるよー」
真鶴達は、祇園で一番高級な料亭に入ると、大広間からは芸妓と陽気な男性の声が響いていた。
「まぁ、五十鈴様はご冗談がお得意で可愛らしいですわー。頭のヒレもぴょこぴょこと可愛いどすえ」
「冗談ではないさ、セニョリータ。この海洋族一の美男子が、君を美しい海の世界に誘うよ」
彼は五十鈴。青紫の髪と、側頭部には綺麗に湾曲した薄紫色のヒレを持つ純血の海洋族。さらに南蛮風の上着を身につけた、異国語を口にする風変わりな男性だった。五十鈴は、ほろ酔い気分で酒を飲み、懐石料理を口にしながら、悠々自適に芸妓と戯れていた。その光景に見兼ねた亘は強く襖を開け、五十鈴の襟元を掴み上げた。
「・・・芸妓遊びはそこまでにしろ、五十鈴」
「アッミーゴー亘君!!君も祇園セニョリータ達と楽しいひと時を過ごさないかい?」
五十鈴は陽気な言葉で亘を誘った。襖の横に控えている真鶴は、彼の南蛮語の意味が分からず、呆気にとられていた。亘は彼に、『アミーゴ』はスペイン語で友人、『セニョリータ』は彼女という意味だと説明した。
五十鈴は彼の存在に気が付き、挨拶した。
「セニョールは、亘のアミーゴーかな?僕の名前は魔術師、五十鈴。海洋族一の美男子と、伊勢の貴公子と言われているよ」
セニョールはスペイン語で彼という意味か?と真鶴は察していた。それにしても・・・いい歳して美男子という言葉は如何な物かと真鶴は呆れながら自己紹介した。
「はぁ・・俺は真鶴。元は人間だったが、分けあって海洋族に生まれ変わった」
五十鈴は、真鶴の儚げな瞳を見て、何か訳ありだねぇと見破っていた。
「人間が海洋族になれるなんて聞いたことがないけど、まぁいいや。僕に何か用かね?」
「詳しい話は、店を出てからするぞ!!」
亘は五十鈴を持ち上げ、問答無用で店を出た。
「強引なアミーゴだねぇ、亘君は。セニョリータ、また来るよー🎵」
五十鈴は亘に引っ張られながらも、キザな態度で芸妓に口説き文句を言っていた。真鶴は彼の姿を見て呆気にとられながら、『お代は・・・』と店主に聞いたが、前払いだから大丈夫と苦笑いしながら見送られた。真鶴は店主と芸妓に頭を下げ、亘と五十鈴を追いかけた。
祇園に近い鴨川の河原で、五十鈴は真鶴の話を聞いていた。
「真鶴君は、凪沙というセニョリータと恋に落ち結ばれ、子も出来たのに、いすみが家族を引き離したのかい?海洋族が人間と結ばれないのは、いすみが呪いをかけている噂だよー」
真鶴は、五十鈴には海王への憎しみは感じなかったので、率直に尋ねてみた。
「五十鈴さんは、いすみに恨みがあるのか?」
「うーん・・・正直、恨みってわけではないけど、僕は掟に縛られるのが嫌いでね。人間や色々な種族のセニョリータと交流したいから、いすみの宮殿を出て行ったのさ」
そんな理由でか?と真鶴とクリクリは拍子抜けした。亘は頭を押さえながら言った。
「この者は、種族問わず女をたらし込んでいるからな・・・・」
「たらし込むとは失礼だねぇ、亘君。これも、日ノ本の情勢を知る、情報収集だよ♪」
五十鈴は話を変え、もう1人アミーゴーも仲間に入れる?と亘に聞くと、当然だと言い、京の都から四国へ向かった。